【荒らしポチひとしは】PinkySpice2スレ目【スレ出禁】 (198レス)
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26: 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2023/12/12(火)09:08 AAS
 白井道也しらいどうやは文学者である。
 八年前まえ大学を卒業してから田舎いなかの中学を二三箇所かしょ流して歩いた末、去年の春飄然ひょうぜんと東京へ戻って来た。流すとは門附かどづけに用いる言葉で飄然とは徂徠そらいに拘かかわらぬ意味とも取れる。道也の進退をかく形容するの適否は作者といえども受合わぬ。縺もつれたる糸の片端かたはしも眼を着ちゃくすればただ一筋の末とあらわるるに過ぎぬ。ただ一筋の出処しゅっしょの裏には十重二十重とえはたえの因縁いんねんが絡からんでいるかも知れぬ。鴻雁こうがんの北に去りて乙鳥いっちょうの南に来きたるさえ、鳥の身になっては相当の弁解があるはずじゃ。
 始めて赴任ふにんしたのは越後えちごのどこかであった。越後は石油の名所である。学校の在ある町を四五町隔てて大きな石油会社があった。学校のある町の繁栄は三分ぶ二以上この会社の御蔭おかげで維持されている。町のものに取っては幾個の中学校よりもこの石油会社の方が遥はるかにありがたい。会社の役員は金のある点において紳士しんしである。中学の教師は貧乏なところが下等に見える。この下等な教師と金のある紳士が衝突すれば勝敗しょうはいは誰が眼にも明あきらかである。道也はある時の演説会で、金力きんりょくと品性ひんせいと云いう題目のもとに、両者の必ずしも一致せざる理由を説明して、暗あんに会社の役員らの暴慢と、青年子弟の何らの定見もなくしていたずらに黄白万能主義こうはくばんのうしゅぎを信奉するの弊へいとを戒いましめた。
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