[過去ログ] 【艦これ】提督「…さて、と」 (1002レス)
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797: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/09(木)20:47 ID:IAF8ZXPu0(1/10) AAS
提督「……」
川内「準備は出来てる……後は、提督がこの話に乗るだけ、だよ」
提督「そいつは、どうも」ぐい
神通「……提督。我ら四人は滅私、粉骨砕身の覚悟を以って、あなたの手足と成りましょう」
龍田「血が見れるのなら、何だって構わないわぁ」
天龍「斬り込みはオレに任せな」
提督「やれやれ。どいつもこいつも頼もしい限りだな」ぐい
川内「ね、提督……来て、くれるよね」
提督「……まぁ、気持ちは嬉しいが、その申し出は受けられん」
川内「……一応聞くよ。どうして?」
提督「残された左遷島の艦娘はどうなる?俺は提督だ。かつて敗れたとはいえ、俺には信念がある。今の艦隊を裏切る事は出来ない」
川内「んー……やっぱそうか……冷静だなぁ。酔わせる為に、貴重なお酒も用意したんだけどなー。ま、もう少し考えてみてよ。まだ、猶予はあるからさ。アハハ」
提督「……」
川内「……よく、考えてよ。……赤城とか、単騎でも本当に殺されるぜ、提督」
798: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/09(木)20:47 ID:IAF8ZXPu0(2/10) AAS
提督「……その時は、その時だ」ぐい
川内「……ま、今晩はここまでかな。あんまり遅いと、提督のワンちゃん達が黙ってないだろうからね」
提督「……失礼する」
川内「んー。またね、提督」
神通「お気をつけて」
提督「ああ……っと」フラ
川内「おっと。しっかりしてよ」
提督「悪いな……では」
ガチャ、バタン
川内「んー……そんなに飲んでない筈なんだけどな」
天龍「ボトル半分空いてるぞ?」
川内「そこそこだよ。……神通、提督が無事に帰れるかどうか、影からで構わないから、見てきてくれるかな?」
神通「わかりました」
799: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/09(木)20:49 ID:IAF8ZXPu0(3/10) AAS
宿舎
コンコン
提督「私だ。会議は終わった」
ガチャ
榛名「お疲れ様です、提督!」
不知火「お疲れ様です。頼まれていた資料は出来上がっています」
提督「ああ、ありがとう」
不知火「今日ももう、遅いですから……お疲れでしたら明日、お渡ししましょうか?」
提督「ああ……すまないが、そうして貰えると助かる。ご苦労だった。二人も休んでくれて構わん」
榛名「……おやすみなさい、提督」
不知火「おやすみなさい」
提督「うむ。おやすみ」
バタン
榛名「……提督から、すごいお酒の匂いがしましたね……心配です」
800: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/09(木)20:50 ID:IAF8ZXPu0(4/10) AAS
提督の自室
提督「……」
扉を閉めると、部屋を闇が支配する。防諜の為か、しっかりとしたドアには隙間はなく、廊下の光を通さなかった。また、部屋に備え付けられた窓のカーテンは綺麗に閉められ、光の差し込む余地はない。
提督「暗いな……」
提督は灯りに手を伸ばそうとして、やめた。そして、そのまま暗闇に抱かれるかの様に、備え付けられたソファに深く腰掛ける。
提督「……疲れた」
溜息。そして、訪れる沈黙。体を支配する気だるさに耐え兼ねた提督は、目を瞑り、物思いに耽ることにした。
801: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/09(木)20:51 ID:IAF8ZXPu0(5/10) AAS
提督(川内の誘い、か)
提督の目的、その助けになると川内は豪語していた。
提督(……確かに川内の提案は魅力的で、現実的だ)
しかし。
提督(川内の言う目的と、俺の本来の目的は違う……)
悲しいけれど。
提督(川内の誘いに乗れば、俺は艦娘を、足柄を、鳳翔を、雷を、隼鷹を、不知火を、榛名を、そして何より、自分の信念を裏切る事になる)
自嘲する。
己の大義を失って尚、生きる意味などあるのか、と。
提督(過去、か)
どこで間違えたなど、そんな葛藤は遠く過ぎ去った。心に残ったのは悔恨のみ。
提督「……」
802: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/09(木)20:51 ID:IAF8ZXPu0(6/10) AAS
昏い、昏い部屋の空気が、質量を持って。提督に重く、重くのしかかってくる。
提督は、ソファから立ち上がる事が出来ないでいた。
次第に彼が息苦しさを感じ、服の前をはだけさせると、首元に吊るしたペンダントが露わになる。
提督はそのペンダントも手探りで外し、ソファの肘置きに置いた。
やっと、苦しさが少し和らいだ時。
提督(……嗚呼)
提督の心の隙に、魔は忍び寄る。
提督(逆に、今俺が死ねばどうなる?)
全てを放り出して、逃げてしまいたい。そう、心の中で呟く。
部屋の闇が、その色を増した。
提督(……死ねば、あいつらは来ないんじゃ、無いのか?)
わからない。わからない、けれど。
罪も。後悔も。信念も。
提督(全部忘れて、楽になってしまいたい)
いっそこのまま、この重圧で潰れてしまいたいと。
そう、思う。
提督の視界は、閉じられた瞼の裏側、闇の中をグルグルと回っていた。
803: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/09(木)20:52 ID:IAF8ZXPu0(7/10) AAS
………
……
…
ふと。
キィィ……カタン、と音がした。
それは、ドアの空いた音か。窓の開いた音か。
提督は瞼を開こうとしたが、上手くいかない。まるで、空気がねっとりと貼り付いているようだ、と提督は感じる。そのうち、誰かが提督に、優しく話し掛けてきた。
「……提督?大丈夫ですか?」
提督「……ああ……」
この声は誰だったか。提督にはわからない。わからないが、知っている。そんな声。
「ソファで寝ていては、風邪をひいてしまいます」
フワッと来た、浮遊感。
提督は誰かに持ち上げられている。
抵抗しようかと考えたが、やめた。
このまま自分を任せてしまおう、と開き直る。瞼は相変わらず重い。
そんな提督の頬を、誰かの髪が優しく撫でると。
どこか懐かしいような、そうでもないような、不思議な香りが提督を包んだ。
804: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/09(木)20:53 ID:IAF8ZXPu0(8/10) AAS
どうやらベッドまで運ばれたようで、提督の体は柔らかいマットレスの上に背中からゆっくりと降ろされた。
「……飲み過ぎですよ」
クス……と小さく笑い、優しく告げる誰かの言葉に、提督は初めて自分の状態を気付かされる。
提督「……そうか、俺は酩酊しているのか」
それで、体が思い通りに動かないのか。思えば、本土に着いてからは、短く浅い眠りしかしていなかった、と提督は自分を振り返る。
昨晩は特に、考え事をしてあまり寝ていなかった。今日は体調が良くないのに、調子に乗ってしまったな、と。
「……お休みに、なられますか」
どこか、愛情が感じられる声で提督に語りかける。
提督はだんだんと薄れゆく意識の中、無言で頷いた。
805: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/09(木)20:53 ID:IAF8ZXPu0(9/10) AAS
「……では、私はこれで……あら?この、ペンダントは……」
その声の主は、自分がベッドから離れる際に、ソファの肘置きに放置されたペンダントに気付き、興味を示した。
提督「なんだ。……欲しければ、くれてやる」
世話をさせた駄賃だ。提督は投げやりに言う。先程まで緩やかだった眠気の波は、今や津波のようになって提督に襲いかかっていた。
「……ありがとうございます。大切に、しますね……」
そう、嬉しそうに言って、誰かはペンダントを懐にしまった。
その言葉が提督の鼓膜を震わせた時は、提督の意識が深淵へと旅立つ瀬戸際。
「……おやすみなさい、私の提督……」
小さく苦笑し、その声の主は提督の頬を愛しそうにそっと撫でると、その場を後にした。
いつしか部屋の重圧は消え、提督は安らかな寝息を立てていた。
806: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/09(木)20:56 ID:IAF8ZXPu0(10/10) AAS
ここまで
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