[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ7 (321レス)
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122: 虐殺天使きっちりちゃん ◆h8c9tcxOcc 2007/11/03(土)07:09 ID:t4+r2/Ue(1/12) AAS
 真一文字に寝そべり、波に揺られるまま、かがみは水面を漂っていた。
 貝を抱えるラッコのように、腹の上でひたすら大切に、妹の生首だけを抱き締めて。
 やや流れの速い川をくだり、大きな橋の下をくぐって、いつしかかがみは海に流れ出ていた。
「潮風が気持ちいい……」
 さざ波の音や海鳥の鳴く声が、途切れること無く鼓膜を優しく撫でる。
 陸を離れるまで昂り続けていた感情も、今となっては嘘のように思えるほど穏やかだった。
 かがみはつかさの首を手に取り、自分の顔と向き合うように掲げる。
省41
124: 虐殺天使きっちりちゃん ◆h8c9tcxOcc 2007/11/03(土)07:11 ID:t4+r2/Ue(2/12) AAS
 千里の苛立ちは頂点に達していた。螺旋王に対するやり場のない怒りに、小さな胸は強く締め付けられた。
 腐葉土を踏み締める足取りは重く、肩は小刻みに震え、吐く息は荒い。
 ふと、握り締めたコンパスに視線を落とす。ひと呼吸を置いてから、力任せにそれを足元へ叩きつける。
 コンパスは手応えの無い音とともに、湿った地面にへばり付いた。
 がたがたと雑音を発しながら、コンパスの針はひたすら踊り狂っている。この森へ迷い込んでからというもの、ずっとこの調子なのだ。
 つい先ほど、市街地の外れに辿り着くまでは、何ら異常は無かったというのに。
 おかげで現在自分がどこに居るのか、どちらへ向かって歩いているのか、皆目見当がつかない。
省32
125: 虐殺天使きっちりちゃん ◆h8c9tcxOcc 2007/11/03(土)07:12 ID:t4+r2/Ue(3/12) AAS
「もう、どうしてくれるのよ。折角立てた予定が、全部台無しじゃない!」
 落とした顔を両手で覆い隠し、首を左右に振るいながら千里は嘆く。
 唐突な場面転換のおかげで自分の居場所すらわからず。禁止エリアの存在するせいで、会場を隅々まで調べて歩くこともできず。
 死亡者数を聞けなかったために、今後のペース配分を考えることもできない。すべてが曖昧模糊とした、まさに最悪の状況。
「禁止エリアなんて設けるくらいなら、はじめから小さな会場にすればいいでしょう。どうしてわざわざ無駄な土地を用意するのよ。
 いま先進国の人口密度は飽和状態なの。こんな少人数のために割く土地なんか、これっぽっちも余ってなんかいないの。
 科学者なら、そのくらい分かっているでしょ? 現代人としての身の丈くらい、きっちり弁えなさいよっ!」
省23
127: 虐殺天使きっちりちゃん ◆h8c9tcxOcc 2007/11/03(土)07:15 ID:t4+r2/Ue(4/12) AAS
「かはっ!」
 喉を逆流する異物感に苛まれ、かがみは堰きたてられるように身を起こした。
 口の中は粟立った塩の味で満ちており、不快感などという言葉では表しきれない。
「がほ、げほげほ、おぇっ」
 さらに込み上げるものを感じ、咳き込みながら海水を勢い良く吐き出す。
 見てくれに構ってなど居られない。とにかく早く異物を排出することを、体内の自浄作用が訴えた。
「よかった。やっと意識が戻ったのね」
省38
130: 虐殺天使きっちりちゃん ◆h8c9tcxOcc 2007/11/03(土)07:16 ID:t4+r2/Ue(5/12) AAS
「そうだ、つかさ! つかさは!?
 ねぇ、つかさのく……い、いや、私の他に、何か流れて来なかった?」
 焦燥しながらも機転をはたらかせ、軌道を修正しつつ質問を投げかける。
 妹の生首を抱えていたなどと告白しては、異常者扱いされるのが関の山である。尤も、既に正常でないことは自覚しているが。
「そうね、あなたが倒れている他には何も無かったけど……」
 軽く腕組みをしながら、少女は応える。
「それにしても、おかしな人ね。全身塩水まみれだったり、流れるなんて言い回しをしたり。
省33
132: 虐殺天使きっちりちゃん ◆h8c9tcxOcc 2007/11/03(土)07:18 ID:t4+r2/Ue(6/12) AAS
「でも、どうやって確かめるのよ。仮に、ここから西の端に出られたって、向こうは禁止エリアで首刎ねられるわよ」
 屁理屈は承知の上での反抗だった。言い切ってから、今居るエリアから逸れれば解決する話であることに思い当たるが、まぁいい。
 できれば、そんな証明をしたくないというのが、一番の本音であるのだから。
「そうね。実際に試してみれば、一番手っ取り早く真相が分かる。
 あなた、なかなか飲み込みが早いわね。じゃあ、早速実験してみましょうか」
 しかし反意のつもりの一言は、流れに竿をさす結果を招いてしまった様子だった。
 二枚の地図へ向ける好奇心に満ちた目をそのままこちらへ向け、少女はかがみへじわじわとにじり寄った。
省48
135: 虐殺天使きっちりちゃん ◆h8c9tcxOcc 2007/11/03(土)07:21 ID:t4+r2/Ue(7/12) AAS
「ところで、自己紹介がまだだったわね。あんまり興味深い話題だったものだから、つい興奮してしまって」
「えっ?」
 少女の唐突な話題変更に、かがみは戸惑いを覚える。正確には、自己紹介という行為に対する動揺であった。
 目まぐるしく移り変わる状況に感けて、彼女が不死者であるかもしれないということを失念していた。
 厭世的な気分に入り浸り、もはや他の参加者に出遭う可能性など思考の外に放り出してしまっていたらしい。
 ここでひとつの分岐点が生まれる。名を名乗ることを、相手が不死者か否かの判定に用いるべきかということだ。
「私は木津千里。アニロワ高等学校の生徒よ。あなたは? 珍しいデザインの制服だけど、どこの生徒なの?」
省43
138: 虐殺天使きっちりちゃん ◆h8c9tcxOcc 2007/11/03(土)07:24 ID:t4+r2/Ue(8/12) AAS
「やあぁぁあぁぁぁっ!!」
「なっ?!」
 気付けば、かがみは千里に掴みかかっていた。痛む脚に鞭打ち、一気に肉薄。さらに腰の刀に伸びる手を叩き落とす。
「あ、あなた。いきなりどうしてしまったの!?」
「てえぇぇえぇえぇぇいぃっ!!」
 渾身の力を込め、かがみは千里を地面へ押さえつけた。そして腹部に圧し掛かって、脚での抵抗を防ぐ。
「今更しらばっくれないで。あんたも、不死者なんでしょ!」
省29
142: 虐殺天使きっちりちゃん ◆h8c9tcxOcc 2007/11/03(土)07:30 ID:t4+r2/Ue(9/12) AAS
「まったく、そういうことは先に言っておきなさい。いきなり馬乗りになられたって、どうしていいか困るわよ」
 髪を櫛やらブラシやらで整えながら、千里は説教を垂れた。語気とは裏腹に、表情はどこか晴れやかである。
 対照的に、かがみは心身ともにズタボロの状態に陥っていた。
 千里の報復は執拗に続き、もはやストレスの捌け口にされたとしか考えられないほどに粘着質であった。
 背中に跨ってツインテールをぐいぐい引っ張られたり、未だ痺れの抜けない脚を踵で思い切り踏みつけられたり、
 あらぬ方向に鼻を捩じられそうになったり、刀の柄を尻に突っ込まれたり……思い出すだけで背筋が凍り付く。
 結局たっぷり十分近く嬲られ、かがみは号泣しながらひたすら許しを乞うほかなかったのである。
省33
145: 虐殺天使きっちりちゃん ◆h8c9tcxOcc 2007/11/03(土)07:35 ID:t4+r2/Ue(10/12) AAS
 数十秒の後、かがみの体は何事も無かったかのように元の姿を取り戻していた。
 腹部を襲った痛みは綺麗さっぱり消え去り、残ったのは肉を引き裂く刃の感触と、
 地べたに這い蹲って情けなく悶絶していたという記憶ばかりだった。
 一方の千里は、物欲しそうにかがみを見詰め、指を唇に添えて恍惚の表情を浮かべていた。
「すごい……あなた、本当に死なないのね」
「だからそうだって何度も言ってるじゃない!! ってかさ千里さん、これって立派な殺人っすよ、マジな話!!」
 半狂乱になりながら、かがみはあらん限りの大声で千里にブーイングを浴びせた。
省37
152: 虐殺天使きっちりちゃん ◆h8c9tcxOcc 2007/11/03(土)07:43 ID:t4+r2/Ue(11/12) AAS
「あのままずっと、つかさと二人一緒で居られると思ってた。
 なのに、私はつかさと一緒に居られる手段さえ失くしてしまった!
 私にはもう、何も残ってない。何もしたくないし、する理由も……」
「寝言は寝てから言いなさいな!」
 すぐ背後からの怒声に驚き、かがみは首を捻った。次の瞬間、かがみの体は地面から無理やり引き剥がされた。
 千里はかがみを抱え上げ、自分の足で直立させると、今度は両手をかがみの肩に置き、神妙な面持ちでかがみを凝視した。
「あなたの決心は、そんなに容易く投げ出してしまえる程度のものなの?
省35
156: 虐殺天使きっちりちゃん ◆h8c9tcxOcc 2007/11/03(土)07:48 ID:t4+r2/Ue(12/12) AAS
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