[過去ログ] さやか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第二夜 (1002レス)
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631: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)02:38 ID:RipvUQ6So(1/13) AAS
「……ちっ! 食い物に罪はねーからな……」
掴んでいた零の胸倉を突き放し、反動で椅子に戻る。
いや、折れたという表現は杏子が認めない。ここで暴れれば、自身の言葉が確実に嘘になる。
それを嫌ったのだ。
杏子はフォークを手に取ると、ケーキに突き刺して丸ごと口に運ぶ。
その瞬間の口元の綻びようは、普段の刺々しさや強かさ、素っ気なさを微塵も感じさせない年相応の少女。
不覚にも隠し切れずに笑みがこぼれてしまった杏子はキッと零を睨むが、零の視線は既に外れていた。
気を回した訳ではない。
特に関心がなかった。
安堵して手当たり次第に手を伸ばす杏子にも構わず、零の注意が向いているのは店内のある一席のみ。
一時、子供に戻った少女を微笑ましく思うこともない。
休息の時間は終わり。その眼、その思考は、獲物を追う狩人に切り替わっていた。
杏子が来てから二十分少々。テーブルの上はほぼ片付いてきていた。
零もたまに摘まむが、ほとんど平らげたのは杏子。会話もなく黙々と食べ進めた。
途中、何度か視線が交わったが、急かされたりもしなかった。
折角の機会だからと、じっくり味わいたかった。
さっさと食べ切ってから本題に入りたかった。
どれもあるが、一番の理由は待っているのだ。
零の纏う空気が変わったのを察している。零が時を待っているように、杏子も"その時"を待っている。
零が動いたのは、杏子が最後の皿に手を付けた頃だった。
632: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)02:40 ID:RipvUQ6So(2/13) AAS
「なぁ、あんこちゃん。
前にも言ったかもしれないけど、俺は君と俺のどっちが強いかに興味はないんだよね。
だって、俺が勝っても得る物がないからさ」
ガタッとイスを鳴らし、立ちかける杏子。
零は、逸る子供を宥めるように片手で制して、続きを語る。
「だけど、俺にも得があるんなら考えてもいい。だから、あんこちゃん……ホラーと戦ってみる?」
「ホラーと……」
杏子が大人しくなり、怪訝な顔つきで零を見返す。無言で続きを催促していた。
「ああ。あんこちゃんがもしホラーを倒せたなら、俺より優れた証明にはなるね。
あんこちゃんがホラーを倒してくれたら俺も楽できる。
その上で満足いかなければ、その時は戦ってもいいよ」
「優れた証明? どうして直接やり合ってもないのに、そんなことがわかるのさ」
「あんこちゃんはホラーと戦った経験がない。
ホラーをまったく知りもしないのに勝つなんて、俺にはちょっと無理だな。
これでも昔は散々だったんだぜ」
と、かつての苦労を匂わせつつ、最後に零は軽く肩をすくめ、
「で、どう? 杏子ちゃんが自信がないなら、無理にとは言わないけど」
またしても杏子を焚き付ける。
対抗意識を煽る露骨な挑発。彼女を意のままに動かすには最も効果的と思われる手段。
だが、杏子の反応は予想と異なった。
633: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)02:54 ID:RipvUQ6So(3/13) AAS
「ふん、んな見え透いた挑発に引っ掛かるかっての」
言って、杏子はそっぽを向いて考え込み始めた。
零の思惑、予想される危険、自分の得るメリット、デメリット。
それらを考慮し、安易に惑わされることなく断を下す為に。
真剣に悩む余り、唇の横にクリームを付けたままの姿は、なかなか愛嬌があった。
零は軽く息をついて、彼女の決定を黙って待つ。
彼女も、そう何度も同じ手に引っ掛かるほど馬鹿ではなかったということだ。
むしろ、そうでなくては困る。
だが杏子は挑発には引っ掛からずとも、零の話術には誘導されていた。
杏子は少女とはいえ、魔法少女としては歴戦の兵。
相手にもよるが、その戦闘力はホラーにもひけは取らないだろう。
ソウルメタルの問題さえなければ、勝つ目は充分にある。
故に、修業時代の零がホラーに苦戦したことと同列に語れはしない。
零もまた、戸惑いこそしたものの、初戦で魔女を破っているのだから。
そんな企みを知ってか知らずか、杏子は口の端のクリームをぺろりとなめとり、挑戦的な笑みを浮かべた。
「ま、あんたが何を考えてるのか知らないけど……いいよ、やってやろうじゃん。
この街でかち合う可能性が高いってんなら、
ホラーがどんなものか、いっぺんやりあっとくのも悪くないかもね」
「そうこなくっちゃ」
零もニヤリと笑って指を弾く。
すると途端に、杏子は表情を硬化させた。
思い通りと言わんばかりの反応が気に入らなかったのだろう。
634: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)02:57 ID:RipvUQ6So(4/13) AAS
「けど、忘れんじゃねーぞ。あたしが納得しなきゃ、その時は本気で戦うんだな?」
「ああ、誓ってもいいよ」
「……ふんっ、ならいい。それで?
まさか、いつ出てくるかわからないホラーをあたしに待てってんじゃないだろ?」
つまり、何か当てはあるんだろう、ということだ。
当然、ある。それも、すぐ側に。
彼女の驚く顔を思い浮かべながら、零は告げた。
「ホラーなら既にいるさ。この店内にね」
「はぁっ……!?」
案の定、驚愕に目を見開く杏子。忙しなく周囲に視線を巡らせる。
期待を裏切らない反応。暫く眺めていたくもあったが、あまり騒がれては相手に警戒されてしまう。
零は軽く杏子の腕を引き、意識を引き戻した。
「まぁ落ちつきなよ、杏子ちゃん」
「……どいつがそうなんだ? 確か、ホラーは人に取り憑くって言ったな?」
「ほら、あそこに女の二人組がいるだろ?」
零の人差し指が立ち、ゆっくりと店内の一角を指す。
指の動きにつられて、杏子の目もそちらに向いた。
そこには杏子と同年代の、見滝原中学の制服を着た少女。
向かいには、どこかの会社員らしき制服姿の女性が座っていた。
635: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)03:00 ID:RipvUQ6So(5/13) AAS
中学生と大人の二人組。一見した限りでは、あまり接点のなさそうな組み合わせだ。姉妹にも見えない。
どちらも楽しそうに談笑していた。
耳を澄まして集中すると会話の内容まで聞き取れたが、どれも他愛のない雑談だ。
学校や友人の話、或いは恋の話。どれも杏子には願っても手に入らない過去のもの。
ふと、チクリと微かに胸の奥を刺すような疼くような痛みを覚えたが、杏子は無視して零に問う。
「で、どっちがホラーなんだ?」
「ああ、それは……あっち」
と言って零が指し示したのは――中学生の少女の方だった。
「あいつが……!?」
杏子は半立ちになって、まじまじと少女の方へと目を凝らす。
どこからどう見ても、ただの人間。
笑ったり唇を尖らせたり、ころころ表情を変える、どこにでもいる一般的な中学生。
とても化け物が取り憑いているようには見えない。
ましてや、そのすべてが偽り、演技であるなど信じ難い。まだ向かいの女の方があり得る。
零がしようとしていることは、そして決闘に応じる条件として杏子に提示したことは。
「そ、あんこちゃんには、彼女を殺してもらいたいんだよね」
あの見るからに無垢な少女を殺すこと。
零は軽々しく残酷な要求を言ってのけた。
636: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)03:04 ID:RipvUQ6So(6/13) AAS
「な……んだと……?」
僅かに一瞬、杏子に隠し切れない動揺が走った。
化け物相手なら、どんな怪物だろうと怯みはしない。残虐にもなれる。
魔法少女なら自分と同類、遠慮も容赦も必要ない。共に戦いに身を置く者。
どんな理由だろうと望んで選択した結果なのだから。
だが、ただの人間、それも同じ年頃の少女を殺すなど経験あるはずがない。
言うなれば彼女は、杏子が引く、ある一線の"向こう側"の人間。
"向こう側"の人間とは関わりたくなかったし、関わってはいけないという意識もあった。
ただ、必要ならば利用するだけの関係で。
そもそも杏子は取り憑いている、としか聞いていない。
当然、憑いているなら祓うこともできる、魔女の口付けと似たようなものとばかり思っていた。
あわよくば誰の犠牲も払わず倒せるものと。
そんな甘い話がいつもいつも転がっているほど、この世界は甘くない。
とっくに理解も覚悟もしていたはずなのに。
もしかしたら、自分たち魔法少女も化け物に――魔女に変わるかもしれないのに。
零の忠告も忘れ、杏子が身を乗り出しかけた時、
「座ってな、あんこちゃん。それと、あんまり見るのもまずい。
気付かれるからな」
頭頂部に感触。思いの外、強い力で身体が沈み、半ば強制的に着席させられる。
零の大きな手に頭のてっぺんを押さえつけられていた。
637: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)03:07 ID:RipvUQ6So(7/13) AAS
「ちっ……わかったよ……」
杏子は抵抗しなかった。振り払ってもおかしくないところを、されるがままにしている。
どうすべきか戸惑っていた。子供っぽい反抗心など、完全に鳴りを潜めるほど。
「なぁ、ほんとにあいつに間違いないの?
魔女の口付けを受けた人間でも、こんだけ近ければ何かしら感じるもんがある。
けど、あいつからは何にも感じやしないんだよね」
ホラーと魔女は違うのだろう。こんな問いは無意味かもしれない。
それでも、杏子の勘は彼女ではないと告げていたのだが。
「間違いない。魔戒騎士には見分けられるんだよ。特殊な判別方法でね」
「ふぅん……あっそ」
杏子は追及しなかった。本職の零に言われては、もう何も言えなかった。
彼女に間違いないと言われて、密かに落胆していることに気付く。
揺れている自分を認めたくなくて、零に知られたくなくて、杏子は意図的に話を逸らした。
「にしても、どうやってあいつと戦うのさ。お膳立てはあんたがするのかい?」
「どうもしなくていい。俺が連れの女を適当に引きつけとくから、
あんこちゃんは無理やりにでも連れ出して戦えばいい。
連中は人前では正体を見せない。けど、人のいないところに引きずり込んでやれば正体を現す。
あ、でも正体を現すまでは攻撃するんじゃないぜ?」
「何でさ?」
「そうじゃないと取り憑いたホラーは倒せないんだ」
638: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)03:08 ID:RipvUQ6So(8/13) AAS
「……そういうもんなのか?」
零の返答は、どこか疑わしい。疑わしいが、杏子には真偽を確かめる術がない。
半信半疑でも従うしかない。
きっと零は、この迷いも見抜いている。だから今も、わざとらしい笑みを浮かべているのだろう。
「そういうもん。それじゃ頼んだぜ」
言って、零は杏子の背中を叩いて立ち上がった。
遂に作戦決行、なのだろうか。自分はまだ、心の整理がついていないのに。
「おい、どこに……」
「さっきのあんこちゃんの動きで、勘付かれたみたいだからさ。
早めに動かないと、連れの女に手を出すかもしれない」
いよいよ時間がない。
心に起こった細波は徐々に激しくなる。
杏子の瞳は目に見えて揺れていた。
「ああ、大丈夫。会計なら済ませてあるから」
「じゃねーよ……! そうじゃなくって……」
言い淀んだ杏子は頭を掻きむしって煩悶とした。
――くそっ……何をやってんだ、あたしは! 頭ん中がグチャグチャで、考えがまとまらねー。
でも、違う。それだけじゃない。
あたしは迷ってる。あたしは……何を言おうとしてんだ?――
639: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)03:11 ID:RipvUQ6So(9/13) AAS
本当は、言いたいことは決まっている。
それを言っていいのかと、ほぼ無意識に躊躇いを感じているのだ。
誰かを犠牲にしたくない。間接的にではあるが、救いたいという気持ちの表れ。
だからこそ口にすることに抵抗があった。
これまでの生き方が枷になっていた。
過去から今に至るまで多くのものを切り捨ててきた。
そんな自分が今さら誰かを救いたいなどと、おこがましいのではないか。
そして、それは苦しんだ末に固めた決意を、信条を曲げること。
杏子にとっては自らを否定するも同然。
認めてしまえば、胸の奥に封印した何かを掘り起こすことを意味する。
――そもそも、どうしてあたしは、こんな面倒な思いしてまで、こいつに従ってんだ。
こいつが勝手に決めた条件に従う必要なんかない。
こっちから問答無用で仕掛けてやれば、こいつだって拒めないはず……。
こんなとこ、さっさと出てって仕切り直せばいい。でも――
「今になってやる気がなくなった? 嫌なら別に構わないけど」
――いや、ダメだ。たとえあたしがやんなくても、こいつがやるだけ。
それならいっそ、この場でこいつを……って、そんなことして何になるんだか――
いくらなんでも、それはない。
人を喰うホラーとやらに憑かれた少女を生かす為に、零に刃を向ける。
そんな、あまりにも馬鹿げた考えが頭を過ぎった。
見ず知らずの少女の為に、そこまでする義理がどこにある。
だいいち過干渉であることに違いはない。
杏子は、改めて自身の混乱を自覚する。
640: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)03:12 ID:RipvUQ6So(10/13) AAS
「じゃなくて……その……」
まごまごと口を動かすだけで、何を言いたいのかも、はっきりしない。
らしくない自分が嫌になる。
杏子は大きく息を吸い。
――なぁ……人間とホラーを切り離すことはできないのか?
しかし、口にはしなかった。
やはり、自分には資格がない。また、その必要も。
所詮、一時の気の迷い。あの日の決意を覆すには到底足りないと切って捨てる。
「で、どうかした?」
「……何でもねーよ。やればいいんだろ、やれば」
半ば自棄っぱちな心持ちで、杏子は立ち上がった。
当初の言葉を翻して、尻尾を巻いて逃げたと思われるのも気に入らない。
相手が化け物で、必要なら殺すだけだ。その結果、誰がどうなろうと関係ない。
そう、心の中で言い聞かせた。
零と杏子が二人の席の横に立っても、二人は見向きもしなかった。
彼女たちは零を知らないだろうが、零は彼女たちを知っている。
特に少女とは昨夜、言葉も交わしているのだが、彼女は覚えていないかもしれない。
641: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)03:14 ID:RipvUQ6So(11/13) AAS
夕木命と、美樹さやか。
二人は一見、仲睦まじく手を絡め合っているものの、
さやかが顔面を蒼白にして小刻みに震えているのを、零は見逃さなかった。
零はそっとさやかの顔が杏子に見えないよう立ち位置を変え、テーブルを叩いて注意を引き付ける。
同時に、二人の手首を握って、各々の手を離す。
片方は熱いくらいの汗で濡れていて、もう片方は氷のように冷たかった。
「お楽しみのところ悪いけど、ちょっと付き合ってもらえるかな」
言うと、零は背後の杏子に目配せして頷いた。
事前に打ち合わせもしなかったが、合図には充分。
行け、という指示だ。
「あの……」
「おっと、あんたに用があるのはあたしだよ」
さやかが何か言うより早く、杏子は手を取って強引に歩き出す。
乱暴で気遣いの欠片も感じられない扱い。まるで、何かを振り切るかのようだった。
「ちょっ――!」
としか零には聞こえなかった。
続くさやかの抗議は杏子に向けられていたが、すぐに抵抗も空しく引きずられていく。
後は命と、杏子に手を振って見送る零だけが残された。
命は少なからず呆気に取られていたようだが、すぐに零を睨みつける。
その目つきは、とてもただの女とは思えないほど鋭く、冷やかだった。
642: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)03:16 ID:RipvUQ6So(12/13) AAS
「あなたたち……どういうつもり?」
「悪いね、玩具を取り上げちゃって。けど、もう時間も遅い。
子供は子供同士ってことで、ここからは大人の時間だろ?」
にも関わらず、零は真っ向から受け止め、不敵に微笑んで見せた。
派手に騒いでくれたお陰で、衆人の目は一時的に杏子とさやかに吸い寄せられ、
零と命の周囲には数秒の空白が生じる。
零は懐からライターを取り出すと、ピンと蓋を親指で跳ね開け、命の眼前に差し出した。
次に手と身体でライターを覆い、死角を完全にする。
タバコの火を点けるみたく自然に、かつ洗練された一連の動作。
そして親指がドラムを回転させ――。
鮮やかな緑の炎が命の瞳を照らす。
「用件は……言わなくてもわかるよな。付き合ってもらうぜ」
魔導火に照らされた瞳に、魔獣ホラーに憑依された証である魔戒文字が浮かび上がった。
643: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/01(月)03:21 ID:RipvUQ6So(13/13) AAS
ここまで
次は来週日曜
休んだ時間の割に、あまり進んでいませんが
もっと書きたかったのですが、鋼牙とまどかの場面と同じで凄く悩んだ為に手間取りました
零と杏子、特に零は本編の描写だけでなく、自分のイメージも多分に含まれています
鋼牙ではできないことをやりたいと思ったので、今後も零らしくないと感じることもあるかと思いますが、
よろしくお願いします
644: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) 2012/10/01(月)06:09 ID:6AJnqikAO携(1) AAS
うぉぉ…待ってました乙乙乙!
相変わらず伝わり難い優しさで杏子を追っ払って、遂に、絶狼の双剣解禁なるか!?
645: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) 2012/10/01(月)06:32 ID:59Ojgx6AO携(1) AAS
1乙!
この女に憑依したホラーはやっぱりあいつなのか…そして魔戒騎士はなんでめんどくさい奴ばかりなんだw
そういえば細かい事だけど、零が使う魔導火は青じゃなかったっけ?確かライターの魔導火の色も烈火炎装と同じだったような。
646: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) 2012/10/01(月)11:03 ID:VkCPkclj0(1) AAS
乙であります!
やはりこのコンビはすごくイイですな。
ケーキを食べて思わず顔がほころんでしまう杏子ちゃんにやられちゃいましたww
杏子ちゃん、「それ」は誰しもが一度は思いつくことだけれど、その方法が一番知りたかったのは零なんだぜ・・。
ちなみに
烈火炎装の色は
牙狼・・・緑
絶狼・・・蒼
打無・・・紫
呀・・・・赤紫
ヤイバ・・赤(うろ覚え)
破狼・狼弩・・・不明
邪美が魔導火で傷を治療するシーンでは牙狼と同じ緑。なので魔導火の基本色は緑。
三騎一閃のモデルとなった白夜でのレギュレイスに立ち向かったシーンでは
牙狼→絶狼→打無と炎をリレーしていくシーンがあるが、そこでは炎の色が変わっていっているので
烈火炎装をすると炎の色が変わっていくものと思われる。
647: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/02(火)05:37 ID:08IPN0hDO携(1) AAS
乙!
そーいや烈火炎装ってレギュラー陣はさも当然みたいに使ってるけど、あれって相当な修練をつんだ騎士じゃないと出来ない技なんだよな。
648(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) 2012/10/02(火)08:53 ID:G9UPxISAO携(1) AAS
1期で鋼牙が零に「烈火炎装を使えるか?」と尋ねていたから、最高位の騎士が使えなくてもおかしくない技なんだろうな。
この女がホラーでもう確定なのに敢えて魔導火灯す零さん超イケメン!マジ尊敬するっす零さん!
…ショウさん?なんか涙目でションボリ帰って行きましたよ。wwほっといていんじゃないっすか?wwww
649: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/02(火)17:30 ID:NAO+LadIO携(1) AAS
というかレギュラーがやってることって並の騎士と比べると超難易度の高い技ばっかりなんだろ?
650: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2012/10/02(火)18:23 ID:uwWpPKCpo(1) AAS
>>648
実はショウさんが見滝原担当の魔戒騎士だったりしてな
651(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) 2012/10/02(火)19:14 ID:irMcGn6G0(1) AAS
いいえ、アングレイあたりの格好の依代です。
そういえばあのさやかちゃん心滅のシーンも一期の【水槽】の「ザルバ・・・あんな人間でも守るに値すると思うか?」にリンクするな。
というかあの陰我まみれのホスト二人は虚淵氏が実際に電車で聞いた会話から生まれたそうな・・・・。
652: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) 2012/10/03(水)01:20 ID:m/umcr1AO携(1) AAS
>>651
ホストのシーンは優秀な声優に聞く者の胸をかきむしるような演技をさせているが、虚淵氏が聞いた現実の会話は頭悪さ丸出しなトークだったそうな。
しかしこのホスト、まさか自分がアニメ化されているとは夢にも知らずにこの世のどこかにいると思うとwwww
653: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) 2012/10/03(水)04:44 ID:/jNh4I750(1/2) AAS
・・・いやまてよ、あのホストはむしろホラーに憑かれたキャバ嬢あたりに喰われる役割だなww
牙狼的にはそれが王道だww牙狼における若い悪い男の仕事はホラーに喰われることだww
イシュターブか
ウトックか
エルズか
ルーザギンか
どちらにせよ生かしてはおけん。
654(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2012/10/03(水)13:16 ID:cXdS4Szvo(1) AAS
まぁ、さやかの手を汚させる前にホラーに食われた方が平和かもね
きらら☆マギカの読みきりでショウさんがクズ格好よかったので、あんまり憎めないんだがw
655: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/03(水)14:13 ID:JZ3DNmZBo(1) AAS
ホストやキャバに本気になる方も悪いからな・・・
一概にショウさんだけがクズとはいえない
656: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) 2012/10/03(水)14:35 ID:/jNh4I750(2/2) AAS
ふと気がついて振り返ってみた
△牙狼におけるチャラ男の末路△
【陰我】・・・イシュターブに憑依された女詐欺師に鎖にされて喰われる
【美貌】・・・まだ憑依もされていない年増のホステスに石で撲殺される
【人形】・・・アスモディに術をかけられバトルロワイヤル
【魔弾】・・・氷見川(父)に魔弾ブチ込まれホラー化
【白夜】・・・エルズに憑依された女をナンパし、ホラーに化けたとたん情けない悲鳴と共にスタコラ(奇跡の生還)
・・・レギュ様の眠っている岩の上に血まみれの死体置いたせいでレギュ様復活。僕にされて最後は翼にやられた
【火花】・・・シガレインに憑依された男に爆殺
【街灯】・・・冷凍保存されコレクションに。気に入らないのは餌に
【妖刀】・・・携帯真っ二つ
【化粧】・・・大根演技をボロクソに言われた挙句餌に
【果実】・・・事故った上にお母さんに喰われた
【赤筆】・・・車に落書きしてるとこを鋼牙にみつかり、締め上げられる(もちろんホラーじゃなかったので逃がしてもらえた)
うん、ロクな目にあってないなww
657: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/10/04(木)00:07 ID:PzyJAAdlo(1) AAS
>>654
ショウさんはアレだ、
さやかちゃんが話を聞く→電車は復活した電車ホラーで襲われるが、鋼牙に助けられる
で、さやか「何でそんな奴を守るんですか!?」って感じになったら面白い
658: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) 2012/10/04(木)00:32 ID:ewlDX3wM0(1) AAS
△本編しか見ていない人向けの補足△
電車のホラーとは小説に登場した【列車ホラー・ヴェル】のこと。
列車に化け、車内に手下を憑依させた人間を乗せておくパズズ、ゲノシカ系のホラー。
遠い町へ出かけていた鋼牙は帰りに列車に乗ったが、ザルバがホラーの気配を察知する。
不思議とその周りだけ邪気が無い紳士(【試練】でカオルに壁画の修復を依頼した幼稚園の園長)
と大河や魔戒騎士、ホラーについての話をし、ホラーの正体に鋼牙が気付くと本性を現し、鋼牙を襲う。
結局は園長を別の列車に逃がされ、陰我消滅される。
が、実は本編にちゃっかり出ていたりする。総集編【約束】のラストのシーンで崩れ落ちる列車が出てくるシーンがそう。
659(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2012/10/05(金)14:23 ID:1N3ZzOgpo(1) AAS
まどマギ映画は明日からか……
まあ再編集版だから新情報や新展開はないんだろうけど
新情報がありそうなのは来週発売の書き下ろしコミックスの方かな
660: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) 2012/10/05(金)16:44 ID:xdSVo2uio(1) AAS
>>659
新キャラは出るよ?
661: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2012/10/08(月)03:03 ID:ScCxGBbdo(1) AAS
なるべく多く加筆して明日に投下したいと思います
662: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/09(火)03:02 ID:PFShUIago(1/7) AAS
「あら……いきなり現れて手を掴むなんて、とても女性を誘う態度とは思えないわね」
命は緑色の魔導火越しに零と目を合わせても眉ひとつ動かさず、ふっとライターの火を吹き揺らした。
髪をかき上げ、ゆっくりと立ち上がる様は、妖しいまでの色香を醸し出している。
彼女は、まるで物怖じしていなかった。
目の前にいる男は己が天敵であり、いつ、その身を切り裂く剣を抜き放つかわからないというのに。
「ゴメンね、あんまり魅力的だったからさ」
「そう。それで、どこへ連れて行ってくれるのかしら?」
「どこか人の来ない場所がいいかな。二人っきりでゆっくり楽しめるところ」
零もまた軽いノリで応える。
他人が耳にすれば、ただのナンパ男と大人の遊びに慣れた女の会話にしか聞こえないだろう。
しかし男は魔戒騎士であり、女は魔獣。両者は殺し合う仲であり、決して相容れぬ関係。
そして今、互いの間合いに堂々と踏み込んでいる。
この状況は、まさに一触即発。
「突然ね……それもこんなムードで。まぁ、考えてもいいけど、ひとつ条件があるの」
命は零の前で人差し指を立てた。
今にも息のかかる距離まで顔が接近する。蠱惑的な流し目に対し、零もまた挑発的に応えた。
「へぇ、条件って?」
「あなたが私を捕まえられたら」
663: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/09(火)03:04 ID:PFShUIago(2/7) AAS
言うが早いか、命が一歩、後退る。しかし零には、それ以上は視認できなかった。
何故なら、視界を完全にイスが覆っていたから。
命は足でイスの脚を引っ掛け、零に放ったのだ。
そこそこ重い木製のイスを瞬時に顔の高さまで、一切の助走も振りもなく。
戦闘開始の合図。いや、ただの戯れだ。
あまり本気にさせて、ここで戦闘は避けたい。
ならば、ここは無理に捕らえるには及ばないだろうか。
彼女は敵を殺して終わりではない。
魔戒騎士を返り討ちにした後、これからも人に紛れて人を喰っていかねばならない。
衆人環視の中で派手な真似はできないはず。まして正体を晒すなど。
ではどうして、こんな目立つ行動を取ったのか。
考えられるとしたら、まずは逃走の時間稼ぎ。
先手を取られた不利な状況を覆すべく、仕切り直しを試みるとしたら。
極端に気配を辿り辛い街で、潜伏されれば探し出すのは至難の業。必ず誰かが犠牲になる。
ならば――。
刹那の間に状況判断を済ませた零は、迫るイスを掴んだ。
勢いを殺しつつ背後に受け流し、放す。
同時に、もう片方の手を伸ばすのも忘れない。
「はい、捕まえた」
664: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/09(火)03:07 ID:PFShUIago(3/7) AAS
完全に離れるより早く、零の手は命の右手を掴んだ。
それ自体に大した意味はなかった。この程度で決着がつく訳でもない。
彼女の提示した条件に付き合っただけ。
かと言って無意味でもない。
戯れはいらない。ここから本当の戦いを始めようと、互いに確認する為に必要な儀式。
油断はなかった。あったとすれば、誤算。
突如、掴んだはずの命の手から抵抗が消える。
まるで腕がすっぽ抜けたよう。
命を捕まえておく為の力は行き場を失い、零の身体がグラついた。
その時、起こった事象に、零は目を見張った。
命の腕が肉体と離れていたのだ。
そして本体はというと、二の腕の断面が濃いオレンジ色の光に包まれ、肘は見えない。
――こいつは……!
直接は見ていないが、記憶にある。
ホラー、モロク。
腕を切り離し、炎と氷を持つ。過去、接触はしたが、直前で冴島鋼牙に譲ったホラーだ。
このケースは前もって予測できたはずなのに。
だが悔しがるより早く、零は握っていた手を振り解いた。
冷たかった肌に、異常な体温の高まりを感じたからだ。
零が手を掴んでから、ほんの一秒か二秒。
気付くと、腕は何事もなかったかのように身体に戻っていた。
周囲は何が起こったのか理解が追い付いていない。自らを疑い、目を擦る者も多かった。
665: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/09(火)03:09 ID:PFShUIago(4/7) AAS
命と目が合う。彼女は妖艶に微笑むと反転、走っていった。
すぐさま零も追いかけたが、なかなか距離を詰められない。
出遅れが災いしてか、それとも命の足が速いのか。おそらくは両方。
すっかり夜も更け、辺りは暗闇に包まれている。
また、命は人通りの少ない方へ逃げていた。
これなら誰に気兼ねなく全力疾走できる、と零は足を速めた。
結果、徐々に差は縮まるのだが――。
「っ――!?」
突然、零は盛大に転倒。
受け身は取ったので傷はないが、再び距離が開く。
何かに躓いたかと見ると、光る右腕が足を握っていた。
「ちっ、やってくれるぜ……!」
剣を抜くまでもない。懐からクナイ状の短剣、破邪の剣を取り出して思い切り突き刺してやる。
肉に食い込む確かな手応え。飛び去る腕と呼応して、遠くを走る命もやや右に傾いている。
『注意して、ゼロ。あいつはどこからでも腕を飛ばしてくるわ』
「知ってるさ。けど、片腕しか使わないってことは……」
誘っているのだ。
目的地へ着くまでは捕まる訳にはいかないと、足止めをしてきた。
666: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/09(火)03:11 ID:PFShUIago(5/7) AAS
「やれやれ、あんこちゃんを置いてきたのは失敗だったかな」
立ち上がって走り出した零は、付かず離れずの距離を保ちつつぼやく。
それが冗談めかして言っているのだと、シルヴァにも理解できたが、
それにしてもわからないことはある。
『ゼロ……あなた、どうして彼女を?』
杏子の力量は零も認めるところである。
彼女が零を目の敵にし、殺意すら見せたことも、零が誰より知っている。
それを嘘をついてまで杏子を置いてきた。後で烈火の如く怒るのは目に見えているのに。
「言ったろ? あんこちゃんはなかなか使えそうだって。
いい囮になってくれたよ」
『はぁ……彼女、また怒るわよ……?』
少女とホラーを切り離し、杏子を遠ざける。なおかつ零は何の説明責任も負わないで済む。
一石三鳥。考えようによっては冴えた手かもしれない。
この女は化物だと公衆の面前で指摘する訳にもいかず。
かと言って見知らぬ男に、いきなり友人と離れろと言われて、はいそうですかと頷くだろうか。
もっとも、さやかの様子では杞憂だったかもしれないが。
667: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/09(火)03:13 ID:PFShUIago(6/7) AAS
いずれにせよ、無理にどちらかを連れていこうとすれば、まず騒ぎになる。
下手をすればホラーに警戒され、最悪大勢の人間を巻き込みかねない。
杏子に脅かされているであろう少女には悪いことをしたが、
杏子が意表を突いてくれたからこそ、安全かつ確実に引き剥がせた。
魔戒騎士でもない少女に有無を言わせず連行される、
あの展開はホラーでさえも予測し得ないイレギュラー。
少女には気の毒だが、当面の、確実な命の危機を回避する為だ。
ほとんどの人間がホラーや魔女に虚しく捕食される無常を思えば、
生き残る為に多少のリスクは負って然るべきだろう。
両者に比べれば遥かに与しやすい相手。
ホラーや魔女と相対するよりも、杏子と交渉する方が生き残る可能性はずっと高い。
便利に使われ、体よく追い払われた杏子は怒り狂うだろうが、
まぁ、そんなことはどうでもいい。
心配があるとすれば、あの少女が手荒に扱われないかということだが。
零には確信に近い何かがあったようだ。
しかし、零が彼女の良心や善性に賭けたとは思えない。
涼邑零――長い付き合いのシルヴァでも、彼には未だ読み切れない部分があった。
668: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/09(火)03:15 ID:PFShUIago(7/7) AAS
中途半端ですが、ここまで
次もなるべく日曜に
いつも多くのコメントありがとうございます
レス返しなどあれば、また近いうちに
669: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) 2012/10/09(火)11:29 ID:RekaLWOo0(1) AAS
乙であります♪
零の優しさとか、気配りとか、そういうのがよく見えますね。
なるほど、確かに一部の例外を除き、人が大勢いる中で堂々とホラー化した例は少ないですね。
修練所に堂々と乗り込んできた魔翌竜ホラーさんや明らかに傍から見ればおかしな格好で繁華街で大量虐殺した白夜の魔獣様はともかくww
670: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) 2012/10/09(火)14:13 ID:p9lK8iAAO携(1) AAS
アクションアクション、ゴー!♪
魔導火を吹き消す命さんエロす!
完璧に零の計画通り杏子あほカワユス!
次回が待ち遠しいぜ!!
671: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) 2012/10/10(水)13:13 ID:8QgSYAvAO携(1) AAS
命さんこと自殺未遂のOLさんの顔がどうしても思い出せない。仕方ないからGARO本編のモロクの人で再生してるが、別人だし…
そういえばOLさんも銀幕デビューか。
672: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2012/10/10(水)13:59 ID:HRJi5R3No(1) AAS
映画観てきた
TV版ときはそんなに気にしてなかったんだが、OLさんのキャラデザってけっこう色っぽいよな
ここ読んでから映画を観ると色々と妄想が膨らむw
673: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) 2012/10/13(土)00:16 ID:Oh+CUH5AO携(1) AAS
色っぽい……のか!!………OLさん……
674: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/15(月)02:18 ID:QhBuy+iGo(1/5) AAS
シルヴァの心配を見越したのか、零は走る足は止めず、左手を胸元まで持ち上げた。
「構わないさ」
言って、口の端を上げる。
「あいつは根っこのところで甘いし、そこまで馬鹿じゃない。
その前に必ず気付く。自分が担がれたってな」
シルヴァの指摘はもっともだった。
零も彼女の力は認めているが、杏子を手放しに信用しているとは言い難い。
強いて理由を挙げるなら、彼女からの信用を感じたから。同時に、自分に対する不信感も。
それらを逆手に取って利用したのだ。
たびたび挑まれて何をと思われるだろうが、彼女が毎度それなりに話し合いに応じる事実が、
多少なりと信用されている証――と受け取るのは自惚れだろうか?
躾が良かったのか、それとも根の性格が善良なのか。
擦れているように見えて、彼女は純真な部分を残している。
だが、純粋さは時に足枷となる。
彼女自身、理屈ではわかっていても、自分がそうである自覚はないようだ。
でなければ半信半疑でも騙されてはくれない。
人の姿をしたホラーを殺すことに躊躇いを覚えたりしない。
また、零を信用しきっていないからこそ、言葉を疑い、真の意図に気付けるのだ。
杏子を騙すのは心が痛まないでもなかったが、零には使命がある。
迷いを抱えて足手纏いになる可能性がある杏子は、なるべく切り離したかった。
『そんなこと言って、本心では彼女が心配だから連れて行きたくないんじゃない?
なら、あなたも充分……』
675: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/15(月)02:20 ID:QhBuy+iGo(2/5) AAS
「違う。そんなんじゃないよ」
『どうかしら』
シルヴァが続けるのはきっと、優しい、とか、甘い、といった言葉だろう。
だから零は苦笑した。
別に、そんなつもりはない。あくまで打算の積み重ねによる判断だ。
自分とさやかも含め、メリットとデメリットを秤にかけて、メリットが勝っただけ。
「おっと。お喋りはここまでみたいだぜ、シルヴァ」
そんな会話を交わしているうちに、目的に着いたらしい。
命が足を止めず駆け込んだそこは、街灯もなく、ビルや家々の明かりもネオンもない。
屋内であることに加え、月が雲に隠された今では、月光さえ届きはしない完全な闇。
そこは打ち捨てられた廃ビル。
土地の所有者はもちろん、浮浪者も不良も寄りつかず、野良猫やネズミすら住んでいるか怪しい。
つい昨日まで、魔女の巣窟として多くの人間を誘い入れて逃がさなかった死の廃墟は、
巴マミが魔女を討ち、自殺を試みた夕木命を救出した場所。
そして、彼女が敢えてここを戦場に選んだということは、
ホラー・モロクと化した夕木命とも関係があるはずだ。
つまり、この先は相手の縄張り。中でホラーが息を潜めて待ち受けているのは間違いない。
しかし零は微塵も臆することなく、堂々とした足取りで踏み込んでいった。
676: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/15(月)02:23 ID:QhBuy+iGo(3/5) AAS
入口から数歩も進むと、外のか細い光も完全に途絶える。
一歩進むごとに積っていた埃が舞う。
埃とカビの臭い。歩くたび砂利やガラス片を踏み鳴らす音。
嗅覚と聴覚に頼っての索敵は厳しそうだった。
まずはその場に留まり、眼が暗闇に慣れた頃、零は移動を開始する。
とはいえ、こちらから熱心に探す必要はない。
敵が魔戒騎士をやり過ごすつもりでもなければ、どこかで必ず姿を現す。
どの道、こちらの存在を隠す術がない以上、奇襲を迎え撃つ方が手っ取り早い。
双剣は鞘に収めたまま、両手もポケットに収めたまま、靴音を鳴らして歩く零。
暗闇に目が慣れても、物陰は至るところにある。扉や柱の陰、放置された机などの陰。
それでなくても、数メートル先は漆黒に塗り潰されていて見えない。何が潜んでいてもおかしくない。
普通ならば想像して恐怖するあまり、一歩も動けなくなるだろう。
このような状況において、零と彼ら常人との違いはいくつかある。
ひとつは、修業と実戦経験で研ぎ澄まされた第六感。
ひとつは、恐怖を克服した心。
もうひとつは、
「どうだ、シルヴァ」
『近いわ。でも、まだそれほどじゃない』
頼れる相棒。
零が小声で語りかけると、シルヴァも声を落として答えた。
ホラーの気配を探知する魔導具は幼少時から知っている。阿吽の呼吸という奴だ。
異常な街でも、これだけ近く閉じられた環境、
しかも魔法少女のような他に魔力を持った存在が傍にいなければ探知は可能なのだ。
677: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/15(月)02:24 ID:QhBuy+iGo(4/5) AAS
「なら、ここはもういいな。他を当たるか」
一階を一通り見て回った後、零は階段を上る。
ビル内の空気は淀んでいるが、割れた窓から吹き込む風が、微かに空気の流れを生んでいた。
どうやら二階に上がってすぐ、開けた空間になっているようだ。
コツンと靴を鳴らし、最後の段を上り終えた時、
『ゼロ……!』
呼ばれた零は答えなかった。たったそれだけで、シルヴァの意図を理解した。
警告しているのだ。ホラーが近いと。
零も闇の中に輪郭が浮かぶように、その先に何者かの気配を感じていた。
両手をポケットから抜き、やや腰を落とす。
まだ剣は抜かなかった。両手は自由の方が、不測の事態に対応しやすい。
忍び足をするでもなく、変わらぬ歩調で進む。
一歩ずつ床を踏み締めるごとに、皮膚の表面に伝わる刺激が強まっていく。
広間に足を踏み入れた零は、心の中でカウントを取る。
そしてカウントがゼロになった瞬間。
確かな殺気が膨れ上がり、扉の陰から何かが飛び出した。
音もなく現れたそれは、獲物を狩る肉食獣さながらの俊敏な動作で肉迫。
僅かな距離をゼロにする。
辛うじて零の目に映ったのは、白いブラウス。そして視界を覆う白い足。
直後、ゴッ――と、命のハイキックが零の顔面を捉えた。
678: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/15(月)02:29 ID:QhBuy+iGo(5/5) AAS
ここまで、次も日曜日だと思います
いっぱい書いた気がするのに、あまり進んでいないような
そろそろ生身の格闘戦をしてみたいですが、なかなか上手く書けない……
映画はまだ見ていませんが、TDSはとても面白くて
おかげで方針も決まってきました
679: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) 2012/10/15(月)10:28 ID:5YSMTENAO携(1) AAS
乙!
タイトスカートから繰り出す上段廻し蹴り!素晴らしい。書き手はわかっていらっしゃる。
680: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2012/10/16(火)05:26 ID:ye7kb+mio(1) AAS
乙カレー!
TDS、いいですよね。
フェアウェル・ストーリーのコミック化かと思って読み進めていたら、
最後の最後の展開に大変良い意味で裏切られました。
このSS共々、フェアウェルや本編では叶わなかったマミと杏子の再会の結果が楽しみです。
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