[過去ログ] 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
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718: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:22 ID:Q4XtGfBY0(18/34) AAS
「流石じいさまですわね」
 ドレイク大尉も乗り気の様である。
「しかし、ラムが口を割っていたら…?」
 薄々わかりながらも、ウィード少佐は聞かずにはいられなかった。
「勿論その時は交渉決裂。それどころか我々も嘘がバレますから…下手すればそのまま追撃が来て全滅でしょうな。情報も連中に渡ることになります」
 こともない風に笑いながらレインメーカー少佐が言った。
「ラムは大丈夫だよ!絶対何も言うわけない!」
 オーブ中尉が詰め寄る。
「まあ…何か漏らしてれば敵に動きがあるでしょうしね。それもないなら今のところは大丈夫でしょう」
 ドレイク大尉も口添えした。やるなら今しかない様だ。
省4
719: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:23 ID:Q4XtGfBY0(19/34) AAS
 全体ミーティングを始めようとしていたその時、敵艦であるアレキサンドリアから打診があったとの報告が入る。捕虜の取引である。ロングホーン大佐は唸った。会議室に招集された面々がざわついている
「あと少し遅ければこちらが先手を打ったのだがなぁ…。どうしたものか」
 皆顔を見合わせている。
「交渉にはナイト・レインメーカー少佐なる人物がこちらの拠点までランチで出向くとの事です。内容は…」
 側近の士官が報告を続ける。敵は攻勢に出るより捕虜の奪還を優先したい様だ。捕虜を引き渡せば一旦退くというが…。
「判った、もうよい。…捕虜からは情報を引き出せなかった。私も立ち会ったが、なかなか律儀な男の様でな」

「フォンブラウン市の状況はどうなっているんでしょうか?」
 ワーウィック大尉だった。防衛戦におけるMS隊の活躍は言うべくもないが、試作機に関しては今回も取り逃したと聞く。
「それだがな。経緯としては、脅されたフォンブラウン市側が港を開放した様だ…仕方あるまい。こちらの主力は一旦グラナダへ引き揚げている」
「裏側を死守出来ていなければ、あわや壊滅の危機だった訳ですな」
省6
720: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:23 ID:Q4XtGfBY0(20/34) AAS
「よし。では承諾の返事を送り、私はすぐに交渉に赴く。そうだな…ワーウィック大尉、君も同行したまえ」
「はっ」
 彼は一瞬驚く素振りをみせたが、すぐに従った。グレッチ艦長にも別で指示を与えねばならない。もう戦いは始まっているのだ。
 会議を解散すると、艦長へ次の指示を出し側近の士官にも交渉の場を整えさせた。ランチの入港なども考え、表のわかりやすい場を選んでいる。敵にコソコソと拠点を嗅ぎ回らせない為だ。
「大尉は百式で出迎えの準備をしておけ。防衛隊もいつもより多く表に出す。まあ、敵も何かしら護衛を付けてくるだろう」
「威嚇になりますでしょうか?」
「少しはな。何せ小隊ひとつ全滅させた機体だ」
「買い被りではありませんか」
 大尉がそういうと、2人で笑った。交渉の準備を進めながら、大佐達も会議室から退出した。
「そういえばそのスクワイヤ少尉達と会ったよ、医務室でな」
省7
721: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:24 ID:Q4XtGfBY0(21/34) AAS
 執務室へ入り、グラナダへ通信を行う。取り継がれるのを待ちながらモニターの前に座り、デスクを指先で叩いていた。
「…お待たせしました。ブライト・ノア大佐であります」
 一年戦争の英雄…。ホワイトベースの元艦長であり、今はエゥーゴの旗艦アーガマを任されている男だ。
「ごたついている所を申し訳ない…。アンマンのダン・ロングホーン大佐であります。ティターンズにしてやられましたな」
「ドゴス・ギアが制空圏へ入るのを阻止できませんでした。グラナダからの援軍が間に合えば…」
「間に合いませんよ。それも織り込み済みの作戦でしょう。…その敵の作戦について情報は何かしら得られましたかな?」
「どうも敵の指揮系統が不透明です。確かに伝えられるのはそれだけですね。そちらは?」
「今からこちらを襲撃した敵との交渉に入ります。捕虜を捕らえたものの、口を割りませんのでな。せめて取引材料にはなってもらわねば」
「何を悠長な!敵は現にフォンブラウンを抑えているんですよ!?」
「…君らがグラナダまで下がってこれたのは我々が基地を死守したからだ。自力で守り切れなかった君らにとやかく言われる筋合いはあるまいよ」
省7
722: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:25 ID:Q4XtGfBY0(22/34) AAS
「これはこれは…」
 レインメーカー少佐は、ランチから眺める敵の基地に思わずこぼした。着艦指示のあった正面の港には、複数のMSが整列していた。その中には例のバッタも見える。
 こちらもニュンペーを伴って基地へと着艦する。試作機故あまり見せびらかすべきではないが、他にまともに稼働出来る機体もない。また、敵に過度な警戒をさせない為にも軽装な機体の方が都合も良い。
『MSはここまでだ』
 敵パイロットの声。バッタに制止されたニュンペーが立ち止まる。
『ロックしていくが…絶対に触るなよ』
 ウィード少佐が釘を刺しながらコックピットハッチを開いた。まだ半人前の娘だが、今回の交渉もひとつ勉強になるだろう。
『後で難癖つけられてもたまらんからな』
 そう言い返し、バッタもハッチを開く。ノーマルスーツで顔は見えないが、2人は向き合う格好になっていた。

 ランチの着艦が完了し、レインメーカー少佐も敵地へと降り立つ。出迎えたエゥーゴの士官に案内されて施設へと歩いていく。その後ろを、ウィード少佐とバッタのパイロットが続く。
省8
723: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:25 ID:Q4XtGfBY0(23/34) AAS
 ロングホーン大佐が元の席に戻り、その側に先程のパイロットが立つ。ヘルメットを脱いだその顔には火傷の跡がある。向かい合う形で着席を促されたレインメーカー少佐の側にも、ウィード少佐が立っている。
「それで…。捕虜の引き渡しだったかな」
 大佐が左の片肘をつく。その横着さにウィード少佐が眉をひそめている様だが、レインメーカー少佐は無視した。
「ええ。彼からは何の情報も得られなかったでしょう?我々としては大事な仲間でしてね、確実に救出するには話し合いしかないかと」
「どうせ貴様らに直接聞いてもしらばっくれるのだろうがな。しかし、話し合いとはティターンズにしては平和的だ。それとも…戦う力も残っていないか?」
 大佐がほくそ笑む。
「それはこの交渉が決裂すればわかる事。フォンブラウンの様には無血開港の余地を与えぬかもしれませんが…何せ我々はティターンズですからな」
 レインメーカー少佐も笑顔で返した。

「そちらの一時撤退が条件か。ものは言い様だな。…仲間を返してください!逃げるのも許してください!…という風にも、聞こえるが」
 懇願する様な大袈裟なジェスチャーでこちらを煽ってくる。
省6
724: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:26 ID:Q4XtGfBY0(24/34) AAS
「…ふん、つまらん爺め。よかろう。これ以上は時間の無駄だ」
 そういって大佐は立ち上がる。
「今回は捕虜を引き渡す。その代わり、即刻この宙域から立ち去れ。猶予はない」
「わかりました。それまでに追撃でもしてこようものなら、我々もこの基地を全面破壊させていただく」
 少佐は嘯いたが、大佐はもうこちらを見てはいなかった。

20話 条件
725: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:27 ID:Q4XtGfBY0(25/34) AAS
「糞爺めが…!」
 退出したティターンズの連中が扉を閉めると、ロングホーン大佐は眉をひそめた。結局敵の要求を全て飲む形になった。
「大尉、追撃に出るぞ。やつらが宙域を出たら問答無用で叩く」
「艦長がバタついていたのはその準備ですか。しかし、敵の戦力も読めぬままでは?」
「そう、艦長には出港準備をさせていたのだ。敵の戦力だが…あの護衛機、例のテストを行っていた機体だろう?あれ以外に護衛につける機体すら無かったのだろうよ。
 牽制の為の部隊に別で増援を回せるほどティターンズも手は余っちゃいない」
「なるほど。であればすぐにでも叩けばよかったのでは?」
「アレキサンドリアに直接市街地を砲撃されれば只では済まん…やりかねん連中だ。とにかくアンマンからは引き離す方が先決と思う。ここから離れた場所でなら好きなだけドンパチしていい!さっさと行ってこい!」
「はっ」
 大尉が踵を返し、足早に去っていった。今頃他のパイロット2人も乗艦しているだろう。
726: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:27 ID:Q4XtGfBY0(26/34) AAS
 しばらくして、敵機がアンマンを出港したとの報せが入った。捕虜も取り返せて敵は満足だろう。
 入れ替わる様にしてアイリッシュ級が発進準備に取り掛かる様子を、サラミス改が入港してきた時と同じ場所から眺めていた。
「ティターンズ…。伊達にエリートを自称する訳ではない様だが、分別の無い連中が選民思想などと…片腹痛い」
 1人呟いたその時、グラナダからの通信を取り継がれた。ブライト艦長である。
「ロングホーン大佐だ。如何です?そちらは」
『別働隊が都市の発電施設占拠に動いています。これでティターンズも撤退せざるをえないでしょうね』
「流石は一年戦争の英雄ですな…。先日の無礼を侘びたい」
 昨日の今日にしては迅速な対応と言っていい。素直に大佐は感心していた。
『英雄などと…沈んだ艦の艦長ですよ。アンマン市はその後どうです?』
「今しがた敵の捕虜を開放しました。敵は撤退するところだが…こちらもこのまま逃がす気はありませんな」
省4
727: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:28 ID:Q4XtGfBY0(27/34) AAS
『それでは我々も出港致します』
 今度はアイリッシュ級のグレッチ艦長からの通信だった。
「ああ、じきにタイムリミットだ。奴らを叩きのめして凱旋してくれることを期待する」
『はっ』
 挨拶もそこそこに彼らは基地を立った。それを見送りながら、大佐は次の手へと思考を巡らせるのであった。
 フォンブラウンを抑え損なった以上、アンマンにこだわる理由もあるまい。しかしあのティターンズがこのまま引き下がるのであろうか。
 前回ブライト艦長が言っていたような敵の指揮系統の乱れというのも、気には掛かっていた。
 確かにフォンブラウン市の制圧は早かったものの、それに合わせたアンマン市強襲は幾らかお粗末なところもある。何よりその後の撤退も現場レベルでの対応にみえ、組織だった動きとは言えなかった。

 そんなことを考えている内にアイリッシュ級の姿は随分と遠くなった。防衛隊をこの追撃に割く余力はなく、単艦での追撃である。
 戦力的に不安がない訳ではないが、それでもやってもらわなければならない。
省3
728: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:28 ID:Q4XtGfBY0(28/34) AAS
「隊長!追撃に出るんですね」
 出港したアイリッシュ級のブリッジに合流したワーウィック大尉の顔を見たスクワイヤ少尉は気力に満ちていた。
「待たせたな。中尉の援護も期待しているぞ」
 少尉に笑いかけた大尉がフジ中尉の方へ振り向く。
「前線に出られないのが幾らか歯痒いですがね」
 フジ中尉はそう言いながらグレコ軍曹の隣の席でインカムの位置を調整していた。今回の作戦では中尉はブリッジに待機だ。オペレーターとして作戦指示を行う。
「中尉の分も私が動きますよ。だから私の分も頭使ってください」
「いや、少尉はもっと自分の頭も使ったほうがいいな」
「またそういうことを言う!」
 以前なら喧嘩の様に言い合うところだったが、不思議とお互いに冗談としてやりとり出来るようになっていた。和やかな2人をみて、大尉が意外そうな顔をしている。
省6
729: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:29 ID:Q4XtGfBY0(29/34) AAS
「少尉、フジ中尉とも少しは話せたか?」
 格納庫へ向かう途中、ワーウィック大尉が口を開いた。2人は移動しながらそのまま話し始める。
「もっと連携しないとこのままじゃヤバいって話を」
「その通りだな。君らの方からそういってもらえるとは思っていなかったよ正直」
 そういって大尉が頭を掻いた。
「絶対そう言われるって思いましたけどね!でも…大尉が来たからこういうことに気付けたのかもです」
「それなら私も着任した甲斐があるというものだ」

 それぞれのコックピットに乗り込み、出撃の時を待つ。まだ慣れない全天周囲モニターだが、敵は慣れるまで待ってはくれまい。
『準備はいいですか?』
 モニターにフジ中尉が映った。インカムを付けた彼を見るのは若干の違和感がある。
省9
730: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:29 ID:Q4XtGfBY0(30/34) AAS
 中尉の言うとおり、そこは目立つデブリのない視野の開けた宙域だった。隠れる場所はない。
『ここでやつらを殲滅出来れば、周辺の脅威はひとまず無くなるだろう』
 大尉が言った。索敵しつつ敵艦との距離を詰めていく。
「あのテスト機、本採用されると厄介ですね」
『それなりにコストは掛かってそうだが…どうだろうな』
「あのパイロットの腕がいいだけならいいんですけど」
『そうであってほしいな…噂をすれば!』
 敵艦から機体が出撃するのが見えた。2人は速度を上げ、敵機を追い始める。敵は母艦から離れ過ぎない距離を保ちつつ2人を引きつけていた。
「アレキサンドリアはどうします!?」
『今はMSを先に叩いてください!MSを剥ぎ取れば艦はデカい的ですからね。艦砲射撃でアレキサンドリアをこちらに引きつけておきます』
省2
731: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:30 ID:Q4XtGfBY0(31/34) AAS
「今日は完全な2対1…。ここで落とす!」
『手筈通り、スクワイヤ少尉から仕掛けてくれ。ワーウィック大尉はサポートをお願いします』
『了解した。連携すれば叩けない相手ではないさ』
「行きます!」
 マンドラゴラはコマの様に回りながら頭から敵へ突貫する。出撃前、フジ中尉達と作戦を立てていた。
 最大の脅威は今のところ敵の携行しているライフルだ。極めて速い弾速を誇り、急所に当たればただでは済まない。これを躱しながら接近する為に、まずは運動性に優れたスクワイヤ少尉が仕掛ける。
「見てからじゃ遅いんなら!」
 敵の銃口がこちらを捉えるよりも早く機体の軌道を逸らす。通常ならば相当なGが掛かるが、過剰なGも想定しているマンドラゴラのコックピットには、対策が入念に施されている。
 少尉の技術と掛け合わせれば少しの時間ならかき乱せると判断した。
 大尉の百式にも注意しながらでは到底追いつけるスピードではない。流れ星の様にバーニアの残光が尾を引き、その幾何学模様に翻弄された敵は足を止めた。
省13
732: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:31 ID:Q4XtGfBY0(32/34) AAS
 その時、敵機の熱源反応が異様に高まった。部隊に嫌な予感が走る。
『離れろ!こいつ…!』
 大尉の声とほぼ同時に敵機から光が漏れた。少尉達が退避行動をとったのも束の間、敵機は激しい閃光と共に爆裂した。強い衝撃が2人を襲う。
「うあああ!!」
 揺れる機体の中、強い光でホワイトアウトしたモニターに囲まれ、少尉は初めて恐怖を感じた。理屈ではなく本能が、忍び寄る死を感じ取っていた。目を瞑り両耳を塞ぐ様にして、少尉はただその球の真ん中で怯えるしか無かった。
 しかし、マンドラゴラは衝撃に耐え切った様だ。程なくして機器も復旧する。その作動音を聞いてようやく少尉は目を開けた。
『…自爆するとは。思い切りの良い』
 大尉の百式も無事な様だ。とはいえ機体の装甲はズタボロになっている。恐らくマンドラゴラも似たような状態だろう。
『2人とも無事ですか!?』
 フジ中尉が慌てる。
省7
733: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)13:33 ID:Q4XtGfBY0(33/34) AAS
今回はここまでです!
だいぶ一気に投下しました笑
正直言うとストックほぼ全てを出し尽くしたので、次はもう少し遅くなるかもです…!

ゆっくり読んでてください!!
734: ◆tyrQWQQxgU 2020/01/15(水)15:55 ID:Q4XtGfBY0(34/34) AAS
お待たせしました!pixiv更新しました!!
https://www.pixiv.net/novel/series/1235721

最新話まで全て更新済ですので、こちらもチェックお願いします!
735
(1): 2020/01/21(火)21:40 ID:cM4+NL5O0(1) AAS
お疲れ様です!

ロングホーン大佐...味方に毒を吐くし捕虜とは拳で語るし、明快に「ズケズケと踏み込んでくる男」ですねw
かといってただの無神経ではないし、生存フラグも死亡フラグも立てられる面白いキャラだと思います

ワーウィックはナギナタを握りつつメイ・ワンとの追いかけっこを笑い話にする辺り上手く前進してますね。
スギ艦長のような生き字引になってほしいものです

ニュンペー、百式改、マンドラゴラとカラフルな役者が基地前に揃ったと思えば自爆!あっけねぇ(失礼ながら苦笑)
まだまだ展開の読めない今シーズンですが、月面のみんなもSさんもご健闘を!
736
(1): 2020/01/22(水)18:23 ID:7ySi8vht0(1) AAS
アクシズ軍は登場するのかしら?
737
(1): 2020/01/22(水)19:28 ID:wOjmN8Fc0(1) AAS
本編だとメラニー会長の方からグワダンに出向いてたから
アクシズの使者がアナハイムに接触ということは無さそう
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