[過去ログ] 【艦これ】赤城「……さて、と」提督「昔話を、しようか」 (1002レス)
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882: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/17(水)09:56 ID:QE8q0Vkz0(1) AAS
英語ベラベラ喋ってるときの金剛に反応してるのが翔鶴姉だけなのも好き
883: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:20 ID:TF1bkh/10(1/18) AAS
サセン島


提督「やっと帰ってきたな……
長い2日間だった」

足柄「ふわぁ……ねむーい」

榛名「提督、お手を……
危ないですから」

提督「あ、ああ……すまん。
迷惑をかける」

榛名「ふふ。榛名は大丈夫です」

鳳翔「……」

雷「もう!しっかりしてよね、提督!」

提督「す、すまん……」

隼鷹「で、今夜は酒盛りなんだろ?
勝ったし!」

提督「……まぁ、そのつもりだが」

隼鷹「うっひょう!」

提督「お前それ、北上から移ったな……」

884: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:21 ID:TF1bkh/10(2/18) AAS
そうやってワイワイと騒ぐ集団を。

不知火「ーー皆さん、お帰りなさい」

不知火が出迎えた。

提督「ーーただいま。万事変わりないか」

不知火「はい。大丈夫です……
其方は如何でしたか」

提督「無論、勝利だ」

不知火「本当ですか!
あの18戦隊を下すとは……流石です。
所で……何故、杖を?」

提督「ああ……少しゴリラに襲われてな……」

不知火「南方基地にはゴリラが棲むのですか……!恐ろしい……」

隼鷹「……」

提督(……サセン島のゴリラなんだがな……)

提督「まぁ、とりあえず入ろうか」

885: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:22 ID:TF1bkh/10(3/18) AAS
………
……



数時間後、食堂


提督「それでは、勝利を祝ってーー」

「「「乾杯!」」」

隼鷹「イェー!」グビー

足柄「フゥー!」グビー

榛名「やりましたぁ!」

鳳翔「間に合わせの料理ですがーー」

雷「ーーざっくりと簡単にね!」

提督「ありがとう、二人とも。
いただこう」

祝宴が始まる。

隼鷹「いやぁー!
たいしたこと無いな18戦隊!
アタシ戦ってないけど!」グビグビ

不知火「何ですかそれ……」

隼鷹「聞いてくれよ!
足柄が一人でゴッさんを倒したんだぜ?!」

不知火「ゴッさん……件のゴリラでしょうか?!」ガタッ

隼鷹「ちげぇーよ!金剛さんだよ!」

不知火「ああ……一人で倒したのですか?足柄さん」

足柄「ンな訳!
榛名が痛めつけて、鳳翔さんが突撃して、アタシが美味しい所をチューチューしただけよ」グビー

不知火「全然状況が読めませんね……
でも、手負いとは言え、戦艦を仕留めたのは見事、ですね。
金剛さんはかなりの手練れですし」

886: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:23 ID:TF1bkh/10(4/18) AAS
隼鷹「あとあと、鳳翔さんが翔鶴さんを完全撃破したんだぜ!」

不知火「え?それは……凄いですね。
翔鶴さんは、南方でも中々の実力者であった記憶が……」

鳳翔「そ、そんな完全撃破だなんて……
提督の指示通りに動いただけですから」

隼鷹「あと榛名が、ペーペーとは言え、駆逐艦と重巡をぶちのめしたぜ!」

不知火「そうですか」

榛名「……なんか私だけ素っ気なくないですか?!」

足柄「まぁつまり、全部提督の手柄よ!」

不知火「流石ですね、提督」

提督「そいつらは酔ってる。言っている事を間に受けるな。
俺は今回、特に何もしていない」

鳳翔「そんな事、ありませんよ」

榛名「わ、私が敵に接近出来たのも提督の作戦ですよ!」

不知火「……だ、そうですが?」

提督「んなこたぁない」

887: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:23 ID:TF1bkh/10(5/18) AAS
足柄「……てかさぁ、何で提督飲んでないの?
飲みなさぁい!」

提督「おまっ……やめっ……
アルコールが腰に響くんだよ……!」

足柄「大丈夫!痛いだけよ……!」

提督「何が大丈夫なんだ……!」

足柄「隼鷹!抑えなさい!」

提督「隼鷹!動いたらお前は半年間酒抜きだぞ!」

隼鷹「くっ……すまねぇ足柄……
……アタシにゃ、無理だ……」

足柄「ちぃぃぃ!雷ちゃんは?」

雷「はにゃ?」

足柄「ダメね酔ってる!」

提督「馬鹿め……
あいたたた……腰が……」

足柄「え?だ、大丈夫?」

提督「大丈夫だ。暑いと、少しな。
厠に行ってから夜風に吹かれてくるよ」

足柄「うん……」

提督「シュンとするな。お前のせいじゃない。催しただけだ」

足柄「しょ、食事中に汚いわよ!」

提督「ははは、すまんすまん」

ワシャワシャと頭を撫でる。

榛名「ご一緒します!」

不知火「……あなたは殿方の手洗いについて行くつもりですか……」

榛名「……え?いえあのーー」

提督「幽霊が出たら、その時は頼むよ」

そう笑って提督は立ち上がり、去っていった。

888: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:24 ID:TF1bkh/10(6/18) AAS
榛名「……何故か、私が提督のお手洗いに着いて行きたかった変態のように!」

不知火「皆知ってますよ」

榛名「何をですか?!
なんか私の扱いがエグくないですか?!
もう良いです、榛名、飲みます!」グビー

隼鷹「いよっ!いい飲みっぷり!」

足柄「……いやぁ、失敗したぁ」

隼鷹「どうしたぁ」

足柄「提督が飲んでなかったからぁ。
強要するつもりは無かったんだけどなぁ……」

隼鷹「カンケー無いっしょ。またすぐ戻って来るって。
そんな器の小さい人じゃないよ」

足柄「うー……」

雷「所で鳳翔さん?
飲み過ぎじゃない?」

鳳翔「……?これはお水ですよ?」グビー

雷「黒霧島って水の銘柄じゃないと思うの……」

隼鷹「すげぇ飲んでんな……」

足柄「あらあら、鳳翔さん。
機嫌が良いのね」

鳳翔「今回の勝利は、本当に嬉しかったですから……
……美味しいですね、この大根」もきゅもきゅ
889: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:25 ID:TF1bkh/10(7/18) AAS
足柄「そうね……
やっぱり鳳翔さんの翔鶴さん撃破はデカかったわね……大根ちょーだい」

鳳翔「どうぞ。
空母として勝ったのなんて、一体いつぶりでしょうか。
柄ではありませんが……血湧き肉躍りましたよ、ふふ。
これも、あの方のお陰ですね」

足柄「そうかも、ね」

隼鷹「……そういや、提督が来てから結構経つよなぁ」

足柄「そうねぇ……早いものね……」

隼鷹「始めはまぁ、印象悪かったなぁ……
酒瓶有ったら殴るとか言ってたぜアタシ。うはは」

足柄「あたしなんて、初めての夜間哨戒で10分毎に連絡して一晩中起こし続けたわよ」

隼鷹「うわっ……そんな事してたのかよ……」

足柄「今思えば、よく毎回毎回通信に出たわね……提督」

隼鷹「あの人らしいや」

鳳翔「私達を光らせる、なんて事も仰ってましたね。
ふふ、懐かしい……」

足柄「あー……あったわねー……」

鳳翔「なんだか、もう、達成されたかのような気分ですよ……ひっく」

隼鷹「待った待った!アタシがまだだぜ!」

足柄「そういえばアンタ、観戦してただけだったわね……」

隼鷹「次はアタシがエースだよ!」

鳳翔「相違ありませんね、ふふふ。
杯が空ですよ。お二人ともどうぞ」コポコポ

足柄「あら、ありがと」

隼鷹「お!ありがとう!」

鳳翔「あなた、最近はお酒お酒と言わなくなりましたものね……
良いことです」

隼鷹「いつでも飲みたいけどな!うはは」グビー

890: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:26 ID:TF1bkh/10(8/18) AAS
足柄「提督が赴任して来てから、外面の変化よりは……
内面の変化が多い気がするわ。
今回の演習も、どちらかといえば地力で戦ったし」

鳳翔「確かに、そうかもしれません。
なんと言うか……何かを考える事が多くなったような……
今までは考え無かったような事を……」

隼鷹「そうなのか?」

足柄「……アンタはずっと艦載機訓練してたじゃない」くいっ

隼鷹「確かに!
しかもまだ発揮出来てねー!」

鳳翔「もうすぐですよ、もうすぐ……うふふ……」ぐいっ

雷(皆グイグイいくし……これってほんとに水なのかしら?)ペロッ

雷「辛っ……やっぱ焼酎じゃない……」

鳳翔「あら、雷さん?
欲しいのでしたらお注ぎしますよ」ドボドボ

雷「ちょっ……あっ……ああああ……」

隼鷹「ひっ……
ビールジョッキに焼酎……」

足柄「完全に酔っ払ってるわね……」

隼鷹「んで……あっちはあっちでーー」チラ

891: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:27 ID:TF1bkh/10(9/18) AAS
榛名「うぇぇぇぇえん!榛名は、榛名は提督に拾っていただけて幸せですぅ……
はづじょうりです……」ビエーン

隼鷹「榛名が号泣してる、と」

不知火「何泣いてんですか。
蹴りますよ」ゲシゲシ

榛名「痛いです痛いですっ!
て、提督に言いつけますよ!」

不知火「どうぞ」

榛名「ぃやぁ!ううー!」

不知火「威嚇しないで下さい。
可愛くないですよ」

榛名「酷い……提督ぅ!」

不知火「うるさいっ」ゲシッ

榛名「わぁぁぁぁぁん!」ビエーン

隼鷹「うわぁ……不知火も酔ってるし……カオスかよ……」

雷「ちょっろ!じゅんよー何やすんれんのよ!飲みなしゃい!」

隼鷹「げぇっ!ゾンビかよ!
……や、やめて!それは飲めない!
イッキは死ぬ!死ぬゴボグバッ」

足柄「ひぃっ……
あー……あたしちょっと用事を思い出したわ……」ソロー……

「「「……どこへ、行くんですか?」」」

イヤッ……ギャァァァァァーーー……

892: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:28 ID:TF1bkh/10(10/18) AAS
………
……



執務室


提督「悲鳴がここまで聞こえてくるぞ……
随分と楽しそうだ」

提督は夜風には当たらずに一人部屋に戻り、不在の間に溜まった仕事をこなしていた。

提督「……」

演習があって。
太郎くんと会って。
祝勝会があって。
艦娘達が楽しげで。

どうしても昔の事を、思い出してしまう。
かつて在りし日々。

今更考えても仕方の無い事だ。
だけれど。

提督「……心が、痛いなァ」

提督は耐え切れず、逃げ出したのだ。
記憶から。現実から。

仕事が溜まっているからと自分に言い訳して。
たいしたことの無い腰痛を艦娘に言い訳して。

提督「いやいや……
やらねば為らぬ事は山積しているさ」

戦いは近いのだ。
そう自分に言い聞かせて、辛い思考を振り払う。

だが。
カッチコッチと鳴る時計の音が、紙の上をペンが滑る音が、やけに大きく耳に響いた。
893: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:28 ID:TF1bkh/10(11/18) AAS

……
………


どれ位仕事に没頭していただろうか。
提督の集中は、部屋への来訪者によって途切れた。

足柄「お疲れ様」

そう言って、足柄は冷たい水を提督に差し出す。

提督「……お前か。ありがとう」

足柄「随分と淀んだ夜風がお好みなのね」

提督「寒いのも腰には良くないからな。
今、何時だ」

足柄「とっくに夜中を過ぎているわ」

提督「そうか……そんなに経っていたか。
通りで仕事が進む筈だ。
他はどうした?」

足柄「皆潰れて寝てるわ。……榛名だけ居なかったけれど
あたしも潰されて、さっき目が覚めたから」

提督「お前らは毎回毎回潰し合いをしているな……
榛名は……部屋か?
まぁ大丈夫だろう」

苦笑してため息。

足柄「あなた、いつも大量の書類抱えてるわよね。
それでいっつも夜遅くまで……
言ってくれたら手伝うのに」

提督「何、それには及ばない。
実は……俺は太陽が苦手なんだよ。
夜のが落ち着くのさ。
だから大丈夫だ」

足柄「何よそれ……吸血鬼か何かなの?」

提督「はっはっは。まぁ、そんな所だな」

足柄「あら嫌だ。血を吸われるのかしら」

提督「艦娘に噛み付いたら歯が折れそうだな」

苦笑する提督に溜息。
894: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:29 ID:TF1bkh/10(12/18) AAS
足柄「……ねぇ。教えて欲しい事があるの」

提督「ん?なんだ」

足柄「私達は……艦娘は……何のために、戦うの?」

提督「……」

足柄「昔、聞いたこと覚えてるかしら」

提督「……何故、人間が艦娘を恐れるか、と言う疑問だったか」

足柄「そうよ。よく覚えてるのね。
……私は、人間に疎まれるのが嫌だった。
人間の為に戦っていたのに」

提督「……」

足柄「それが嫌になって、人間に反抗していた。
北ではね。
ここにあなたが来た当初も、結構嫌がらせしたのを思い出したわ」

提督「……」

足柄「でも……でも、あなたは……
私達は兵器じゃないって言う。
私達は艦娘だって。
心があるって」

提督「……」

足柄「あなたが言うように……艦娘が人間の兵器じゃないなら……
私達は、何の為に……戦ってるの……?
何の為に、命を削るの?
わからなく、なるわ……」

提督「……」

足柄「ねぇ……教えてよ、提督……」

提督「……」

提督は無言を貫く。
いくばかの時間が経過し。
不安を煽られた足柄が言葉を発する。

足柄「……提督?」

895: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:30 ID:TF1bkh/10(13/18) AAS
その瞬間、提督は無言で、勢いよく机から立ち上がった。
足柄と目を決して合わせないようにしながら。
ガチャン!と大きな音がして、足柄がビクつく。

足柄「な、何……?」

まさか怒らせちゃった?という思いから、疑問が思わず口をついて出た。
しかし、それを提督は無視し、肩を怒らせたまま、異様な程静かに、しかし確かに、足柄に近づいて来る。

足柄「何?……何なの?怒ったの……?」

提督はそれも無視。
顎を引いて、歩きながらも視線は決して合わせない。

足柄「い、嫌よ……あなた、怖いわ……」

いよいよ不気味に思い、足柄は弱々しい声を発してしまう。
今、この人が何を考えているのか全くわからない。
理解できない故に、恐ろしい。

無意識に足が後ずさりし、いつしか足柄は壁際まで追い込まれていた。
気がつくと、至近距離に無言の提督。
肉薄し、もはや逃れられない。

突然。

提督「ーーこれがァ!!」

提督が怒鳴り、足を思い切り踏み鳴らし、足柄がもたれていた壁を殴る。
あまりの音量と恐怖に身がすくみ、足柄は動けない。

まさに壁ドン。

提督の顔は、足柄が少し顎を前に出せば唇同士が触れ合うような距離にあった。
しかし、ロマンチックさは微塵も無い。
その相貌は先程とは打って変わり、足柄の目を上から見下ろすようにして、しかし真っ直ぐに見つめている。
その視線は恐ろしく冷たくて。

足柄「いやっ……」

怖い。純粋に怖い。
その恐怖心から、足柄はギュッと目を瞑り、声を上げた。
何か酷いことをされる予感がする。
事態に備えて筋肉が収縮し、身が縮こまった。

が。

提督が足柄にした事は、優しく頬を撫でる事だけだった。
896: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:31 ID:TF1bkh/10(14/18) AAS
そして、言う。

提督「……これが、脅迫の手法だ」

足柄「……?」

そっと目を開けた足柄の頬をさする。
その瞳には涙が溜まっているように見えた。

提督「人間が考えた脅迫のメソッドだよ。
視線を合わさず、言葉は無視して、不気味な程静かに近寄り。
肉薄してから、大きな音、暴力と共に強い圧迫感を相手に与える」

足柄「……」

提督「足柄。
お前たち艦娘は、純粋で、無垢で、善良だ。
……それに対して、人間はこんな事ばかり考えている。
残念ながらな」

先程の冷たい瞳はもう無く、いつも通りの温かい視線を足柄は感じる。
しかし提督の言葉は依然厳しく。

提督「他を蹴落とす、陥れる、操作する事ばかり。
人間がどれだけ薄汚く、愚かで、先見性が無く、醜い存在か」

足柄「……」

提督「……なぁ、足柄。
何かがわからない事は、恥ずべき事しゃあない。
それは思考の切っ掛けに過ぎん。
思考する事は即ち罪では無い」

897: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:33 ID:TF1bkh/10(15/18) AAS
提督「……なぁ、足柄。
何かがわからない事は、恥ずべき事しゃあない。
それは思考の切っ掛けに過ぎん。
思考する事は即ち罪では無い」

提督「だが、人間は無知に付け込もうとする下衆でな。
パスカル曰く、偽りの知識を恐れよ、とある。
……お前は偽りの知識に侵食されているぞ」

足柄「……」

提督「艦娘は戦う為に生きてるんじゃない。
生きる為に戦うんだ。
自身の生命を脅かす存在から、自身を守るために」

足柄「……」

そこまで言ってから、提督は足柄を壁際から解放した。

提督「……すまないな……怖がらせた」

足柄「……や、やりかたってもんが、あ、あるでしょ……」

すっかり縮こまってしまっていたせいか、声が震える。

提督「やっぱりお前は……純情だな」

足柄「……ばか」

別に、あんたにやられたから怖かっただけよ、と心の中で呟く。
他の人間にこんな弱みは見せない。
足柄はプクーと膨れた。
898: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:34 ID:TF1bkh/10(16/18) AAS
足柄「でも、あたし達は人間の手によって作られた……のよね。
じゃあ、やっぱり人間の道具、じゃないのかしら」

提督「……例えばーー
ロックは人格を、理性的で、自我があり、思考する知能を持つ存在と定義した。
その意味では、お前たちには人格があるとは思わないか?」

足柄「何……?岩……?
……でもまぁ、言ってる事はわからなくは無いわ。
あるんじゃない?人格」

提督「そこでカントが言ってるのさ。
モノが、その特性においてのみ価値が評価されるのに対して、人格はそのものに掛け替えの無い価値があると」

足柄「……はぁ?てかさっきから誰?」

提督「ふむ……
兵器は変えがきく物だ。だが、艦娘はそうじゃないな。
足柄は2人も居ない。
そうだろ?」

足柄「……まぁ、あたしが2人も居るわけ無いわよね」

提督「まずその時点でお前達は兵器と異なる、と俺は考える。
人格の有無が条件であって、そこに出自は関係無い。
大体、人間も人間から発生する」

899: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:35 ID:TF1bkh/10(17/18) AAS
足柄「なるほど……?」

提督「ならば、艦娘が人間に作られたから云々なんてのは、人間に都合の良いバイアスでしかない。
自分達が兵器であると、艦娘は人間によって信じ込まされている訳だ。
……まさに偽りの知識だな」

語り終え、ふぅ、と溜息をつく。

足柄「……そっか……」

足柄は、何か思うところがあるのか、黙り込んで考えていた。
その足柄に、言う。

提督「ーーで、だ。
これまでの話を鵜呑みにするようでは、いかんぞ」

足柄「はい……?」

提督「俺の持論が真理であると、誰が保証した?
そもそも、難解な言葉を多用して事実を湾曲してるんじゃないか?
俺の持論こそが偽りの知識である可能性もあるんじゃないのか?」

足柄「えぇ……ややこしいわね……」

提督「ややこしいからと、考えるのを止めるなよ。
考えて、自分で判断するんだ」

足柄「……あなたの言う事を信じてはダメなの?」

提督「ハッ!もっと用心しろ、足柄。
俺は確かにお前達を愛しているが……
俺もまた、薄汚く、愚かな人間の一人だと言う事を忘れるな」

足柄「っ……」

提督「明らかな事は、艦娘は生きていて、思考できると言う事だけだ。
万象を疑え、足柄」
900: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/18(木)21:39 ID:TF1bkh/10(18/18) AAS
ここまで


本当はカントとロックでは人格の定義が違ったりするそうですが……ごった煮です

先日の余計な予告、失礼しました……
901: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/18(木)21:44 ID:z7gHD5hwo(1) AAS
乙です
怯える足柄さん可愛過ぎる
不知火も久々だな〜
902: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/18(木)21:45 ID:Zm+cSFrLO携(1) AAS
乙です
903: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/18(木)22:09 ID:f591/p790(1) AAS
つまり人と戦えることにたどり着いた赤城さんたちは提督の持論の先駆者か
904: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/19(金)01:07 ID:xKK6V4pqO携(1) AAS

実は榛名がとんでもないことしてたりして
905: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/19(金)01:38 ID:O4faRLjSo(1) AAS
はい!榛名は変態です!
906: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/19(金)03:33 ID:Iw8h/wrW0(1) AAS
乙です 榛名かわいいんじゃあ〜 あと不知火久しぶりだ
907: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/19(金)03:42 ID:mnFZ1Qkw0(1) AAS
ここの榛名酔っ払ってるときにうっかり上な口も下の口もお漏らししそうで…
908: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/19(金)06:43 ID:12DWsZZb0(1) AAS
あぁ^〜足柄が可愛すぎるんじゃあ^〜
909: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/19(金)09:04 ID:0fDe8PVlo(1) AAS
足柄さんヒロイン継続中
最初は榛名がヒロインだと思っていた時期が俺にもありました
910: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/19(金)17:05 ID:gIIllYiuO携(1) AAS
僕はぬいぬいがヒロインかと思ってました(小声)

ちょっと足柄さんと鳳翔さんヒロイン力高すぎんよ〜
911: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/19(金)22:49 ID:GXz7LYgI0(1) AAS
何でや!雷かわいいやろ!
いや、ヒロインっていうよりオカンって感じなのは確かだが
912: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/19(金)23:15 ID:iQAB8nGG0(1) AAS
みんな可愛いし提督の右腕だった赤城さんもさぞ可愛かろう
913: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/20(土)01:51 ID:49BzJKzao(1) AAS
やっぱラスボスは赤城かね
914: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/21(日)03:39 ID:HV6GoNH40(1) AAS
ラスボスは赤城じゃないだろ

赤城倒しても何も変わらないし、逆に赤城と協力できるかも
915: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/21(日)05:23 ID:DVbrK0cQ0(1) AAS
提督が提督業を続けてる理由は深海凄艦化したかつての部下達の成仏(?)だしその筆頭の赤城がラスボスであってるだろ
大本営がとんでもない事してましたとかならん限り
916: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/21(日)21:42 ID:LwjWlo6m0(1/13) AAS
足柄がなんと言おうかと迷っていた時。

コンコン!とやや荒っぽいノックの音。

提督「入れ」

ガチャ、と言う音とともに入室してきたのは、はぁはぁと荒い息をした榛名。
全身汚れて、顎からは汗が滴っている。

榛名「て、提督……良かった……」

提督を見るなり、泣きそうな顔になる。

提督「どうした?何かあったか?」

榛名「よ、夜風に当たると仰っていたので……
起きたら提督が居らっしゃらなくて……心配で……
どこかで動けなくなっているんじゃないかと……
島を一周してきました……」
917: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/21(日)21:43 ID:LwjWlo6m0(2/13) AAS
提督「それは……すまない。
気を遣わせたく無かったんだ」

榛名「いえ、提督がご無事でしたら……榛名は大丈夫です……」

ふっ、と息を整えてから笑顔を見せる。

足柄「それで一人だけ居なかったのね」

榛名「ぁ……足柄さん……」

足柄「良い子ねぇ……でも、今度からは最初に執務室を確認なさいね」

榛名「本当にその通りですね……
まだ酔ってたみたいです……」

提督「いや、本当に申し訳ない……
心配をかけたな。ありがとう、榛名」

提督は榛名に近寄ると、ハンカチで額の汗を拭いてやりながら言う。

榛名「はいっ」

くすぐったそうに身を捩る榛名。

そんな二人の様子をぼーっと眺める足柄。

提督「これだけでは気持ち悪かろう。
風呂に入って来ると良い」

ハンカチをしまいながら提督は言った。
918
(2): ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/21(日)21:44 ID:LwjWlo6m0(3/13) AAS
提督「……待てよ……不知火は清掃を嫌がる傾向があった。
シャワーで済ませて、湯を抜いてそうだな」

榛名「榛名はシャワーでも大丈夫ですよ?」

提督「そうか?……うーむ。
やっぱり、今から軽く掃除して来ようか。
鳳翔や雷も寝てるだろうし、後で慌てさせるのも忍びないな……
ズボラな不知火の事だ。他の家事も溜まっていそうだしなぁ」

榛名「お手伝いしましょう!」

足柄「しゃーなしよ、しゃーなし」

提督「いや、お前達はここで休んでいろ。酔ってるからな。
俺がちゃちゃっと済ませて来る」

そう言って出て行こうとして。

提督「……榛名は汗で寒いか。
着替えは……あー……もう風呂入るしなぁ……
とりあえず……」

自分の部屋に入ると、シャツとカッターと毛布を取り出し、榛名に手渡した。
919: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/21(日)21:44 ID:LwjWlo6m0(4/13) AAS
榛名「え……」

提督「男物ですまないが……寒ければ着替えておけ。
どうせすぐ風呂だし、我慢してほしい。下は毛布でな。
汚してくれて構わんよ」

榛名「は、はいぃ……!」

提督「濡れた服は椅子にでも掛けておけ。後で洗濯する。
……じゃあ、行ってくるな」

足柄「行ってらぁ」

榛名は提督を見送った後、衣類をぎゅっと抱き締め、顔をうずめる。

足柄「……あの人仕事中じゃなかったのかしら……
まぁあたしが言えたことじゃ無いけど……
ねぇ、榛名?ーー」

少し呆れ気味の足柄が榛名の方へ振り返るとーー

榛名「えへへぇ」

既にシャツを着て、毛布にくるまっている榛名が居た。

足柄「……早っ!」
920: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/21(日)21:46 ID:LwjWlo6m0(5/13) AAS
榛名「……すんすん……いい匂い……」

足柄「ちょっと止めなさいよ……
同じ洗剤使ってんだから同じ匂いの筈でしょ……
違ったらそれ提督臭よ」

榛名「提督臭……素敵です……」

足柄「ちょっとドン引きなんだけど……」

榛名「ふへへ」

足柄「……あんた、遠慮が無くなったわよね。前に比べて、さ」

榛名「そ、そうですか?すいません……」

足柄「悪い意味じゃないわ。本土に行ってから。
提督にとても懐っこくなったというか」

榛名「……むむぅ、自分では自覚が無いのですが……」

足柄「そう?
自信も信頼も得て、演習でも暴走せず……
大した成長よね」

921: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/21(日)21:47 ID:LwjWlo6m0(6/13) AAS
榛名「ぬぅ……そう言われてみるとなんだか自分が凄く成長した気がしますね」

足柄「したわよー。最初はあなた、提督と会おうとすらしなかったじゃないの」

榛名「そう言えばそんな事も……懐かしいですねぇ」

足柄(本当に……あの頃は私が榛名をなんとかしないとって思ってたけど……
今や榛名はおろか、あたしまで世話になってるしねぇ……)

榛名「ふわぁ……榛名、提督が見つかって安心したら……
だんだん眠くなってきちゃいました……」

足柄「ちょっと……風呂入ってからになさいよ……」

榛名「提督の……香りが……いっぱい……」……zzz

足柄「……ちょっと」
922: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/21(日)21:48 ID:LwjWlo6m0(7/13) AAS
………
……



数十分後……


提督「……こうなるか……」

湯を張った提督が執務室に戻ると、ソファですやすやと眠る艦娘が2人。
しかし、ソファは2人が眠るには少し狭く、どこか寝苦しそう。

仕方ない、と提督。
彼はくるりと丸まって抱き上げ易い榛名を、そっと自分のベッドへと運んだ。

そして、静かに降ろそうとした時。

榛名「ん……ていとく?」

提督「……起こしたか。すまない」

榛名が薄っすらと目を開ける。

923: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/21(日)21:48 ID:LwjWlo6m0(8/13) AAS
榛名「……わぁ……お姫様みたいです……」

お姫様抱っこされ、えへへ、とあどけなく笑う彼女は、どこかフワフワとしている。
完全に覚醒しておらず、夢見心地なのかも知れない。

榛名「……ていとく……
榛名は……がんばりました……」

眠そうに、ポツポツと言葉を紡ぐ。

提督「……そうだな。お前はよくやった」

榛名「ちゃんと……手加減もしましたよ……」

提督「ああ。偉いぞ、榛名」
924: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/21(日)21:50 ID:LwjWlo6m0(9/13) AAS
榛名「えへへ……
榛名に……ごほうびを……ください……」

提督「何が良い」

榛名「ちゅー……しましょう……」

提督「何を言っとるんだ、この酔っ払いめ……」

榛名「ふぇ……冗談ですよぅ……
……提督、撫でて、下さい……」

それならば、と。
提督は優しく、頭を撫でる。

榛名「……んぅ……」

榛名はとても満足気だ。
瞳を閉じて、されるがままにしている。

榛名は身をよじることも無く。
提督もただ、撫でるのみ。
静寂の中、長い髪を梳く音だけが空間を支配する。

榛名は幸せだった。
925: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/21(日)21:50 ID:LwjWlo6m0(10/13) AAS
それから、どれくらい撫でていただろうか。
気付けば榛名は安らかな寝息を立てているように見えた。

提督「……眠ったか」

そう判断し、榛名のそばを離れようとした時。
グッと上着の裾を掴まれる。

榛名「……ていとく……?」

提督「……ああ。まだ起きていたか」

榛名「……榛名は二人倒したので……
もう一つ……ご褒美を……下さい……」

目は瞑ったままに、もにゅもにゅと喋る。
既に意識を半分手放しているようで、提督の言葉には反応を見せない。

926: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/21(日)21:51 ID:LwjWlo6m0(11/13) AAS
提督「……欲張りなお姫様だな。
なんだ、言ってみろ」

苦笑しながら提督は応じた。

榛名「榛名を……ずっとお側に……置いて下さい……
大事にして下さいとは……言いません……
せめて……あなたの……道具として……榛名は……」

提督「ーー」

榛名「それが無理なら……あなたの艦娘のまま……榛名を……榛名を……はる、な……を……」

裾を掴んでいた榛名の力が抜ける。
今度は本当に寝てしまったようだ。
すぅ、すぅ……と穏やかな呼吸音が聞こえる。

もう一度、提督は榛名を撫でた。

提督「そうか……お前は……
……ダメかもしれんな」

927: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/21(日)21:52 ID:LwjWlo6m0(12/13) AAS
そう呟く提督の表情はどこか、哀しくて。

提督「……お前も俺と、行くか……?」

そう続けた時。
提督には、榛名の首が縦に、僅かだけ動いたように見えた。
それは果たして偶然か、提督が見た夢か。

提督「馬鹿な奴だよ……お前も俺も……」

最後にひと撫ですると。
返答の代わりに、榛名の額へ口づけをして。

提督「……今は夢を見ていろ、榛名……」

唇にキスをしては、目が覚めてしまうから。
928: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/21(日)21:52 ID:LwjWlo6m0(13/13) AAS
ここまで
929: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/21(日)21:56 ID:KQdF84hbo(1) AAS
乙乙
深海棲艦化待ったなし
930: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/21(日)21:56 ID:c5pB5iU7O携(1) AAS
乙です
931: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/21(日)22:38 ID:3gRGfX/xO携(1) AAS
なぜだろう
榛名が大事にされるほどにバッドエンドに近づいていく悪寒
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