[過去ログ] 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
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669: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)16:28 ID:VILRIuWI0(1/26) AAS
お待たせしましたー!
今年ももうじき終わりますが、今年最後の投下!よろしくお願いします。
670: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)16:29 ID:VILRIuWI0(2/26) AAS
 あのまま続けられる自信がスクワイヤ少尉にはあった。しかしそれを止めたのはワーウィック大尉だった。
「何故止めるんです!」
『やつら…性能はそこそこだったが、特殊な改造を施した機体だった。仮にわざわざテストの為にこの宙域に居たのなら、まだ大物を隠している可能性が高い』
「だったら余計叩いた方が!」
 食い下がる少尉。
『今の我々の戦力では無理だ』
 横からフジ中尉も口を挟む。そうこうしている間に敵との距離は開いてしまった。

「私では戦力不足ですか」
 渋々帰投しながら少尉は思わずこぼした。大尉の様な戦闘技術や撃墜実績はないし、中尉の様には頭も回らない。それでもやれると思っての行動であった。
『そういう事ではないさ。さっきの戦闘…少尉のあれは並のパイロットの動きではなかったと私は思うがな…危ういくらいに。しかし今やつらを追うのは我々の任務ではないだろう?』
省1
671: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)16:29 ID:VILRIuWI0(3/26) AAS
『また死にたがりか』
 フジ中尉だった。長い間少尉の中で堰き止められていた何かが遂に決壊した。
「中尉に何がわかるって言うんです!?」
『わからんさ。わかりたくもないな』
「こんな辺鄙な宙域でいつまでも予定調和な哨戒任務ばかりやって、それで平然としてる方がよっぽどわかりませんよ!」
『死にたがるのは自由だが、そんな好奇心じみたものの為に少尉は人を殺せるのか?』
「何を今更!人を殺すのが仕事でしょ!?」
『2人とも…よすんだ』
 血が昇った2人とは対照的に、止めに入ったワーウィック大尉の声は恐ろしく静かだった。その有無を言わさぬ雰囲気に気圧され、口をつぐんだ。

 居心地の悪い沈黙のなか、少尉達の部隊は速度を落とし先行しているサラミスを追っていた。先程の敵も、もうこの宙域を離れている頃だろう。
省11
672: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)16:30 ID:VILRIuWI0(4/26) AAS
 程なくして帰還した少尉達は、報告の為ブリッジへと足を向けた。彼女らを回収した艦は、再び元の速度でアンマンを目指し始める。
「おう!戻ったな!…何かあったか」
 重い雰囲気を察してか、珍しくグレッチ艦長が気にかけている。
「少々、喧嘩しましてね…」
 大尉が頭を掻きながら苦笑いしてみせた。その後ろで少尉達は変わらず黙りこくっている。
「なるほどなぁ…。まあ、たまには良いんじゃねえか!大尉もここに来たばっかりだし、俺達は元々てんでバラバラな人間の集まりさ…衝突してなんぼだぜ」
 こういう時には、この艦長の気楽さがありがたかった。
「それで、敵さんはどうだったかね」

 ワーウィック大尉から一通りの報告がなされた。
「…以上です。尻尾しか掴めなかった感触でしたが、こちらも足を止めずに済んだと思えばおあいこですね」
省7
673: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)16:31 ID:VILRIuWI0(5/26) AAS
 暫くしたらアンマンに着くと言うので、パイロット達はそれまでしばし休息ということになった。各々、自室へと帰るよう言われた。
 大尉だけはそのまま少し艦長と話していたが、あの後何を話していたのだろうか。
 スクワイヤ少尉は、何もない狭い部屋に戻ってきた。殆ど寝るだけの場所で飾ることも出来ない。
 とりあえずシャワーを済ませ、下着姿にシャツだけ羽織ってベッドに寝転ぶ。左腕を額に乗せ、その下から天井を見つめた。
「…死にたい訳じゃないんだけど」
 小さく声に出して言った。功を焦った訳でもない。ただ、何もしないでいる日々が耐えられなかった。
 このまま何も無いのなら、寧ろ死の先に何かあるかもしれないと、淡い期待を抱いただけだ。今は何かしら取り組めるものがあるだけ充実して感じる。
 そんな事を考えながら、うとうとと微睡み始める。眠るのに程よい身体の熱を感じながら、死ぬ時はこんな風にふわふわしていると良いなと思った。

8話 死にたがり
674: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)16:38 ID:VILRIuWI0(6/26) AAS
「…少尉。おーい…。入るぞ…。」
 スクワイヤ少尉が寝惚けていると、少し遠くでワーウィック大尉の声が聞こえている様な気がした。とりあえずその辺の布に頭から包まる。
「流石にそろそろ起きろよ…体調でも悪いのか?」
 大尉の声が近くなった。気のせいでは無かったらしい。そう思うと何故か心臓が高鳴ってきた。今顔を見られるのは、何となく恥ずかしい…寝起きだからか?
 布の切れ間から外を覗こうと思った時、その切れ間が丁度開いた。大尉だった。結構な近距離で目が合う。
「あ!うわあ!」
「うお!」
 つい少尉は驚いて額を額にぶつけてしまった。それにまた驚いて2人してバタバタと後ろに下がる。

「痛…いやいや、すまん、外から通信しても返事がないから体調が悪いのかと思って…見に来たんだが…」
 尻もちをついて額をさすりながら大尉が言った。少尉もばっちり目が醒めた。いや寧ろ恥ずかしさで開きすぎるほど目が開いている。
省13
675: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)16:39 ID:VILRIuWI0(7/26) AAS
 とにかく急いで支度すると部屋を出た。
 まだアンマンには着いていないとはいえ、流石に寝過ぎた。作業というほどの作業はさしあたって無いのだが、昨日のことを考えると大尉が心配するのも仕方なかった。
 とりあえずちゃんと謝る為にも大尉を探す。
「ん、少尉か。大尉が心配していたが…大丈夫か?」
 フジ中尉と出くわした。昨日は昨日で言い争ったものの、中尉は特に変わりない様子だった。
「すみません、大丈夫です。中尉もその…昨日は申し訳ありませんでした」
「ああ、私も言い過ぎた。気にしないでくれ。…大尉なら今頃ブリッジだ」
「ありがとうございます」
 軽く会釈してブリッジへ向かった。時間を見つけて中尉ともきちんと話をしようと思った。同じ艦にいる以上、彼とも今後長い付き合いになるかもしれない。
676: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)16:40 ID:VILRIuWI0(8/26) AAS
 ブリッジに到着すると、ワーウィック大尉がオペレーターのグレコ軍曹と何やら確認しているところだった。少尉に気付いた大尉が恥ずかしそうに笑った。
「少尉、さっきはすまなかった。元気そうで良かった」
「こちらこそご心配をおかけしました…。そういえば艦長は…?」
「艦長なら自室にいらっしゃるよ。基地に着く前に諸々資料の準備があるらしい」
「そうですか…」
 そう言いながら、2人でブリッジから見える月を眺めた。遠くから見える月はぼんやりと白くて美しいが、こうして近くで見てみると点在するクレーターや観測機器で酷く無機質なものに思えた。
「もうじきアンマンの基地ですか」
「ああ、今日のうちに着くだろう。少尉が喜ぶものがあれば良いが、どうかな」
 鼻筋の通った彼の横顔に何となく見とれた。恋人は居るのだろうか。
「私が喜ぶものでも用意してくれたんですか?」
省14
677: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)17:00 ID:VILRIuWI0(9/26) AAS
 ダン・ロングホーン大佐は、アンマン市に入港するサラミス改を眺めていた。
 彼は1年戦争においてはパイロットとして前線で戦い抜き、戦後はマゼラン級艦長や独立艦隊司令を歴任。現在はこのアンマン市にあるエゥーゴ拠点を任されている。
 深い掘りにしっかりとした鼻、厳格な性格を表した様な太い眉、精悍な顔立ちをした軍人であった。
 壮年に差し掛かった今でも若い連中に遅れは取らないと自負するだけあって、心身ともに鍛え抜いた彼は他の上層部の人間とは纏う雰囲気からして違う。
 大佐はおもむろに席を立つと、サラミス改のクルーを出迎える為ドックへと降りた。哨戒任務を主に行っていたと聞いているが、エゥーゴには持て余していられる戦力は無いといっていい。
 ブレックス准将からの指示もあり、彼らにはこれから嫌というほど働いてもらわねばならないだろう。
678: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)17:00 ID:VILRIuWI0(10/26) AAS
「やあ諸君。アンマン市へようこそ」
 搬出などがやや落ち着いたとみえるタイミングを見計らい、大佐はクルー達に顔を見せた。皆作業を中断してその場で姿勢を正す。
「わざわざお出迎え頂くとは恐縮で…。私が艦長のファルコン・グレッチ少佐であります」
 挨拶をした、だらしない風貌の男はそう名乗った。
「グレッチ少佐。私がここを任されているロングホーン大佐だ。航行ご苦労。諸君には伝えたい話が色々あってな…勿論、聞きたいことも色々と」
 そう言いながらざっと周囲を見渡した。
「ワーウィック大尉というのは?」
「はい。お呼びでしょうか」
 資料で見た通り、顔に火傷の跡がある男が前に出た。
「君か」
省12
679: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)17:01 ID:VILRIuWI0(11/26) AAS
 アイリッシュ級は、マゼラン級やペガサス級は勿論、エゥーゴの旗艦であるアーガマなども参考にして開発されたMS運用艦である。既に2番艦"ラーディッシュ"を始めとした数隻が作戦行動中だった。
 今回の任務では、ブライト・ノア大佐やクワトロ・バジーナ大尉らが月の表側ならば、ロングホーン大佐達は月の裏側を守る。まさしく表裏一体の作戦といえよう。
「ここがブリッジだ。広いだろう?」
 艦長達を引き連れ、出来上がったばかりのブリッジへと入った。サラミスとは比べ物にならない最新鋭の設備に、皆の唾を飲む音すら聞こえてきそうだった。
「…これを、私が扱うので?」
 唖然としているグレッチ艦長が恐る恐る聞いてきた。
「勿論。私も同行したいところだが、基地を空ける訳には行かんしな」
 それを聞いても尚、艦長は返す言葉もないといった様子でただただ驚いている。
「じき慣れるさ。それはそうと、これからの作戦について諸君に伝えねばならん」
 大佐が後ろ手を組みながらクルーを見渡すと、皆の視線が注がれた。
省2
680: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)17:02 ID:VILRIuWI0(12/26) AAS
 ゆっくりとブリッジの窓沿いを歩きながら大佐が述べる。窓に写り込んだクルー達の表情は一様に固かった。
「諸君は哨戒任務の任を解かれ、これからはアンマン市を拠点とした戦闘行動に加わってもらう。
 エゥーゴは少数精鋭だ。現状として、ティターンズ程は連邦軍内の他派閥を味方につけているとは言い難い。我々の少ない手札に於いて、まさしく諸君には切り札となってもらうべく召集した次第だ」
 いささか仰々しい言い方だと自分でも感じながら大佐は続けた。
「この艦は勿論、人員だけでなくMSも新たに補充する。
 MS隊は優秀な人材が多いと報告にあったしな。後で私の方から案内させてもらう。こう見えて私もパイロット上がりだからな…未だにMSを見ると昂ぶるものがある」
 報告にあった面々…ワーウィック大尉、フジ中尉、スクワイヤ少尉。彼らの顔をクルーの中に見つけた。大尉は勿論、他の2人も興味深い人材であった。
「今後の詳しい作戦行動に関してはまた艦長を通して伝える。そして、今度はこちらが聞きたかったことなんだがね。ここに到着する前に交戦があったとか?」
 そう問うとワーウィック大尉が進み出た。彼に向かって頷き、説明を促す。

「私からご報告させていただきます。…」
省9
681: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)17:02 ID:VILRIuWI0(13/26) AAS
 それから、他のクルーと同じくブリッジクルー達にも設備の説明を受けさせている間に、大佐はパイロット3人と共にMS格納庫へと足を向けた。
「私がMSに乗っていた時には、まだまだ女性パイロットは少なかったものだよ」
 感慨深く思いながらスクワイヤ少尉を見た。大佐からすればまだ子供のように見えるが、大尉や艦長からの報告に依れば彼女もなかなかの腕利きらしい。
「私の事はどうお聞きになったんです?」
「燻っていたが腕は良いと」
「買い被りですから」
 そういって彼女は少し笑った。これからの働きに注目しておきたい。

 格納庫に到着すると、サラミスから移したワーウィック大尉の百式改がまず目に入った。納入時に不足していた専用装備など、彼に合わせたチューンナップを施してやる予定だ。
「数ヶ月前、これの金色がここに来たよ」
「バジーナ大尉ですか」
省7
682: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)17:03 ID:VILRIuWI0(14/26) AAS
 続いて見えた機体はフジ中尉のものだった。
「これはフジ中尉の乗機だ。大尉から通信機器の強化を依頼されて、急ピッチで組ませたよ」
 大佐がそう伝えると、大人しくしていた中尉が食い入るように機体を見つめた。
「これが私の機体ですか」
 中尉の見つめる先には、畳まれた大型のレドームを背負ったネモが立っていた。
「EWACネモとでも言おうか。君の判断力を買ってのことだ。センサー強化は勿論、処理能力の高いAIも入れておいた。更にこの近辺で収集した環境データを蓄積…そのほぼ全てが入ったストレージを積み込んである。さながら前線司令塔といったところか」
 そして、その後ろにはスクワイヤ少尉の機体が用意されていた。
「これがスクワイヤ少尉のMSだ…。驚いたか?」

 そこに立っていたのは紛れもない、ガンダムだった。

10話 栄転
683: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)17:13 ID:VILRIuWI0(15/26) AAS
 信じられなかった。むしろ、取り立てて実績を上げた訳でもない自分にこんな機体があてがわれるなど、陰謀すら感じた。
「ご覧の通り、ガンダムだ」
 ロングホーン大佐がそう紹介したガンダムは、複数のバーニアノズルがついた見慣れない大きなポットを2基背負い、横に伸びた両肩にもアポジモーターが見られる。
「こいつは過去に少々揉めたデータを流用しているのだがな。まぁそうはいっても優秀なものを腐らせるわけにもいかん。君と同じだ」
 大佐のいうデータに関しては何とも言えないが、まさかガンダムとは。
「この機体…ベースはジムカスタムですか」
 中尉が聞いた。知らない名前だ。
「よく判ったな。設計データの基礎はその通りだが、勿論現代仕様に作り変えてある。そこにテスト運用されたポットのデータを盛り込んで、ガンダムタイプに仕上げた。
 ティターンズが作ったジムクゥエルのガンダムヘッドと思想は似てはいるが、こいつは正真正銘のガンダムだよ…コードネームは"マンドラゴラ"…。
 長いこと地面に埋まってたからな、引き抜いてやろうと思っていたのだ」
省1
684: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)17:14 ID:VILRIuWI0(16/26) AAS
「しかし…何故こんな機体を私に…?」
「買い被りかもしれんな、大尉の」
 大佐の言葉に、思わずワーウィック大尉を振り返る。
「元々私が乗る予定だったが…どうもガンダムは性に合わない。百式を受領して一度は流れた話だったのを、また掛け合って回してもらったんだ」
 そういって彼は笑った。思わず少尉も笑う。そんな事があり得るのか。
「ほんとに…買い被り過ぎですよ」
「君ならやれるさ。中尉の万全のサポートもあれば、私がやることなど殆どない。…念願のスポーツカーだな。困るか?」
 ニヤリと意地悪く大尉が言う。夢にも思わなかった事態に、興奮がしばらく続きそうだった。

 しかしその時だった。大佐の端末が呼出音を鳴らした。周囲も急に慌ただしくなっている事に気付く。
「どうした」
省6
685: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)17:15 ID:VILRIuWI0(17/26) AAS
 それから殆ど間を置かず、今度は第1戦闘配備の指示が響く。こちらも敵襲か。
「早速か…。私は百式で出る。2人は…」
「データに目を通しておきたいですし、私もネモで出ます」
「えっと…」
 大尉達が機体を決める中、スクワイヤ少尉はガンダムを仰ぎ見た。
「少尉…流石に急には動かせんだろう」
 察した大尉が心配そうに言う。
「いや、やります。きっとこの時を待ってたんです。私も、この子も」
 猶予はない。少尉がガンダムの元へ走ると、彼らも乗機に向かって走った。

 それぞれコックピットに乗り込むと機体を起動する。少尉の乗っていたGM2はそもそも旧GMからのアップデート版だった為、全天周囲モニターですら無かった。
省13
686: ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)17:15 ID:VILRIuWI0(18/26) AAS
『MS隊、準備は出来てるか?』
 グレッチ艦長からだった。緊張で顔が強張って見える。
『全機いけます。状況は?』
 大尉はいつもと変わりない。
『詳しいことはまだわかっちゃいないが、フォンブラウン市の強襲と間を置かずにアンマン市へもティターンズが来ているらしい。アレキサンドリア級が1隻、後続にサラミス改も2隻遅れて付いてきてる』
「アレキサンドリア級…もしかしたら」
『ああ、奴らかもしれんな。残念ながら本艦はまだ出港出来る状態にはない。MS隊だけ、アンマン市の防衛部隊と共に出てもらう形になる』
『了解。我々の部隊指揮はこちらに一任していただけますか』
『もちろんだ大尉。データ収集は中尉のネモと少尉の新型を存分に使ってやれ』
『ありがとうございます』
省12
687
(1): ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)17:27 ID:VILRIuWI0(19/26) AAS
「アポロ作戦…。始まりましたな」
 副官のレインメーカー少佐がブリッジの外を眺めつつ顎に手を当て言った。その傍に立ち、戦況を確認するウィード少佐は敵の出方を伺っていた。
 本作戦に参加する前段階としてのテスト実施だったのだが、敵に遭遇したのは計算外だった。
 それにしても…パプテマス・シロッコ…。木星帰りの男は、したたかなやり口でフォンブラウン市を制圧した様だ。出し抜かれたジャマイカンが黙っているとは思えないが。
 ウィード少佐の部隊はそれと呼応する形でアンマン市を強襲しているところであった。予定よりは早いが、この機を逃す訳にはいかない。恐らくシロッコ大佐もウィード少佐達が動くことを見越している筈だ。

『そろそろね…。先行するわよ』
 出撃したドレイク大尉から通信が入る。彼女らの機体は先日の交戦で損傷していたが、急ピッチでの補修がどうにか間に合った。試験用でパーツを持ち合わせていたのが功を奏した。
『あのバッタ…出てくるかな』
『いようがいまいがエゥーゴなど…パンプアップした今の俺の敵ではない!』
 オーブ中尉のαは脚部の修理で手一杯だったが、ソニック大尉のγは一時的に装甲材を増やしている。月面近くの戦闘では重力も気になるが、先日のデータからするに被弾することも考慮したテストを実施すべきだった。
省1
688
(1): ◆tyrQWQQxgU 2019/12/31(火)17:28 ID:VILRIuWI0(20/26) AAS
「指揮官殿は出られますかな?」
 レインメーカー少佐がこちらを見る。
「そうね…。こないだの連中が出てくる様であれば、それも考えるわ」
 ガルバルディ隊のテストは勿論だったが、本命のモビルスーツがまだ眠っていた。
 PRX-000…名をニュンペーと言う。シロッコ大佐から支給されたもので、木星船団のジュピトリス謹製らしい。メッサーラの様なエース機ではなく、連邦軍で本格的な量産に耐えうる機体を彼の独力で試作したいとの事だった。
 そのデータを元にして次の試作機を作るそうだが、テスト運用した限りでは非常に操縦性に優れたインターフェースを備えている。
 今頃彼はドゴスギアに乗艦している筈だが、そちらでも設計に携わった機体を配備しているらしい。
「あれは予備パーツが殆どないからね…。ここぞってとこでしか実戦には出せない」
「ニュンペーの為にガルバルディを用意した様なものです。戦局の見極めはお任せしますよ」

 話している間にも敵に動きが出始めていた。
省8
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ぬこの手 ぬこTOP 3.533s*