さよなら雨の日 その3 (460レス)
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451: ( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 2019/09/23(月)20:06 ID:LomllGLB0(1/5)
文化サイヤ人の時期なんで。

この作品を。

なんか作品に思い入れがある分、硬い文章になっちまったけど、自分はけっこういい加減に読んで書いているんで、話半分で。

ただこの「スキップ」は5回、6回じゃ効かないほどに通読しているんで、あと自分北村薫マニアなんで、そのぶん、なんか、うーん、わからん。
452: ( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 2019/09/23(月)20:09 ID:LomllGLB0(2/5)
スキップ

〇北村薫、匿名作家としての終着点+最終傑作

北村薫は、今では文学界の重鎮だけど、ある時期までは匿名作家だった。
匿名作家って言うのは、つまりプロフィールが謎、その「薫」と言う名前からも男か女かさえわからない。
そういう謎作家だった。
うん、2chで言う完全な名無しさん。

その北村薫が覆面を脱ぎ捨てるのが、この作品が発表される前後で、
それで正体が判明したのだけど、北村薫は高校教師を兼任しながら作家活動をしていた。

そしてそれ以後、専業作家として活躍し、賞としては直木賞と言う最高峰を受賞しているけど、
それ以上に「日常の謎」という、謂わば日常系の懸け橋となったところに、彼の意義があると思う。

同時に作家となったとともに、彼の作品も、うーん、日常が作家的なものとなって、
主人公の殆どが、編集者などの出版関係、あるいは作家に絞られていき、古典の解釈論とか作家論とかも出てくる。

象徴的なのは「円紫さんとわたし」シリーズで大学生のわたしが日常の謎を解いたデビュー作のシリーズが、
数十年のインターバルの果てに、「わたし」は編集者になって、そんで作家論のような謎解きをする。

そういう伏線はあったけど、ファンはやっぱり歓迎するよりも残念に思う人もいたと思う。
自分も、残念に思う方でした。

そういう風に、このスキップはその作家として北村薫の名を挙げたと同時に、
その匿名作家としての最後の名刺のように、自身の教師の経験を生かした作品になっている。

この「スキップ」の主人公は高校教師であり、同時に17才であり、舞台は高校生活。文化祭。
北村の描く精緻な日常のディティールは、教師としての経験がバックボーンとなり、リアルに鮮やかだ。
453: ( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 2019/09/23(月)20:12 ID:LomllGLB0(3/5)
また、北村は1949年生まれで、遅咲きの作家。
デビュー作「空飛ぶ馬」は1989年。

「スキップ」は1995年。
作中の主人公の桜木真理子は45才。
これは北村薫本人の人生経験を反映しやすい年齢だ。
そして、あるギミックで1964年のオリンピックあたりの年代を瑞々しく、「青春として」描くことに成功している。

反面、昔すぎる日常のディティールは今の読者にはわかりにくいところもある。
マニアックな部分もある。
ただ、かなり正確に時代を捉えていて、出典も的確なのが今ならわかる。

実際にこれを読んだ当時の自分は、古くてあまり共感できないから、ちょっと苦手な部分はあった。
レトロブーム的な、懐古趣味に見えてしまったところもあった。
だけど、25年の時を飛んだ一ノ瀬真理子(1995)から、更に24年を経た現代(2019)、その時間的な古さはむしろ気にならなくなった。

今見ると、当時の時代と言うのが見事に描けているのが分かる。
もちろん「その小説が刊行された時の今」の時代も含めて。

更に現代では、ネットがあるので、ある程度、元ネタの動画や知識に当たれるのも大きい。

そりゃ、植木等の「こりゃまた失礼しました」とかシャボン玉ホリデーとかオグラスとか、
文字だけを追うと、うーん、よくわかんないところもあると思う。特に最初辺りが。

でも、再読したときに、そういうのネットで当たってみると、そゆのがちょっとだけ捉えやすくなると思う。

こりゃまた失礼しました。!!!ドン !!
https://www.youtube.com/watch?v=omaWAZ7cY_U

(これはカラーだけど、当時は白黒)

力道山×ヘイスタック・カルホーン
https://www.nicovideo.jp/watch/sm18026738


それとやっぱり、25年の時を飛んだ一ノ瀬真理子から、更に25年も飛ぶ今は面白いタイミングだし、
ちょうどまた東京オリンピックがあるじゃないですか。

前の東京オリンピックってふつうの一般の人から見たらどういうものかって、なかなかわからないと思うんだけど、
それが活写されているんで、そこらへんで今が読み時なんだと思う。
454: ( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 2019/09/23(月)20:52 ID:LomllGLB0(4/5)
〇だらしない「日常」の羅列ではない、綿密に組み立てられた構成の上での日常

うーん、今では日常系という言葉が氾濫していて、
そりゃ北村を読まなくても日常系だって言うアマチュア作品も一杯だろうし、
アニメとか漫画とか使われ過ぎていて、ちょっとダサイというかネガティブなイメージを持つ人もいると思う。

(えへへ、たとえばアスキーアートで、意図のわかんないつまんない日常の話の文章を読ませる人いるじゃないですか。ここに)

でも、このスキップは日常を描いているけれど、それらがすべて一つのテーマ、一つの結末へと収斂する。
それはあからさまに謎解きはされないから、似たような「なんとなく日常」な印象を持つかもしれないけど、そうじゃないです。

一見、傍流に見える「いたずら電話」も、読了後に「なんであの人の名を借りて先生にあんな電話をしたのか」と思うと、あらあらと深みが顔を出す。

無駄に思える福助のエピソードも、自分の見えてないおじさんの醜さ、と「時と人」というメインテーマにかかってるし、
それはオチの気づきを支えるちょっとした膨らみになっている。

学校生活についても、桜木真理子は生徒たちを導き、共に学び、歩んでいく。
バレーボールの大会があれば、なんとも味のある劇中劇も展開し、朗らかな生徒たちの笑顔とそれぞれの苦悩がある。
でも、主人公は生徒たちと同じ舞台には立てない。
彼女はバレーコートには立てないし、演劇のステージには立てないし、父母との生活は出来ないし、バンド演奏には加われない。
彼女は17歳のはずなのに、それらを見守らなくてはいけない、少し外の高いところにいなければならない。

「やらせ」は出来ないのだ。

青春が光輝くとともに、その背後に流れる時の切なさ。

もう一つ。
たぶん読者の多くは「一ノ瀬真理子=桜木真理子」に感情移入しながら読むだろうし、それが作品の意図なのだろう。

ただ、これは一ノ瀬真理子が父と母の家族、友達を一瞬で失い、そして獲得する話であるとともに。
桜木真理子と言う妻を失って、それでもなんとか向かい合って、また振り向いてほしい夫の奮闘でもあるし、
母を失って、そして17歳の真理子となんとか歩もうとする娘の話でもある。

そういう風に、いろんな視点からも楽しめるし、そこらへん抜かりなく文脈から味わえるように立体的に構成された物語です。

日常系でありながら、ミステリよりも技巧的な構成やギミックに満ちた作品でもある。(いや、違うか)

とにかく、ストーリーの流れを味わえれれば、エピローグの最後の数行に、ものすごく感動、と言うと安っぽいが、心がじんとすると思う。

小説の最後に書かれた本作品を象徴する北村薫の言葉を引用して、紹介を閉じよう。(スキップと言うタイトルについて)

しかし、いうまでもないことながら、命名は作者にとって必然のものである。
『スキップ』は〈早送り〉であるとともに、主人公の、仮に歯を食いしばろうと、失われることのない鮮やかな足取りに他ならない。
動かせない。了とされたい。
455: ( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 2019/09/23(月)20:55 ID:LomllGLB0(5/5)
なんか書評っぽい見た目になってしまったけど、そういうの出来るような文学部系じゃないし、読書経験は無いっす。

なんか感想が固くなってしまう、それは「スキップ」って小説の持っている初々しい固さ故というのもあるだろうし、自分は思い入れがあり過ぎて分析し過ぎてしまうのも。

そこらへんは、なんか残念な紹介なんだな。ネタバレもちょっと入ってるし。
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