[過去ログ] マミ「私は……守りし者にはなれない……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第三章 (805レス)
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403
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/10(水)17:05 ID:F0O9Wb9P0(1) AAS
乙でした。鋼牙が校門の前にいた理由が気になりますね・・・。

>>390
なるほど。そういう見方もあるか・・。それでソウルジェムが黒く染まってしまって・・・という可能性も十分にあるな。しかし、仮にそうだとするとある意味、普通の魔法少女より悲惨な気がするなあ。(契約する前から「守りし者」としての使命を与えられている分、余計に)

>>402
ひょっとして3期の牙狼が元ネタ? 乙です。
404: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木)01:03 ID:R0Ui/Gu50(1) AAS
>>1乙ー

>>403
「少女」だとねぇ。
たしかに普通よりも絶望しそうな……
「守りし者」からその正反対の存在になっちゃうんだし……
405: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木)01:20 ID:BQtuUrXWo(1) AAS
どっかの豆腐メンタルじゃあるまいし
それで絶望するなら最初から魔戒法師としてやっていけないだろ
406
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木)16:03 ID:dLdZcD0i0(1) AAS
確かに、ホラーと戦う以上は人間の黒い部分を目にするのは避けられないから、その辺は覚悟していると思うな。
もっともまだまだ「少女」だから、邪美や烈花のような成熟した魔戒法師に比べたら脆いだろうけど。
(莉杏と比べてどうかは分からんが・・・。ギリギリ彼女の方が強いような気がするけど)
まあ、そもそも彼女達がどういう思いや意図があってQBと契約したのかも謎だけどね。
(契約したこと、周りの人間には内緒にしてたのかなあ?)
407: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木)20:49 ID:xXZFowZoo(1) AAS
おっとバラゴさんの悪口はそれまでだ
408: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木)21:04 ID:WOHEf+ZPo(1) AAS
絶望云々以前に
魔法少女と魔戒法師の二足のわらじってすげえ大変そう
409
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/12(金)17:00 ID:3n8S4Jgv0(1) AAS
謎といえば元々、見滝原を担当していた魔戒騎士が誰に消されたのかというのも十分、謎な気がする・・。
大した意味はないかもしれんが。(今の所は魔女かホラーしか該当者いない・・・かな?)
410: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/12(金)18:39 ID:DjleqBYSO携(1) AAS
あるとしたら、おりキリとか仮面の魔戒法師とか
411: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土)00:15 ID:FJ3M3GgAO携(1) AAS
>>406
もし魔戒法師の修行中の少女からQBと契約した者が出て、魔法少女の実態や魔女との関係が番犬所に知れたら……魔物として騎士の討伐対象になってしまうのでは。「血に染まりし者」への対応から見ても容赦は無い。

本作でほむらの発言の通り、正義の味方は魔法少女の味方になってくれるとは限らないかも……

いや、やっぱ阿門法師やレオのような人が魔法少女の救済策を発明してくれちゃうかな!?
しかる後、契約でラクして魔翌力を得ようとした不届きな娘は我雷法師のお説教部屋行きである!
412
(2): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/15(月)14:57 ID:UANS5f7u0(1) AAS
>>409
ほむらが今まで繰り返し見てきた世界でホラーを目にしたことがないとすると、その魔戒騎士がちゃんとゲートを封じていたからなのかなあ・・・。彼も(大部分の)魔法少女達と同様に、いずれは報われない末路を辿ることに・・・ていうのはちと考えすぎか。
413: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/07/16(火)02:26 ID:fNtIC5ivo(1) AAS
遅れていますが、もう少し
414
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/16(火)03:01 ID:DlNX2V/j0(1) AAS
>>412
「今までの世界」に魔戒騎士やホラーが存在したかどうかも確定じゃ無い気も、なんて
415: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/16(火)16:42 ID:P+wIc31G0(1/3) AAS
>>412
難しく考えなくても、>>414で言われている通り、「この世界」においては、魔戒騎士やホラーというのが存在するという解釈でいいんじゃない?
「より更に絶望を加速させる存在」と「より大きな希望をもたらす存在」が同時期に生じたということで。
(つまり、場合によってはホラーと魔戒騎士のどちらかしか存在しない世界もありえた。)
416: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/16(火)19:32 ID:8iaLifDWo(1) AAS
いつもの事だけどさあ。。
>>1が一言だけど今後の予定投下してるのに、ガン無視して雑談は正直どうなの?

あ、>>1さん、気長にお待ちしてますので。
417: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/16(火)20:11 ID:JbYsOi/Lo(1) AAS
何度も同じ事を言われても同じことを繰り返す
厨坊や消坊みたいな奴らが多いんだな
418: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/16(火)21:05 ID:P+wIc31G0(2/3) AAS
>>1さん
ペースに関してはお気になさらず、ご自分のペースで頑張ってください。
雑談に関しては自重します。申し訳ない。
419: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/16(火)23:47 ID:P+wIc31G0(3/3) AAS
悪かった。いくら何でも限度があったな。自粛するよ。
420
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/21(日)22:30 ID:so5LcDkSO携(1) AAS
前に夏は調子が悪いみたいなことを書いてたっけ
421: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/07/23(火)02:06 ID:15iQSnBwo(1) AAS
まずは生存報告のみ
なかなか時間が取れずにいます

私としては雑談は別に構いませんのでお気遣いなく
一言程度でレスをいただいても、却って申し訳ないので

>>420
昨年からエアコンのない環境にPCが移ったので
あまり暑いと、自分はともかくそっちが心配なので
422: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/25(木)10:30 ID:oroOQtY0o(1) AAS
ついに劇場版BD発売したね
魔翌竜のBDは9/4だっけ
楽しみだ
423: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/08/02(金)02:46 ID:tF4DMqLFo(1) AAS
あまり間が開き過ぎるのもアレなので、
2.3日中には投下したいところ
RRも蒼哭も地元で上映したのに、桃幻はしてくれませんでした……
424: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/08/08(木)03:53 ID:xFW9h5s1o(1/10) AAS
 放課後、まどかとさやかは二人でマミの自宅に向かっていた。それぞれ手には買い物袋を提げている。
 昨日、マミは夜になってからも店で命を待っていたはず。

 もし欠席の理由が雨に濡れたことでの体調不良なら、独り暮らしのマミが心配だ。
迷惑かもしれないが、お見舞いくらいはしたかった。それに用なら他にもある。

 道中、当たり障りのない会話がほとんどだったが、ひとつだけ深刻にならざるを得ない話題があった。

「仁美ちゃん、また寂しそうにしてたね……」

「うん……今日は仁美も習い事があるって言ってたし、昨日みたいに怒ったりはしなかったけどさ」

 一緒に帰れないのは、今日で三日連続。
 昨日一昨日と違って、今日は理由を話せたが、仁美からすれば疎外感は変わらないだろう。
欠席した知り合いの見舞いだから不満を表さなかっただけ。

「私たち、これでいいのかな……」

 まどかが言った。
 まどかは明言を避けたが、言わんとするところは、さやかにも伝わっていた。
 これから周囲で何が起こるのか。そもそも自分がどうしたいのか。
 何もわからないから、何ひとつ決められない。

 仁美との間に溝はできるし、日々の勉強や生活もなかなか手につかない。
 未来どころか、明日さえ暗闇に覆われて見えない。
 そんな漠然とした不安。
425: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/08/08(木)03:56 ID:xFW9h5s1o(2/10) AAS
「大丈夫。そのうち落ち着くって。きっと、もう少しの辛抱」

「もう少しって、どれくらい?」

「う〜ん……わかんないよ、そんなこと。わかんないけどさ……たぶん一ヶ月もあれば」

 自分に言い聞かせるように呟く。
 この街で、大きな何かが起きようとしているのは確かだ。或いは、もう起きているのか。
 だが、ホラーも魔女も自分の手には余る。あれらは鋼牙やマミのような超人の領分だ。

 ただ、キュゥべえが何でもひとつだけ叶えると言う願い事。
これには心惹かれる理由があったが、それだって急ぎ結論を出す必要はないとマミは言った。
口に出した期間には、何の根拠もなかった。
 
 結局、中途半端なのだ。
 マミのように完全に非日常の側に立つでもなく、魔法少女という選択肢を切り捨てて日常に戻るでもなく。
日常と非日常に片足ずつ踏み入れたまま、あっちこっちに揺れながら歩いているよう。
 だから迷う。だから不安になる。こればかりは鋼牙にも頼れない。

 時間の解決に任せるというのは、その実、選択と思考と努力を放棄しているに等しい。
しかし、さやかは他に方法がわからなかった。今はただ、なるようになれ、と。
息を潜めて、嵐が通り過ぎるのを待つように。
 
「え〜っと、あそこで合ってたっけ。マミさんのマンション」

 ちょうど会話も途切れた頃、目的地に到着。
さやかは道に自信がなかったが、まどかが覚えていたので助かった。
 階段を上がり、呼び鈴を鳴らす。
426: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/08/08(木)03:58 ID:xFW9h5s1o(3/10) AAS
「反応ないなぁ……」

「家にいないのか……ひょっとしたら寝てるのかも」

 念の為、もう一度。
 それから数十秒ほど待っていると、ゆっくりドアが開いた。

「鹿目さん、それに美樹さんも……どうして?」

 顔を覗かせたのは、パジャマ姿のマミ。
来訪者の姿は中から窺っていたのだろう。彼女は驚きと共に二人を迎えた。

「あの……キュゥべえがマミさん欠席してるって言ったから……。
迷惑かと思ったんですけど、マミさん一人暮らしだから心配で」

「なんで、お見舞いに来ました。でも、その格好、やっぱり昨日の雨で? 大丈夫なの、マミさん」

 マミは面食らっていたが、すぐに微笑みで返した。

「ううん。大したことないのよ。ただ、ちょっと疲れが溜まってたから大事を取っただけ。
とりあえず、ここで立ち話もなんだし、上がってくれる?」

「はい。お邪魔します」

 マミに促され、部屋に上がる。
 リビングは相変わらず物寂しかったが、畳まれていない衣服や、教科書やノートなどが散らばっており、
一昨日に比べると僅かながら雑然としていた。
 体調が悪かったのだろうが、にしてもらしくない。まるでマミの心が乱れているみたいだ。ふと、さやかは思った。
427: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/08/08(木)04:00 ID:xFW9h5s1o(4/10) AAS
「あ……ごめんなさい。片付けが行き届いてなくって。今、お茶入れるから待っててちょうだい」

「いえ、そんなお構いなく」

「いいってば、お茶なんて。マミさん病人なんだから寝てなきゃ」

 お見舞いに来たのに、歓待されては立場がない。
 二人に揃って止められ、マミは渋々と腰を下ろした。 

「もう、大げさね。本当に大したことないのよ。ちょっと調子が悪かっただけ」

「それなんだけどさ、魔法少女でも病気になるの?」

 マミが欠席したと聞かされた時から気になっていた。
あんな過酷な戦闘にも耐える魔法少女の肉体も、病に屈することがあるのだろうか。
 さやかの質問に、マミは思案顔で視線を彷徨わせる。

「私は魔法少女になってから大病した経験はないけど……おそらく、ないとは言えないわ。
無理をすれば翌日に疲れを残し、時には不調も来す。もちろん、普通の人より耐性はあるでしょうけど」

「でも、回復の魔法ってあるんですよね? 結果的にはないと同じじゃないんですか?」

「あれも誰でも使えるものではないし、何でも治せるものでもないから。
外傷はともかく、病気や障害となるとどうかしら……。
私も、今はグリーフシードの手持ちがないから控えてるの。
もともと、戦い以外で魔法に頼るのは好きではないし」

 まどかに対するマミの答えに、さやかは内心がっかりしていた。
マミに責任はないし、まどかの質問で話が逸れてしまっただけなのだが、それでも――。
428: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/08/08(木)04:04 ID:xFW9h5s1o(5/10) AAS
 幼馴染の上条恭介の手を、魔法で治療してもらえる望みは薄い。
少なくとも、マミには自信がないようだ。
 期待していた訳でもないのに、落胆を抑えられなかった。
 
「それもそっか。魔法少女だって人間だもんね」

 だから、動揺を隠すように努めて明るく、さやかは言った。
 何気ない一言だった。
 しかし、

「えっ……」

 と、突然マミが肩を震わせ、絶句した。
 
「え、ええ。そうね……」

 言葉に詰まりつつ目を伏せた、その表情は青ざめている。
 見るからに尋常ではない。にも関わらず、さやかは見逃してしまった。
いや、見ながら深く気に留めなかった。

 マミが孤独に抱えている悩みのサインも。
彼女が立ち直るまでの十数秒、まどかが怪訝そうにそれを見つめていたことも。
 この時はただ、自分の心の整理しか頭になかった。
 
 それから何となく会話が止まり、さやかは重くなった空気を変えようと話題を変えた。

「あ、そうそう。マミさん、さっきグリーフシードがないって言ったよね」

「ええ、言ったけど?」

 頷くマミに、さやかは鞄から黒い宝石のような物体を取り出す。
429: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/08/08(木)04:08 ID:xFW9h5s1o(6/10) AAS
「これ、一昨日の魔女が落としたグリーフシード。
冴島さんに渡されてずっと預かってたんだけど、昨日は渡しそびれちゃったから」

「でも、これは……」

 自分の手柄じゃない、と。
 一昨日もマミは受け取りを渋った。プライド――と言うよりも、意地だろうか。
彼女の鋼牙に対する複雑な心情は、さやかには窺い知れないが、それはこの際あまり重要ではなかった。

「あたしが持ってても何の役にも立たないしさ。
それに、こいつから魔女が孵化するって聞いたらおっかなくって。ね、お願い」

「……わかったわ。それじゃ、ありがたくもらっておくわね」

 両手を合わせて頼みこむと、マミは根負けといった態度で受け取った。
 それでいいと思う。これは彼女に絶対必要なもので、彼女が持ってこそ相応しい。
 もちろん、口に出した言葉も嘘ではないが。

「よかった。あ、それとこれも」

 さやかが目配せすると、まどかが買い物袋を広げた。
 中からは、みかんや桃などの果肉入りのゼリー。そして数種類のレトルトお粥。

「あの、お見舞いに何か持って行こうと思ったんですけど、迷っちゃって。だから、いろいろ買ってきました。
休んだ理由がわからなかったから余計なお世話かもって不安でしたけど、良かったみたいです」

「これ……私に?」

「いやぁ、お手軽なものばっかだけど、独り暮らしなら案外こういうのの方がいいのかなーって。
果物とかだと剥くの面倒臭いかもしれないし、これなら好きな時に食べれるでしょ」
430: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/08/08(木)04:10 ID:xFW9h5s1o(7/10) AAS
「もう、さやかちゃんってば。それ言ったの私だよ」

「あははは。そうだったっけ――って、マミさん!?」

 さやかが驚きの声を上げる。見ると、マミは両目から大粒の涙を零していた。
 その綺麗な瞳は開かれたまま、声も出さず、表情も歪んでいないのに。
 
「ど、どうしたんですか!?」

「ひょっとして、どっか苦しいとかじゃ……!」

 二人でオロオロと慌てふためいていると、やっとマミは自分が泣いていることに気付いたらしい。
 涙を拭い、濡れた手を不思議そうに見つめた後、はにかんだ。

「うぅん、違うの。ごめんなさい、嬉しいなって思ったら勝手に涙が溢れちゃって」

「いや、そんな……財布の小銭で買える程度で大したもんじゃないっすよ」

「そうかもしれない。でも、鹿目さんと美樹さんの気持ちは確かに伝わったもの。
ありがとう……これも大切に頂くわね」

 まだ涙を流しながら微笑むマミに、さやかは照れ臭そうに頬を掻いて、まどかと顔を見合わせる。
どうやら、まどかも同じだったのか、お互い同時に口元を綻ばせた。

 戦闘中の凛々しい立ち姿とは異なり、目の前の先輩がか弱く映る。
ある意味、身も心も鉄でできていそうな鋼牙とは真逆。
 出会った初日は、遥か高みに見上げる存在だと思ったが、
そのイメージは二日目、三日目を経て徐々に変わっていた。
431: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/08/08(木)04:12 ID:xFW9h5s1o(8/10) AAS
 そして今日、彼女は歴戦の戦士であっても、その心は自分たちとひとつしか変わらない少女なのだと気付く。
ここ数日はそれに苛立つこともあったが、今は不思議と嬉しく、愛おしく感じられた。

 それから暫し、マミは感涙にむせび泣いていた。
さやかとまどかは温かくも気恥かしい思いで見守っていたが、やがて泣き止んだ彼女は言った。

「いけない、もうこんな時間……。鹿目さん、美樹さん、そろそろ帰らないと家に着く頃には真っ暗よ」

 時計を確認してハッとなる。
 まだ訪ねて十分かそこらしか経っていないと思っていたが、
あれこれ買い物に悩んで費やした時間が長かったのか。

「でも、マミさん大丈夫ですか? お邪魔してる私たちが訊くのも変ですけど……」

「大丈夫よ。本当に少し調子が悪かっただけで、大したことないんだから」

 まどかはまだ心配そうにしていたが、マミに急かされて席を立つ。さやかも従って玄関に移動した。

「じゃあ、そろそろお暇しますね。早く元気になってください」

「二人とも、今日はありがとう。せっかく来てくれたのに、おもてなしもできなくてごめんなさい」

「お大事に、マミさん。また明日」

 挨拶をして、ドアを閉める。

「ええ、また明日……」

 去り際の一瞬、ドアの隙間から見えたマミは儚く、とても哀しげだった。
432: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/08/08(木)04:14 ID:xFW9h5s1o(9/10) AAS
 * 

 それから、さやかはまどかと別れ、家に帰り、晩ご飯を食べて、お風呂に入り、眠りに就く。
 この日は珍しく危険に巻き込まれず、周囲で妖しい気配が蠢きもせず、平穏無事に一日が終わった。
 もっとも、今宵も街のどこかで誰かが魔女の虜となり、ホラーの餌食となったのかもしれないが。
そんなことをベッドの中で考えてしまい、怖くなって目が冴える。

「大丈夫だよね、きっと……。冴島さんだっているんだから」

 光り輝く黄金の鎧を思い浮かべ、少し安堵する。
 こうやってすぐ忘れられるのは、まだ心のどこかで危険が遠いものと感じているからだろう。
他ならぬ自分自身が危機に晒されたというのに。
 もっと明確に、近しい人間に犠牲が出れば考えも変わるだろうか――。

 さやかは頭を強く振り、今度こそ忘れることにした。
 次に思い出すのは、別れ際のマミの様子。
 あの時、「また明日」と言って別れた。

 「また明日」と言って次の日も無事に会えることが、どれほど幸運なことか。
 こんな自分でも、今は知っているつもりだ。
 だから、ささやかな祈りを込めて、その言葉を口にした。
 また明日、マミに会えますようにと。

 しかし、その翌日もマミが学校に来ることはなかった。
433: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/08/08(木)04:15 ID:xFW9h5s1o(10/10) AAS
ここまで
かなり遅くなってしまいました
もう少しでクライマックスの予定
434: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/08(木)19:20 ID:gD+XyzVAO携(1) AAS

435: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/08(木)20:31 ID:DKZMXMpZ0(1) AAS
>>1
今思うとマミさんは魔法少女サイドで唯一鋼牙にも零にも面識があるんだっけか。
さやかも零に会ってはいるけど名前まではまだ知らないし。このことは後々なにか効いてくるのかな・・・?と勝手な推測をしてみる。
436: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金)21:58 ID:pr7PlK/g0(1) AAS
乙でした。3話がどういう結末を迎えるのかが楽しみです。
437: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木)20:01 ID:250rChbSO携(1) AAS
乙です
果たしてマミがマミってしまうのかどうか
さやかの鋼牙観はやはり過剰で、いつか180度反転しそう
登場人物中では、まどかくらいが一番鋼牙を正しく捉えてそうな気もする
438: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/16(金)21:39 ID:Z2eAm03Qo(1) AAS
まあ一番の理解者はザルバさんですけれどね
439: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/18(日)20:03 ID:dOYn3mUSO携(1) AAS
それは当然でしょ
ここで言ってるのはクロスした側のキャラでという意味
440: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/20(火)00:16 ID:SAqSWi4Do(1) AAS
ザルバは鋼牙がコミュ障時代から面倒見てるもんな
そりゃ人間出来るわ、ホラーだけど
441: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/08/20(火)01:18 ID:8NTX6brio(1) AAS
このところ毎度で申し訳ありませんが
猛暑でPC共々へたっています
早朝に少しずつ進めていますが、もう少し涼しくなってくれれば
442: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/26(月)09:51 ID:tE4U2RaAO携(1) AAS
少しは涼しくなったかな?待ってます。
443: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/26(月)18:57 ID:mFEBVhO9o(1) AAS
PCが水没したとか言うオチは勘弁
444
(1): 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/08(日)19:48 ID:ViiqcW8SO携(1) AAS
まだかな
そういやSS−wikiのページが随分前から消えてるけど
以前は見れたよな
445
(1): ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/09/09(月)02:49 ID:tJWyDPCMo(1) AAS
ご無沙汰してます
闇を照す者もいよいよクライマックス
蒼哭、桃幻も発売
新作もあるらしい?
という頃にスムーズに投下できないのは悔しいです
ですが上手くいけば近日中には

>>444
全角スペースを含むタイトルが自動で半角に変換される仕様になって、そのせいでページにアクセスできない状況のようです(たぶん)
対応は管理人氏が検討中
消えたわけではないようなので、新しく作り直すのも良くないかと思い様子見です
446: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/13(金)23:42 ID:KhwK9dKR0(1) AAS
>>445
楽しみにしてます。

ではここで牙狼情報。
銀牙騎士ゼロこと涼邑零のスピンオフ決定→ 外部リンク:garo-project.jp
さらに雨宮監督曰く、全6話とのこと。→ Twitterリンク:keita_amemiya
447: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/15(日)14:10 ID:y8q1g/rAO携(1) AAS
3期ひとまず終わりましたね。
もうこの先何見ても驚かないぞと思っていたのに、弓がヌンチャクになったのを見て鼻水噴きました。

あれはぜひメガほむにマネして頭ぶつけて欲しい。

ヒュンヒュン ゴチン 「ほむっ!?//」
448: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/10/01(火)18:59 ID:GqgLvea9o(1/13) AAS
 *

 緑に茂った並木道を歩く。木立の隙間から入ってくる光が眩しくて心地良い。
 少女はぐるりと見渡すと、広場中央にある樹の四方を囲んだベンチに腰掛ける。
手に提げたビニール袋を脇に置くと、周囲を観察する余裕ができた。 
 
 平日の昼間とはいえ、大きな公園内には人も多い。
 散歩する老人。大学生か何かだろうか、談笑する若者。外回りらしきサラリーマンの姿もある。
 みんな立場は違っても、どこかから来て、どこかに帰るのだろう。ここはその途中、休憩に立ち寄っただけ。

 自分とは違う――そう、杏子は思った。
 行き場所も帰る家もなく、目的もなく暇を持て余している自分とは。
 グリーフシードと、食糧ないしは金が足りている限り、するべきことは特になかった。
必要になったらその都度、奪うなり盗むなりする。

 寂しいと嘆いたことはない。昔は感傷もあったが、もう感じなくなって久しい。
 それは今も変わらない。
 ただ、楽しそうに、或いは懸命に日々を過ごしている人々を見ていると、以前はなかった感情が疼いた。

 虚しい、と。
 
「くそっ……なんだって、こんな気持ちになりやがる……!」

 胸の虚無感を埋めるかのように、杏子は袋からリンゴを掴んでかじった。
 魔法少女の力を利用すれば、とりあえず食うには困らない。
しかし、毎日のように腹を空かせていた頃の方が、まだ美味いものを食べていた気がする。

 不意に、じんわりと懐かしさが胸を切なく締めつける。これも久し振りのことだった。
 杏子はリンゴを乱暴に咀嚼することで、込み上げる郷愁を噛み砕く。
449: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/10/01(火)19:03 ID:GqgLvea9o(2/13) AAS
 別に、今だって毎日三食を腹一杯に食べられる訳じゃない。
現に昨日から何も食べておらず、腹の中は空っぽだ。
 こうして食べるリンゴの味は昔と変わらない。充分に美味いと感じられる。

 だが、たとえ胃袋が満たされたとしても、真に空腹が埋まることはないだろう。そんな気がした。
 心にぽっかり開いた穴は今も広がり続けている。
 
――ったく……それもこれも、あいつのせいだ。

 杏子は心の中で一人の男を思い浮かべた。

 涼邑零。
 もともと杏子は、彼を追いかけて見滝原まで来た。
発端は子どもじみた対抗心だったが、彼を超えよう、倒そうと躍起になる間は、
過去も未来も、余計なすべてを忘れられた。

 零を追って強くなっていく実感は悪くなかったし、目標を持つと日々に張りが生まれるのだと初めて知った。
 それは希望と呼べるほど輝くものでもなかったが、何かに一生懸命になったのは随分となかったことだ。

 しかし、それも一昨日まで。
 ホラーの術中にはまり、幻影を見せられ、すべてを思い出した。いや、記憶は片時も忘れてはいなかった。
ただ、鮮明な光景として掘り起こされ、再び刻みつけられた。あの時の感情まで、まざまざと蘇ってきた。

 無意識に目を背けてきた過去を再び直視させられた瞬間、すべてが虚しくなった。どうでもよくなった。
あの日の雨に掻き消されたみたいに、心は湿気て燃え立たなくなった。
 こんな自分が強くなってどうするのか。零を倒したとして、何を望んでいるのか。そもそも望む資格があるのかと。
450: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/10/01(火)19:05 ID:GqgLvea9o(3/13) AAS
 そう、零に非はない。八つ当たりは自覚している。
 だが熱くならず関心を抱きもしなければ、無味乾燥な毎日を送っていれば、
少なくともこんな気持ちにはならなかった。いきなり梯子を外されたようなものだ。

 そして今、杏子は迷っていた。
 この街に留まるべきか、元の縄張りに帰るべきか。
 迷っているということは、諦めきれていないということ。
しかし何に執着しているのか、わからずにモヤモヤした感情を持て余していると、

「よっ、あんこちゃん」

 頭上から声が掛かった。
 顔を上げるまでもない。腰から下を見るだけで、声を聞くだけで誰だかわかる。
 溢れる陽気にそぐわない、見ているだけで暑苦しい格好の男は、
自分をあんこちゃんなどと呼ぶ男は、もっと言えば杏子に親しげに話しかける男は一人しかいない。

「またあんたか……何しに来たのさ」

 鬱陶しそうに溜息をつくと、零は許可も取らず杏子の隣に腰掛ける。
隣と言っても、杏子から斜め後ろ――直角に向いているので、
顔を合わせもしなければ、傍からは連れにも見えないだろう。
拒否すら面倒だったので放っておいた。

「手厳しいな、あんこちゃんは。ただの偶然だぜ。ひと仕事して休憩しようと思ったら、あんこちゃんがいただけ」

「どうだか」

「これでも暇じゃないんでね」
451: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/10/01(火)19:07 ID:GqgLvea9o(4/13) AAS
 皮肉のつもりか。一瞬ムッとなるが、ここで怒れば図星を指されたと思われる。それはそれで癪だ。
 だから杏子も努めて平静に、皮肉で返してやる。

「そりゃあ、商売繁盛で結構なことで」

「喜ばしいことじゃないよ。そんだけホラーに人が喰われるってことだし。
こんなに忙しい街も珍しい。それに魔女だっている。
あんこちゃんが、さっさと魔女を狩ってくれたら俺も助かるんだけどな」

「ま、そのうちね……」

 気のない声で答える。
 当面、グリーフシードには不自由していないし、とり急ぎ魔女を狩る必要はないのだ。
そんな気分にもなれなかった。

「あんこちゃんは昼飯? 美味そうなもん食ってるじゃん」

  曖昧にかわされても零は構わず、杏子の袋を勝手に物色している。
 しかし袋に入っているのは、リンゴがもう一個の他はコンビニのサンドイッチやおにぎり、あとは菓子ばかり。
大して美味くはない。
 
 そもそも人喰いの話から即昼飯の話に切り替えられるあたり、この男もどこかおかしい。
 慣れきっているのだ。日常のひとつなのだ。
 命懸けで戦うこと、人が喰われるのを見ること。それらが飯を食い、寝るのと同じくらい常態化している。
 
――気に入らない。

「欲しけりゃやるよ。好きに取りなよ」
452: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/10/01(火)19:08 ID:GqgLvea9o(5/13) AAS
 すると、さも珍しいと言わんばかりに、零は目を僅かに丸くした。
してやった、と内心で拳を握りつつ杏子は言葉を継ぐ。

「ただし、盗んだ金で買ったもんだけどね。食ったらあんたも同罪さ」

 ニタリと口の端をつり上げ、悪意たっぷりに言い放つ。
 零を試す意図もないではないが、ただ単に意地悪をしたかっただけかもしれない。
返事次第では彼を嘲笑うなり糾弾するなりして、苛立ちを紛らわすつもりだった。

 そして零は考えるまでもなく、

「そっか。そういうことなら遠慮しとく」

 手を引いた。
 あらかじめ用意していた答えを嘲弄と共に返す。

「ハッ、だろうね。どうせ正義の味方様はそんなことできないってんだろ」

「だって俺が食ったら、あんこちゃんの分が減る。そうなったら、どっかの誰かに悪いだろ」

 零の答えに、杏子は一瞬だが面食らった。
 彼は杏子の行為を否定しなかった。自由を阻害しなかった。
だが盗むこと自体を咎めはしなかったが、杏子の行動によって誰かが迷惑を被ると暗に伝えている。
自分の面子を気にしている様子はない。

 返事に迷っていると、零はからかい混じりの笑みを浮かべ、

「――みたいな答えが、正義の味方としては正解かな?」
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