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アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ8 (503レス)
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ8 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/
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6: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 01:09:30 ID:cOBqeweg 【書き手の注意点】 ・トリップ必須。荒らしや騙り等により起こる混乱等を防ぐため、捨て鳥で良いので付け、>>1の予約スレにトリップ付きで書き込んだ後投下をお願いします ・無理して体を壊さない。 ・残酷表現及び性的描写に関しては原則的に作者の裁量に委ねる。 但し後者については行為中の詳細な描写は禁止とする。 ・完結に向けて決してあきらめない 書き手の心得その1(心構え) ・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。 ・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。 ・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの仮投下スレにうpしてください。 ・自信がなかったら先に仮投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。 ・本スレにUPされてない仮投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。 ・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。 ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。 その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。 ・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け! ・叩かれても泣かない。 ・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。 作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。 書き手の心得その2(実際に書いてみる) ・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。 ・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。 ・適切なところで改行をしましょう。 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。 ・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。 ・人物背景はできるだけ把握しておく事。 ・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。 ・一人称と三人称は区別してください。 ・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。 ・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。 ・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。 ・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。 ・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。 ・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。 書き手の心得3(一歩踏み込んでみる) ・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。 ・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。 ・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。 ・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。 本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。 ・『展開のための展開』はNG キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。 ・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。 紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効。 携帯からPCに変えるだけでも違います。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/6
7: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 01:11:25 ID:cOBqeweg 【読み手の心得】 ・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。 ・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。 ・荒らしは透明あぼーん推奨。 ・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。 同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。 ・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。 修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。 ・嫌な気分になったら、「ベリーメロン〜私の心を掴んだ良いメロン〜」を見るなどして気を紛らわせましょう。「ブルァァァァ!!ブルァァァァ!!ベリーメロン!!」(ベリーメロン!!) ・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。 ・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。 やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。 冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。 ・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。 丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。 ・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。 【議論の時の心得】 ・このスレでは基本的に作品投下のみを行ってください。 作品についての感想、雑談、議論は基本的にしたらばへ。 ・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。 ・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。 ・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。 意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。 ・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、 強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』 ・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。 【禁止事項】 ・一度死亡が確定したキャラの復活 ・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる 程度によっては議論スレで審議の対象。 ・時間軸を遡った話の投下 例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。 この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。 こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。 ・話の丸投げ 後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。 特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/7
8: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 01:14:03 ID:cOBqeweg 【NGについて】 ・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。 ・NG協議・議論は全てしたらばで行う。2chスレでは基本的に議論行わないでください。 ・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。 ・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。 『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』 NG協議の対象となる基準 1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等) 2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。 3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等) 4.イベントルールに違反してしまっている場合。 5.荒し目的の投稿。 6.時間の進み方が異常。 7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等) 8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。 上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。 例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも× ・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。 ・書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。 【予約に関してのルール】(基本的にアニロワ1stと同様です) ・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行う ・初トリップでの作品の投下の場合は予約必須 ・予約期間は基本的に三日。ですが、フラグ管理等が複雑化してくる中盤以降は五日程度に延びる予定です。 ・予約時間延長を申請する場合はその旨を雑談スレで報告 ・申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手 【主催者や能力制限、支給禁止アイテムなどについて】 まとめwikiを参照のこと http://www40.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/1.html http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/8
9: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 01:15:27 ID:cOBqeweg 現在、この企画には二名の粘着荒らしが確認されています。(通称・CとG) その内の一人、Cの詳しい来歴などは以下を参照の事。 2chパロロワ事典@Wiki‐キャプテン http://www11.atwiki.jp/row/pages/203.html また、単発IDで「ふーん」「あっそう」「つまらない」「どうでもいい」などの1行煽りレスや、 他スレや外部の毒吐き掲示板からのコピペを延々と繰り返す粘着荒らしがGと呼ばれています。 これらの人物には構うだけ無駄ですので、レスなどはせずにスルーしておきましょう。 ・荒らしが出たら? → スルーしましょう ・C・G本人や、C・Gっぽい人、を見かけたら? → スルーしましょう ・どうしてもそいつらにレスしたくなったら? → 毒吐き若しくはC・G観測所に書き込みましょう ・吊られるやつは荒らしと同レベル。スルーしましょう ・吊られる奴を叩くのも吊られた奴と同レベル、スルーしましょう。 ・荒らしレス〜吊られレス、その一連のレス塊をまとめてスルーしましょう。 ※専ブラの御利用を強く強くお奨めします。 関連リンク アニロワ毒吐き所(ツチダマ掲示板)http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/6346/1188116040/l50 アニメキャラ・バトルロワイアル2nd毒吐きスレ・別館2(ID非表示の毒吐きスレ)http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1189927987/l50 C観測所 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/4651/1170582458/l50 G観測所 http://tmp6.2ch.net/test/read.cgi/tubo/1184658777/l50 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/9
10: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 01:38:36 ID:cOBqeweg >>2はミスです。ごめん。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/10
11: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 01:41:00 ID:pbqnXkPF >>5は忘れてください。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/11
12: 黒の騎士団 1 ◆P2vcbk2T1w [sage] 2007/11/09(金) 01:49:32 ID:182ASbsJ その提案を最初にしたのは、この男だった。 「着替えたとは言え、私とカレンさんは体が冷え切っています。このままでは風邪を引いてしまうかもしれません。 ところで、地図を見れば、この直ぐ近くに温泉があるようです。 折角です。そこの様子を見て行きましょう。なんなら、そこで少し休憩でも……」 「……そんなところで油を売っている暇が有るのですか? 今も、どこかで殺し合いが続いているかも知れないというのに」 「だからこそ、そんな危ないところからは少しでも離れ……ゲフンゲフン、失礼。 今、カレンさんの体調を損ねてしまうのは、我々にとって大幅な戦力ダウンです。 何があるか分からないですし、用心しておくのに越したことは無いかと思います」 「そんな、ゼロ、私なんかのために……」 あくまで自らの保身を考えている様子の偽ゼロ。 その詭弁に感極まっている始末のカレン。 そして。 「僕は別にどっちでも……あのトンネルの方でさえなければ」 自称「猫」の、奇妙な機械。 この場に存在するあらゆるものが、俺の神経を蝕む。 それは無論、この状況下に於いて、何一つ有効な手を未だ打てずにいる自分自身も該当する。 苛立ちが、止まらない。 この機械猫が派手に乱入してきたのが、凡そ1時間前のことだ。 それから、執拗に偽ゼロを殴ろうとする機械猫を止めつつ、 「ゼロに危害を加えるな!」といきり立つカレンを「弾を無駄にするな」となだめながら、 やっとのことで場が落ち着いたのが約30分前。 そこから、情報交換――と言っても、ずっと逃げ回っていただけの猫と反体制派メンバーとその偽者では、 碌な情報の交換は無かったが――が為されたところだった。 不快だ。不快極まりない。 そもそも、本来ならば、こんな所で愚図々々している暇など無いのだ。 情報を集め、反主催集団を組織し、反抗、脱出に向けて、能動的、効率的に動き出す……筈が、現実はどうだ。 意味の有る行動を何一つとれず、ただ手を拱いているだけではないか。 我ながら、情けない。 これが若し、アイツだったら、スザクだったらどうしただろうか。 あいつも、スザクもきっと、俺と同じように考え、行動しようとしたはずだ。 例え俺とは違う道であっても、その目指すものは同じ筈。 だが、そのスザクはもう……居ない。 だと言うのに。 「そ、それよりも、やはり早めに移動を始めた方が…… 先ほども、外からなにやら人の声がしていた様ですが、それも気がかりですし。 ここに居て、また、通りすがりの危険人物に遭遇なんかしちゃったりしたら嫌ですから……」 「って、なんでそこでコッチをチラ見するんだよ! 確認せずに殴ったのは悪かったけど、変態丸出しの格好してたそっちも悪いだろ!」 「な、ゼロを愚弄する気かッ!」 ……この一団は、万事この調子だ。頭痛がしてくる。 事実、今までの騒動の最中に、外から何者かの声が聞こえて来る、という出来事があった。 何者かが近隣エリアで拡声器か何かを使い、他者とのコンタクトを図ったのだろう。 その調査を提案したのは俺だが、それを頑なに拒んだのは、有ろう事かこの偽ゼロだ。 声がしている最中には調査を渋り、十分な時間が経ち、安全と判断して初めて行動に移す。 この男は、リスクを負うことから徹底的に逃げているのだ。 そして、その偽ゼロを妄信するカレンと、機械であるにも関わらず、消極的な猫。 俺の提案は少数派となり、折角の他者との接触の機会も失われてしまったのだった。 いっそのこと、ギアスの力でこいつらを強制的に服従させる、という手も考えたが、 仮面に、機械に、既に一度ギアスを使ってしまった人間が相手では、折角の能力もその力を発揮することは出来ない。 使えない。使えないにも程があるぞ、こいつら……! http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/12
13: 黒の騎士団 2 ◆P2vcbk2T1w [sage] 2007/11/09(金) 01:50:41 ID:182ASbsJ 「さ、さあ、そうと決まれば善は急げです。先ずは、温泉施設へと向かいましょう!」 「はい!」 逃げ出す様に民家を出るゼロと、犬の様にそれに付き従うカレン。 その後に、機械猫と俺が、渋々と追従する。 現在、この集団の意思決定権を握っているのは、間違いなくこの偽ゼロだ。 だが、その判断力は高くない。寧ろ、劣っていると言っていいレベルだ。そう断言できる。 自らが持つ発言権を有効に使えず、只々無駄に時間を浪費するだけのこの男。見ているだけでも苛々する。 例え4人の小集団であったとしても、若し、自分がその長で有ったならば、選択肢は無限に広がるだろう。 だというのに…… 自分の行動を、このような道端のちっぽけな小石に妨害されるのがここまで不快なものだったとは、夢にも思わなかった。 では、どうするか? 隙を見てギアスを行使するか? それとも、いっそこのまま、消えてもらうか……? 温泉施設への道を歩く中、様々な可能性を検証し、選択肢を吟味する。 今、自分に与えられたカードは何だ? その手札で、何が出来る? リスクは? リターンは? 負けることの許されないこの勝負、どう、打って出るべきなのか? どうすれば勝てる? どうすれば……アイツの仇が討てる? 「あ、どうやら見えてきたみたいですよ!」 思案を妨げるカレンの声に、我に返る。 いつの間にか、ずいぶんと先まで歩いていたようだ。 前を見ると、確かに、カレンの言うとおり、眼前の、木々の合間から―― 『新装開店記念! 熱烈歓迎!! ようこそ、エイチロク温泉へ!!!』 と読める電飾が、チカチカと目に喧しく光っていた。 「……派手ですね」 「……派手だねえ」 頭痛がまた、悪化した。 「と、とりあえず中に入りましょうか」 「待てカレン、迂闊に入るな、もし待ち伏せされていたら――」 しかし、俺の忠告も一歩遅かった。 魔境の扉が、開かれてしまった。 ――ガラガラガラ そして、その扉の先に広がっていたのは。 目を覆いたくなるような、信じ難い程の……絶望だった。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/13
14: 黒の騎士団 3 ◆P2vcbk2T1w [sage] 2007/11/09(金) 01:51:46 ID:182ASbsJ 「あら、お客さんみたいやね」 「よく来たな。まあゆっくりしていけ」 「な、何か聞き覚えのある声が……」 「てゆーか、クレアさんは早く服を着てください!」 「お、お前はトンネルに居た奴じゃないか。また会ったな」 「やや、やっぱりいいいい!!」 「む、お主は……無事だったか」 「ってお前、マタタビじゃないか! 無事だったのか!」 「ところで、はやて、クレア、さっきの話を詳しく聞きたいんだが」 「ちょ、タンマ、タンマ! それは後で!!」 「ま、また変な喋る猫が……この世界には、一般常識というものは存在しないのですか!? 絶望した! フィクションをフィクションとして楽しめない現実に絶望した!」 「ゼ、ゼロ、お気を確かに!」 ……なんだ、これは? ここは、望まずして連れて来られた人間たちが、命を賭けて戦う、殺し合いの舞台では無かったのか? 己の、そして他者の命のために、不条理な運命に抗う世界では無かったのか? それが、なんだ? この、緩みきった、三流コメディの様な馬鹿面共は? こいつらは、ふざけているのか? 冗談のつもりなのか? しかし、この世界には、冗談では済まされない事が確実に有る。 今のこれは、その一つとして明らかに該当するのではないだろうか? それを判断する力が、こいつらには無い、と? 俺の心中を一切察することなく、和やかな談笑がそこかしこから漏れ聞こえ出す。 その嬌声が、ギリギリと、万力のように俺の頭を締め付ける。 これは、こに溢れ出す感情は何なのだろう。 怒り、悲しみ、失望、落胆…… 上手く言い表せないが、ドス黒い、不快な負の感情が、こころに満ち溢れてくる。 そもそも、こいつらは理解する気があるのだろうか。 想像することが出来るのだろうか。 今も、誰かが誰かを殺し、誰かが死んでいるかも知れないという事実を。 誰かが自分のせいで死に、誰かが自分のミスで窮地に陥っているかもしれないという可能性を。 人知れず、だが人の為に戦う様な種類の人間の事を。 この、ふざけた状況に反抗し、決して状況に流されようとはせず、 全ての人間を助けようと、本気で考えるような大馬鹿野郎の存在を。 そして、その男が、自らを賭して戦う姿を。 その男の、最後の瞬間を。 これは、侮辱だ。 この世界で死に行くものへの、抗う全ての生命に対する、侮辱行為だ。 失われて行く命を余所目に、安全な位置で矜持を貪る。 こいつらは、俺が、俺たちが忌むべき奴等と同じ、いや、それ以下の存在だ。 俺は、スザクは……こんな奴等の為に、戦っているんじゃない!! http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/14
15: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 01:52:14 ID:3bM5VCtM http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/15
16: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 01:52:19 ID:8ybdYQVW http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/16
17: 黒の騎士団 4 ◆P2vcbk2T1w [sage] 2007/11/09(金) 01:52:49 ID:182ASbsJ 「……もういい……」 ならば、どうする? この堕落しきった群集を、どう裁く? 決まったことだ。 舞台の外で、他人事を気取るような観客は。 この舞台へと引きずりあげてやれば良い。 そうだ。今こそ、舞台の上で踊る時だ。 この俺と共に!! 「もういいッ!! 全員黙れッッ!!!!」 前触れ無く叫んだ俺の声に、騒がしかった場が水を打ったように静まり返る。 そして、全員の注目が俺に集まる。 本来は、この注目を浴びるリスクは避けたかったが、もういい。 自分だけが安全な位置に居ることは、最早諦めた。 「突然だが、ここはゼロを筆頭とする、反螺旋王組織『黒の騎士団』の指揮下に置かれる! 以降は、そこに居られるゼロが全ての指揮を取る! 異論は認められない!!」 「……へ? 私……?」 反論を塞ぐように次の言葉を重ねる。 無駄口を挟む隙は一切与えない。 「詳しくは、ゼロに代わり、私が説明をさせて頂く。 我々はあの螺旋王と名乗る男によって、この場に拉致された。 このままでは、奴に反抗することは限りなく不可能に近い。 だが、多数の人の力を合わせれば、その可能性はゼロでは何倍にも膨れ上がるはずだ。 なお、当面の問題点は以下の通り。 ・絶対的な情報の不足 ・人員的不足 ・強大な力を持つ存在への対策法 これらの問題に対処すべく、君たちにはまずはこのエリアの中心地付近に出向き、 情報収集及び他参加者への接触を図って貰いたい。 そして、それらによって得られた状況から、次の指令をゼロが下す。 ……ですよね、ゼロ? 先ほど貴方が私に語ってくださった内容は」 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/17
18: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 01:53:04 ID:ZthEOkjM http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/18
19: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 01:53:22 ID:8ybdYQVW http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/19
20: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 01:53:34 ID:3bM5VCtM http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/20
21: 黒の騎士団 5 ◆P2vcbk2T1w [sage] 2007/11/09(金) 01:53:58 ID:182ASbsJ そうして、自論の一部を、一方的にぶちまける。 説得や理解など、臨むべくも無い。 だが、今はこれで良い。情報さえ与えておけば、それで良い。 “後は勝手に理解してくれる” 更に言えば、この情報も、大切な部分が大幅に、そして意図的に削除されている。 この自論の、最も大切な趣旨が抜けているのだ。 その趣旨こそが――このルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが、最も確実に生存し、元の世界へ帰還すること――である。 そのために大切な事は4つ。 ・情報を収集し、掌握すること ・戦力の拡充 ・敵戦力の削減、削除 ・参加者自体の間引き これらの問題を解決するには、市街地で大規模な戦闘行為を起こしてしまうのが簡単かつ効率的だろう。 それにより、他参加者を皆殺しにした上での生き残りを図る殺人者や、無力無能な参加者を減らすことが出来る。 そして、その避難場所をここに誘導してやれば、自然と情報と人間は集まってくる。 その人間達をまた使ってやれば、更に効率が上がる。 もしその中に不穏分子が混ざっていたならば、炙り出し、数の利でもって処理してしまえば良いだけのことだ。 万が一、手に負えない戦力を持つものや暗殺を謀る者が出たとしても……その標的はゼロ、つまりはあの偽者だ。 アレを囮にすれば、多少は時間も稼げるだろう。 言い訳のようだが、本当は、もっと青臭い、犠牲を最小限に留める様な案も考えてはいた。 だが、奴等を見て、覚悟した。 自分の求める道と、その険しさを。要求される、代償を。 そして、自分が守ろうとしたものの醜さを。 だから、もう迷わない。 俺は、俺の――俺と、スザクが目指した世界の実現の為なら、迷わない。 生きて帰り、争いの無い、ナナリーが安心して暮らせる世界を作るためならば、 泥を啜り、手を血で汚し、死体を踏みしめてでも、前に進もう。 我が目的の為に、手段を選んでやるのはもう止めだ。 さあ。 今から、その道の一歩を、踏み出そう。 「ええ、ええ?」 ワンテンポ遅れて慌てだす偽ゼロ。 やっと自分の立場を理解したようだ。 無論、この話をこの偽ゼロとしたことなど一度たりとも無い。 「ちょ、ちょっと、いきなり何をいってるん……? 黒の騎士団って……?」 「にいちゃん、何か変なモノでも食ったのか?」 「というか、戦力が不足しているとは聞き捨てならんな。この俺様が居るというのに」 そして、溜まっていた物が噴出すように、一斉に皆の口から言葉が打ち出される。 質問、疑問、非難、嘲笑……まあ、そうだろう。 いきなり現れた人間に、前振りも無くあんなことを言われたのでは、誰だってそうするだろう。俺だってきっとそうする。 だから。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/21
22: 黒の騎士団 6 ◆P2vcbk2T1w [sage] 2007/11/09(金) 01:55:18 ID:182ASbsJ 「わかった、わかった。でも、これだけは聞いてくれ」 言ってやる。 「確かに皆の言うことも最もだ。でも、これは皆が生きて帰る為の、最善の手段だと思う」 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの名に於いて! 「やって欲しいことはこれだけだ。 『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』 それだけだ。頼む。協力してくれ」 そして、ギアスの力が、奴等の脳内を駆け巡る。 「いや、そんな街中とか危ないって――「ああ、わかった」「了解した」「ええよ」――ってええ!?」 予想通り、機械猫にはギアスは効かなかったようだ。 だが、残りの2人と1匹には狙い通りの効果が出たようだ。 それでいい。十分だ。 こいつらが他の参加者達の注目を集めておけば、こちらも動きが取りやすい。 これで、最初に爆殺された様な強力な奴と相打ちにでもなってくれればしめたものだ。 手駒の戦力は未知数ではあるが……精々、上手く働いてくれることを期待しよう。 「よかったですね、ゼロ。彼らも我々に賛同してくれたようです」 「え、ええ……?」 この偽ゼロの顔は分からないが、奴の呆然とする表情だけは読み取れる。 嵌められたという事実を、そろそろ理解しだしたころだろうか。 少々強引な手ではあったが、これでひとまずは完了だ。 もう、始まってしまった。 これで、奴ももう逃げることは出来ない。 こうして『ゼロの命令で』動き出した人間が居る以上、この偽ゼロ如きでは何も出来はしないだろう。 歯車は回りだしたのだ。 そして、たとえその形が歪でも、一度回りだした歯車は、そう易々と止まりはしない。 全てを巻き込み、擂り潰すまで…… http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/22
23: 黒の騎士団 7 ◆P2vcbk2T1w [sage] 2007/11/09(金) 01:56:21 ID:182ASbsJ 「ではゼロ、我々は別の行動を始めましょう。先ずは外敵に対応する為の準備を――」 ――ドクン―― 「ぐ……ッ!?」 その時。 ――ドクン―― 「な、何……!?」 それまでに感じていたような、生ぬるい、精神性の物とは違う、 ――ドクン―― 「ぐ、ぐああああああああああああッ!!!」 強烈で、鮮烈な、“頭痛”が、俺を襲う。 何だこれは? こんな事は今までに無かった。 一体、これはなんだ? ――ドクン―― そのまま、意識を持っていかれそうになる。 だめだ。こんな所で、寝ている暇など無い。 俺には、まだやるべきことが山のように残っているんだ。 こんなところで、こんな所で倒れる訳には…… 「ちょ、ちょっとルルーシュ、大丈夫!?」 「え、ええと……ウチらはもう行かなあかんけど、後は宜しくな!」 「ところで、このモノレールと言うのは何だ? レールと言うからには、列車なのか?」 「拙者は、はやてがキッドと落ち合う約束をした、観覧車にでも向かうとするか」 「この拡声器つこうたら、他の人を呼ぶのに役に立つかなあ? でもこれ、読子さんのやし……」 「ああ、もしリザ・ホークアイという女が訪ねてきたら、宜しく言っておいてくれ」 「え、ちょっと、みんな本気で行っちゃうの? ちょ、ちょっと待ってよ〜!」 「そ、それより、ルル……」 「ま……」 「……」 : : : 雑踏が、痛みと共に遠のいてゆく。 そして、そのまま、 2回目の放送が鳴り響くその時を目前に、 俺は、 完全に、 意識を、 失った。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/23
24: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 01:56:25 ID:3bM5VCtM http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/24
25: 黒の騎士団 8 ◆P2vcbk2T1w [sage] 2007/11/09(金) 01:57:25 ID:182ASbsJ 【H-6/温泉/一日目/昼・放送直前】 【八神はやて@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 [状態]:健康、強い決意、ギアス [装備]:H&K MP7(40/40)+予備弾40発@現実 [道具]:支給品一式、トリモチ銃@サイボーグクロちゃん、レイン・ミカムラ着用のネオドイツのマスク@機動武闘伝Gガンダム 、 読子の支給品一式と拡声器、支給品一式(食料:缶詰)、テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード、 血に染まったはやての下着(上下) [思考] 基本思考:力の無いものを救い、最終的にロージェノムを逮捕する。 1:『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』 2:クレアの求婚に困惑。人生で一度も体感したことのないような変な気持ち。 3:慎二の知り合いを探し出して、彼を殺した事を謝罪する。 4:戦う力のない人間を救う。 5:北上してデパートへ行って下着を入手。 6:東回りに観覧車へ。クロと合流する。 7:読子達にデイパックを返したい [備考] ※ムスカを危険人物と認識しました ※シータ、ドーラの容姿を覚えました。 ※モノレールに乗るのは危険だと考えています。 ※言峰については、量りかねています。 【クレア・スタンフィールド@BACCANO バッカーノ!】 [状態]:自分への絶対的な自信、全裸(下半身にバスタオルを巻いている) 、ギアス [装備]:なし [道具]:支給品一式、マタタビの目玉入り瓶@サイボーグクロちゃん、フライング・プッシーフットの制服(天日干し中) [思考] 基本:脱出のために行動する 、という俺の行動が脱出に繋がる。はやてと結婚する。 1:『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』 2:はやてを守りつつ彼女とともに行動。 3:モノレールとやらに乗ってみたい。 4:名簿に載っているのが乗客なら保護したい。 5:はやての返事を待つ。 【マタタビ@サイボーグクロちゃん】 [状態]:健康、ギアス [装備]:大工道具一式@サイボーグクロちゃん、マタタビのマント@サイボーグクロちゃん [道具]:支給品一式、メカブリ@金色のガッシュベル!!(バッテリー残り95%) [思考]: 1:『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』 2:クレアからさっきの言葉の真意を問い質す。 3:リザを待てないので、リザと接触したい。 4:キッド(クロ)と合流すべく、観覧車へ向かう。 5:暇があれば武装を作る。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/25
26: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 01:57:28 ID:8ybdYQVW http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/26
27: 黒の騎士団 9 ◆P2vcbk2T1w [sage] 2007/11/09(金) 01:58:28 ID:182ASbsJ 【ミー@サイボーグクロちゃん】 [状態]:普通 [装備]:セラミックス製包丁@現実、アニメ店長の帽子@らき☆すた [道具]:支給品一式、世界の絶品食材詰め合わせ@現実 [思考]:基本:殺し合いには乗らず、ゴー君の元へと帰る。 1:エリア中心地に向かうか、温泉に留まるか迷い中。 2:現状を打破する為クロに会う。襲われた場合は容赦しない。 3:性能の悪さをどうにかしたい。 4:帰って絶品食材を振舞う [備考]: ※武器が没収されているのに気がつきました。 ※自分の体の制限を正確に認識しました。 【糸色望@さよなら絶望先生】 [状態]:絶望(デフォルト)、軽い怪我 [装備]:ゼロの仮面とマント [道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品(0〜2個) 服(まだ湿っている) [思考]: 1、絶望した! あまりの本人置いてけぼりっぷりに絶望した!! 2、カレンがあまりに不憫なので、ゼロとして支えながら正しい絶望へ導く 【カレン・シュタットフェルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】 [状態]:普通 [装備]:ワルサーP99(残弾16/16)@カウボーイビバップ [道具]:デイパック、支給品一式、、不明支給品(0〜2個) [思考]: 1、ゼロの命令を守り、ゼロ自身を守る。 2、ルルーシュの手当てをする(ただしゼロの命令を優先) 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】 [状態]:精神的疲労(大)、気絶。 [装備]:なし [道具]:デイパック、支給品一式、メロン×11 [思考]基本:何を代償にしても生き残る 1:状況の把握 2:以下の実行 ・情報を収集し、掌握すること ・戦力の拡充 ・敵戦力の削減、削除 ・参加者自体の間引き http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/27
28: 禁忌の身体 1/11 ◆AZWNjKqIBQ [sage] 2007/11/09(金) 11:09:18 ID:HZBW8OfS 此処はどこなのだろう。 ――暗い。目の前に何を捉えることもできない。それだけでなく何もかもが朧だ。 手を伸ばしてみる。そのつもりだが、本当に身体が動いているのかそれすらもわからない。 何もその先に触れるものはない。暗闇の中、何かがないかと求めてみるが何にも触れることができない。 足を一歩前にだす。そうしているつもりだ。だが、本当に私の足は地面を踏みしめているのだろうか。 私は地面の上に立っているのだろうか。いや、そもそも――、 ――私は生きているのだろうか? 何もない此処こそが死後の世界なのではないだろうか。 そうかもしれない。だがもしそうだとしても、もう少しだけ足掻いてみよう。 果たさなければならないことがある。成し遂げなくてはならないことがある。救わなくてはならない友がいる。 ならば、この僅かに残った心の火が……、それが燃え尽きるまでは――。 ◆ ◆ ◆ 日が昇りきり、本来ならばそこを行き交う人々によって賑やかになっているはずであろう街の中。 そこを、マース・ヒューズ、アルフォンス・エルリック、泉こなた、スバル・ナカジマの4人は進んでいた。 彼らは河に沿って走る大通りは使わず、駅のあった所より北東へ向かい真っ直ぐと市内を突っ切って進んでいる。 それは、とりあえずの目的地であるデパートに向けて近道を使っているということであるが、それよりも 駅に夥しい血痕を残して行方の知れなくなった、ヒューズとアルの仲間であるロイ・マスタング。 彼との遭遇、再会を期待しているという部分の方が大きい。 先頭に、リボルバーナックルを装着しバリアジャケットを展開したスバル。 真ん中に、アルとその陰に隠れて続くこなた。3人のバックアップに銃を構えたヒューズ。 そんな形で、4人は慎重にゆっくりと街中を進んでいる。 駅より北東へと離れたのは怪我を負った仲間だけではない。その怪我を負わせた敵も存在するのだ。 一級の国家錬金術師であるロイ・マスタングに重症を負わせた敵。それに対し警戒を怠ることはできなかった。 しかし、彼らの歩みが遅いのは敵を警戒しているということからだけではない。 彼らの足を重くし、目から精彩を奪っているのは、仲間や友の死という不安だ。 放送が必ずしも真実ではないと、誰も死んではいないと、それを聞いた時はそう誤魔化した。 そう。それは所詮誤魔化しでしかない。口先ではどう理屈をつけようと、そうであることは誰しもどこかで解っていた。 しかし、崩れ落ちかけた理性を支えるには、そんなご都合主義にすら頼らざるを得なかったのだ。 今は心を支えるそのか細い柱が折れてしまわないか。それが怖い。 いつか来るであろう、誤魔化しが破かれ真実に向き合わなくてはならない時。それが怖い。 一歩足を踏み出す度に近づく不可避の真実。それを恐れるが故に、4人の足取りは錘をぶら下げたかの様に重かった……。 ガンッ――と、不意に何かを倒す音が通りに響き、4人の耳に飛び込んだ。 「ヒューズさん……」「……ああ」 ヒューズは音が漏れてきた角へ拳銃で狙いをつけると、壁沿いにスバルを先行させる。 そして、アルにこなたを庇うよう言葉を残すと、自身もスバルとは反対側の壁際に沿って慎重にそこへと近づいた。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/28
29: 禁忌の身体 2/11 ◆AZWNjKqIBQ [sage] 2007/11/09(金) 11:10:34 ID:HZBW8OfS ◆ ◆ ◆ ――寒い。此処はとても寒い。まるで最後の残り火を私から奪おうとすかのように。 ◆ ◆ ◆ スバルとヒューズが通りの向うに発見したのは、まるでそこに打ち捨てられたかのように倒れていたロイ・マスタングの姿だった。 「ロイ! しっかりしろ」 駆け寄ると、ヒューズはそう言いながらロイのうつぶせの身体を仰向けにと返す。 「……う」 それを見たスバルは思わず口に手を当て、顔を顰めた。 あらわになったロイの腹。その部分がまるで巨大な獣に噛み付かれたかのように酷く抉れ、そして焼け爛れている。 とてもではないが、正視に耐えられるものではなかった。 すくむスバルとは対象的に、ヒューズは冷静だった。いや、必死に冷静であることを努めた。 どう見ても、助かるなどとは言えない状態だ。次の瞬間にも目の前の親友は死んでもおかしくない。 だから、今は一手たりとも間違いを犯すことはできない。ましてや、取り乱すなどということは絶対に。 心中で暴れ狂おうとする感情を、ヒューズは鋼の理性で必死に押し留め、叫び声を洩らしそうになる口を硬く結ぶ。 「…………スバル。アル達を呼んできてくれ」 一瞬の沈黙の後、スバルにそう指示を出すとヒューズは改めて親友の容態を観察した。 抉られた腹を焼いたのは彼自身だろう。恐らくは大量出血を防ぐための緊急的な処置。 出血や細菌の感染を防ぐために傷口を焼く――よいとは言えないが、極めて緊急な場合にはそういう処置も 取られないこともない。だが……、 「(これは無茶苦茶だ……)」 皮膚や筋肉までならまだしも、それは内蔵にまで達していた。どう見てもいくつかの内蔵はその機能を失っている。 また、傷はそれだけではなかった。全身に隈なく刻まれた傷によって、青かった制服は血によってどす黒く染まっており、 自身が起こした爆風を浴びたのだろうか、体中に埃と煤を被っている。 「一体、どんな化物と戦ってたんだよ。おまえは……」 よくも生きているものだとさえ思える。ましてや、ここまで歩いてきたなど……。 ◆ ◆ ◆ ……………………………………………………………………………………………………………………。 ◆ ◆ ◆ 「お湯を汲んでくるっ!」 そう言うと、こなたは店の奥へと駆け足で消えていった。 ヒューズはスバルがアルとこなたを連れて戻ってくると、アルにロイを担がせ手近な商店の中へと運ばせた。 そこは小さな布団屋だった。医療品はないが、その代わりに清潔なタオルや布団には事欠かない。 店の奥、ある程度の広さがあるスペースに布団を敷き、とりあえずはそこに傷ついたロイを横たわらせる。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/29
30: 禁忌の身体 3/11 ◆AZWNjKqIBQ [sage] 2007/11/09(金) 11:12:04 ID:HZBW8OfS アルがボロボロになった服をロイから脱がせ、スバルは店内を使えそうな物がないかと探し回っている。 そして、こなたは血と煤に塗れた身体を拭くために必要なお湯を調達しに店の奥へと入った。 そんな中、ヒューズはそれらを見守りながら難しい顔で思案に耽る。 「(……どうすれば、こいつを助けられる?)」 応急手当ぐらいまでならしてやれるだろうが、所詮はそれぐらいだ。 そして、目の前の親友の傷はそんなものでは済むものではないということも解っている。 医師による、それも極めて高度な治療が必要だ。だが、そんなものはここではとても期待できない。 仮にこいつを病院にまで連れて行ったとしても、そこには医師は――、 「ヒューズさんっ!」 ――と不意にかけられたスバルの声によってヒューズの思考は中断された。 「どうしたんだスバル?」 ヒュースは店の出入り口で慌てふためいているスバルに何事かと問う。 「とにかく来てくださいっ! 八神部隊長の声が聞こえるんですっ!」 「――!?」 ◆ ◆ ◆ 『――――最後に……皆、絶対に諦めたりしたらあかんで!!』 それは紛れもなく、スバル達が敬愛する八神はやて――機動六課部隊長の声であった。 機械を通してのものであったが、この場に来てより初めて聞いた仲間の声に、スバルは心の中に希望を取り戻す。 そして、それは彼女の隣りに立つヒューズにとっても僥倖であった。 「(……地獄に仏とはまさにこのことか)」 つい先程までは彼が取り得る手は皆無といってもよかった。だが今、遠く細い道ではあるが手立てを見出した。 「スバル。今すぐ彼女を探し出して合流するんだ」 そう言うヒューズを見るスバルの顔には小さな疑問と困惑の表情が浮かんでいた。 八神部隊長の元へ向えと言われればもちろんそうしたい。だが……、 「あの、ロイさんはどうするんですか? すぐに治療しないと――あ!」 言葉を口にしている途中でスバルも気付く、瀕死のロイを助けることのできる――今唯一の方法を。 「そうだ。お前さんが言っていたシャマルという仲間。彼女を隊長さんと合流して探し出してきてくれ」 とても普通の治療では間に合わない。それこそ魔法の力でも借りなければ……。 そう思ったところに丁度天より声が響いた。まるで神が彼らに救いの手を差し伸べているような、そんな錯覚さえ感じる。 スバルが語った、風の癒し手と称されるシャマルと言う名の魔導師。 彼女をロイの元にまで導くことができたなら、全快とまではいかなくとも死は免れることができるだろう。 「わ、解りました。じゃあ今すぐにでも……」 と、慌てて走り出そうとするスバル。だが、ヒューズはその肩を掴んで押し留めた。 「……まてまて、お前は隊長さんがどこにいるのか解っているのか?」 「え? あ、そうか……」 戸惑うスバルの両肩に手を置き、顔を見合わせるとヒューズはこれまでにない真剣な顔で言葉を紡いだ。 「声が聞こえた方角と音の大きさから推測すると、彼女はここから南の川向こうにいるんだと思う。 そして北へ向うとだけ言っていたが、見つけてもらうことを考えれば捻くれた道は通らないだろう。 恐らくは……この、川沿いの大通りを素直に北上してくるはずだ。 だから君はこのデパートの先、E-7にある丁字路へと向かえ。そこで待てば十中八九会える」 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/30
31: 禁忌の身体 4/11 ◆AZWNjKqIBQ [sage] 2007/11/09(金) 11:13:23 ID:HZBW8OfS 地図を取り出し説明するヒューズにスバルはうんうんと頷きながら、彼の冷静さに感心していた。 これだけ気が焦るという状況なのに、決して目の前の男は無鉄砲にはならない。 「……いいか。なにも彼女を探すのは君だけじゃあないはずだ。 このクソッたれたゲームに乗った殺人者。そんなのも近づいてくるだろう。 正直な話。そんなところへ君を送り出すのは申し訳ないと思っている」 「でも、ロイさんを救うには他に方法がありませんし、私も八神部隊長に早く会いたいです。 それに他の六課のメンバーもあれを聞いてたかも知れませんし」 「そうか。そう言ってくれると助かるよ。ありがとう……スバル」 大きな責任を押し付けられている。なのにそれでも真っ直ぐなスバルにヒューズは明るい希望の光を見た。 それはどんな重く苦しい絶望の闇をも切り裂き、そして希望の道に我々を導いてくれるだろう。 そうなることを願い、ヒューズは彼女を独り送り出す。 「じゃあ、こなたさんとアル君にもよろしくお願いします」 「ああ。それと、ここが禁止エリアになったら俺たちはさっきまで潜伏していた民家へと移動する。 そこもダメなら俺たちが最初に出会った所を待ち合わせ場所にしよう」 最後に「ハイッ!」と気持ちのよい返事をすると、スバルは通りを猛スピードで駆けて行った。 見送るヒューズが余韻を感じる間もないうちに、その視界から消えてしまう。 「(……頼んだぞスバル)」 見送るとヒューズは踵を返し、彼女の幸運を祈りながら店舗の中へと戻った。 どれだけ順調にことが運んでも半日程はかかってしまうだろう。その間、親友の命を繋ぎ止めるのは彼の役割である。 【F-5/市街地/1日目-午前】 【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 [状態]:健康、腹一杯、バリアジャケット [装備]:リボルバー・ナックル(左手)(カートリッジ:6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS [道具]:デイバック、支給品一式(食料-[大量のじゃがいも、2/3][水])、ジャガイモカレー(特大) ランダムアイテム不明(本人確認済み)、予備カートリッジ(×12発) [思考] 基本:仲間を集めて事態の解決を目指す 1:八神部隊長を探し出して合流(そのためにE-7の丁字路に向う) 2:八神部隊長と合流できたら、協力して他の仲間を捜索する 3:シャマルと合流できたら、彼女を連れてヒューズの元へと戻る(F-5/商店街・布団屋の中) 4:その後は、八神部隊長やヒューズの指示を仰いで行動する 5:キャロや他のみんなもまだ生きていると信じたい http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/31
32: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 11:13:44 ID:r0qNDlhD http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/32
33: 禁忌の身体 5/11 ◆AZWNjKqIBQ [sage] 2007/11/09(金) 11:15:00 ID:HZBW8OfS ◆ ◆ ◆ …………暖かい。……なんだろうこれは? ………………………………? ◆ ◆ ◆ ふうと一息つくと、こなたは暖かいタオルをロイの身体から離し、脇に置いたバケツの中で濯いだ。 血と煤に汚れたタオルを通すと、お湯は見る見る間に赤黒く染まってしまう。 「お湯変えてくるね」 そう言うと、こなたはロイの近くにアルだけを残してまた店の奥――居住空間にある風呂場へと向った。 その足取りは硬い。それは、お湯を満たしたバケツが重たいからだけと言うわけではない。 冷たく硬いマネキンの様な身体。傷口に纏わりつくねっとりした半乾きの黒ずんだ血。 初めて見る――死にかけの人間。 毎夜プレイしているMMORPGの中でなら何度も見かけた光景だ。 もしそこでこの様な状況に遭遇したならば、簡単な通信で癒し手を呼ぶか、 倒れている人に「デスペナからのリカバリがんばってね」と、簡単な励ましを送って通り過ぎるだろう。 だが、ここはそういった仮想の世界ではない。痛みや、死。失うということがリアルな現実の世界だ。 カタカタとバケツが揺れ、その縁から濁った水しぶきを床へと零す。 指や、手や、腕や、肩や、脚や、頭が、――こなたの心が再び恐怖と緊張にカタカタと揺れていた。 ◆ ◆ ◆ 「ヒューズさん、これを見てください。大佐の身体がおかしいんです」 ヒューズが近くに戻ってきているのに気付くと、アルはすぐに声をかけた。 そこに含まれた不穏な言葉と、戸惑いを含んだ声の調子に、ヒューズは足を早め寝かされている親友の身体を覗き込む。 「……なんだ、これは?」 アルによって上着とシャツを脱がされ、露出したロイの上半身。そこには大小様々な傷とは異なる奇妙な異変が起こっていた。 鈍色の鱗がロイの右肩を中心に広がり、胸と右腕を覆っていた。触れてみるとそれは金属質で、冷やりとした感触を手に返す。 「……これは一体なんなんだアル? 錬金術の一種か?」 問われるアルは首を横に振る。彼も最初は錬金術の一種かと思ったが、それを確定させることはできなかった。 身体を金属で覆い、その頑丈さや刃で以って戦いの道具にする――そういう錬金術師は少なくない。 ゆえに、最初は身体を守るためにそうしたのではないかと思った。ロイは火を起こすことを得意としているが、 何も他の錬金術が全く使えないというわけではない。事情や必要があれば火以外の術も使うだろうと。 「おかしいんですこれ。金属の鱗が直接身体から生えてきていて……、つまりは融合しているんです」 言いながらアルはロイの腕に手をのばし小さな鈍色の鱗を捲ってみせ、そこが癒着していることをヒューズに見せた。 「それに、これも見てください……」 今度は手を胸の上へと滑らし、鱗が生えている部分とまだ生身の部分との境界を示した。 「……少しずつですけど、侵食しています」 二人が見ている前で生身の皮膚の一部がささくれ立ち、色を変えて一枚の鱗へと変化する。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/33
34: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 11:16:16 ID:r0qNDlhD http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/34
35: 禁忌の身体 6/11 ◆AZWNjKqIBQ [sage] 2007/11/09(金) 11:16:26 ID:HZBW8OfS 瀕死のロイに埋め込まれたDG細胞。 それが、見守る者も。宿主さえも知らぬうちにじわりじわりとその身体を別種の物へと書き換えていた。 ◆ ◆ ◆ …………ぬくもりは何処だ? ………………さっきのぬくもりは? ………………………………あれは? ◆ ◆ ◆ 「何か心当たりはないのかアル? こいつはこのままだとどうなっちまうんだ?」 得体の知れぬ感情に、今まで平静であり続けていたヒューズの心が揺らぎ始めていた。 生きるか死ぬか、それとはまた全く違う何かに親友は陥ろうとしているのではないか。そういう不安に。 「……生体合成。キメラの一種かも知れません」 その言葉を聞き、ヒューズの背中に冷たい汗が一つ流れ落ちた。 キメラ――生体合成。それは2種以上の生物を錬金術によって無理やり一つの生き物へと組み合わせる術だ。 生き物の命を徒に弄ぶこの術を知っていい顔をする人間は少ない。 ましてや人間との合成は禁忌扱い。その使用が明らかになれば術者は厳しい刑に処されることになっている。 誰が、どうして、こんなことを? これは錬金術なのか、それとも魔法か。はたまた全く未知のものなのか? そして、どうすれば目の前の男を救うことができるのか? 「アル。お前の錬金術じゃあどうにかならないのか?」 どうにかなるのならアルは行動を起こしているはず。だが、無駄と解っていててもヒューズはそれを口から零した。 言葉は返ってこない。ただ、アルが首を横に振る時に鳴る金属が擦れる音――それが答えだった。 ◆ ◆ ◆ ……………………寒い。………………寒い。…………寒い。……寒いのはいやだ。 ◆ ◆ ◆ その後、二人が出した結論は代謝を抑えるためにロイの身体を冷やすということだった。 それが有効かどうかはわからない。だが、鈍色の鱗も生物なのだとしたら冷やせば活動が弱まるかもしれない。 しかし、自分達がしていることが正しいのか解らないゆえに焦燥感は募る。 もしかしたら、これが親友の命を奪うことになってしまうかも知れない。 だが、それがどれだけ不明な道であっても、何もせずに時が経つのを待てるほど彼らは冷静ではなかった。 「こなたちゃん。そっちの奥にタオルがあるから、ありったけ持ってきてくれ」 その指示に、こなたは素直に従って小走りで店内の通路をかけていく。 ヒューズの目の前では、アルが氷水に浸したタオルをロイの身体の上に這う鈍色の鱗へと被せている。 また一枚のタオルを氷水の中から取り出すと、アルはそれをロイの鱗が浮かんだ右腕に巻こうとして――気付いた。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/35
36: 禁忌の身体 7/11 ◆AZWNjKqIBQ [sage] 2007/11/09(金) 11:18:05 ID:HZBW8OfS ◆ ◆ ◆ ………………やめろ。…………やめろ。……寒いのはいやだ。……私は、……私はまだ、………………! ◆ ◆ ◆ 巻きつけようとしていたタオルを脇に置き、アルは鱗に包まれたロイの右腕を取る。 微か、ほんの微かにだが彼の腕が震えていた。弛緩していた筋肉に力が戻ってきたのか……? 「大佐……?」 アルの聴覚にただの呼吸ではない吐息が聞こえてきた。それはほんの僅かでまだ言葉としては捉えられない。 ”…………ヤ…………ロ……” 「大佐。解りますか? ボクです。アルフォンス・エルリックです。…………大佐?」 アルは覆いかぶさるような形でロイの口へと顔を近づける。震える唇が何を紡ごうとしているのかを確かめるために。 「 邪 魔 ――ダ ! 」 ◆ ◆ ◆ ロイの口から漏れたそれをアルは聞き取ることができなかった。それと同時に鳴った派手な破壊音に気を取られたからだ。 アルより見て左側、それほど離れていない棚の中に何かが飛び込んでいた。 それはロイの腕を掴んでいたはずの、アルの左腕だった。だが、それに気付く間も彼には与えられなかった。 「(……アレ?)」 気がついたらアルは宙を待っていた。 投げ飛ばされたのかと一瞬彼は思ったが、グルグルと回る視界の端にまだ残ったままの己の身体を見てそれを悟った。 「(首を刎ねられたんだ……)」 そして同時に、自身の存在が空気に溶けるほど希薄になっていることに気付き、兄から貰った刻印が破られたことを知った。 固い床の上を派手な音を立てて兜が転がるのも、最早ひとごとの様に感じる。 最後の瞬間。おぼろげな視界の中に見えたのはこちらを覗き込む少女の顔だった。 ” ……こなたさん。逃げて……ください…… ” ちゃんと最後の言葉を発することができたのか。目の前の少女はどんな表情をしていたのか。 それを確かめる間もなく、アルの魂は解けて――消えた。 【アルフォンス・エルリック@鋼の錬金術師 死亡】 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/36
37: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 11:18:53 ID:ZBg/i/na http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/37
38: 禁忌の身体 8/11 ◆AZWNjKqIBQ [sage] 2007/11/09(金) 11:19:29 ID:HZBW8OfS ◆ ◆ ◆ ………………五月蝿い。…………私の、……私の行く手を、阻むな。……私は、私には…………! ◆ ◆ ◆ その一瞬の出来事に、ヒューズの心と身体は凍り付いていた。 それは、命の危機が迫る恐怖によってではない。友を、無二の親友をこの世から喪失する恐怖によってだった。 ヒューズは見た。振り払った手がアルの腕を引き千切り脇の棚に放り込むのを。 そして、返す手刀でアルの金属の身体をまるで紙に鋏を入れるかのように容易く裂くのを。 バネ仕掛けの玩具の様に飛び起きた彼の親友は、仲間であるはずのアルを一瞬で無残な姿へと変えてしまった。 刻印を破壊され、ただの鎧となったアルの身体は床に倒れると派手な音を立ててそこに四散した。 「 アル君――――ッ!」 立ち上がったままの姿勢で彫像の様に静止していたロイと、同じく動けないでいたヒューズはその悲鳴を号砲として 同時に動き出した。 十歩はかかる距離をたったの二歩で進みきると、ロイは鋼の鎧を切り裂いた手刀を目の前の少女に突き出す。 その一瞬前、ヒューズの持つ銃の狙いはピタリと親友の頭にポイントされていた。後は、引き金を引く指に力を入れるだけ――。 ◆ ◆ ◆ ……………………暖かい。…………これがもっと欲しい。……私の身体を、……凍ってしまった身体を溶かしてくれ。 ◆ ◆ ◆ 「――――――ぅぶッ」 こなたの鼻と口から鮮血が噴出し、目の前の怪人の顔を赤く染める。 腹の真ん中に挿し込まれた獣の腕は、彼女の小さな身体の中を何かを求めるようにまさぐり、奥へ奥へと侵入する。 圧迫する柔らかで温かな臓物の壁を押しのけながらそれが深い処へと進むたびに、吊り上げられたこなたの身体は揺れた。 身体の内側を抉られる刺激に、彼女はびくりびくりと大きな反応を返し、それに合わせて長い髪と細い足が宙で揺れた。 力無く人形のものの様に垂れる脚を伝い、幾筋もの紅の線が落ちその足元に少しずつ赤い円を広げてゆく。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/38
39: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/09(金) 11:20:45 ID:r0qNDlhD http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/39
40: 禁忌の身体 9/11 ◆AZWNjKqIBQ [sage] 2007/11/09(金) 11:20:56 ID:HZBW8OfS こなたは思う。もっと早くに気付くべきだったと……。 この事態に巻き込まれた時から、どこかでこう思っていたのだ――「自分が死ぬはずがない」と。 殺し合い、そして死ぬ。そんな不条理や不都合、不幸が自分に降りかかる訳がないと。何の根拠もなしにそう思っていた。 それどころか、自分はこの物語の主人公であると、そんな風にすら思っていた。 特別なところはない。魔法や錬金術のような不思議な力は持ってないし、命を賭ける度胸も持ち合わせてはいない。 導かれるに値する運命などとも無縁だし、古より伝わる血統なんてものにも心当たりはない。 だが、何ももってはいないからこそ。一本の旗も立っていないからこそ、自分は意味のある存在なのだと。 これこそが典型的な巻き込まれ型主人公のポジションであると、自分が好む非日常の物語の中にあるものだと。 そして、自分はその位置に立っていると、何の根拠もないのにそう思っていた。 紆余曲折はあるにせよ、自分が途中で脱落するなんて夢にも思っていなかった。 最後まで自分は物語の中心に立っていて、全てが終われば全部いい思い出に変わるだろうと……。 だが――、 「(……二次元と、リアルは………………)」 ――違った。 最後に一際大きく痙攣すると、こなたは遺言を語るべき口から血の塊を吐き出し、何も言い残さずにそのまま死んだ。 【泉こなた@らき☆すた 死亡】 ◆ ◆ ◆ ――ヒューズは引き金を引くことができなかった。 目の前の親友を――すでにもう自分の知る親友ではないのに――撃てなかった。 その逡巡は十分の一秒にも満たない短いものだった。だが、それが少女の生死を別けた。 アルと一緒に現れた小柄な少女。最初は周りを取り囲む何もかもに怯えきっていたが、それが彼女の本質でないことは その後すぐに知ることができた。かわいい女の子だ。自分の娘に匹敵するぐらいに、彼女の親を羨むぐらいに……。 殺されてしまった――自分のせいで。 殺させてしまった――無二の親友に。 これは一体どんな悲劇なのだろうか。螺旋王は一体何を望んで自分達をこんな舞台に立たせたのか。 目の前の親友は、未だ少女の身体を弄んでいる。彼は一体何者になってしまったのか。 「――やめろ! やめるんだロイ!」 室内に乾いた破裂音が連続して鳴り、それに合わせてロイのまだ肌色だった部分から血が迸る。 銃撃を加えるヒューズの目。その端には理性で抑えきれない分だけ涙が溜まっていた。 逆に、鬱陶しそうな動きで身体を向けたロイの目に感情はない。灰色に濁っており、ヒューズの姿も捉えられてはいなかった。 「ロイ! 俺だ! ヒューズだ! 正気を取り戻せ!」 ヒューズは訴えながらさらに弾丸を叩き込む。だが、声も衝撃も彼の心に届いているようには見えなかった。 片手に少女を引きずり、緩慢な動きでヒューズの方へと歩み寄ってくる。 「ロイ――――――ッ!」 遂に感情を解き放ち、叫びと共に放たれた弾丸によって鮮血と剥がれた鱗が宙に舞い、ロイの片腕よりこなたが滑り落ちる。 だがもうそれには興味を失ったのか、加えられた傷に怯むことなくロイはさらに一歩前に出る。 「ヒューズだ! 俺が解らないのか!? ――ロイッ!!」 必死の訴えに対するのは無言の一撃だった。アルやこなたを屠った手刀がヒューズに対しても容赦なく振るわれる。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/40
41: 禁忌の身体 10/11 ◆AZWNjKqIBQ [sage] 2007/11/09(金) 11:22:48 ID:HZBW8OfS ◆ ◆ ◆ ……五月蝿い。五月蝿い。五月蝿い。五月蝿い。五月蝿いぞ、マー……。 ◆ ◆ ◆ 床に真新しい血が音を立てて落ちる。 親友から繰り出された必殺の一撃を辛うじて避けたヒューズは片手で傷を庇い、もう片方の手で銃を構える。 「……ふざけるなよ。お前がそんなものになっちまってどうするんだ」 ロイは相変わらず無言だ。まるで殺すために作られた機械の様に、無感情でヒューズの方へと詰め寄ってくる。 それに合わせてヒューズもじりじりと後退する。だがすぐに背中に壁がつき、彼は部屋の隅へと追い詰められた。 構える銃の中にはもう一発しか弾丸は入っていない。予備はあるが、それを取り出す余裕は与えられないだろう。 ヒューズは静かに、銃口の先を親友の眉間へとポイントする。 いくら化物になったとはいえ彼は人間なのだ。頭を撃ち抜かれれば死ぬに違いない。 そう――死んでしまうのだ。死んで彼は永遠にこの世から失われる。夢も何もかも諸共に――、 「……ロイ。思い出せ。……俺を、仲間を、そしてなによりもお前自身を! ――お前が目指していたものを!」 ――だが、死ねば罪も悪夢も諸共にこの世から連れ去ることができるだろう。 「――目を覚ませっ! ロイ!」 ◆ ◆ ◆ ……私はあの時、自身を取り巻く世界というものに対し絶望した。一人の人間のなんと無力なことか……と。 そしてまた、自身の無力さと臆病さにも絶望した。……そのままだったら、私はただ朽ちて世界から消えるだけだっただろう。 だが、私は一人ではあっても独りではなかった。 だから足掻けるのだ。絶望に包まれた世界の中でも――いつかそれを改変できる時が来ると信じて。 心をも凍る絶望と暗闇の中でも私は抗う。たとえ光が無くとも、這ってでも前に進んでやるさ。 そして、今度こそアイツを救うんだ。私を独りにはしなかったあの男を――! ◆ ◆ ◆ 侵食を続けていたDG細胞は、それに必要な時間を経てついにロイの身体を覆いきった。 彼の眼の中に消えていた虹彩が戻り、久しく失われていた光が取り戻される。 そして、それと同時に靄の中にいたような意識も少しずつ晴れ、はっきりとしたものになろうとしていた。 通常ならばDG細胞に脳を侵されれば、碌な意志を持たないゾンビ兵へと成り果ててしまう。 だが、ロイは強靭な意識によってそれを跳ね除けた。この世の天元を目指す強い意志で――! http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/41
42: 禁忌の身体 11/11 ◆AZWNjKqIBQ [sage] 2007/11/09(金) 11:24:26 ID:HZBW8OfS まだ取り戻したばかりで薄ぼやけた視界の中に誰かがいる。それは闇の中で声を聞いた親友なのだろうか? 「……マース。お前なのか…………? マース…………?」 目の前に捜し求めていた親友――マース・ヒューズがいた。 もう二度と死なせはしないと誓ったその男が――目の前で死んでいた。 真っ黒に乾いた血の円の中で親友は蹲り、胸にポッカリと大きな穴を開けて死んでいた。 ―― ナ ン ダ コ レ ハ ? ――ひ、と口から小さな悲鳴が漏れた。 こびり付いた血によってどす黒く染まった自分の手は、何時の間にかに自分のものではなくなっていた。 そして、血に塗れた手と親友の胸に空いた穴を見比べれば、もう寒くは無いのにガチガチと歯が震える……。 一歩後ずさろうとして、何かを蹴ってしまったことに気付く。 薬缶かバケツを蹴ってしまったのかと思ったが、そうではないとすぐに気付いた。それは彼がよく知る者の「一部」だった。 室内を見渡せば、それが散らばっているのが解る、そしてその合間に見知らぬ少女の死体も発見できた。 俄かに脳内が粟立ち、恐怖や不安、焦燥や絶望。何もかもが入り混じったものが身体中を駆け巡り心を掻き乱す。 強く天の方向へと伸びていた強固な意志は雲散霧消し、心に灯った赤い炎は明るさを失う。 闇に閉ざされた中よりもより最悪な光景に、現実感は急速に失われていき立っていることすら覚束無くなってくる。 そして彼は見た。透き通ったショウウィンドゥに映った自身の姿を。そこに映し出された化物の姿を――。 マース・ヒューズは死んだ。 暗雲がロイの心に覆いかぶさろうとしている。だが、……まだ雨は降っていなかった。 【マース・ヒューズ@鋼の錬金術師 死亡】 【F-5/商店街・布団屋の中/1日目-昼】 【ロイ・マスタング@鋼の錬金術師】 [状態]:激しい混乱、DG細胞寄生.、上半身裸 [装備]:なし [道具]:なし [思考]:?????????? ※DG細胞は全身に行き渡りました ※布団屋の中に、ヒューズ、アル、こなたの支給品が落ちています [マース・ヒューズの支給品] デイバッグ(×2)、支給品一式(×2、-ランタン×1)、ロイの発火布の手袋@鋼の錬金術師 S&W M38の予備弾数20発、エンフィールドNO.2(弾数5/6)、短剣×12本、制服のボタン(ロイ) 単眼鏡、水鉄砲、銀玉鉄砲(銀玉×60発)、ジャガイモカレー(中) [アルフォンス・エルリックの支給品] デイパッグ、支給品一式 [泉こなたの支給品] デイバッグ、支給品一式、マチェット、チェーンソー、ジャガイモカレー(小) ※死んでいるマース・ヒューズの手に拳銃が握られています >[S&W M38(弾数1/5)] http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/42
43: 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2007/11/09(金) 21:17:47 ID:UVyIQbEN >>10 ミスじゃないですよ君 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/43
44: あぼーん [あぼーん] あぼーん あぼーん http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/44
45: あぼーん [あぼーん] あぼーん あぼーん http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/45
46: あぼーん [あぼーん] あぼーん あぼーん http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/46
47: あぼーん [あぼーん] あぼーん あぼーん http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/47
48: あぼーん [あぼーん] あぼーん あぼーん http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/48
49: あぼーん [あぼーん] あぼーん あぼーん http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/49
50: あぼーん [あぼーん] あぼーん あぼーん http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/50
51: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 20:57:41 ID:0FtEezOM 「……言ったろう、スザクくん。その矛盾が、いつか君を殺すってね」 放送で枢木スザクの名を告げられたとき、ロイド・アスプルンドはそう呟いた。 真剣な面持ちである。今まで取り続けてきたような躁病的な軽い雰囲気は消え去 っている。 ロイドはスザクが何故死んだかは知らない。 だが正義感が人の二倍も三倍も強い彼のこと、ここに来ても変わらず誰かのため に行動し、死んだのだろう。 人の死を嫌いながら死に近い場所にいようとする矛盾を抱えながら。 (結構強そうに見えたアニタくんもそうそうに脱落。 ジェレミア卿だって失脚してからは散々だけど、無能って訳じゃあない。 こりゃあ、ぼくなんかはうかうかしてらんないかなぁ?) たとえ相手がかよわい女の子だったとしても、殺意を持って襲い掛かられればおめおめと殺される自信がある。 銃を持ってはいるが、荒事は苦手だし、多少でも心得のあるものには通用しないだろう。 (死んじゃうのは勘弁だなぁ。 ここにはまだいろいろ面白いものがいっぱいあるだろうし、シンヤ君の持ってくる首輪はぜひ解析したい。 まぁ、駄目なときはそれまでだろうけどね) 退廃的なことを考えながら廊下をうろつく。放送は既に終了していた。 熱心にいじっていた携帯電話は、放送が開始されたのにあわせてデイパックの中に戻した。 ふらふらと、校舎内を彷徨い歩き、黒板を見て回った。 『いいですとも!』 『2月2日』 『あんたの思った通りだよ、諸岡さん』 びっしりと書き込まれた黒板の落書きは結構な量だが、別に覚えきれない程ではない。 幾つ目かの教室を見終わり次の教室への移動中、ロイドはある教室の名前に目を留めた。 (んん?何か、新しい発見があるかなぁ?) 好奇心が押さえきれない、といった様子でにんまり笑う。 ロイドは鼻歌混じりに、足早にその教室の中へと入っていった。 その教室の名を示すプレートには「理科準備室」と記されていた。 ◇ http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/51
52: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 20:59:41 ID:0FtEezOM 何故だが勝手に流れていた涙がひとまず止まり、それが完全に乾ききった頃に鴇羽舞衣は学校に辿り着いた。 体中にこびりついた血は臭いがつくのがいやだったので途中できる限り拭った。 重たい足取りで校庭に踏み入る。 その心中もまた、重く沈んだ虚ろな状態であった。 思考をできるかぎり単純化することで、何とか精神の均衡を保っている。 出会った人を殺し、大切なものを奪う。 今まで散々自分がされてきたことを、今度は自分がする側へと回るのだ。 それが正しいのだ、当然のことなのだと思う。思い込もうとする。 そうすればする程涙が溢れてくるのは奇妙だったが、その理由を考えるのが面倒くさくなる頃に涙は止まった。 おかけで、今は邪魔されることなく思考に集中できる。 ひとまずはエレメントの代わりとなるような武器の調達だ。目的地に学校を選んだ理由でもある。 調理実習室に行けば包丁程度の刃物ならば入手できるだろう。 包丁。 そういえば巧海や命にはよくご飯を作ってあげた。 特に命は舞衣のご飯はおいしいっていつもとても嬉しそうに言っていた。 そんなことを、思い出した。 奪われていったもののことなど、もうどうでもいいのに。 舞衣は心底うっとおしげに頭を振って、心中に浮かんだものを振り払った。 そうしたら、顔を上げた際に一つの教室が目に留まった。 校庭から眺める限り、どこもかしこも人のいる様子のない校舎だが、その教室にだけは人影が見えた。 よく目を凝らすと、ひょろひょろとした眼鏡をかけた男が、何か作業をしている。 へらへら笑いながら手を動かす様は、いかにも理系のもやしっ子という感じで、武器を持っている可能性はあるにせよ当人はとても強そうには見えない。 最初に殺すのはあいつでいいか、と舞衣は思った。 善良な人間のふりして接触してみて、隙を見て殺そう。 ついでに持ち物も奪ってしまおう。 光沢を失った瞳の奥でそのようなことを考えながら、舞衣は校舎の中へと姿を消した。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/52
53: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 21:00:58 ID:0FtEezOM ◇ 「おいおいおいおいおいおいおい! 俺ってば今空飛んじゃってるよ!何でだろうなぁ、どうしてこんなことになってんだろうなぁ!おい!! つーか何だこの乗り物はよぉ!羽虫かっつーの!あと、羽が近ぇよ!どっか切っちまったらどうしてくれんだっての!」 頭上で喚くラッド・ルッソの声を聞き流しながら、東方不敗マスターアジアは思案していた。 「そんときゃもちろん俺がぶち切れるんだけどなぁ!あぁ!?何か今上手いこと言っちまったかぁ!? つーか、ジジィ!手前ぇ、俺が気持ち良く人殺しやってる真っ最中に邪魔してくれるたぁ、どういうつもりだぁ!? おかげでこっちは鬱憤がたまりまくってんだけどなぁ!?」 この男は野に放っても問題あるまい。 自らの欲望のままに闘争を繰り返すこの男なら、赴いた先々で混沌の種となるだろう。 「ていうかあんた何?何でそんな細い糸指でつまむだけでぶら下がってられんの? せめて手に巻き付けるぐらいはしなきゃ駄目だろぉ!普通はよぉ!」 となればこれ以上ここで時間を浪費する必要はない。 再び地に降り立ち、争乱の火種を求めて駆け回らなければならない。 武道家の血をたぎらす猛者がいれば、手合わせするのも良いだろう。 しかし、と白髪交じりの弁髪を風に踊らせながら、東方不敗は市街地を見下ろす。 ちなみに、弁髪はお下げ部分以外の毛髪を剃り落とすのが正しいスタイルであり、東方不敗のそれを弁髪と呼ぶのは不正確なのだが、そんなことはどうでもいい。 「無視かよ! ところでなぁ!俺ってば段々分かってきちまったよ! つまりこのレバーを動かしゃ、この羽虫を俺の好きに動かせるってことなんだよなぁ!?」 それ程の距離を移動してきた訳ではない。判断を下すにはまだ早いかも知れない。 だが、川を一本越えてからというものぱったりと人影が途絶えていたのもまた事実だった。 やはり、より多くの人物と出会うためには人の集まりやすい施設などを狙うのが得策か。このまま人が見つからないのであればしばし休息するのも一案。 東方不敗がそのように考えたとき、フラップターが学校らしき建物の上空に差し掛かった。 「ほらこうすりゃ右だろ、んでもって左! おいおい、俺ってばもう乗りこなしちゃったよ! これって結構すげぇんじゃねぇの!?やっぱ才能ってやつかぁ!」 そして、その校庭を歩く一人の少女を発見したとき、東方不敗の口元が怪しく歪んだ。 絶望の淵に生きる幽鬼の如き雰囲気を纏いながら歩く少女。 そこに、東方不敗は己が目的達成の一助となる可能性の芽を見出した。 「まぁそれはそれとしてだ! かくして俺は自由にこいつを動かせるようになっちまったって訳だぁ! こいつの意味が分かるかぁ!?」 だが、弛まぬ修業と長年の人生経験で鍛えぬかれた東方不敗の眼力は、同時にその少女の奥底に未だ燻る迷いをも見て取った。 そして、それが今にも消えそうなほどに弱弱しくなりつつも、確かにその娘を支えているということも。 ならば、最後の一押しをしなければなるまい。 「つまり、俺がむかついちまってどうしようもねぇ手前ぇを、じっくり上からなぶり殺しにすることができるように……って何でいなくなってんのぉ!? この高さから飛び降りるとかマジありえねぇっての!ヒャーハハッハッハッハ!」 ラッドの高笑いが響く中、フラップタ−から延びる金属糸が、風を受け激しく揺れ動いていた。 ◇ http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/53
54: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 21:02:30 ID:0FtEezOM 舞衣は調理室で苦もなく包丁を入手することができた。 何本か見比べ、鞘つきで一番切れ味の良さそうなものを選ぶと、スカートの背中に差し挟んだ。 調理室の黒板はよく分からないいたずら書きで埋め尽くされていた。 『我の拳は神の息吹!』 『“堕ちたるたる種子”を開花させ、秘めたる力をつむぎ出す!!』 『美しき 滅びの母の力を!』 そんな言葉が目についた。 「……わっけ分かんない」 掃除くらいちゃんとしなさいよね、そうとだけ言って舞衣は調理室を後にした。 首尾よく調理室で包丁を手に入れ、男のいる教室を目指す。 「いらっしゃいまぁせぇ」 教室の扉を開けた舞衣を出迎えたのは、そんな言葉だった。 「あぁ、そんなあからさまに警戒した顔されると傷つくなぁ。 僕はロイド・アスプルンドっていいます。殺し合いをするつもりはないよ? 女性の扱いは心得てるつもりなので、リラックスしてもらって構わないよ」 「ああ…いや…」 甲高い声と調子っぱずれの抑揚ででまくしたてる男、ロイドに舞衣は生返事を返すことしかできなかった。 ロイドが言うような警戒した顔をしていたつもりはない。 扉を開ける前にできるだけ平静を装えるように、心の準備は済ました。 舞衣は教室に入ってすぐ視界に飛び込んできた、部屋の余りに雑然とした様子に思わず目的も忘れて息をのんでしまっただけである。 教室には大きな長机が一つと、左右に棚が一つずつ置かれている。 しかし、器具や薬品の保管用と思われる棚は空っぽであり、そこに収められていたと思われる物達は現在、机の上といわず床ののあちらこちらにまで、無節操に展開していた。 足の踏み場は何とか残されているが、気を付けないと危険な薬品をぶちまけかねない。 そして、ロイドと名乗った男はそんな部屋の中で悠々と椅子に腰掛け、火を灯したアルコールランプで焙ったパンを口に運んでいた。 「ああ、失礼。食事しながらっていうのが気に障っちゃったのかなぁ? それなら申し訳ないけど、いきなり部屋に入ってきたのは君だしこの件に関してはそっちが折れてくれるとありがたいなぁ。 ま、何にせよすぐに済ませます」 言葉の通りにパンを食べきり、ランプの火を消す。 「い、いや、それはいいんだけど。この部屋って全部あなたが…?」 舞衣はあきれ顔で部屋を見回した。 誰にいつ襲われるかも分からないこの状況下で、この男はずっと、珍しくもない理科室の道具達をひっぺがえしいたというのだろうか。 普通の神経では考えられないが、ロイドの締まりのないにへら顔を見ているとありえなくもない、と思えてしまう。 「いや〜お恥ずかしい。ちょっとした捜し物のつもりだったんだけどねぇ。 いつの間にか止まらなくなっちゃって」 「捜し物って…そのアルコールランプのこと?」 「んんん。まぁ、そんなとこだねぇ」 何を考えているのか分からない。 舞衣はロイドとの会話で毒気を抜かれそうになっていることに気が付いた。 落ち着け、と心中で喝を入れる。 おかしな男だが状況もろくに分かっていないただの馬鹿だ。襲い掛かれば今すぐにでも命を奪うことができる。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/54
55: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:02:58 ID:wk78nrYt http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/55
56: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 21:04:19 ID:0FtEezOM 「ちょおっと待ってねぇ、その辺どかすから。 これだけ散らかしてちゃ、座ってって言っても無理だよねぇ」 「ええ…ありがとう。名前、まだ言ってなかったわ。鴾羽舞衣よ」 「舞衣くんだねぇ。りょ〜かい」 ロイドは慣れた手つきで床に散らばっている瓶や実験用具などをほいほい片付けている。 顔は下を向いており、舞衣は視界に入っていない。 今なら、と舞衣は思った。 だが、舞衣が背中に手を伸ばしかけたとき、ロイドはそれを察したかのようなタイミングでひょいと顔を挙げた。 そして、奇妙なことを言った。 「一つ言い忘れてた。 断っておくけど僕はイレヴンに対して差別的な感情は別に持ってないからね。 大切なのはそれが僕にとって興味深いかどうか。その前には全ての物事は平等なんです」 「…はいぃ?イレヴン…って何?」 「イレヴンを知らない?本当に?それは…実に面白いねぇ!」 「うぇっ!?」 舞衣の発言のどこに興味をひかれたのか嬉々とした表情でロイドが迫ってきた。 目に宿るあやしげな光が、そこはかとなく怖い。 舞衣は思わず、包丁に伸ばし掛けた手を戻し、身を庇っていた。 「君日本人でしょう?イレヴンが何か分からない何てありえないなぁ。 でもそれが真実だとすると…あ〜、想像が膨らむなぁ。 ちらっとはそういう可能性も考えてたけど。シンヤくんにも聞いておけば良かったなぁ。うふふ」 訳の分からないことを言いながら、一人で身悶えしている。 舞衣は軽く引きながらも、ロイドの注意がそれた今がチャンス、と慎重に手を後ろに回そうとした。 しかし。 「おぉほっ!」 「ひいぃ!」 奇声を挙げて飛び付いてきたロイドにその手を捕まれてしまった。 気付かれたかという焦りと生理的嫌悪感が合わさってもの凄く気持ち悪い。 しかし、ロイドはそのまま何をするでもなく、好奇心に満ちた気色の悪い視線を舞衣の手に注いでいる。 どうやら殺そうとしているのに気付かれた訳ではないらしい。 「…この指輪、見せてもらえる?」 「へ?」 一瞬何のことを言われているのか分からず、少ししてから支給品の指輪をはめっ放しにしていたことを思い出した。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/56
57: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:05:07 ID:wk78nrYt http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/57
58: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 21:06:08 ID:0FtEezOM 「どうかな?僕にとっては君の話と同じくらい興味があるんだけど。 これは君の私物?」 「し、支給品よ。ちょっと待って、今外すから」 どうせこの状況ではただの指輪になど何の価値もない。 舞衣は手を振り払い、残った感触に寒気を覚えながら指輪を外すしてロイドに渡した。 眼鏡を外し興味津々と言った様子で指輪の観察を始めたロイドに言う。 「そんなに珍しい?ただの指輪でしょう」 「ただの指輪?馬鹿言っちゃいけない。 詳しく解析してみないとはっきりしたことは言えないがおそらくこの指輪は、宝石部分まで含めて僕が知っているどの材質とも、違う」 「ふ〜ん…」 舞衣は興味のなさを隠しもせず、気の抜けた返事をした。 舞衣の思考は今、全く別のところに向いていた。 ロイドが、指輪の観察に熱中する余り、舞衣に背中を向けている。 自分の指にすぽすぽ指輪をはめてみたり、相変わらずよく分からない男だが、がら空きの背中は舞衣に、突き刺して下さいと言っているように見えた。 ゆっくりと包丁を取出し、構える。 即死させられなくてもいい。どうせこの校舎に他に人はいない。 泣き叫ばれたなら、叫び声もあげられなくなるまで刺し続ければいいだけの話だ。 奪われる側でいるのはもう御免だと、自らを鼓舞する。 舞衣は、背を向けたままぶつぶつと何事か呟いているロイドに向けて一歩足を踏み出した。 息が荒くなるのを自覚した瞬間、腰溜めに構えた包丁を一気に突き出そうと足に力を入れ、 「ざぁんねんでした」 くるりと振り返ったロイドが放り投げた何かによって突進を阻まれた。 舞衣が認識できたのは自分の額に何か固いものがぶつかったことと、振り向いたロイドが相変わらず気持ちの悪いスマイルを浮かべつつ、目だけはしっかりと覆い隠していることの二つだけだった。 次の瞬間、舞衣の目の前で閃光が放たれた。 「あ…あぁぁぁあ!!」 突如放たれたまばゆい光をまともに目にくらってしまい、舞衣は視界を奪われた。 かちかち明滅する暗闇の中にロイドの声が響く。 「簡単な閃光弾だよ。マグネシウムの燃焼ってやつだね。 お粗末なつくりで申し訳ないが、生憎この部屋にあるものは色々けちられていてそれが精一杯なんだぁ。 この場合は結果オーライかな? 勝手に反応が開始しないようにする工夫が、一番苦心した点です」 「うるさいうるさい!何なのよぉ!あんたも!あんたもそうやって私を…!」 耳障りな声のする方向を頼りに、半狂乱になりながら滅茶くちゃに包丁を振り回す。 だが手応えはなく、包丁は何かに中途半端に食い込んだ拍子に手からすっぽ抜けた。 舞衣はバランスを崩し、前のめりに転倒した。 床に散乱している物にぶつかりちゃがちゃとやかましい音をたてる。硬い物が顎を打った。 「何があったかは知らないが、あれだけ死んだ目をしていれば誰だって警戒するよ。次からは改めることをお薦めする。 あ、君の話やこの指輪に興味があるのは本当だから、これちょっと貸してもらうよぉ。じゃあね、さよぉ〜なら〜」 「殺してやる!あんたなんか絶対殺してやる!!」 遠ざかっていく声に、舞衣は倒れ伏したまま、ありったけの憎しみを込めて叫んだ。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/58
59: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:06:17 ID:lGzdFHk0 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/59
60: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:06:55 ID:wk78nrYt http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/60
61: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 21:08:14 ID:0FtEezOM ロイドが自分でお粗末なつくりと言っていたとおり、視力が回復するのにそれ程の時間はかからなかった。 完全に回復するまで待って、舞衣はのっそりと身を起した。 辺りを見回す。ロイドの言ったままの、死んだ魚のような目をしながら。 ロイドの姿はもうどこにも見えない。 教室の床に割れた瓶の破片が散らばっている。 破片の一つが肩口を傷つけ、浅く血が流れていた。 おぼつかない足取りで教室を出て、そのまま校舎の入り口まで戻る。 包丁は回収しなかった。 何だかそれが、とても惨めなものに思えたので。 「う…う…うぅ」 込み上げてくる嗚咽が押さえきれなくなって、舞衣はグラウンドの土に倒れこんだ。 情けなさに涙が出てくる。 「どうしろって…言うのよぉ…」 武器となるエレメントが出せなくなり、それでも加害者の側に回ることを決意した。 だが、実際は妙な男のペースにはめられ、まんまと出し抜かれている。 指輪も持ち逃げされてしまった。 所詮、忌まわしいHIMEの力に頼らなければ自分は何もできないのだと、舞衣は思った。 何の力も持たない、小娘に過ぎない。 「もう…駄目かも、私」 どうしていいか分からなくなって、呟いた。 このままずっとここで寝転んでいようかとさえ思う。 「エレメントも無しに、何も出来る訳…ないじゃない…!」」 「ならば、ワシが代わりの力をくれてやろうか?」 「…え?」 突如として声が響いた。 左右を見渡して見ても誰もいない。 「どこを見ておる。ワシはここだ。ここにおる」 「ここって…はいぃ!?」 声をたどった先で目に入ったものを見て、舞衣は驚愕した。 校庭に建てられた二宮金次郎の銅像。 読書に励む少年を模したその銅像の頭上で、がっしりした体格の初老の男が腕を組み、直立不動の姿勢で佇んでいた。 その眼光は鋭く、射貫くような視線で舞衣を見据えている。 大真面目な顔をして銅像の頭上から舞衣を見下ろす男、という光景はともすれば滑稽に思われかねないものだったが、そのような感想など吹き飛ばし、これでいいのだと思えるような威厳がその男からは発せられていた。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/61
62: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:09:26 ID:wk78nrYt http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/62
63: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 21:10:45 ID:0FtEezOM 「な、何…アンタ?」 疲れ切った舞衣の精神では、そう聞くのが精一杯だった。 「ワシの名は東方不敗マスターアジア。娘よ、随分と荒れておるようだな?」 「何言って…」 「力が欲しくはないかと問うておるのよ。つぇい!」 気合いとともに東方不敗を名乗る男はデイパックから何かを取り出した。 だがそれは、水や食料のように簡単に出てきた訳ではない。 明らかにデイパックの容量を十数倍はオーバーしているであろう物体が、たっぷり十秒程の時間をかけて舞衣の眼前にその姿を現したのである。 引きずりだされたものが、ずしんと重たい音を響かせて、グラウンドに足を下ろす。 「ロ、ロボット…?」 舞衣がそれに対してまず抱いた印象は、そのようなものだった。 白を基調にした武骨なフォルム。 人型でありながらも、その体躯は舞衣よりも二回りも三回りも巨大である。 右肩から、砲身が一門突き出されている。 それは、舞衣がテレビの中で見た、所謂戦闘ロボットと呼ばれるのもの達に極めてよく似ていた。 「ソルテッカマン一号機という。ワシの支給品よ。これをお主にくれてやろう」 「ソル、テッカマン…?」 HIME同士の戦いの中ではまるで機械のように金属質なチャイルドもいた。 だが舞衣の知るチャイルドはどれも動物のような形状をしており、ソルテッカマンと呼ばれたもののように人型をしているものなど見たことがない。 にも関わらず、そのフォルムを見て舞衣はある記憶を連想していた。それも、つい最近の記憶である。 「ふん、最初に螺旋王によって爆破されたあの馬鹿者を思い出しおったか。 マニュアルによると、これは奴らのような生物を模して作った機械だとか。 つまりは、この機械は奴らに準ずる性能を持っておるということ。 奴の放った光線の威力はお主も見たであろう? 螺旋王には通じずとも、人の身には過ぎた力であることに変わりはない」 「人には過ぎた力…」 さっきの男に負けず劣らず奇妙であるはずの東方不敗の言葉は、不思議な程にすんなり舞衣の精神に染み込んでいった。 「そうだ。この力があれば並大抵の者に遅れをとることはあるまい。 それを貴様にくれてやろうと言うのだ」 「何でそんなこと…て、ていうかいきなりこんなもの渡されても使える訳ないじゃない!」 「ふん!」 舞衣の理性が行った精一杯の反論は、東方不敗が放った裂帛の気合いにかき消された。 気迫と共に投げ付けられたものが舞衣の目の前の地面に突き刺さる。 それは数枚の紙束だった。ただの紙でしかないはずのそれらが、固いグラウンドの土に深々と突き刺さっていた。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/63
64: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:11:02 ID:lGzdFHk0 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/64
65: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:11:53 ID:wk78nrYt http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/65
66: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 21:12:39 ID:0FtEezOM 「マニュアルだ。読めい。 これをワシに与えた螺旋王もその辺りのことは考えておるようでな。 全くの素人でも問題なく扱えるように、操縦系統はかなり簡略化されておる。 最初の質問にも答えておこうか。まずこのような物はワシにとっては無用の長物。 そしてワシが望むのは戦乱、ただそれのみよ。 貴様のように他人を蹴落とそうと狙う者が多ければ多い程、ワシにとっては都合がよい」 「これに乗れば…私でも戦えるってこと…?」 振って湧いたように目の前に提示された、戦うための力は蠱惑的な魅力で以って舞衣を誘っている。 その誘いに乗ることはとても簡単で、そして魅惑的であるように舞衣には思えた。 東方不敗の言うとおり、一度乗ってしまえば手足のように動かせる仕組みになっているらしい。 かなり高機動で動くようだが、そのような戦闘を舞衣は経験済みだった。 熱にうなされたような顔でマニュアルをめくる舞衣の心は、着実に一定の方向に傾いて行った。 もはや乗ることを決意したのも同然の様子である舞衣を見て、東方不敗は満足気に笑う。 そして、最後の一押しと言うかのように口を開いた。 「さっき貴様が取り逃がした男だがな。北の方角へ逃げていきおったぞ」 はっとしたように舞衣が顔をあげた。その目はどうしてそのことを知っているのかと言っている。 「お主達のやりとりは一部始終見させて貰った。 お主があの男を取り逃がすところまで含めてなぁ。 おそらくは今頃どこぞの民家にでも身を隠しておろう。 このソルテッカマンでも用いねば、見つけだすのは不可能の一語に尽きる。 だが逆に、これを使えば奴を葬り去ることなど赤子の手を捻るも同じことよ」 東方不敗がソルテッカマンに顔を向ける。 それにつられて、舞衣もまた同じように視線を移した。 白亜に輝く巨体を見ていると、それに乗って戦う姿が不思議なくらい自然に想像できた。 這うように、ソルテッカマンの前に進み出る。 そんな舞衣の目の前に、東方不敗が降り立ち手を差し伸べた。 「どうした?何を迷うことがある。 ワシらの利害は一致しておる。お主はこれを用いて破壊の限りを尽くせばよい。 それこそ、お主が本当に望んでいたことであろう。 ワシの手を取れ。そして揺るぎない力を手に入れるのだ」 泥に汚れ涙も枯れ果てた顔を起こしながら。 舞衣は、自らの手を東方不敗の手に重ねた。 ◇ http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/66
67: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:13:44 ID:D2FI3R70 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/67
68: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 21:14:06 ID:0FtEezOM 舞衣の手を逃れたロイドは、学校の北側から市街地を抜け川べりにたどりついたところで、足を止めて息を吐いた。 「追いかけてはこないみたいだね。いや〜、あぶなかったぁ」 背後を確認しながら言う。 手に舞衣に投げ付けたものと同形の、瓶型の手製閃光弾を持っている その指には舞衣から拝借した指輪がはめられていた。 「早速役にたったねぇ。残り一個になっちゃったけど」 手のひらで多少もて遊び、手製の閃光弾をデイパックに戻す。 ロイドは理科準備室に入ってからずっと、護身用の武器の調合をしていた。 あわよくば未知の物質を、という期待もないではなかったが、残念ながらそういったものは発見できなかった。 それどころか、そう簡単に爆弾などの強力な武器は作らせないという意図か、理科準備室と名乗りながらそこにはろくなものが置かれていなかった。 そのため、部屋にあるものとロイドの知識、技術を用いても粗悪な閃光弾を二つ作るのが限度だった そのうちの一つは早くも失われてしまった。 「良く頑張った方だとは思うけどねぇ?んふふ、あの子結構本気で面食らってたなぁ」 携帯電話からの情報で、ロイドは部屋に入ってきた人物が鴾羽舞衣という名前だと気付いていた。 相手の名乗るに任せていたのは扉を開けたときの舞衣のただならぬ表情、本人は隠しているつもりのようだったが、を見て変な刺激を与えるのはまずいと判断したためだ。 「ん〜それにしても困ったなぁ。 できればシンヤくんが帰ってくるまで学校にいたかったんだけどなぁ。まだあの子近くにいるよねぇ。 今戻ったら今度こそ殺されちゃうよぉ、僕ぅ。いや〜すんごく怒ってたもんなぁ、あの子」 軽い調子で笑う。いたずらが成功したことを喜ぶ子供のようだった。 シンヤとの合流を優先し、しばらく指輪の観察でもして時間を潰してから学校に戻るかと、ロイドが考え歩きだそうとしたとき、 「おい、あんた!」 何やら必死な声に呼び止められた。 声のした方を向くと、どういう訳か全身ずぶ乗れの少年が声の印象と違わぬ必死の形相でこちらに駆け寄ってきていた。 けがをしているのか歩き方がどこかぎこちなく、速度はそれ程ではない。 衛宮士郎、とロイはその僅かな時間に携帯電話が表示した名前を思い出していた。 「おい、あんた、教えてくれ。ここは地図のどのあたりなんだっ! 早く戻らないと玖我が、う…!」 掴み掛からんばかりの勢いでまくしたてたかと思うと、突然頭を押さえて崩れ落ちる。 軽い脳震盪、とロイドは当たりを付けた。 よく見れば肩には銃創がある。手当てをした様子はない。 結構大変な体験してきたところらしい。 「まぁまぁ落ち着いて。ひどいけがだね、君。そこの川を泳いできたの?頑張ったねぇ。 ここはB-6エリアの真ん中あたりだよ。 僕はロイド・アスプルンド。君はお名前聞かせてくれないのかなぁ?」 少年の様子から危険人物ではないと判断したロイドはとりあえず少年を落ち着かせるようと既に知っていることを敢えて隠して名前を尋ねた。 パニックに付き合わされて無駄に時間を使ってしまってはたまらない。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/68
69: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:15:04 ID:lGzdFHk0 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/69
70: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 21:15:28 ID:0FtEezOM 「あ、あぁ悪い。俺は衛宮士郎…ってB-6!? くそ、結構流されちまった。急いで助けに戻らないと」 「あら?もう行っちゃうの?まぁ、止めないけど。 でもその傷の応急処置と、ふらふらの足が回復するくらいの休憩をとった方が移動するにはかえって効率がいいと思うよ?」 「そんなことしてられるかっ!玖我…俺の知り合いが襲われてるんだぞ!」 めまいを起こしてふらつく体を無理やりひきずりながら、ロイドを怒鳴り付けてくる。 自分のことを完全に度外視して他人のために奔走する姿は、一瞬だけロイドにスザクの姿を思い出させた。 すぐに、その考えを否定する。 (違うね。スザクくんとは違う。 正義感が強いと言っても、この子のそれからはもう少し破滅的なものが含まれている) 未だロイドが殺人者であるか確かめようとしないのもそのせいか、とロイドは推測した。 それが合っているか気になったので聞いてみることにした。 「ところで君さぁ。 僕が人殺しで自分が襲われるかもとかそういう可能性は考えなかったのかい?」 士郎はやはりろくに移動できず、すぐ先の電柱にもたれかかり、肩で激しく呼吸していた。 さすがにしばらく歩くのを断念したのか、そのままずるずると座り込む。 そして、顔だけをロイドに向けて質問に答えた。 「あ…うっかりしてた。 あんた、そうなのか?そりゃあ、その、ちょっと、困るっていうか…」 「うっかりときたか!あ〜っははははは!」 予想外といえば予想外の答えにロイドは大爆笑した。それを見た少年の表情が憮然としたものに変わる。 「何だ違うのかよ。ていうかそんな笑うとこじゃないだろ」 「いやいやいや!君が自分の安全なんてものにまるで価値を感じちゃいないてことが分かって可笑しくってねぇ。 気に障ったなら謝ります。あっはっはっは!」 「何か前にもそんなこと言われたような…。ん、あんた…その指輪!」 なおも笑い続けようとしたロイドを、士郎の真剣な声が止めた。 少年はロイドの手をつかみ、指にはめられた指輪を食い入るように見つめている。 それは先程ロイドが舞衣に対してしたことと全く同じだった。 こんなこと自分はしてたのかこりゃあ気持ち悪いなぁ、とロイドは思った。 「魔術礼装だ…!あんた魔術士だったのか! 魔術が使えるんなら心強い、あんた、玖我を助けるのに協力して…」 「なになになになぁ〜んだってぇっ!? 今とっても気になる単語が聞こえたんだけどぉ〜!」 「いぃっ!?」 士郎の言葉を完全に遮って、ロイドはぐいと顔を近付けた。 多少引かれたようだ構いはしない。 ロイドは一瞬で指輪を抜き取ると、何か知っている様子である士郎の手に握りこませた。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/70
71: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:16:39 ID:erGWqauD http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/71
72: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 21:17:02 ID:0FtEezOM 「君はこれが何なのか知ってるみたいだねぇ。 是非とも詳しく聞かせてもらいたいなぁ。今魔術って言った?」 「だから魔術礼装…ってもしかしたこれあんたのじゃなくて支給品か何かか?じゃあ何も知らずに見につけてたって訳か」 「おう!俺も聞かせて貰いてぇことがあるんだがよぉ!」 「まぁ、僕のだと思ってくれ構わないよ。それで?『魔術礼装』って何?」 「魔術士が使う魔術をサポートする道具みたいなもので…そうか、あんた魔術士じゃなかったのか。ぬか喜びだ」 「趣味の悪ぃ、紫色の服着た俺が殺したくて殺したくて殺したくて殺したくて殺したくてたまんねぇジジィがこの辺にいるはずなんだがぁ!」 「んっふふぅ。『魔術』という言葉がさも常識であるかのような口振りだねぇ。 その指輪だけじゃなく、君自身にも興味がわいてきたよぉ」 「いや近い!顔近いから!何も見えないから!」 「ああ!あとそういや女みてぇに長いお下げをしてたっけなぁ!」 「是が非でも話を聞きたいなぁ。君の知ってることを洗いざらい全部、ねぇ?」 「いや目ぇ!目ぇ恐いから!顔笑ってるけど目が笑ってないから!」 「アンタらぁ!あのクソジジィがどこにいるか知らねぇか!?」 「うるさいな。その人ならこの道を東に五千メートル程歩いたところにいましたよ」 「そうか!サンキューな!」 ロイドはいつの間にか割り込んでいた声に無意識にかつてない程不機嫌な声で答えた。 去っていく気配に満足し、再び尋問を始めようと冷や汗をかく少年に顔を近付け、 「…ってぇ、んな訳ねぇだろうがあああああああ!!」 何ものかが投げ付けたデイパックに弾き飛ばされた。 「あっら〜〜!?」 ロイドは軽やかに吹っ飛び、コンクリートの地面に強かにその身を打ち付けた。 起き上がる間もなく、近寄ってきた乱暴な足音に胸ぐらを引きずり起こされる。 「あのジジィがいなくなったのはこっから南だっつ−の!適当な返事するにも程があるんじゃねえのぉ! せっかく俺がぶち切れつつも着地が上手いこといってちょっと上機嫌になってたってぇのに、アンタ何水差してくれちゃってんのぉ!?」 はち切れんばかりの怒りを顔中に漲らせ、ぐいと顔を突き出してくる。 それは先程ロイドが士郎に対してしたことと大体同じだった。 こんなこと自分はしてたのかこりゃあ気持ち悪いなぁ、とロイドは思った。 すぐそばでは、少年が助かった、と呟いていた。 「あれ、僕そんなこと言ったかなぁ? …ごめん、覚えてない」 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/72
73: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:18:08 ID:D2FI3R70 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/73
74: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 21:18:34 ID:0FtEezOM ラッド・ルッソ、と男の顔を見ると同時に携帯電話の情報を思い出した。 ラッドはロイドの答えがえらく気に入らないようだった。 「よぉ−し分かったぁ!まず手前ぇからぶっ殺す! あのジジィのために取っとくつもりだったが、手前ぇのおかげで少しぐらい使ってもお釣りが出るぐらいに俺の殺る気は今最高潮だ! つーわけで死ね!今すぐ死ね!」 「ちょ、ちょっと待て!いくら何でもやりすぎだ!」 本気で殺すつもりで殴ろうと腕を振りかぶったラッドを見て、士郎が慌てて止めに入った。 抱き抱えるようにしてラッドの剛腕を押さえ込む。 「ああ!?何なのお前?何かこいつといい感じになってたみたいだけどぉ!?」 「どこをどう見たらそうなる!いいからその手を放せ!」 「放すよぉ! つ−か、今から俺がこいつをぼこってぼこってぼこってぼっこぼこにするからよぉ!? 最終的に持つとこ無くなって自然に放れるんだけどなぁ!?」 「無茶くちゃ言うなって!?ああもう、こんなことしてる場合じゃないってのに…!」 「あの〜…すみません…くび、しまってます。…先にそっちで死んじゃいそう…ぼく」 息も絶え絶えのロイドの訴えは、二人の耳には届かなかった。 「ああああああ!!もう面倒くせええええぇぇぇ!!」 そして、ついに業を煮やしたラッドが、腕に士郎をぶら下げたままロイドを殴り付けようとした次の瞬間。 三人のから最も近い位置にある民家が、跡形もなく消し飛んだ。 「あぁん!?」 「何だぁ!?」 「KMF…いや、違う…!」 爆風が轟く中、三人が三様の言葉を発する。 熱波が吹き荒れ、降り注ぐ火の粉がたちまち3人の額に汗を浮かび上がらせた。 びりびりとした振動が、大地を揺らした。 そして、それらが収まると同時に三人の周囲を、太陽が消え去ったかのような黒い影が覆った。 静かに、全く同じタイミングでそれぞれ顔を上げる。 三人の正面には、数階建ての鉄筋のビルがあった。 その屋上。 日の光を遮るように、白い威容を誇る巨体が、三人を見下ろしていた。 肩に設置された砲身に真っ直ぐ三人に向けられていた 「おいおい、マジかよ。あんなのもいちゃうわけ?」 「ロ…ボット…?まさか…」 呆然とする士郎とにやつきながらも未だにに手を放してくれないラッド。 二人の対照的な表情を見ながら。 ロイドはぽりぽりとこめかみを掻いて、言った。 「もしかして、僕達だぁいピンチぃ?」 ◇ 「…うん。射撃はまだあんまり上手くいかないな」」 ソルテッカマンのコックピットの中で、舞衣は一人呟いた。 舞衣にソルテッカマンを授けた後、東方不敗をはどこかへ去っていった。 計器類の放つ淡い光しかないその場所で、舞衣はこれまでにない安堵を感じていた。 これで、もう何も奪われずに済む。 これで、全てを焼き尽くすことができる。 これで、絶望を感じずにいることができる。 「カグツチは出せないんだから…代わり、頼むわよ」 沈みきった声で、乗機に対し言う。 舞衣は静かに照準を眼下の男たちに定めた。 中心にいるのは、にやけ顔のあの男。 忌々しい、ロイド・アスプルンド。 ぎっ、と音が鳴るほど強く歯を食いしばりながら、舞衣はレーザーライフルを発射した。 たとえ涙を流したとしても、鋼の鎧の中では誰にも見えはしなかった。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/74
75: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 21:19:35 ID:0FtEezOM 【B-6左の川沿い/一日目/昼】 【ロイド・アスプルンド@コードギアス 反逆のルルーシュ】 [状態]:健康 [装備]:ニードルガン(残弾10/10)@コードギアス 反逆のルルーシュ [道具]:支給品一式、携帯電話 閃光弾×1 [思考] 0:ソルテッカマンに対処 1:シンヤが戻ってくるまでに学校に戻る。 2:携帯電話と黒板に書かれた落書きをもっと詳しく調べてみる。 3:シンヤが持ってくる首輪を分解してみる。 【携帯電話】 @全参加者の画像データ閲覧可能。 A地図にのっている特定の場所への電話番号が記録されている(どの施設の番号が登録されているのかは不明)。 全参加者の現在位置表示システム搭載。ただしパスワード解除必須。現在判明したのはロイドの位置のみ。 パスワードは参加者に最初に支給されていたランダムアイテムの『正式名称』。複数回答の可能性あり? それ以外の機能に関しては詳細不明。 【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】 [状態]:健康。 [装備]:、超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾20/25) [道具]:支給品一式(ランダム支給品0〜1を含む)、ファイティングナイフ フラップター@天空の城ラピュタ [思考] 基本方針:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む) 0:ソルテッカマンに対処 1:東方不敗を探す。 2:清麿の邪魔者=ゲームに乗った参加者を重点的に殺す。 3:基本方針に当てはまらない人間も状況によって殺す 【衛宮士郎@Fate/stay night】 [状態]:疲労(大)、腹部、頭部を強打、左肩に未処置の銃創 [装備]:クラールヴィント@リリカルなのはStrikerS [道具]:なし [思考] 0:ソルテッカマンに対処 1:玖我を助けに戻る 2:イリヤの保護。 3:できる限り悪人でも救いたい(改心させたい)が、やむを得ない場合は―― 4:18:00に図書館へ行く ※投影した剣は放っておいても30分ほどで消えます。 真名解放などをした場合は、その瞬間に消えます。 ※本編終了後から参戦。 ※チェスに軽度の不信感を持っています ※なつきの仮説を何処まで信用しているかは不明 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/75
76: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:20:05 ID:erGWqauD http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/76
77: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:20:19 ID:wk78nrYt http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/77
78: くずれゆく…… ◆10fcvoEbko [sage] 2007/11/10(土) 21:21:19 ID:0FtEezOM 【鴇羽舞衣@舞-HiME】 [状態]:精神崩壊、全身各所に擦り傷と切り傷 [装備]:ソルテッカマン一号機@宇宙の騎士テッカマンブレード フェルミオン砲11/12 レーザーライフル20/20 機体エネルギー100% [道具]:支給品一式 [思考]:かなり短絡的になっています。 1:大切なものを奪う側に回る(=皆殺し)。 2:もう二度と、大切なものは作らない。 [備考] ※カグツチが呼び出せないことに気づきましたが、それが螺旋王による制限だとまでは気づいていません。 ※エレメントが呼び出せなくなりました。舞衣が心を開いたら再度使用可能になります。 ※静留にHIMEの疑いを持っています。 ※チェスを殺したものと思っています。 【B-6学校/一日目/昼】 【東方不敗@機動武闘伝Gガンダム】 [状態]:疲労(小)。全身、特に腹にダメージ。螺旋力増大? [装備]:マスタークロス@機動武闘伝Gガンダム [道具]:支給品一式、 [思考]: 基本方針:ゲームに乗り、優勝する 。 1:一時休息を取るが気になることがあればそちらを優先。 2:情報と考察を聞き出したうえで殺す。 3:ロージェノムと接触し、その力を見極める。 4:いずれ衝撃のアルベルトと決着をつける。 5:できればドモンを殺したくない。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/78
79: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/10(土) 21:23:34 ID:s47h+uDw http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/79
80: あぼーん [あぼーん] あぼーん あぼーん http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/80
81: 明智健悟の耽美なるバトルロワイヤル――幕間 ◆1sC7CjNPu2 [sage] 2007/11/11(日) 10:45:08 ID:mWl4Einr モノレールの車内は、明智が考えていたものより広々とした印象を受けた。 それが無人の車内に一人きりという状況だからなのか、それとも本当に車両自体が広いのかは判断しかねるところだが。 「元の世界に戻ったら、もう少し列車について勉強することにしましょうか」 明智は語り聞かせるように呟く。 反応がないということは分かっているが、何もしないよりはマシだろうという考えの元だ。 ――それにしても、このままではクセになってしまいそうですね。 明智は苦笑した。 改めて、明智は車内を見渡す。 座席は進行方向に交差する形で並んでいる。クロスシートという、二人がけの座席を中央の通路を挟んで複数列配置する形式だ。 シートは、ボックスシートという前後の二列が向かい合わせになる形で固定されている。 座席と床の間には、僅かに空間が開いていた。横幅は広いが高さが低く、子供ならまだしも大人では通れそうにはない。 ――つまり、子供なら潜むことぐらいはできるというわけです。 「おかげで、いちいち覗き込まないといけないんですよ。……楽しいですか?人の這い蹲る姿を見るのは」 愚痴をこぼしながらも、明智は確認を怠らない。 ひょっとしたら、怯えて隠れている子供がいるかもしれない。殺し合いに乗った子供が、息を潜めているかもしれない。 また、魔法や錬金術といった特殊な能力を持つ者が潜んでいるかもしれない。 不安の種は、考え出したら切りがない。しかし、明智は今いるこの会場が常識外のもので溢れていることを知っている。 自身の常識が通用しない以上、ある程度の警戒は必要だった。 ■ http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/81
82: 明智健悟の耽美なるバトルロワイヤル――幕間 ◆1sC7CjNPu2 [sage] 2007/11/11(日) 10:48:39 ID:mWl4Einr 明智は最初に乗り込んだ先頭車両から最後尾の車両を調べ、もう一度座席の下を調べながら先頭車両に戻った。 幸いと言っていいのか、人影は見当たらなかった。 手間はかかったが、モノレールの中のひとまず安心を買えるとしたら安いものだろう。 「つかの間の休息といった所ですか、……なら、今のうちに食事にでもしますか」 デイパックから支給品の食料を取り出し、手早く口に含む。 あまりの味気なさに眉をひそめるが、しかたがなく咀嚼する。 「まったく、カロリーメイトでももう少しマシな味ですよ」 味わうことなく水で流し込み、文句を言う。 その時に食べかすが少しこぼれ、生乾きのシャツに付着した。 明智はため息をつくと、ネクタイを外しシャツを脱ぎ始めた。 以下蛇足。 明智の体は筋骨隆々とは言わないが、無駄な贅肉がなく引き締まっていた。 胸は鍛えられた筋肉によってうっすらと盛り上がっており、生乾きのシャツを着ていたせいか薄っすら湿っている。 腹筋も見事なもので、よく見れば割れているのが分かる。しかもボディビルダーのような暑苦しさはなく、むしろ清涼感を感じさせるものだ。 腕や肩などのパーツも、筋肉が皮膚を押し上げていて理想的な形だ。 注目すべきなのは、全体のバランスがよくまるで彫像のように美しい体だということだ。 本人の美貌とも相まって、『美しい』という言葉を体現しているようである。 以上蛇足終了。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/82
83: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2007/11/11(日) 10:50:10 ID:Rq0QKBen http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/83
84: 明智健悟の耽美なるバトルロワイヤル――幕間 ◆1sC7CjNPu2 [sage] 2007/11/11(日) 10:50:31 ID:mWl4Einr 食べかすと僅かに残った湿り気と塩分を振り飛ばすつもりで、明智はシャツはパンッと払う。 スラックスも同様にやってみようかとも考えたが、流石に止めておいた。 監視されているかもしれない状況で裸を晒すのには流石に抵抗があった。 改めてシャツに腕を通し、少し迷ってからネクタイをデイパックに仕舞った。 もう一度ネクタイを巻くのには、少々首輪が邪魔だったからだ。 トントン、と首輪を指で叩く。 「まさか、これの解除にも『螺旋』が絡んでるとかいうことはありませんよね」 螺旋博物館の螺旋尽くしを思い出し、思わず辟易する。 結びつけるにはやや安直すぎる気もしたが、そうであってもおかしくない気がした。 もっとも、現状では手の出しようがないため確認することすらできない。 そもそも解除できるように出来ているのかすら分からないのだ。 「やはり、一度首輪を調べてみないといけませんか」 明智の目的であるこのゲームから脱出するためには、首輪の解除は必須の条件だ。 ゲームが始まった当初から、考えていたことではる。 しかし目視できない自分の首輪に手を加えるのは危険だし、手を誤れば爆破してしまう可能性がある首輪を他人が易々と触れさせてくれるはずがない。 そう思って、保留にしておいたのだ。――死者が出るまでは。 「……死者を弄ぶ趣味は無いんですがね」 死者から、首輪を回収する。 道徳的にどうかと思われる手段だが、殺し合いの乗るつもりのない明智が首輪を手に入れるにはそれぐらいしかない。 ――私にはこの首輪を解除するスキルはありませんが、機会があったら回収することにしましょう。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/84
85: 明智健悟の耽美なるバトルロワイヤル――幕間 ◆1sC7CjNPu2 [sage] 2007/11/11(日) 10:55:43 ID:mWl4Einr 他にも考えることはあったが、それは中断されることになった。 考え事をしているうちにモノレールはD-1の駅についたからだ。 無人の車掌室は自動的に操作され、安全にモノレールを駅に止める。 扉が開き、明智はプラットホームに足を踏み出した。 「モノレールが再出発するまで三時間二十分、その間に何か見つかればいいのですが」 残してきたクロスミラージュのことも気がかりだ。 彼は必ず説得すると言っていたが、それを愚直に信じるわけにはいかない。 ――最悪の場合も、考えておかないといけませんしね。 ティアナという少女が殺し合いに乗ったなら、恐らく明智をD-4の駅で待ち伏せするだろう。 確実に来ることが分かっている獲物を逃すはずがないし、何より明智は予備のカートリッジを持っている。 「どちらにしろ、彼女は駅を動けないはずですしね」 今は、クロスミラージュを信じることしかできない。 明智は機能していない駅の改札を通り、空を見上げた。 もう朝日とはいえない太陽が、馬鹿みたいに眩しかった。 【D-1・駅/一日目・朝】 【明智健吾@金田一少年の事件簿】 [状態]:若干疲労、右肩に裂傷、服も乾いてきた頃(上着喪失) [装備]:なし [道具]:支給品一式(一食分消費)、ジャン・ハボックの煙草(残り16本)@鋼の錬金術師、参加者詳細名簿、予備カートリッジ8 ダイヤグラムのコピー [思考] 基本思考:犯罪芸術家「高遠遙一」の確保。ゲームからの脱出。 1:ゲームに乗っていない人間を探しつつ施設を回る。 2:D-1駅に到着次第、付近を調査(水族館かドーム球場を回りたい) 3:D-1駅から10:50発のモノレールに乗ってD-4駅へと戻り、クロスミラージュと合流。 4:金田一、剣持を探す。 5:明日の正午以降に博物館の先に進む。信頼できる人物にはこのことを伝える。 6:もし死体を見つけた場合、気が進まないが首輪を回収する。 [備考] ※参戦時期はアニメ最終回(怪奇サーカスの殺人)後 ※リリカルなのはの世界の魔法の原理について把握しました。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/85
86: 野蛮召喚塔 ◆RwRVJyFBpg [sage] 2007/11/11(日) 13:30:14 ID:mg28eVtp 白い床に煌びやかな照明。立ち並ぶ人型は色とりどりの衣装を纏い、思い思いのポージング。 ガラスの中の貴金属はどれもこれもが眩い光を反射して、キラキラと価値を主張する。 飯麓百貨店婦人服売り場。 時が時ならば、有閑な奥様方が連れ立って、ショッピングに興じるであろうこの場所は今、静寂に包まれていた。 もはや日も高いというのに、店内には商品のチェックをする売り子一人見当たらない。 本来ならば、開店間際の喧騒に包まれていなければいけないそこには今、代わりに少女がただ一人。 白い肌。キメ細やかな髪。華奢で柔らかなボディ。 どことなく高貴な感じを漂わせるその少女は、少し幼すぎることを除けば 十分にこの場に似つかわしいキャラクターを持ち合わせている。 しかし、彼女がその手で行っている所業は、とてもこの場にマッチしているとは言えなかった。 少女の両手には抱えきれないほどの布の山があった。 よく見ればその山は、この売り場の主役、買い手のない婦人服たちでできている。 彼女は一枚何万円という値段がついたそれを一枚ずつ無造作に掴み出し、床へと落とす。 一枚落とせば、もう一枚。次を落とせばさらに一枚と、少しづつ間を空けながら、服を床に広げていく。 そんな作業をしばらく続け、腕に抱えた服を全て撒きおわると、少女は次に周りのラックから 服をひっぺがし、さっき落としたものの周りに配置していく。 床のうちの少なくない部分が布に覆われたことを確認すると、少女はほっと一息。 一瞬の間を置いた後、止まっているエスカレーターに向かって走り出し、駆け下りて行ってしまった。 少女の去った後には、布の山と、鼻を衝くような刺激臭だけが残っていた。 ◆ 長い影が道路に広がる朝のビル街。 スーツを着たビジネスマンも、着飾った若い女性もいないそこ、広い道路の中心に、一人の恰幅のよい老婆が立っていた。 老婆の手には黄色いペンキがたっぷりついた刷毛が握られている。 彼女は、傍らのペンキ缶の中にそれを突っ込み、一、二度まさぐった後、刷毛の先を道路へと向けた。 たちまちのうち、黒いコンクリートに黄色い線が3本刻まれ、それが矢印(←)の形を成す。 周りを見渡せば、前後の道路には、これと同じような矢印がいくつか描かれている。 老婆は自ら作り出した記号の群れを一瞥すると、満足そうに頷く。 「おばさま〜こっちも全部終わりました〜」 作業を終え、老婆が道具の片付けに入るのと、正面の豪奢な建物――デパートから少女の声が聞こえるのとはほぼ同時だった。 「なかなか、いいタイミングだ。こっちもちょうど終わったとこだよ」 老婆は少女に応えると、もう一度、何かを確かめるように周りを睥睨する。 「さぁて、それじゃあお待ちかねのショー・タイムといこうかね」 懸案事項がないことを確認すると、彼女は支給品のランタンから即製のたいまつに火を移し…… そのままそれを、デパートの中目掛けて放り込んだ。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/86
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