[過去ログ] マミ「私は……守りし者にはなれない……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第三章 (805レス)
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395: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/07/10(水)02:51 ID:50V4wCREo(1/7) AAS
「そうだ。校門で待っていたが、妙な気配と物音を感じたんでな」

『まさか学校から出もしないうちに使い魔に遭うとは想定外だったぜ。まったく、無茶なお嬢ちゃんだ』

 鋼牙とザルバ、二人とも責めはしなかったが、まどかはしゅんとして黙った。
 何故、彼が自分を待っていたのか。それすらも、訊き返せなかった。
ただでさえ怖いのに、昨夜の件もあって、彼の前では萎縮してしまうのだ。

「だが、とりあえずは必要なくなったようだ」

 そう言うやいなや、立ち去ろうとする鋼牙。

「待って!」

 そこへ、ほむらが追い縋った。
 コートの袖を摘まむが、歩みを阻むには至らない。
それでも、鋼牙は意図を察したのか足を止めた。

「まだ話は終わっていないわ。それだけじゃ答えになってない」

 鋼牙が振り向き、視線が交錯する。
 張り詰めた空気が流れるが、

「――――」

 鋼牙が何か囁くと、ほむらの手はするりと離れた。
 囁くと言っても、耳元で声を潜めたのではない。ただ、まどかに聴こえないように抑えたのは間違いなかった。
 そして、ほむらは目を伏せたまま立ち尽くし、鋼牙は振り返らずに歩き去った。
396: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/07/10(水)02:56 ID:50V4wCREo(2/7) AAS
 
 まどかはというと、相変わらず、へたり込んでいた。
 鋼牙が校門の前にいた理由。気掛かりだったが、とても詰問はできなかった。
彼が話す必要がないと考えたなら、その判断は誤りではないのだろう。

 それに頼んだところで、きっと鋼牙は決定を変えない。
彼に何かを強制できるとも、影響を与えられるとも思えなかった。

 それくらい、彼と自分との間には隔たりがある。
 言い知れぬ無力感が胸に押し寄せ、まどかは暫く立ち上がることができずにいた。



「(それでそれで? それからどうしたの!?)」

「(それからは……ほむらちゃんが家の近くまで送ってくれて、それで終わり)」

 声に出さんばかりの勢いで続きを促すさやかに、まどかは戸惑いながら答えた。
 呆気ない顛末に、さやかは少々拍子抜けした様子。
 
「(そっか……けどまぁ、まどかが無事で良かったよ)」

「(うん……ありがと、さやかちゃん)」

 さやかが、最初にそう言ってくれたことが嬉しかった。涙が出そうなくらいに。
 日常に戻ってこれたのだと、改めて実感する。昨夜、家に帰り着いて家族に迎えられた時もそうだった。
 これまでで最も強烈に死を身近に感じ、一度は覚悟しただけに、喜びもひとしおだった。
397: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/07/10(水)02:58 ID:50V4wCREo(3/7) AAS
 と、まどかは安堵したが、さやかは結果オーライと解放してはくれない。

「(で、も! いくら何でも無茶し過ぎ! 冴島さんがいてくれたからよかったものの……)」

『そうだよ、まどか。たとえ使い魔だって、力を持たない君には立派な脅威なんだ。
立ち向かえる相手じゃないよ』

 二人からのお説教。昨夜と同様に、まどかは縮こまる。もとより反論などできるはずもなかったが。

「(それは……わかってはいたんだけど、つい……)」

「(ついじゃないよ、もー。
まどかってば、誰かの為となると見境ないよね。ショッピングモールの時だって)」

「(あっ……)」

――あなたがあの場に行かなければ、美樹さやかも行かなかった。
結果だけ見れば、あなたは彼女を危険に巻き込んだとも言える――

 ほむらの言葉が蘇る。
 無茶は自分だけの責任じゃない。誰かを巻き込んだ挙句、死なせるかもしれない。
 それは、家族か友人か。まったくの他人でも、そんな重みには耐えられそうにない。

「(ごめんなさい……。ほんとに、本当に反省してるから。冴島さんにも、ほむらちゃんにも迷惑かけちゃって……)」

 心から思う。助けてくれた鋼牙はもちろん、心配して駆けつけてくれたほむらにも。
 でも、また同じ状況になったら、絶対やらないと断言できるだろうか?
 申し訳ないが、自信はなかった。
398: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/07/10(水)03:00 ID:50V4wCREo(4/7) AAS
 思いのほか消沈しているまどかを気遣ってか、さやかは明るい声で言う。

「(ま、冴島さんなら使い魔くらい楽勝だろうし、そこまで深刻にならなくたっていいんじゃない?
そんなに怒ってないと思うけど)」

 彼らの力量なら、使い魔など一撃で葬り去れる程度の雑魚に過ぎないのかもしれない。
だが、それでいいのだろうか。救われる立場に、あぐらをかいたままで。
 言ったところで仕方ないのはわかっている。その雑魚にすら手も足も出ないのが、まどかなのだ。
 
「(それに転校生はほら、あいつだって魔法少女なんだし、魔女や使い魔を倒すのが役目なんだから。
いいじゃん、人助けなんだし。気にすることなんてないよ)」

 やはり、ほむらに対する悪感情に変化はないらしい。
ほむらの迷惑など気にするなと言うさやかに、どう返していいかわからず、まどかは沈黙で答えた。

「(結果的にでも、その居残りしてた娘の命をまどかは助けたんだから。
助けたいって想いだけは間違ってないと、あたしは思うよ)」

 そう言ってくれて、少し報われた気がした。
 保健室での、ほむらとの会話。
その前半――ほむらが無理に自分を連れて逃げたことを、まどかはさやかに伏せた。
やはり上手く説明できる気がしなかったからだ。
 
 それでも、こうして親身に接してくれる。
 だからこそ、三日前の夜のことに触れるのが怖かった。
ぎこちない関係が、今度こそ決裂に繋がるのではないかと。

 さやかの口から、ショッピングモールの話が出た時は内心で怯えていた。
彼女のことだから、深く考えずに口にしたのだろうが。 
399: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/07/10(水)03:01 ID:50V4wCREo(5/7) AAS
 まどかは、真実を隠すことに若干の後ろめたさを感じつつ、一言だけ。

「(さやかちゃん、私ね……わかった気がする。さやかちゃんの気持ち)」

「(え? あたしの気持ちって何が?)」

「(う〜ん……ごめん、やっぱりうまく言えないや)」

 いや、実はわかっている。
 あの夜、さやかが抱いた鋼牙への憧れだ。

――昨夜、月光に照らされた冴島さんを見た瞬間、私にも理解できた。
さやかちゃんに強く共感した――

 あの夜のことは口にしたくない。ただ、単純に言葉にできないのも本当だった。
少なくとも、さやかの純粋な憧れとは別物だろう。
 
――けど、同時にマミさんの気持ちにも。
400: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/07/10(水)03:03 ID:50V4wCREo(6/7) AAS
 どんなに助けたいと願っても、力がなければ無意味。
 それが悔しくて、もどかしくて、辛かった。
 キュゥべえと契約することで力が得られるなら、手を伸ばしてしまいそうなほどに。

 何もしてないまどかでさえ歯痒い。
いわんや人を救う為に戦い続け、努力を重ねてきたマミなら、彼の眩しさに揺れないはずがない。

 死力を尽くしてホラーと戦っても守りたい人を守れず、
本来の敵である魔女との戦いでも部外者の鋼牙に助けられた。
 これまでの自分が否定されたと感じても不思議はない。

 マミの鋼牙に対する複雑な感情の一端には、そんな背景もあるのかもしれなかった。
 更に、そこに追い討ちをかける何かがあれば、マミが酷く憔悴していたのも頷ける。
 もっとも、すべては勝手な想像に過ぎないのだが。
 
 仮に想像通りだとしても、自分がマミに何をしてやれるのか。
 答えを求めるように、まどかは天井を仰いだ。
 
401: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/07/10(水)03:05 ID:50V4wCREo(7/7) AAS
ここまで
昨夜は推敲しながら寝落ちしてしまいました
次はそんなややこしい心理描写もないので早めに
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