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宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/
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909: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:21:56.21 ID:AvQA0wbv0 >>907 デザインは見たことあります! 結構攻めてますよね >>908 いつもありがとうございます! さて、1週間ほど経ったので続きを投下します http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/909
910: ◆tyrQWQQxgU [] 2020/07/17(金) 11:22:38.58 ID:AvQA0wbv0 スクワイヤ少尉は目を開けた。 「あれ?死んでない」 目の前にワーウィック大尉のマラサイが居た。よく見ると少尉はマニピュレータの上に横たわっている。 『地球…行くんだろ?諦めるのはまだ早い』 「大尉!」 思わず涙が溢れ出す。 『1度アイリッシュに戻るぞ。下手なことはするなとあれほど言ったのに』 「すみません…」 擦った目を遣ると、敵のハイザックは完全に沈黙していた。そのコックピットには薙刀が突き立てられている。 マラサイはそれを引き抜くと、もう片方の手に乗せた少尉をコックピットへと促した。開いたハッチの向こうに大尉が居た。スクワイヤ少尉はそそくさと乗り込む。 「さて…行くか」 ハッチを閉じると、身を翻したマラサイはバーニアに火を入れてアイリッシュへ向かった。 「…何で大尉は私が居るってわかったんです?」 「フジ中尉だ。少尉の声を聞いたと言ってな。気のせいかもしれないと言っていたが、まさかと思って声のした方へ向かったら案の定」 あの時の通信が通じていたのか。通りかかったのが中尉のネモでなければ今頃死んでいただろう。 「それから…通信入れっぱなしだったろ。それで少尉だと確信したよ」 「え…!?全部聞いてたんですか!?」 「まあ…ひと通り」 顔が熱くなるのを感じた。 「えっと…いや…いいんです。これはこれでロマンチックだったかも」 「そうか」 大尉が笑った。 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/910
911: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:23:11.69 ID:AvQA0wbv0 飛び交う戦火を潜り抜け、どうにかアイリッシュまで辿り着く。タイミングをみて開いた格納庫へ滑り込んだ。 「私はまた戦場に戻る。少尉は一旦降りてくれ」 「わかりました。…私もすぐ行きます」 「機体があればでいい」 少尉はマラサイのコックピットハッチに手をかける。 「少尉…!」 「?」 声を掛けられ、思わず振り返った。 「その…。戻ったら話そう」 「…ええ」 少尉は笑顔で返した。少尉を降ろして周囲の安全を確認すると、大尉はすぐに去っていった。 「遊ばせてる機体なんてあるかな…」 格納庫を見渡すが、補給を行っている機体以外は空いている様子はない。仕方なく少尉はガンダムの元へ走った。 「あ、少尉。お戻りで」 アナハイムの技師がデータを確認しているところだった。 「この子、どうにか出せない?」 「今からですか!?うーん…」 見る限り最低限の応急処置は出来ているようだが、あくまでも外観の話だ。 「状況はわかりますよ。ここを切り抜けられなければ直すだけ無駄ですからね。しかし…正直何が起きても責任は取れません」 技師は苦い顔をした。 「いいわよ。動くんならそれで十分」 それ以上返事も聞かず、少尉はコックピットハッチから機体に乗り込んだ。 『少尉、止めても無駄でしょうから…説明だけでも聞いてください』 先程の技師がモニターに映る。 『アポジモーターの稼働率は70%ってとこです。多分使ってるうちに更に数字は落ちると思いますが。関節もかなり傷んでます。あとサーベルも1本紛失した状態ですので…』 「わかった。大尉の薙刀がまだ1本余ってたよね?」 『ドライブは可能です。でも扱えますか?長物は慣れないと結構難しいですよ』 「手ぶらよりいいわ。あれと適当なライフルを1丁貰っていくから」 いつもと違うフレームの軋みを感じつつ、装備を見繕った少尉は格納庫を後にした。 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/911
912: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:23:47.05 ID:AvQA0wbv0 「マンドラゴラ…あと少しだけ頑張ろうね」 カタパルトは使わず、そっと艦体の陰から出撃する。辺りは幾らか静かになっていた。注意深くアイリッシュから離れる。 『ガンダムは少尉か!やっぱりな!』 「フジ中尉!」 ガンダムに気付いたのはフジ中尉だった。彼のネモは壁際に座礁している。周辺に敵影はない。 『やはり気のせいではなかったな。全く無茶ばかりして…』 「そういう中尉こそ。…動けます?」 周辺に展開していた敵部隊が見当たらなかった。少し離れた場所で交戦しているらしい。 『試験部隊のやつが2機ほど残ってる。そいつらにやられた』 ネモは脚部を損壊しており、立ち上がるのは難しそうだ。 「この辺りに敵は居ないみたいですね。中尉だけでも戻っててください。後始末は任せて」 『済まないな…。どうも敵は撤退を開始した様だ。しかし先程の2機が殿を務めている…気をつけろよ』 「大丈夫ですって。まだ死ぬには早いですから」 『死にたがりのゲイルがそんな事を言うとはな』 中尉は少し笑ったようだった。コックピットハッチから脱出した中尉がガンダムのコックピットを叩く。 『これを少尉に託す。これまでのやつらとの交戦データを蓄積・解析したものだ』 ハッチを開けて中尉と対面する。彼から端末を手渡された。 「ロードに時間がかかるだろうが、ガンダムの反応が向上する筈だ。ぶっつけ本番になるが…」 「中尉、ありがとうございます。安心して待っててください」 「頼んだぞ。メッセージも添えてある」 珍しく中尉が親指を立ててハンドサインを見せた。そういうこともする男なのだと今更知って、少尉も思わず笑った。 中尉を見送り、端末を差し込む。やはりロードには幾らか時間が掛かるようだ。友軍の動きを見る限り、敵はシェルターの外に出たらしい。 「さーて…腐れ縁もここまでにしたいね」 拠点を放棄した時点でエゥーゴの勝利は揺るがない。しかし、まだ友軍が追撃戦を続けている。これを逃せばまた敵に反抗の機会を与えるかもしれない。ガンダムのスラスターを吹かすと、少尉は敵の姿を求めてシェルターの外へと駆けた。 54話 追撃戦 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/912
913: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:25:11.73 ID:AvQA0wbv0 「だいぶ…片付いてきたね…」 息を切らしながらウィード少佐は辺りを見渡した。もう敵は片手で数える程しか残っていなかった。シェルターを抜けるまでの間に4,5機は落とした筈だが、それからは数えている余裕も無かった。友軍は殆どがアレキサンドリアへ向かった筈だ。 「しかし…レインメーカー少佐は何を…」 肝心のアレキサンドリアが見当たらなかった。何かトラブルがあったのかもしれない。 『とにかく今は、目の前の連中を片付けるのが先決ですかね。このままでは身動きが…』 ステム少尉もよくやってくれている。正直独りではここまでやれなかったと思う。彼の言うとおり、今相対している4機のMSはそれなりによくやる。特に中央に陣取ったマラサイはひとりだけ動きが違う。 「あのマラサイ…。もしかしてバッタのやつか?」 得物が同じ薙刀だった。同じパイロットということならこの動きの良さにも説明がつく。 「だとすれば…バッタはグロムリン辺りが潰してくれたか。あの時代遅れのMAもそこそこに仕事をしたみたいね」 こちらから仕掛けるより早く、敵が一斉に動いた。少し遅れてこちらも敵に向かってスラスターを吹かした。周りを固めるGM2の威嚇射撃でこちらの進路が狭まる。その進路の先には、マラサイ。 「ステム!遅れないでよ!」 『はい!』 ガブスレイに背中を預ける形で、少佐は突っ込んでくるマラサイに向けてライフルを放った。マラサイはこれを華麗に躱すと、薙刀を頭上で回した。 「マラサイごときがこのニュンペーとやり合えるとでも!?」 マラサイが振り下ろした薙刀をギリギリで躱す。回避運動から繋いだ動きでバックハンドにサーベルを繰り出した。敵はそれすら薙刀で受け止めるが、無防備になった側面にはステム少尉のガブスレイが居る。 『落ちろッッッ!!』 少尉のフェダーインライフルにサーベルが形成され、勢いよく突き立てにいく。しかしマラサイは、避けるどころかガブスレイの懐に入り込んだ。 『何だと!?』 フェダーインライフルはリーチが長い分、懐に潜られると扱いが難しい。薙刀を扱うだけあってそのあたりは熟知している様だ。ガブスレイは首根っこを掴まれるようにして、背負い投げの要領で投げ飛ばされた。 『くそっ!』 着地するやいなや、他敵機のライフルに晒される。攻撃を受けるより早く可変すると、少尉は敵と距離を取った。 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/913
914: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:27:25.79 ID:AvQA0wbv0 「ちょこざいな!」 ガブスレイを投げ飛ばしたマラサイへ、今度はニュンペーで挑む。近距離でライフルを見舞った。流石に加速の早いライフルをこの距離では避けきれなかった様で、マラサイは肩の盾でいなした。脇が甘くなった所にフェンシングよろしくサーベルで突きかかる。 いくらパイロットの腕が良かろうと、所詮はハイザックに毛が生えた程度の量産機である。ニュンペー相手では持ちこたえられなくなるのも時間の問題だろうと思った。 しかし、こちらのサーベルを敵は捌ききった。疲れるどころか更に動きが良くなっている様にすら思えた。こちらの攻撃の隙をつかれ、薙刀の柄で脚を払われる。 「何だ!?」 関節部を狙われたのか、一瞬ニュンペーはガクンと体勢を崩した。見上げた先で敵のモノアイが妖しく光る。 意を決した少佐は、敵の腰部へ抱きつくとそのまま押し倒した。先程の敵の戦術と同じく、インファイトに持ち込めば薙刀は文字通り無用の長物になる筈だ。 しかしここでも敵の方が1枚上手だった。押し倒した勢いそのまま、ニュンペーは腹から蹴り上げられた。 「ちいぃ!」 跳ね除けられ、再び距離が開く。明らかにパイロットとしての腕は敵の方が上を行っている。 更に良くないのは、他の機体の動きも見ながら戦わねばならない事だった。こうしてマラサイとやり合いながらも、他のGM2が茶々を入れてくる。 長い攻防が続く。ステム少尉が被弾し地表へ不時着した。可変してMSに戻るも、肩を損傷した様だ。 『まだやれます!お構いなく!』 少尉が叫ぶ。そこにここぞとばかりにGM2がサーベルを抜いて迫る。 「そこッッッ!」 少佐は交戦中のマラサイ越しにそのGM2へとライフルを放った。マラサイの頭部を掠ったそのライフルは、そのままGM2の腹部を横から貫通した。間髪入れずにガブスレイが正面から横凪に両断する。 「後3機!!」 こちらも疲弊しているが、それは敵も同様だった。マラサイの援護をしようとライフルを向けた別のGM2だったが、弾が切れたのか空撃ちした。返す様にそのGM2へライフルを見舞い、コックピットに直撃させる。 「残弾くらい確認しておくんだね」 極限状態の中で、本能的に次の手を選択していく。研ぎ澄まされていく感覚はあるが、余裕がないのはこちらも同じだ。再度接近してきたマラサイへの反応が遅れる。 「まだだ!」 ギリギリのところで薙刀の柄を掴み、敵と睨み合う。長い戦いで気が遠くなりそうになりながらも、どうにか踏みとどまっていた。このマラサイに乗っているだろうパイロットとその仲間達への復讐心に支えられているからかもしれない。 「お前達だけは絶対にッッッ!!!」 少佐は力の限り吠えた。そのままマラサイを押し退けると、敵の左腕を掴み肩から引き千切った。ムーバブルフレームの難点があるとすれば、人体構造に近い故に関節部が脆弱であることだった。モノコック構造の様な堅牢さは無い。 もいだ腕をそのまま投げ捨てると、バランスを崩したマラサイを蹴り倒す。そこへ残る1機のGM2が間に割り込んできた。 「邪魔をして…!」 もう後はない。割り込んできたGM2と掴み合いになりながら、その腹にライフルを突き立てる。めり込んだ状態の零距離で最後の一発を撃ち込んだ。倒れかかってくる敵機をそのまま打ち捨てる。 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/914
915: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:29:14.91 ID:AvQA0wbv0 「はぁ…はぁ…」 息も絶え絶えの少佐の傍にガブスレイも合流する。 『残るは…』 目の前にいるマラサイは、片腕になりながらも戦う意思を曲げずにいるようだ。退く素振りは微塵も見せない。 「あんたらの勝ちだろう!それで満足じゃないのか!?何故退かない!?」 思わず少佐は怒鳴った。何もかも失ったこの戦いは、紛れもなくティターンズの敗北だった。なのにこの男は何故まだ追ってくるのか。 そうはいってももう敵は満身創痍だった。これ以上何か出来るとは思えない。 「…もういい。これ以上は追ってこれまい。ステム、アレキサンドリアは?」 『…来ませんよ』 「何を言ってるの?」 『レインメーカー少佐は今頃この宙域を脱している頃でしょうね…撤退した友軍位は拾ってくれたかもしれませんが』 耳を疑った。理解が追いつかない。 『エゥーゴがここまでやるとは思いませんでしたよ。僕自身も紙一重でしたが…あなたはここで死ぬんですよ、ソニック大尉達と同じ様に』 何を言われているのか、意味を汲むまで少し時間がかかった。 「…まさか、ラムは…」 『あんたで最後だ。エゥーゴも片付いたしね』 55話 復讐心 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/915
916: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:37:33.47 ID:AvQA0wbv0 「全く…どいつもこいつも」 ステム少尉は思わず毒づいた。何故戦力的に余裕がない筈のエゥーゴがこれ程までに追撃を掛けてきたのか、そしてウィード少佐は何故馬鹿正直にそれを迎え撃つのか…理解に苦しんだ。 そもそもレインメーカー少佐との当初の計画では、初戦で少し善戦した後にウィード少佐達をエゥーゴに討たせて撤退するだけの筈だった。 しかし、ソニック大尉が単独で侵攻してきた敵と交戦に入ってしまい、あろうことか本部の爆破まで粘ってしまった。最初の誤算である。救援に入る動きを見せつつ自ら手を下す事になってしまった。 本部の爆破自体もレインメーカー少佐の入れ知恵だった。そうすれば上層部が脱出するだけの時間は稼げると唆したのだ。 背後の後ろ盾を失った駐留軍は、少佐の見立て通り死にもの狂いで戦った。 大尉の誤算だけならまだ良い。しかし今度はウィード少佐がエゥーゴ相手に善戦してしまう。混戦の中でやられてくれればそれでも良かったのだが、殿になって味方を全て逃してしまった。 ここでウィード少佐が倒れれば次はステム少尉が敵を一手に引き受けなければならなくなるし、少佐だけ残しての撤退を取れば、抑えきれずに敵の追撃が尚一層激しくなる。 そうなると自身の脱出すら危うくなる為、先にエゥーゴを片付ける必要まで出てきてしまったのだった。 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/916
917: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:37:55.89 ID:AvQA0wbv0 「まあこれで…試験部隊が必死に戦ったという記録はより補強されるけどね。回収した友軍が証言してくれる。…ただ、おかげで俺は割を食った」 舌打ちしながら、ステム少尉はフェダーインライフルをウィード少佐に向けた。 『全て…レインメーカー少佐とステムが?』 「この際だから聞かせてやるよ。余りに爺さんの動きが遅いから俺が補充されたんだ。シロッコ大佐は…これ以上こんな試験部隊のお遊びに付き合っている暇はない」 『大佐が…』 信じられないといったところか。皆そう思うのだ。自分は特別だと思い込んでいて、いざ事実を突き付けられると認めようともしない。 「コロニー落としに失敗した時点で、その責任を負うのがあんたらの最後の任務だったんだ。…姉さんの負傷の代償と一緒にね」 姉弟揃って散々振り回されてしまった。しかしそれもここで終わる。 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/917
918: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:38:18.70 ID:AvQA0wbv0 「エゥーゴも一通りは片付いたし、あんたを始末したら…俺は合流ポイントでアレキサンドリアに拾ってもらう。それで任務完了だね」 ため息をついてニュンペーを見据えた。もうパラス・アテネは完成の目処が立ったし、ニュンペーの量産体制も整いつつある。シロッコ大佐達もこのプロトタイプを失ったとして特別惜しくは無いのだろう。 『大体の察しはついた。それで…今なら私を殺せると?』 「逆に…殺せないと思ってるのか?」 ソニック大尉といいウィード少佐といい、何処までも邪魔をする。もうウンザリだった。 「さよなら」 ライフルでニュンペーを狙うと、流石に抵抗してきた。ビームを躱し、こちらを組み敷こうと掴みかかってきた。そんなところまでソニック大尉と同じなのか。 「あんたはここで終わりだ!潔く撃たれれば良いものを…!」 『そうかもね。でも、実行犯のあんたを連れて帰ってくれるほどレインメーカー少佐も甘くないよ』 「無駄な抵抗だ!惑わせて!」 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/918
919: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:38:42.25 ID:AvQA0wbv0 取っ組み合いの最中に、背後でマラサイが立ち上がっていることに気付いた。 「何!?死にぞこないが…!」 ウィード少佐を押し退け、今度はマラサイを撃つ。右肩の装甲が弾け飛んだが、それでも膝をつかない。それどころか薙刀を脇に挟んでこちらへ向かってきた。 「馬鹿な!たかがマラサイだぞ!?何故動ける!?」 敵の鋭い斬撃が下から斜めに迫る。動揺した少尉は思わず腕で身を庇った。刎ねられた片腕がライフルごと宙を舞う。 「くそ!いい加減落ちろよ!!」 残る右肩のメガ粒子砲と頭部のバルカンで集中砲火を浴びせる。しかしマラサイを蜂の巣にする前にニュンペーが接近してくる。 「どいつもこいつも何故死なない!?」 『あんたの爪が甘いから!!』 「煩いんだよ!あんたも!!」 迫るニュンペーの頭部に蹴りを入れたものの、怯むことなくこちらを睨み返してきた。 「その目は何なんだ!」 拡散メガ粒子砲で目くらましをし、その隙にサーベルを抜く。ニュンペーを袈裟斬りにしようとするが、マラサイの妨害に遭う。千切れた左腕を拾い上げ、スパイク部で殴りつけてきた。 「こいつ!庇う理由は無いだろ!?」 何故敵であるニュンペーを庇うのか。大人しく寝ていれば良かったものを。打突を受けよろめきつつも、返す刃でマラサイの持つ左腕を破壊する。爆発の衝撃でマラサイは再び倒れた。 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/919
920: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:39:05.37 ID:AvQA0wbv0 『ステム…この際あなたの理由は聞かない…。でも…あなたにとってこの戦いは何の意味もないわ。…せめて生き延びてくれれば良かった』 膝をついていたニュンペーが立ちあがる。 「ソニック大尉は俺が自ら手を下してやった。あんたもそうする事で俺の目的が達成されるんだよ…。何も心配する必要はない!!」 再びサーベルで斬りかかり、鍔迫り合いになった。Iフィールドの反発で周囲に電撃が走る。 どちらも満身創痍だが、的になって戦っていたニュンペーのダメージの方が深刻な筈だ。単純な押し合いで負けるとは思えない。 「往生際の悪いところまでソニック大尉と同じだな。だが…それもこれまでだよ」 サーベルを更に押し込んだ。自分の刃で焼かれて死ぬならば、彼女にはおあつらえ向きだろう。 『私も無意味な復讐の最中だから…まだ死ねない』 装甲表面を少し溶かしたところでニュンペーはまたサーベルを押し返してくる。 「知ったことか!あんたの分際で復讐だの何だのと…身を弁えろ!」 その時、倒れたマラサイがバルカンで邪魔してきた。 「この…!」 気を取られたタイミングで、次第にガブスレイが押され始める。 『そこに転がってるマラサイは勿論だけど、ガンダムがまだいる。それに…』 これだけの連戦で、何処にこんな力が残っているのか。抑えきれず膝をつく。 『ラムをやったって言うんなら、それは胸に仕舞っておくべきだったね』 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/920
921: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:39:31.94 ID:AvQA0wbv0 「は…。ほんとに立場が解ってないらしいな!あんたは…」 『解ってないのはステム…あんただよ』 ジリジリとサーベルが近付く。苦し紛れに持てる武装を乱射するが、ニュンペーに怯む様子は無い。 『黙ってれば上手くいったかもしれないのにね…。あんたは…ここで死ぬ』 「くそ!くそ!」 サーベルが首元まで迫る。元々大型機のニュンペーが、更に巨大に見えた。ニュンペーは両手でサーベルを握り直す。 「何なんだよ!おかしいのはお前らじゃないか!」 『自分だけはおかしくないと思ってるやつが…1番イカれてるんだよ』 ハッとした瞬間、視界がメガ粒子砲で白く光った。 56話 返す刃 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/921
922: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:44:34.16 ID:AvQA0wbv0 「は…うぐっ…」 思わずウィード少佐は呼吸を乱した。沈黙したガブスレイを見下ろしながら、どうにか意識を保った。 辺りはすっかり静けさに包まれていた。マラサイもこちらに仕掛けてくる様子はなく、そのまま横たわってこちらを見据えている。 「まさか…あんたに助太刀されるとはね…」 『事情は知らんが、ワケアリみたいだったからな』 返答にハッとして通信機器を見る。オープン回線だった。油断に油断を重ねたステム少尉らしいといえばらしい。彼は諜報を任されるには余りに若過ぎた。 全く心当たりが無いわけではなかった。元々レインメーカー少佐はお目付け役として着任していた。今にして思えば、彼の良いように動かされていた部分も否めない。 それがシロッコ大佐の意思だったのだとすれば、もう初めから定めは決まっていたのだ。ステム少尉含めて所詮は捨て駒だったのだ。 恐らく彼の言っていた合流云々も少佐の方便だろう。ここまでの事をしておいて少尉を生かしておく理由がない。 「助けてもらったことは感謝する。だが…それとこれとはまた別の話だ」 ニュンペーは再びサーベルを起動した。 『投降したくないのはわかる。だが、直にエゥーゴの増援も来るぞ。死ぬ気か?』 「投降など出来るものか。この機体も、データも、貴様らに殺された仲間の遺した全てだ。エゥーゴに接収される位なら、ここで共々死んでやる」 『それこそ犬死というんだ』 マラサイが膝をついて立ちあがる素振りを見せた。 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/922
923: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:45:04.05 ID:AvQA0wbv0 『エゥーゴはティターンズの投降兵も受け入れる。俺も元ジオン兵だ』 「だから何だ!お前達が仮に私を受け入れても、私がお前達を許すことはない!」 誰も彼も皆、彼女を置いて先に逝ってしまった。オーブ中尉にも合わせる顔はない。そろそろ潮時なのだろう。この復讐心以外、もう何ひとつ手元には残っていないのだ。 「…決着を。さあ立て」 『…どうしてもやるのか』 マラサイは、薙刀を拾いながら立ち上がった。振り返ればこの男との因縁も長かった様に思う。月面での交渉時に顔を合わせて以来、ずっと戦ってきた。敵ではあるが、ある種の敬意は芽生えていた。 「お前をここで倒して、ガンダムを倒す。そうでなければ死んでも死にきれん」 『何処かでやめにしなければ、この連鎖は終わらんよ。螺旋みたいなものだ』 「お前達を殺して終わりにさせてもらう。そんなにやめにしたければここで死ねばいい」 『…生憎、後回しにしている話があるからな』 「そんな日常すらお前達が奪った!」 ニュンペーはサーベルを構えると、マラサイに振り被った。敵は下がる様にしてそれを躱しつつ、地を蹴って飛び上がる。 「逃がすか!」 サーベルを回転させながら投擲する。直撃はしなかったものの、敵の脚部装甲を裂く。敵の着地より早く、ガブスレイのフェダーインライフルを拾い上げ更に追撃をかけた。 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/923
924: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:45:33.59 ID:AvQA0wbv0 『相変わらず腕がいいな』 そういいながらマラサイは薙刀を回転させてビームを弾く。そのまま距離を詰めると、脇に抱えた状態から横凪に斬りつけてきた。 「あんたのデータもしっかり入ってる」 受け止めるようにフェダーインライフルのサーベルを展開する。ウィード少佐自身は長物の扱いには慣れていないが、学習装置の補助で互角に渡り合う。皆が身を呈して手に入れた実戦データの結晶だ。 「バッタならまだしも、半壊のマラサイで勝てるほどニュンペーは甘くない!」 薙刀を払うと、ノーガードの左側から蹴りを見舞った。蹴飛ばしてよろめかせたところへ更にライフルで斬りつける。 『ちぃ!』 すんでのところを薙刀の柄で防がれる。しかしIフィールドの展開が不十分だったのか、そのまま薙刀を切断した。 再び距離を取り睨み合う。 「自慢の長物もこれではね。もうおしまいだ」 『まだわからんさ。私の奥の手はまだある』 「ハッタリを」 こちらからライフルで仕掛けるが、マラサイは積極的に応戦してこない。ライフルの射撃を躱しながら距離を保とうとしている様だった。 「時間稼ぎのつもりか!?そんな決着…私は認めない!」 『どうかな。早く落としてみろ』 躍起になって追いかけていると、突然振り向いたマラサイが薙刀を投げつけてきた。ギリギリで躱したものの、ライフルを破壊された。 「わざわざ丸腰になるとは」 『お互い様だ』 そうは言うが、肉弾戦こそニュンペーに分がある。身を翻し接近してきたマラサイだったが、突き出してきた腕に絡む様にして背後を取る。腕を捻り上げると、そのままマラサイを組み伏せた。ソニック大尉の近接格闘データも取り込んでいるのだ。 「お前如きでは…私"達"には勝てない」 『まだだ…!』 マラサイはなおも抵抗するが、マウントを取ったニュンペーを退かすほどの力はもう残っていない様だった。 http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/924
925: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 11:46:10.68 ID:AvQA0wbv0 『お前は…今…私"達"と言ったな…?』 「ああ。私ひとりでは勝てずとも、仲間の魂はここにある」 力に任せて右腕も引き千切る。これでもうマラサイは一切の抵抗が出来ない筈だ。 「安心しろ。お前を送ったらガンダムも直ぐに送ってやる。その後で…私も逝くだろうが」 『その話はまだ取っておけ。奥の手があると言ったろう』 「何?」 『…来たか』 マラサイが全てのスラスターを全開にして足元を滑り抜けた。掬われる形でニュンペーは尻餅をつく。マラサイはそのまま受け身も取れずに近くの岩礁へぶつかり動きを止めた。モノアイが消灯する。 「くそ…。何だ…?」 その時、高速で接近する機体を捉えた。体勢を整えて身構え、シェルターの方向を振り返った。 『大尉!!』 若い女の声。見覚えのある機体が姿を現した。 「…奥の手ってこれね。探す手間が省けた」 最後の敵、ガンダムだった。 57話 私"達" http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/925
926: ◆tyrQWQQxgU [sage] 2020/07/17(金) 12:38:08.31 ID:AvQA0wbv0 取り敢えず投下はここまでですが、もう実は2章は書き上げています。 3章でこの物語は完結します。そちらも設定が完全に定まり次第書き始めようと思いますが、その前に2.5章を少し投下予定です。裏話的な。 乞うご期待! http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/926
927: 通常の名無しさんの3倍 [sage] 2020/07/18(土) 11:53:38.07 ID:URSsG3X50 乙です! http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/927
928: 通常の名無しさんの3倍 [sage] 2020/07/18(土) 19:51:28.68 ID:bDHris4x0 乙です! また間が空いてしまいました(・ωく) 洞窟で味方のはずのガブスレイに睨まれるって、ちびっちゃいそうなくらい怖い絵ですね ステムはソニックを脳筋呼ばわりしますが、正直彼の最期まで見ても私怨なのか腹黒なのかしっくり来なかったです まぁどっちもあったってところでしょうが...復讐一筋だったジェリドが少し恋しくなったりして 何はともあれ因果応報かなぁ。ウィードやソニックの奮戦に対してふざけてるみたいで、同情しかねます (脳筋をバカにしてる頭でっかちなのは分かりました、自分に都合よく考えたがる子ですね) あぁ、クローアームも使ってしっかり押さえないから、あと さすがにビームライフルでボーザツラウフは無理ですねw 銃身が熱で溶けるか溜まったIフィールドで暴発するでしょう (と>>897の時は思いましたが、>>918と>>924で撃ってますね。筒が歪んだ程度?) そんな時の為の銃床側ビームスピア、もっと流行っていいと思います そして久々のハイザックカスタム、Z関連の二次創作では本編より出番が多い気がします、地味に愛され機種かと スクワイヤ、何だかんだで生き残る方に動ける子ですね...こりゃ他の媒体でも何やかんやで長生きするぞ サラミス、再出港叶わず撃沈...性ではありますが、かなCです! ワーウィックに回収されるスクワイヤ、こいつら...(笑) 計画通りの改修が出来ないまま戦場に放り出されるのは、GP計画の呪いなんでしょうか ちゃっかりEWACネモ退場、いや偵察機にあるまじき戦果の数々でした。R.I.P. 試験部隊の人間に時代遅れ扱いされるレストアMAのグロムリン君、ちょっとカワイソス まさか乗ってたのオーブ中尉じゃないスよね...? ゼダンの門でリハビリしてるはずだし 合流ポイント...あからさまな死亡フラグw 脇を使ったナギナタ攻撃も長物ならではですね 後回しにしてる話→日常 と、ボロボロでも察しがいいウィード少佐。アイバニーズとは違うのだよ、アイバニーズとは! 仲間たちの武器やデータで戦う展開の何と熱いこと!(さっき自分を殺しかけた武器とか言わないw) やはり最期はモノアイが死ぬワーウィックのマラサイ...しかし爆発しないですね、ジェリド機は欠陥品だったか(苦笑) 今回はお色直ししたガンダムの登場で〆、いよいよラストバトル?だぁ! 3章となるとついにZZ外伝が...?wktk 2.5章というのも気になりますね、もうSさんの焦らし屋さん!w お身体に気をつけて、続き楽しみにしてます! http://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1563897040/928
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