[過去ログ] 【艦これ】赤城「……さて、と」提督「昔話を、しようか」 (1002レス)
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977: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/29(月)23:54 ID:3mslNw6q0(1/5) AAS
月夜に。

女性がピアノを弾いていた。
その十指は鍵盤の上を情熱的に駆け回り、音を飛ばす。

奏でる旋律は攻撃的で、心休まることがなく。
それはどちらかというと、選曲よりも演奏に起因していた。

静かな、しかし獰猛な笑みを浮かべながら鍵盤を叩く。
まるで、己の実力を誇示するかのような演奏。

そんな彼女を、無言で見守る影があった。

曲を一つ終えた時、その影に女性は気付き、話し掛ける。

赤城『……提督?いつからいらしたのですか?』

振り返り、不敵な笑みを浮かべる赤城。

提督『ついさっきだ。……続けてくれ。
聞きたい』

提督は持っていたグラスを傾けながら、演奏を促す。

赤城『はい……いい月夜ですし……
月光でも弾きましょうか』

先程とは打って変わって、静かな、ゆったりとした演奏が始まる。

そこには先ほどの力強さは無く。
かと言って、ただ静かである訳でも無く。
情緒的に、感情的に音符が紡がれていた。

提督は目を瞑って聞き入る。

978: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/29(月)23:56 ID:3mslNw6q0(2/5) AAS
重く、哀しげな第一楽章が終わり、リリカルな第二楽章に移り。
暗い雰囲気から解放されたのも束の間、暴力的な第三楽章が始まる。

そんな、二転三転する音の表情を楽しんでいる間に演奏が終わり。

拍手。

提督『良い。良かった。
物語性があったな、うん。
実に情緒的だった』

感慨深そうに言う提督に、満足気な赤城。

赤城『うふふ。良かった』

提督『随分と成長したものだ。
俺が綺羅綺羅星を教えていた頃が懐かしい』

赤城『そんな、ピアノに触って間もない頃と比べないで下さい……』

提督『それもそうか』

赤城はピアノから立ち上がり、提督の側へと歩み寄り。

赤城『それ、少しいただけますか?』

提督が片手に持ったグラスを見つめて言う。

提督『あん?これは酒だぞ?
お前、明日はーー』

提督が言い終わらない内に、赤城はひったくるようにしてグラスを奪ってしまった。

赤城『んっ……』

そのまま口をつけて、琥珀色の液体を一気に飲み干す。

提督『おまっ……』

赤城『うふふ』

提督『……明日は主張派の連中が集まる大事な演習だろう。
酒を飲んでる場合じゃないぞ……』

赤城『だからですよ。演習だから昂ぶってしまって』
979: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/29(月)23:57 ID:3mslNw6q0(3/5) AAS
提督『そういう時はホットミルクにしておけ、ホットミルクに……』

赤城『あなたがホットミルクを飲んでいたら、それが良かったんですけど』

提督『……なんて奴だ……』

赤城『あら。失礼しちゃいますね。
あなたが育てたんですよ?うふふ』

ニコニコとしている赤城に、提督は呆れて嘆息する。

赤城『ーーそもそも、私が遅れを取ることなど、あり得ません』

提督『……』

赤城『私はあなたの、最高の空母……
あなたの最高の艦娘ですよ?』

提督『早速酔ってやがる……』

赤城『うふふ。事実ですから……』

赤城は提督に更に近寄って、その腕に絡みつく。
胸を押し当てるようにして。

赤城『ね?提督?』

提督『……ん?』

赤城の吐息が提督の耳朶を撫でた。

赤城『私にはあなたが必要なんです……
あなたも、私が必要でしょう?
だからーー』

蠱惑的な笑みと共に、提督の頬へ手を添えて。

赤城『ーーもっと私を育てて……もっと私をあなた色に染め上げてーー』

囁く。

赤城『私を、あなたのモノにして下さい』

私をあなたの特別にして、と。
訴える。

見つめ合い。

やや間を置いてから。

提督『……お前はーー』

提督が何かを言おうとした時。

980: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/29(月)23:59 ID:3mslNw6q0(4/5) AAS
加賀『……赤城さん?』

不機嫌そうな声と共に、加賀が現れる。

赤城『……あら。加賀さん!』

それに対し、笑顔で振り向く赤城。

赤城『……その服装は……訓練上がりですか?』

加賀『はい……少し。
赤城さんは……ピアノ、ですか』

赤城『ええ。
……ごめんなさいね。
訓練をしていると知らなくて。煩かったかしら』

加賀『いえ、そんな事は有りませんでした』

赤城『それは良かったわ。
……んー……明日も早い事だし、加賀さんと部屋に戻ろうかしら』

提督『ああ。とっとと寝ろ』

酔っ払いめ、と手のひらでしっし、と赤城を追いやる。

赤城『ああっ……いけずぅ……化けて出ますよ?』

よよよ、と泣き真似をする赤城。

提督『かかってこい』

赤城『言いましたね……枕元に立ってますからね……』

提督『ああん?布団に引きずり込むぞ』

赤城『いやらしい……』

提督『嬉しそうだな』

赤城『よ、喜んでなんかませんよ!』
981: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/29(月)23:59 ID:3mslNw6q0(5/5) AAS
加賀『……あのっ!』

提督『ああ、すまんすまん……ほれ、さっさと部屋に戻れ』

赤城『ごめんなさいね、加賀さん……行きましょうか』

加賀『あ、いえ……私は……』

赤城『?』

加賀『提督に少し、ご相談が……』

赤城『……あら、そうでしたか。
では、私は先に部屋に戻ってますね。
おやすみなさい、提督』

提督『おやすみ。良い夢見ろよ』

赤城『うふふ。では』

そうして赤城が去り、加賀と提督が残された。

提督『気が利かなくてすまんな』

加賀『いえ……』

提督『……で、どうした?』

加賀『……赤城さんは……多才ね……』

提督『まぁ、そうだなぁ……』

加賀『……』

提督『……なんだ、そんな顔をして』

加賀『少し。
……あの人がピアノを弾いて、書を読んで……
教養を高めている間も私は戦闘訓練を重ねて……努力、している筈なのに……』

提督『……』

加賀『それでも、私はどんどん離されていって……
もう、あの人の足元にも及ばなくなっている……情けない話ね』

自嘲気味に笑う加賀。
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