[過去ログ] マミ「私は……守りし者にはなれない……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第三章 (805レス)
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47: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/23(土)04:30 ID:BGorv0Bko(1/9) AAS
「マミさん……」
驚きを含んだ、意外そうな声。
さやかの目は信じられないものを見るようでもあった。
何故、彼女はそんな顔をしているのだろう。すぐに理由には思い至った。
――あぁ……それだけ今の私が酷い顔をしているのね……。
狼狽えて、弱さを晒してしまった。後輩である彼女の前で。
その事実が、落胆が、プライドを砕いていく。
先輩として、しっかりしないといけないのに。
傷付く弱い自分を許容できずに、更に傷付く負のスパイラル。
これまでの自分が上手くイメージできない。
まるで仮面の被り方を忘れてしまったかのよう。
居た堪れなくなり、逃げ出したくなる。
「ごめん……マミさんに当たっても仕方ないよね」
さやかは一言詫び、着席する。
気遣われた。憐れまれた。
それを惨めに感じ、そう思ってしまう自分に腹が立つ。
事実がどうあれ、心の弱さ以外の何物でもないから。
暫し、気まずい無言の時が続いた。互いに切り出す機会を窺っていた。
マミは目を閉じ、紅茶を啜る。
その味と香り、喉から身体に沁み渡る温もりが心地いい。
いつもの自分を思い出させてくれる。
48: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/23(土)04:32 ID:BGorv0Bko(2/9) AAS
マミは戦闘後に紅茶を飲む場合が多い。
余裕を忘れない為。緊張を解し、心を落ち着ける為。精神を戦闘から切り替えるスイッチ。
理由は様々だが、偏にマミにとって紅茶は習慣であり日常の象徴だった。
そして今日も気分を落ち着け、頭の中を整理するのに一役買ってくれた。
「そうね……今、そのことについて言い争っても仕方ないわ。
最後は本人に確かめるしかない。それより、続きを話してくれる?」
マミは唇からカップを離すと、おもむろに口を開いた。
もう面子も何もないに等しいが、彼女の前では毅然としていたかった。
「あ……うん」
どこか釈然としないようだったが、さやかは従って話を再開する。
「どこまで話したっけ……そこへ現れたのが、あの二人組だったの。
一人は二十歳くらいの男の人。もう一人は……あたしたちと同じ年頃の女の子。赤い髪の」
「赤い髪……」
まさか――。
脳裏に浮かんだのは、かつて親しい仲にあった一人の少女。
マミは、固唾を呑んで続く言葉を待った。
「男の方があの人に、ちょっと付き合ってって言ってたけど、ナンパって感じじゃなかったな。
その二人もカップルとか兄妹には見えなかったけど。
あたしは女の方にいきなり引っ張られて、路地裏に連れ込まれた」
「連れ込まれた、ですって……!?」
49: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/23(土)04:33 ID:BGorv0Bko(3/9) AAS
「そいつは魔法少女だった。ソウルジェムから槍を出して、あたしに突きつけて言ったの。
あんたがホラーって化け物だろうって」
カシャン――と、ティーカップが音を立てた。
マミが指からカップを取り落としたのだ。
転がったカップからは残った紅茶が流れ出し、テーブル上に広がる。
にも拘らず、マミは愕然と目を見開いたまま。
「って、マミさん、こぼれてるこぼれてる!」
慌ててお絞りで拭くさやかに詰め寄った。
「それで、その娘は!? 美樹さんはどうしたの!?」
「え……あたしは違うって言ったよ。当たり前じゃん。
マミさんに助けてもらって、自分がまだ契約してない魔法少女候補だって言ったんだ。
そしたらさ、なんか話が違うとか言って、一言謝ったらダーッて走って行っちゃった」
驚くマミと対照的に、さやかは妙に冷静だった。
普通、暗がりに連れ込まれて槍を突きつけられれば、もっと怯えたり嫌そうに語って当然なのだが。
彼女にとって、それは大して恐れるには値しないのだろうか。
命のことは名前を聞いただけで警戒し、口に出すのも忌避しているのに。
「帰ったら、もう誰もいなかった。
それで雨が降ったから、あたしはここでマミさんを待ってたの」
「そう……だったの」
50: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/23(土)04:35 ID:BGorv0Bko(4/9) AAS
佐倉杏子。
間違いない。十中八九、彼女しかいない。
彼女が、この街に戻ってきたこと。さやかに接触したこと。ホラーを探していること。
すべてが驚きだった。
「ねぇ、マミさん。あの魔法少女、マミさんの知り合いなの?」
「ええ、昔のね……。
それでも、一般人を脅したり傷つけたりするような娘じゃなかったのに……」
やはり、あの出来事が彼女を変えてしまったのだろうか。
杏子を信じたい気持ちはある。だが、もしも命やさやかに手を出すなら、その時は――。
マミは私情を殺して、考えられる可能性を口にする。
「その男の人が怪しいわね。二人で結託して、その娘が美樹さんを遠ざけてるうちに、
命さんを連れ去ったのかもしれない。
あの娘が何を企んでるのかわからないけれど、私に任せてちょうだい。心当たりを探ってみるわ」
「でも……」
「大丈夫。どんな事情があっても、怖い思いをさせた分、あなたにはちゃんと謝らせるから」
「違うよ、マミさん……。そりゃあ確かに怖かったけど……おかしいんだ。
顔の真横に槍が刺さったのに――」
またしても、さやかの表情が曇る。全身が強張るのが見て取れる。
段々わかってきた。彼女がこんなふうに怯えるのは、決まってホラーについて話す時だ。
51: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/23(土)04:36 ID:BGorv0Bko(5/9) AAS
「あたしは"あの人"に手を握られただけの方が、ずっとずっと恐ろしかった……!」
「え……?」
「だから変かもしれないけど、あの人から逃がしてくれて逆に感謝してるくらい。
少なくとも、握った手を解いた男の人からは悪い感じはしなかった」
今度はマミが取り残される番だった。
さやかとの温度差についていけない。何を言っているのか、理解はできても共感できずにいた。
「あの人の手、まるで死人……ううん、氷みたいに冷たくて凍えそうだった。
強く掴まれたんじゃない。ただ軽く触られただけなのに、怖くて声も出せなかった。
もしも、あの人にどこか連れて行かれそうになっても、あたし抵抗できなかったと思う。
そうなってたら、きっと今頃あたし生きてない……」
思い出すだけで恐怖が蘇るのか、さやかの身体が震えだす。
両腕で自分を抱き締めて、それでも彼女は止まらない。
勢いのまま吐露する。マミが、最も恐れる想像を。
「一昨日、あのモールの暗闇で会った不良と同じ雰囲気だった……。
あの魔法少女、誰かと間違ったみたいだったし、もしかしてあの人が――」
52: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/23(土)04:37 ID:BGorv0Bko(6/9) AAS
「いい加減にして!」
マミは声を張り上げた。
聞きたくない。考えたくない。あり得ない。
そんな不安が膨らんで、思わず声を荒げていた。
さやか同様、自分の中の恐怖に押し潰されまいと、胸の想いを吐き出したのだ。
「いくら本人がいないからって、言っていいことと悪いことがあるわ……。
他人を証拠もないのに化け物呼ばわりするなんて、本気なら私も怒るわよ……!」
カッとなって止まらなかった。
さやかを睨みつけ、低く震える声で戒める。
いや、抑えていても、それは恫喝と大差なかった。つい昨日も彼女にしてしまったように。
射竦められたさやかは小さく、
「ごめん……」
とだけ呟いて俯いてしまった。
さやかの潤んだ瞳を目にした瞬間、マミはハッと我に返り、激しい自己嫌悪に襲われた。
――私は何をやっているの……!
美樹さんの気持ちを見誤って、それどころか怒鳴って、余計に怯えさせて。
彼女はただ怖かっただけなのに……。
こんなの最低じゃない……――
マミは両手で額を覆い、言葉を失った。
自分で自分が許せなかった。
何か言わなければと思うのだが、胸の内の不安や恐怖を言葉で表せなかった。
53: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/23(土)04:39 ID:BGorv0Bko(7/9) AAS
マミは迷い、
「いえ、私の方こそごめんなさい。つい声を荒げちゃって……。
ともかく、今日はもう遅いから帰った方がいいわ」
結局その程度しか言えなかった。
これ以上、一緒にいてはいけない。もっと彼女を傷つけてしまう。
もっと醜い自分を晒してしまう。
「うん、そうする……」
最悪の空気にさやかも堪えかねたのか、すぐに荷物を手に立ち上がった。
「私のせいで無駄足を踏ませて本当にごめんなさい。
お互い頭を冷やして、また改めて話しましょう?
でも、これだけは約束してほしいの。鹿目さんにも伝えておいて。
私の話を聴くまで、キュゥべえとは絶対に契約しないで。いい?」
二人とも契約には慎重になれと言ってある。
下手に急いで真実を明かすより、今はこれだけ念を押しておけば充分だろう。
「わかった……でも、あたしからもひとつ」
さやかは頷くと、はっきりと言った。
「もう絶対あの人と一緒は嫌だから」
「……ええ、私はもう少し待ってみるわね。気をつけて」
足早に去っていくさやかを、マミは見送るしかなかった。
54: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/23(土)04:44 ID:BGorv0Bko(8/9) AAS
独りになってようやく、瞳に熱いものが込み上げてくる。
「嫌われちゃったかな……」
でも、これでいいのかもしれない。
そう言い聞かせても、涙は止まってくれない。
紅茶を何杯おかわりしても、気分は落ち着かなかった。
それから数分、マミは何をするでもなく、寂しくなった向かいの席を眺めていた。
命を探して街を駆け回るべきだろうか。しかし、どこを探せばいいのかもわからない。
ここで待った方が会える確率はまだ高い。それに、さやかを疑うようで気が進まなかった。
その時だった。
背後に気配と、誰かが着席する音。
頭が一杯で、今の今まで入店に気付かなかった。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」
真後ろから、注文を取りにきたウェイトレスの声。
そして――。
「季節のフルーツパフェと、イチゴのタルトと、クリーミーカスタードプリン。
それからコーヒーゼリーサンデーに、抹茶白玉アイス、ガトーショコラ。
桃のムース、洋梨のミルフィーユ、ブルーベリーパイ、NY風チーズケーキも。
あとは……とりあえず、それだけで」
聞こえてきたのはマミでも胸焼けがするような大量の注文。
それも、以前どこかで耳にした声だった。
55: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/23(土)04:45 ID:BGorv0Bko(9/9) AAS
ここまで
続きは来週中
言うまでもないことかもしれませんが、映画のネタバレはご遠慮くださいますようお願いします
私も明日には見に行くつもりですが、ここでネタバレすることはしませんので、ご安心ください
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