[過去ログ] マミ「私は……守りし者にはなれない……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第三章 (805レス)
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152: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/12(火)11:44 ID:tJicC/h50(1) AAS
作者さん乙
牙狼や絶零達魔戒騎士の必殺技纏めたサイトってありそうでないな。ss書く参考に探してるんだけどさ
153
(2): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/12(火)16:23 ID:Wy8gn02s0(1) AAS
そろそろ分家で妄想・データベーススレ誰か立ててくれないかな

本筋に関係ない小話や考察とかをしたい人はいるだろうし。

ちなみにCR版の必殺技は過去ログを洗うと出てくる。
154
(2): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/12(火)18:34 ID:DwN4P6hV0(1) AAS
>>151
ワルプルギスと引き分けられるぐらいには才能はあったっぽい
155: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/12(火)18:41 ID:PTSnRrtu0(1) AAS
拒絶状態からじわじわとコミュニケーションが成立していく感じが良いな(零の話術に取り込まれてるともいうが)
いつか杏マミ零で打算抜きのお茶会できるといいね。あの二人にならマミさんもケーキ作り甲斐あるだろう
…でも零はどんなに(鋼牙やカオルくらい)親しくなろうが一線引いて孤独に浸りたがるから難しいか
156: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)01:31 ID:X3BXJZQy0(1) AAS
>>153
問題はどこにたてるか……この場所じゃ板違いだろうし

>>154
そうだったのか……ナチュラルにデカかったものがさらにデカくなったのか
157: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/03/13(水)02:44 ID:ImEDd0jLo(1) AAS
昨日はすみませんでした
連日の夜更かしが祟って少々調子を崩していたもので
ここまできたら最後まで書き溜めたいので、もう少し
158
(3): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)11:24 ID:FzIaV2tAO携(1/2) AAS
>>153
SSネタスレ、談義スレと考えればセーフじゃないかなあ。
読み手の議論やネタ投下もここの味とは思うけどね。

>>154
まどかの魔法少女の素質を決める因果はほぼゼロだと思う。まどかは如何なる不幸、試練、運命、野望も持たない平々凡々な普通の子。人の為になりたいというのも口だけで単に目標とやる気が無い事は当SSにて鋼牙に喝破された。鋼牙GJ。

因果の仕組みが知られていなかったため、因果の無いまどかに素質がある事の不自然さに、ほむらも気付かなかった。
当SSのほむらも、まだ気付いていないようだ。

なんての。
159
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)14:34 ID:kMHYnrR60(1) AAS
>>158
因果がゼロって事はないでしょ、だったら何でQBに選ばれたんだ?

上でも語ってる人が語ってる人がいたけど
まどかの人の力になりたいというのが全部が全部口だけというのはないでしょ
一周目でも絶望的な状況で勝ち目が殆どないのにほむらや町を守るためにワルプルギスに特攻したんだし
160: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)16:10 ID:Rnjfbj0SO携(1) AAS
>>158
いや、1つのスレから派生の談義スレなんて速報じゃダメでしょ
立てるとしたらしたらばあたりか、でも立てる必要も需要も感じないな
別に荒らしでも投下の邪魔でもなし、たまに書き込むくらいなんだからスルーでいいじゃない
どっちにしても派生となれば大事なのは1の意向では
161
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)16:40 ID:20iokdeAO携(1/2) AAS
>>159
その理屈だと、曲がりなりにも見滝原で魔女狩り続けてワルプルとも戦ったマミも
まるっきり上っ面だけの偽善者ではない、ってことになるが
これ読んでそんな評価をしてる奴は一部のマミ信者だけだろ
162
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)18:20 ID:Su7gDmIw0(1) AAS
そもそもまどマギで本当の意味で誰かのために戦ってる奴なんていないからな
結局は自分自身のエゴを押し付けてるだけだし
163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)18:29 ID:46hTYZGto(1) AAS
レズビアンなら全部許すのが豚と呼ぶのもブタに失礼な連中
164: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)18:44 ID:20iokdeAO携(2/2) AAS
とは言え、魔戒騎士が魔法少女とは違って真に誰かのために戦う
高潔な精神の持ち主、ってことかと言うとそう単純な話でもない
ある意味仕事みたいなもんだしちょっと意味合いが違う
165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)19:06 ID:OjAH3t8Z0(1) AAS
>>161>>162
じゃあ何か少しでも自分のためだったらそれは見せ掛けだけの偽善者だっていうのか?
正義の味方は純粋に誰かのためだけに戦う聖人君子でなくてはならないって何年前の価値観だよ……
魔戒騎士達と比べ過ぎなんじゃないのか
166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)19:58 ID:RUhTV9jWo(1) AAS
なんか、議論に見せかけてマミさんアンチとまどかアンチが暴れてるな。

本質が偽善だろうが、命懸けで善やってるんだから、何もしてない非偽善者より遥かに良いだろ。
くだらん事ほざいてる暇があるなら、コンビニでも行って1円でも多く募金して来い。
167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)20:24 ID:FzIaV2tAO携(2/2) AAS
>>158です。書き方悪かった…

英雄的な決断が出来る事と、因果(力と言ってもいい)の多寡は別、という意味だった。

まどかに目下の夢が無いというのは本来因果(=陰我)が少ない事を意味する。
ほむらの影響で後に因果が爆発的に増えてしまったが、まどかの最期の英雄的決断はどのループでも変わらなかった。

力さえあれば強くあり得るのか、力が無ければ英雄的に振る舞う事は出来ないのか?魔戒騎士にも当然言える事。
意見百出の問題だと思いますが。
168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/17(日)01:08 ID:VpVDex+g0(1/2) AAS
偽善かどうか他人が決めるのは傲慢でしかない
169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/17(日)01:10 ID:VpVDex+g0(2/2) AAS
偽善かどうか他人が決めるなんて傲慢でしかない
170: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/17(日)12:28 ID:BsxFtcvF0(1/2) AAS
まぁこのスレストップぶりが全てを物語っているね。

で、小ネタ・考察・妄想スレはどうする?
作者さんに意見を仰いでからにしたほうがいいのは百も承知だが
171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/17(日)14:08 ID:/azFOLLbo(1/2) AAS
確か前スレ辺りで、軽い雑談はOKって作者さんが言ってたと思うので、わざわざ別スレ立てる必要は無くね?
ただ、雑談OKなのをいい事に一部のファンがどんどんエスカレートして、誰得な妄想垂れ流すのが問題。

誰かに咎められたら暫くおとなしくなるけど、すぐにまた活性化するし…。
特に、>>67みたいなキャラに喋らすのは余りに痛すぎるので勘弁してほしい。
172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/17(日)16:36 ID:BsxFtcvF0(2/2) AAS
それは定期的に沸くキャラ叩きにも同じ事が言えるだろ
正直この10レス前後の流れは虫唾が走ったぞ

それに比べれば遥かにマシとか言うつもりは無いが痛すぎるというのは言いすぎだろ
173: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/17(日)21:31 ID:/azFOLLbo(2/2) AAS
あー、ごめん。言い方悪かった…。
勿論、キャラ叩きの奴らは論外よ。妄想の類いは、元々はキャラ叩きが暴れて悪くなった空気を何とかしようとしたのが始まりだし。

ただ、そういう下地があるので、今度は妄想の方がエスカレートしても、なかなか強く言えない。まあ、アンチの荒らしよりはマシか…って感じで。
でも、更新来てる!と思って覗いたら全部妄想談義だったりがザラなので、ちょっと自重してほしいってのは本音。

あと、座談会みたいなのは自分の黒歴史を掘り返されるみたいで、うわあああああああってなるのでホント勘弁して下さい(切実)
174: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/03/18(月)04:18 ID:7w+pZ8Vdo(1/13) AAS
前スレにも書きましたが、
キャラクターに対しては荒れる原因にもなりますので、言葉を選んでいただければと思います
もちろん「俺の〇〇はこんなじゃない」「魅力が出せていない」「捉え方がおかしい」
といった形なら、つまりSSへの批評批判でしたら歓迎ですが

ネタ、妄想に関しては、(上記の件についてもですが)
気になるかもしれませんが、悪気あってではないでしょうし、あったならなおのことスルーでお願いできないでしょうか

小ネタを書く方は自由ですが、書き込む前に他の方が不快にならないかどうか御一考ください
それと技名等データについては私がお願いしたものなので、ご理解ください

以上の理由から分ける必要はないと考えます

ですが、このスレ、SSとまったく関係ないものとして立てるのでしたら止める権利はありません

遅くなりましたが、投下します
175: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/03/18(月)04:20 ID:7w+pZ8Vdo(2/13) AAS
 だとしたら、零の指摘は正しい。
 おそらく彼は違う意味で言ったのだろうが。

「いえ、あなたの言う通りかもしれません。私は、私のことを知らない……。
でも、だからこそ、会わなくちゃいけないんです。でないと私……」

 目蓋が震える。
 マミは太股に落ちた拳をギュッと固く握った。気を抜くとまた泣いてしまいそうだった。
 ダメだ、まだ泣くなと、必死で己に言い聞かせる。
 
「生きる意味を見失ってしまう。何も残らなくなる……」

――キュゥべえに裏切られた私に残された……ううん、裏切ったのは私。
彼は私が友達だと思う限り友達だと言った。
彼は鏡のような存在で、大事なのは私の心ひとつ。
だからこそ、疑いと憎しみを抱いたら二度と友達とは見られなかった。

だからキュゥべえと決別した。
命さんは成り行きとはいえ私の正体を知り、受け入れてくれた。友達になってくれた。
命さんがいてくれれば、もう彼はいらないと思ったのかもしれない。

美樹さんは冴島さんに憧れている。それに今日のことで、きっと私にも幻滅したはず。
鹿目さんも美樹さんも、魔法少女の真実を知ってしまった以上、仲間には誘えない……。

一緒にいたら彼女たちはともかく、私は二人を求めてしまう。
二人は魔女とも、魔法少女とも……私とも関わりを持たない普通の生活に戻るべき。
私にはもう命さんしかいないのに、あの人を失ったら私は――
176: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/03/18(月)04:22 ID:7w+pZ8Vdo(3/13) AAS
 マミは俯き、沈んだ。
 あれこれ独りで考えていると、どうしても悲観的になってしまう。
 そこへ頭上から軽い調子の声。

「生きる意味なんて考えてる人の方が珍しいよ。
かくいう俺も意味なんてよくわかんないしね」

 だから生きる意味なんてなくたって平気だとでも言うのか。
そんなふうに、気楽に生きられない人間だっているのに。
 最初からないのと、あったものを失うのとでは、大きな差異がある。 
世界が色褪せて、何もかもが無味乾燥に感じられるのだ。

 その気楽さへの呆れは怒りに変わり、ひとこと言ってやろうとマミが顔を上げると――。
 同時に黒い物体が鼻先に突き出された。

「それでも、美味いケーキとお茶があれば、ちょっとは生きてて良かったって思える」

 ふわりと鼻腔をくすぐる香しさ。
 この香りは――チョコレート。
 零が注文していたチョコレートケーキだった。
 
「ほら。マミちゃんも食べなよ」

 いりません、と突っぱねようとした瞬間。

 クゥ〜、という音が。
177: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/03/18(月)04:24 ID:7w+pZ8Vdo(4/13) AAS
「あ……」

 発生源はマミのお腹からだった。
 小さな音だったが、マミは露骨に表情に表してしまった。
当然、耳聡い零が聞き逃すはずがない。

 そういえば昨日の夕方から何も食べていないと、今になって思い出す。
 泣き疲れて眠り、惰性で登校し、授業中も昼休みも物思いに耽っていただけだった。
その間、食事のことなど忘れていたし、空腹も感じなかった。
 心に引き摺られて、身体までもが生きるのを拒んでいた。

 それがどうだ。
 チョコレートケーキの香りを嗅いだ瞬間、死んでいた全身の細胞が生き返ったかのよう。
 灰色だった世界が色付いていく。

 目に飛び込んできたのは、テーブルに所狭しと並べられたスイーツの数々。
 彩り鮮やかなデコレーションが眩しく、甘い香りは否応にも食欲を刺激する。
今の今まで目にも映らなかったのに、自分でも不思議だった。
 
 ごくり――と、無意識に唾液を嚥下する。
 今度は最初より大きく腹の虫が鳴いた。

「や、やだ……」
 
 マミは顔を真っ赤にして恥じらい、両手で腹を押さえながら縮こまった。
 零は、くつくつと苦笑しながら、マミの前に新しいフォークを添えて皿を置くと、
 
「さ、どうぞ召し上がれ」

 右手を差し出し、恭しげに促した。
178: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/03/18(月)04:26 ID:7w+pZ8Vdo(5/13) AAS
 マミは悔しそうに零を見上げて数秒。
 観念したように息を吐いた。
 身体が求めている以上、虚勢を張っても仕方がない。言い訳の余地がない完敗だった。
 
 軽く会釈した後、フォークを手に取ると、まず全体を見回す。
 チョコを練り込んだ生地。
 層になったチョコクリーム。
 表面を白く覆う雪のような粉砂糖。

 シンプルで派手さはないが、他のケーキに微塵も見劣りしない。
見た目ほとんど黒と茶だけなのに、むしろ高貴ですらある。
 今まで見ていた、褪せた灰色の景色とは比べ物にならない美しさ。

 既に零に対する屈辱感は頭になく、マミの胸は期待に踊っていた。
 いつもお菓子を前にすると、日々の疲れや不安を束の間でも忘れ、幸せな気分に浸れた。
 流石に普段ほどではないが、無気力、無感動に錆ついていた心は確実に動き出していた。
 
 フォークで突き刺して、一部を口に運ぶ。
 甘さとほろ苦さが絶妙に組み合わさり、舌の上で解ける。
 一口にチョコレートの美味しさが凝縮されていた。

 食べ進めるごとに、忘れていた食欲が目覚めていく。
 もっと、もっと食べたいと欲している。
 生きる意味も見失い途方に暮れていたのに、身体は生きたいと渇望していた。

 大げさだが、今この瞬間だけは心の底から思う。
 生きていて良かった、と。

 
179: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/03/18(月)04:27 ID:7w+pZ8Vdo(6/13) AAS
 たった一個のケーキに、こんなにも揺さ振られるなんて。
 こんなことが堪らなく嬉しい単純な自分が情けなかしかった。

 そして、悲しくて寂しかった。
 キュゥべえや杏子と、何度も一緒に談笑しながら食べた想い出が蘇って。
 まどかやさやかと食べることがもう叶わなくて。

 お菓子が美味しかった理由。お茶会が幸せだった理由。
それは単に味だけじゃない。大切な誰かと時間を共有できたから。
 もし一緒だったなら、どんなに楽しかったろう。きっと何倍も美味しかったはず。

 でも、ここにいてほしい人は誰もいない。
 それでも、ケーキはやっぱり美味しかった。

 喜怒哀楽。
 様々な感情が一気に押し寄せて、胸が詰まって言葉にならない。
 瞳の端から、ずっと堪えていた涙が溢れる。

 ポロポロ零れて止まらない涙。
 マミは拭うこともせず、一口一口を大事そうに噛み締めた。
 口内を満たすのは甘味と苦味。それと少しの塩味――。
180: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/03/18(月)04:29 ID:7w+pZ8Vdo(7/13) AAS
  
 皿を綺麗に平らげたマミは、紅茶を含んで口を洗う。
鼻から息を吐くと、紅茶の香りと心地良い満足感だけが残った。
 不安から逃げる為、がぶ飲みしても得られなかった精神の安定。
それが僅かだが戻ってきた。
 
 何故だろう。それほど長く、激しく泣いた訳でもないのに、心が軽くなった。
独りの時は、何時間泣いても澱のように溜まっていく一方だったのに。
 零の前で泣いたことも後悔はしていない。彼のおかげで気持ちが楽になったのは紛れもない事実。
 
 ただ、ひとつ問題がないではなかった。

――は、恥ずかしい……。

 落ち着くと、猛烈な羞恥心が湧いてきた。
 そう思えるだけの余裕が戻ったのは喜ばしいのかもしれないが。
 マミは伏せた顔をなかなか上げられずにいた。

 泣きながらケーキにがっつく女を見て、彼はどう思っただろうと。
 また笑われるか。それとも、親身になって同情されるか。
 
 数十秒の後、そ〜っと上目遣いで零を窺う。
 結果は、どちらでもなかった。
 零はこちらに見向きもせず、頬杖をついて窓の外を眺めていた。
食べている間、ずっとそうしていたのだろうか。
 
 今がチャンスと、急ぎ取り繕うマミ。
 顔と口元を拭いて、お絞りで頬の火照りを冷まし、深呼吸。
 ようやく人に晒せる表情になってから、もしかしたら、と思う。
181: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/03/18(月)04:31 ID:7w+pZ8Vdo(8/13) AAS
――これも、この人なりの気遣いだったのかしら……。
それとも、本当に深入りする気がなかっただけ……?
どっちにしても、私にとって一番嬉しい対応だったけど――

 マミも零の視線を追ってみた。
 彼が見上げる空には、欠け始めた月が雲の切れ間から覗いていた。
 雨脚も弱まっている。

 それから長い間、マミと零は月を見上げていた。
 二人とも一言も発しなかったが、気まずい沈黙とは無縁だった。
 周囲の雑音も気にならない。何も語らなくてもいいのだと思えた。

 もしかしたら、もしかして。
 このまま、すべてがうまくいくんじゃないか。
 雨がいつか必ず上がり、黒雲が晴れ、夜明けが来るように。
 甘えた考えだとしても、期待せずにいられなかった。

 実際は何も変わっていない。気持ちがやや上を向いたに過ぎない。
 なのに、映る世界は違って感じられた。
 
「あの……せっかくですから、少しお話しませんか……?」

 切り出したのはマミから。
 一歩を踏み出せば、何かが変わるかもしれない。
そんな、何の根拠のない漠然としたプラス思考。
 その瞬間、マミは希望を垣間見ていた。
182: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/03/18(月)04:32 ID:7w+pZ8Vdo(9/13) AAS
 共通の嗜好を持つ者同士だった為か、それなりに話は弾んだ。
 この街で美味しい店を教えたり、
逆にこれまで行った店で特に美味しかった店を聞いたり。

 零は自分が注文したスイーツを気前よくマミにも分けてくれた。
 マミも最初こそ遠慮したものの、最後には誘惑に抗えず、厚意を受け取った。

 彼は本当に命とは真逆だった。
 他人に深入りしないし、胡散臭い発言もある。
かと思えば、妙に紳士的だったりもする。
 温かいのか冷たいのかわからなくて、どうしていいか混乱してしまう。
 
――何て言ったらいいんだろう。本当に掴みどころのない人……。
でも、不思議と嫌いじゃない――

 命との会話がひたすら安らぎに満ちていたのに対し、零は気が抜けない。
良くも悪くも緊張感のある時間。少なくとも退屈はしなかった。
もし彼を詳しく知る機会があったなら、それが良い方に傾いただろうか。

 そう思う程度には、マミは零に心を開きつつあった。
 態度も軟化し、ぎこちない笑顔を浮かべもした。

 しかし――。
183: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/03/18(月)04:34 ID:7w+pZ8Vdo(10/13) AAS
 閉店が近付くにつれ、マミは次第に無口になっていった。
 命はまだ来ない。
 零と話す前より強い焦燥に駆られる。

 笑顔が翳っていくのは止められなかった。
マミ自身にも、零にも、誰にも。

 そしてオーダーストップを経て、閉店。
 肩を落として店を出たマミに、零が言った。

「それで、マミちゃんはこれからどうする?」

「私も、帰ります」

 訊かれるだろうと、あらかじめ用意していた答えだった。
 零は真剣な顔つきで何か言いたげにしていたが、

「そっか。じゃ、気を付けて」

 と、背を向けて去っていく。
 その背中を、マミは一礼して見送った。

「ご馳走様でした。それと……ありがとうございました」

 暫く反対に歩いたマミは立ち止って振り返る。
 零が見えなくなったのを確認すると踵を返し、また店の前まで戻ってきた。
184
(1): ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/03/18(月)04:35 ID:7w+pZ8Vdo(11/13) AAS
――涼邑さん……ひょっとして私の嘘に気付いてたかも。
最後まで読めない人だったな……――

 零との時間は楽しい。しかし、求めていたものではない。
 彼では命の代わりにはなり得ないし、代わりなんて零にも失礼だ。
もうキュゥべえの時のような自己嫌悪に苛まれるのは嫌だった。

 運良く通りから見えにくく、店の周囲を見張れる物陰に入る。
 自分の執着が異常だという自覚はある。でも、どうしても諦めきれなかった。
せめて、もう一度だけでも会って確認したかった。

 故にマミは、この場に残ることを選択した。
 零には悪いと思っているが、心配を掛けたくなかったのだ。

 もう春だが、まだ雨が降ると冷える。ずっと暖かい店内にいたせいか、外は余計に寒かった。
 一応ここは建物の陰ではあるが、雨を完全には凌げない。
冷たい雨が時間を掛けて全身を濡らし、体温を奪う。

 それでもマミは吐息で手を温めながら、命を待った。
 待って、待って、待ち続けて。

 いつの間にか日付が変わっていた。
185: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/03/18(月)04:37 ID:7w+pZ8Vdo(12/13) AAS
 月は再び分厚い雲で覆い隠され、雨は勢いを増す。
 髪の毛や服から滴るほど、マミは全身くまなく濡れていた。

 最早、信じて待つのも限界だった。
 魔法が解けたかのように、今では悲観的な思考しか浮かばない。
 希望を抱いた分、失望も大きかった。
 暗がりで独り、ぬか喜びの代償を噛み締める。

 眺める街の明かりがひとつ、またひとつと消え、マミの瞳からも光が失われていく。
 灰よりもなお暗い色に変わっていく。
 やがて世界が漆黒に染まっても。
 遂に夕木命は現れなかった。
186: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/03/18(月)04:41 ID:7w+pZ8Vdo(13/13) AAS
ここまでで一区切り
3話Aパートでしょうか
続きは少し後になるかもしれませんが、来週また経過報告は

基本的には、さやかまどかほむらを鋼牙担当というか主に絡む役割、マミ杏子を零が担当と考えています
2話3話はマミと杏子が中心だったので、必然的に零が目立ったと

>>130

私見ですが、零が本当の意味でシルヴァに感謝と愛情を抱くようになったのは、庇って壊れてからじゃないかな
と思っています
大人と子供で言えば、一期の途中までは子供っぽさがあり、それがミステリアスな雰囲気にも繋がっていた
「俺たちは魔戒騎士じゃないのか!」のあたりから変わったような気がします
187: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/18(月)09:50 ID:3ASRUbFy0(1) AAS
口喧嘩で荒んだ心が癒されました。乙です。

料理漫画好きの俺から見てもおいしそうなケーキの描写と零の優しさの表現がすばらしい。
なんとか真実がバレる前に零と打ち解けないと・・・。
188: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/18(月)19:08 ID:nYAAcTtF0(1) AAS
乙です。
ここで零が騎士だってマミさんが知ると思っていましたが持ち越しのようで。

今後両者がどうなるか何とも緊張感のある展開ですな。
189: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/18(月)21:07 ID:uYO/v/Cv0(1) AAS
良かったね、良かったねマミさん…て思った直後にこれだよ!ひどいよ作者!あと投下乙!
190: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/19(火)10:03 ID:v1PSMxfAO携(1) AAS
牙がぉーーーん!狼

Aパート終了乙!

マミは辛い事ばかりだが……>>1の手腕もあって、きっと挫けずに生き抜いてくれると信じられるよ。きっとね…
鋼牙ともまた絡んで欲しい。

ところで今回のマミさん、腹ぺこマミさん、がん食いマミさん、びしょ濡れマミさんと、上品にエロさが薫るのが>>1のクオリティですよ。
191: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/19(火)10:36 ID:8c7bAIqAO携(1) AAS
>>1
とりあえず零は爆発するといいよ。
192: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/19(火)12:18 ID:JQLKD+Mq0(1) AAS
地味にあの悪夢の日の後から零の時系列で一番古いのは
【果実】でミサオを交通事故から守ってケーキを御馳走してもらったシーン。
よく見るとシルヴァの位置がネックレスになっている。コートの下は二期の黒シャツだが。

実は零は東の管轄にちょっかいを出す以前、変化の薬で阿門法師に成り済ましたバラゴに鋼牙が静香や道寺を殺したといううその情報を吹き込まれたというバックストーリーがある。そこから一期初期のようなアブナイ奴みたいな振る舞いをするようになったものと思われる。
193
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/23(土)16:01 ID:M+liiQvf0(1) AAS
△速報!△ ←牙狼のアイキャッチ風に

なんと、七月に邪美烈花主役のスピンオフ映画。その名も

牙狼〜桃幻の笛

が公開決定!シグトもいるよ!
194
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/23(土)23:06 ID:DEfc9RRf0(1) AAS
このSSほどはまったSSが無い位このSSが優秀な件について
195
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/24(日)01:48 ID:7lwtHRgAO携(1) AAS
優秀だよ?このSSとこの>>1は。
196: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/25(月)02:04 ID:4BB2EkFEo(1) AAS
魔翌竜...上演22:50〜...俺未成年...死にたい...
197: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/03/26(火)01:44 ID:ksaxkj7Po(1) AAS
ちょっと展開が煮詰まってないので、まだあまり書けていない状況です
その分、wikiの追加や手直しなどしようかと

いつも多くのコメントありがとうございます

>>193
スピンオフとは予想外で楽しみです
法師の派手な戦いが見られそうで期待

>>194>>195
恐縮です。期待にこたえられるよう頑張ります
198: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/26(火)23:56 ID:xxmcgz3e0(1) AAS
今思ったけど
こんな文章を書く才能があるのなら小説を書いてなんかの賞とかに応募すればいいと思った。
この世には狂気太郎というホラー小説を書いている人がいて、その人も最初はネット小説を書いてから小説を賞に投稿して見事賞を取ったっていう経歴がある。
199: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/27(水)00:32 ID:RJTIm2nZ0(1) AAS
更新が来たと思ったらこれだよ…
紛らわしいなsageろよ
後、応募しろだのなんだのは余計なお世話だろ
本人の趣味でやってる最初の方で言ってるんだし
200: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/28(木)01:14 ID:PaL8YQAW0(1) AAS
というか>>1を貶める?下に見る?という訳ではないが二次創作でうまいからっても設定組みはして無いじゃん。
ある程度用意されてる材料を使ってるのであって応募とかその材料も1から用意しなきゃいけないんだから労力も変わってくるが
最初がネット小説っていっても二次と一次じゃ雲泥の差があると思うぞ。商業に応募するってことに関しては
201: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/28(木)01:34 ID:2j5b9awAo(1) AAS
一次は設定も世界観もキャラも全部考えないといけないしな
某サイトとか他作品の焼き増しとかテンプレばかりで散々なのばっかだし
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あと 604 レスあります
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