[過去ログ] さやか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第二夜 (1002レス)
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190: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/05/11(金)02:44:16.52 ID:Lb8eNkgno(6/9) AAS
 実際、そのような目で見られることは多かった。
 頼られるのは嫌いではない。だが、時に勝手なイメージを押し付けられて、辟易としていたのも事実。

「私、ずっと姉か妹が欲しかったんです。
昔は友達……の妹を見てて、いいなって思ったりしたんですけど、今は……」

 チラリと上目遣いに命を窺うマミの頬は、照れで微かに朱に染まっていた。
 彼女は、本当に人の心に入り込むのが上手い。
 優しくて、大らかで、会話上手で。これが人生経験だとしたら大したものだと思う。マミはすっかり命に心を許してしまっていた。
 そんなマミの気持ちを知ってか知らずか、ふと話が途切れた頃、

「ねぇ、図々しいかもしれないんだけど、もし迷惑でなければ、また会えないかしら」

 と命が言った。
 耳に届いた瞬間、マミは全ての動作を――呼吸さえ止めて固まった。
まさか、命の方からそんな頼みが聴けると思わなかった。

 彼女が何気なく呟いた一言は、マミが切望して止まなかった言葉。
だが、もしも拒絶されたらと思うと、臆病故に切り出せなかった。
 
「私と……ですか?」

「もちろん。あの二人が一緒でもいいし、あなた一人でも。日頃の息抜きに遊んだり、お茶飲んだりしましょ?
私まだ、こんな程度であなたに恩返しできたなんて思ってないもの。
それとも、やっぱり迷惑? 私じゃストレス解消にもなれない?」

 寂しげに眉をひそめる命に、マミは激しく首を振る。
 あり得ない。今日この数十分だけでも、どれだけ心が華やぎ、安らいだか。
 答えは訊かれる前から決まっていた。
308: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/06/19(火)02:08:15.52 ID:cA/hk6mBo(1/5) AAS
――命さんの存在があったから、私は真実を確かめる勇気を持てた。
 その勇気は、果たして私が思っているほど素晴らしい感情なのかしら――

 一度でも考えてしまったが最後、疑惑は膨らんでいく。
 悪い方へ、悪い方へと、転がるように思い詰めてしまう。 
 
――たった一人でいい。私を愛してほしい。最初は、ただそれだけだったはず。
 なのに私は、命さんがいるからキュゥべえを失っても耐えられると考えてた。
 それは、より満たされる一人と出会ったら、前の一人はいなくてもいいと思っていることにならないの?
 私は、キュゥべえと秤にかけて命さんを選んでいたとでも?

 正体も定かでない謎の生物であるキュゥべえよりも、同じ女性の……ううん、同じ人間だから?
 私に隠し事をしている彼よりも、私を温かく包んでくれる人だから?

 だから、キュゥべえを失っても耐えられる……?

 いなくなってもいい……?

 いえ、むしろ……。

 キュゥべえは……もう、いらない……?――
316: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) 2012/06/19(火)20:57:23.52 ID:HruP6OoG0(2/2) AAS
いい忘れた乙です
633: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)02:54:58.52 ID:RipvUQ6So(3/13) AAS
「ふん、んな見え透いた挑発に引っ掛かるかっての」

 言って、杏子はそっぽを向いて考え込み始めた。
 零の思惑、予想される危険、自分の得るメリット、デメリット。
それらを考慮し、安易に惑わされることなく断を下す為に。
 真剣に悩む余り、唇の横にクリームを付けたままの姿は、なかなか愛嬌があった。

 零は軽く息をついて、彼女の決定を黙って待つ。
 彼女も、そう何度も同じ手に引っ掛かるほど馬鹿ではなかったということだ。
むしろ、そうでなくては困る。

 だが杏子は挑発には引っ掛からずとも、零の話術には誘導されていた。
 杏子は少女とはいえ、魔法少女としては歴戦の兵。
相手にもよるが、その戦闘力はホラーにもひけは取らないだろう。
ソウルメタルの問題さえなければ、勝つ目は充分にある。

 故に、修業時代の零がホラーに苦戦したことと同列に語れはしない。
零もまた、戸惑いこそしたものの、初戦で魔女を破っているのだから。
 そんな企みを知ってか知らずか、杏子は口の端のクリームをぺろりとなめとり、挑戦的な笑みを浮かべた。

「ま、あんたが何を考えてるのか知らないけど……いいよ、やってやろうじゃん。
この街でかち合う可能性が高いってんなら、
ホラーがどんなものか、いっぺんやりあっとくのも悪くないかもね」

「そうこなくっちゃ」

 零もニヤリと笑って指を弾く。
 すると途端に、杏子は表情を硬化させた。
思い通りと言わんばかりの反応が気に入らなかったのだろう。
902
(1): ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/12/20(木)03:18:15.52 ID:P2uWvMw9o(5/6) AAS
「さてと……終わったぜ、あんこちゃん」

 静寂を取り戻した廃ビル内に残ったのは、零を除いて一人。
 協力者にして今回の功労者、もしかすると二戦目の対戦者になる少女。
 今夜は流石に疲れたし、杏子も負傷しているのだから再戦は避けたいところだが、どうなるやら。
 とりあえず感謝を伝え、休戦を申し込むべく振り返り、

「……あんこちゃん?」

 異変に気付く。
 杏子は先ほどと変わらず膝をつき、顔を伏せたままだった。
 ホラーから解放されてなお、彼女が静かな時点でおかしかったのだ。

「おい! どうした!?」

 両肩を掴んで揺さ振っても返事はない。
 持ち前の生意気さも、猛々しさも、完全に沈黙している。
 顔を上げさせても、曇った瞳に涙を滲ませ、虚空を見つめるばかり。

 零はハッと息を呑む。
 そこにいたのは自分の力だけを頼りに生きるしたたかな野良犬ではなく、
まるで冷たい雨に濡れて途方に暮れている捨て犬のようだった。
905: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/12/22(土)00:00:07.52 ID:5fSCQJE0o(1) AAS
コピペミスがありました
>>901>>902の間に



 久しぶり――と言っても、数分と経っていないのだが――に声を発したシルヴァに、
零は事もなげに答えた。
 手練の騎士が思わぬ不覚で格下のホラーに敗れるのが事実なれば、
歴戦の騎士がそう簡単には倒されないのも、また事実。

 心滅獣身のガロ、ガルム、キバ、レギュレイス。
 数々の幸運と鋼牙に助けられた分も大きいが、零とて伊達に生き残ってきていない。
 銀牙騎士の称号を継いではいない。
 この程度の逆境、幾度となく潜り抜けてきた。



といった文が入ります
なくても通じますが一応
997: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/11(月)02:03:29.52 ID:YBVQg99/o(3/5) AAS
 初めてではなかった。むしろ、嫌になるくらい見飽きていた。
 数えきれないほどの悪夢。
 それでも夜毎うなされ、目覚めた時には汗だくになった。
 
 最後の幻を見た時、ふたつの悲劇が杏子の中で重なった。
 恋人たちと家族、どちらも崩壊の最後の引き金を引いたのは人間だ。
或いは後者は既に人間ではなく、魔法少女という異形だったのかもしれないが。

――そういや、誰かが言ってたっけな……。

 幸せは長くは続かないと。

 人は変わる。
 人は死ぬ。
 どんな想いも、いつかは消えてなくなる。
 
 親子も兄弟も友達も恋人も。
 強く絆で繋がった大切な者同士でさえ、変化と別離から逃れられない。
 人は幸せな時の中で生きていけはしない。
 
 この世界の絶対的な摂理。
 なら、愛とは一瞬の幻想に過ぎないのか。
 そんなこと、頭ではとっくにわかりきっていたはず。
 それでも――。
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