狸吉「華城先輩が人質に」アンナ「正義に仇なす巨悪が…?」【下セカ】 (433レス)
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32: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:17 ID:Vqcr7VCy0(32/86) AAS
 ――少し時間は遡る。

「ペットボトルで済まんの。水じゃ」

「あ、ありがとうございますですの……」

 義母から事件を聞き、PMでニュースが配信され、それが事実だと認識した瞬間、アンナはぐらぐらと頭が揺れる感覚に陥った。

 早乙女先輩が持ってきてくれた水を飲んで熱を冷ます。だけどこの程度の水では熱が冷めない。促されるまま、奥の個室のソファに横にさせてもらう。頭は熱に浮かされたように、ぼうっとして働かない。働かせたくない。

「奥間君は……奥間君は、どこですの?」

 愛しい人といれば、この熱も忘れられるのに。愛しい人の愛があれば、このこみ上げる熱と同じぐらいの熱を放ち、幸せを感じられ、忘れることが出来るのに。

 だけど返ってくるのは、アンナにとっては無慈悲な答えだった。

「奥間は薬を買いに行っている。薬局はちょっと遠いからの、しばらくはかかるじゃろうて」

 優しい声だったが、怒りを感じた。今一番の薬は奥間君からの愛なのに、なぜ奪う?

 熱が強くなり、持ってきてもらった毛布に頭ごとかぶり、外からの音を遮る。息が荒くなっていくのがわかる。「んっ」指を口の中に入れて震えを止めようとするけど、うまくいかない。

「辛そうじゃの、アンナ」

 トントンと背中に一定のリズムで優しく叩かれる。善意から来るものだとは分かっていたが、今は止めてほしかった。

「奥間には愛してもらってるのかの?」

「ん、ええ……まあ……」

「アンナがいいなら構わんのじゃが、どうもアンナも奥間に遠慮しているように見えての」

「……わかるんですの?」

「そりゃあ、儂はおぬしと奥間が愛し合っている姿が最高のモデルだと確信しておるからの。奥間からも少しは話を聞かせてもらってるのじゃが、とにかくアンナらしくない気がしての」

「…………」

 別に遠慮という訳ではないのだが、愛されていると確信があるし不満というほどではないが、満ち足りているか、と言えば正直嘘になる。

「その、奥間君にはわたくしのお腹に入って愛をもっと激しく掻き乱してほしいのですが、……どうも、そこだけは避けられているようで、正直寂しいですの」

 ただアンナからは直接求めるような真似はしていなかった。その他の愛情表現には応えてくれているし、身体の中から溢れる愛の熱はそれなりに解放できている。だけどやっぱり、あの初めての夜のように、とにかく激しくひたすらに愛しい人の身体を貪りたいという欲求は間違いなくある。

 それでもそれをしないのは、

「その、奥間君の愛の蜜もわたくしと同じように流れ出るのかと思っていたのですが、どうも限界があるみたいで……それに、愛の蜜を出した後、奥間君、すごく体力がなくなっているようで、だから男性にとって愛し合う行為は非常に体力がいるのではないかと、そう思いまして」

 だから自分から求めるようにお誘いをかけているだけに留めているのだ。向こうから求めてきてくれる方が満ち足りるし、“お誘い”する行為も楽しいし、その時の奥間君の顔も可愛くて、だからそれが不満という訳ではない。

 実際あの夜の後の奥間君は2〜3日は足腰が立たなくなっていて、どうもそれが愛し合った為だと薄々は気付いてた。確かに自分も愛し合った後、幸せではあったが確かにどんなスポーツをするよりも体力を消耗した。愛の蜜を放った後の愛しい人の顔を見るとすごく可愛い反面、自分よりも明らかに体力を消耗していて、回数を重ねるごとに味も薄くなって量も減って、だから男性は自分と違って一旦溜めないといけないのではないかと、そう考えたのだ。お誘いをかけて向こうがそれに乗って、向こうのペースでお腹の中に愛の蜜を入れてくれるのが一番いいのではないかと、アンナなりに愛しい人のペースを考えてはいたのだった。

 実際は体力はアンナが異常すぎるのと、愛の蜜どうこうはシタノクチの中で出すわけにはいかない向こう側の理由と、あと実際にはそのお誘いは挑発であり、アンナの捕食者としての本質が獲物を追いつめ甘噛みする快感に変わってしまってその様が恐怖を与えていた為に逃げ回っているという現実があったが、それはアンナにはわからないし知らないことだった。
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