狸吉「華城先輩が人質に」アンナ「正義に仇なす巨悪が…?」【下セカ】 (433レス)
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21: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:09 ID:Vqcr7VCy0(21/86) AAS
「卑猥と最も近い性質の犯罪は何だと思いますか?」

 まずアンナ先輩が問いかけた。僕も考えてみるけど、正直卑猥だけでは範囲が広すぎてすぐには思いつかない。

 不破さんも似たような感じだったのか、僅かに悩んだ。だがすぐに、

「暴力でしょうか」
省24
22: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:09 ID:Vqcr7VCy0(22/86) AAS
 不破さんは何か僕に問いたげに見てくる。正直、僕はアンナ先輩の言葉に一瞬納得しかけてしまった。演説の上手さもそうだし、何より綺麗な理屈に聞こえたから。

 だけど。

 アンナ先輩の理屈は、綺麗すぎた。

 アンナ先輩は卑猥を違法薬物と一緒にした。そもそも存在を知らなければ手を出すこともない、と。
省26
23: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:10 ID:Vqcr7VCy0(23/86) AAS
 隣では母さんの気配が険しくなっていく。それにも不吉な予感を覚えつつ、PMの音量を操作する。

「もしもし」

『奥間君? アンナもそこにいるでしょう?』

 生徒会モードの、だけど切迫した声に、僕もアンナ先輩も不破さんも思わず聞き耳を立てた。
省17
24: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:11 ID:Vqcr7VCy0(24/86) AAS
  ――緊急ニュース速報――  

『本日午前十一時半頃、第一清麗指定都市にあります鬼頭厚生病院にて人質立てこもり事件が発生しました。

 犯人グループは武装していると情報が入っておりますが、規模は不明とのことです。

 ――今入ってきた情報があります、どうやら犯人グループの要求は、
省5
25: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:11 ID:Vqcr7VCy0(25/86) AAS
「なんだよそれ……!」

 ニュースは母さんが出て行ってから、二十分後にPMで流された。

 華城先輩の下ネタよりもタチが悪いニュースだ。こんなやり方で《育成法》が撤回できるわけないのに。

 だからこそ僕達が色んな人たちの力を借りて、ようやく開けた体制への小さな風穴が、ついこの間出来たのに。
省18
26: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:12 ID:Vqcr7VCy0(26/86) AAS
「厄介なことになっておるようじゃの」

「うわ!?」

 いきなり現れた座敷童に思わず声が出る。いやアジトでイラストを描いていたのは確かに予定通りだったのだけど、正直ちょっと忘れていた。

「マスターよ、悪いがわしらの貸切にしてくれんかの? それと、アンナが休めるような部屋はあるかの?」

 華城先輩たちが人質になっているという異常事態、アンナ先輩のあまりの調子の悪そうな様子に、真剣ではあったけどいつものペースを崩さない早乙女先輩の声は正直ありがたかった。
省29
27: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:12 ID:Vqcr7VCy0(27/86) AAS
(ち○こま○こち○こま○こち○こま○こち○こま○こ……)

 PMが外されたことをいいことに、精神安定のようにもはや下ネタといっていいのかわからないただ性器の名前をぶつぶつと呟いている《雪原の青》こと華城綾女の様子に、これ割とダメだとゆとりは確信した。

 今現在、人質のPMは全て強引な手段で外されている。外部の連絡手段を断つためというだけではない、何か、別の主張みたいなものを感じた。

 《公序良俗健全育成法》の撤廃。
省34
28: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:14 ID:Vqcr7VCy0(28/86) AAS
 外に出て、歩きながら考えるけど何も浮かばない。とにかく情報が欲しかった。PMを操作し、とにかく電話をかけてみる。

「あ、撫子さん! あの、何か連絡ありましたか!?」

『善導課から連絡が来た時はとうとう捕まったのだと思ったけどね。まさか別の奴らに捕まってるとは思わなかったよ』

 飄々としているが、華城先輩の育ての親である華城撫子の声は苦かった。当たり前だけどそんなに情報は持っているわけがないが、それでも保護者の立場から何か聞いているかもしれない。
省27
29: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:15 ID:Vqcr7VCy0(29/86) AAS
 やっぱコイツ役に立たないか。いないよりはマシだろうけど。

 喫茶店前で待機……僕が帰ってくるのを待っているのかな。一緒に帰りたいとか。

「単純に調子が悪いだけならばいいんですけどね」

 不破さんが僕の思考を読んだのか、不破さんなりにアンナ先輩のことが気になるのか、口を挟んできた。
省36
30: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:15 ID:Vqcr7VCy0(30/86) AAS
「奥間君」

「ははは、はい!?」

 あの夜のような、迫力を持って他者を傅かせる圧倒的な美が、無条件に従わせるカリスマ性を持って、それらすべてを僕に向ける。

「ねえ、奥間君」
省27
31: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:16 ID:Vqcr7VCy0(31/86) AAS
「あああ、あの、その、えっと」

「それとも、わたくしと愛し合ってくれますの? 初めての夜のように、深く、熱く、激しく愛してくださる?」

 まずい、全然言葉が浮かばない。アンナ先輩、大人のこけしをペロペロしながら自分で胸を揉みしだき始めるほど発情してるし、もはや僕の言葉が聞ける状態じゃない。分かっていたけどこんなに一気にメルトダウン起こされるともうどうしようもない。

 だからといってアンナ先輩が僕の貞操を奪った時ほど愛し合う暇なんてない。っていうか、体力的に持たない。
省21
32: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:17 ID:Vqcr7VCy0(32/86) AAS
 ――少し時間は遡る。

「ペットボトルで済まんの。水じゃ」

「あ、ありがとうございますですの……」

 義母から事件を聞き、PMでニュースが配信され、それが事実だと認識した瞬間、アンナはぐらぐらと頭が揺れる感覚に陥った。
省23
33: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:18 ID:Vqcr7VCy0(33/86) AAS
「あー、アンナの体力に奥間がついていけんのか。おぬしはそう考えているのじゃな」

「ええ、女性に体力が劣るというのは、奥間君を傷付けてしまうのではないのかと思うと、それは言えなくて」

 別のことを考えていたためか、熱でぼうっとしていた頭は少しは回ってきた。ただその代わり、下腹部から愛の蜜が湧き出る感覚が生まれ、愛しい人に傍にいてほしいという気持ちはむしろ強まるばかりだった。

「ふむ、じゃあこれが役に立ちそうじゃの」
省27
34: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:19 ID:Vqcr7VCy0(34/86) AAS
 記憶を刺激されて無意識に口角が上がってくる。にやつく口元を必死で抑えた。

「アンナよ、これを見てくれんかの」

「――――ッ!!」

 見せられたのは、《雪原の青》に馬乗りになって恍惚に酔い切った、自分自身の絵だった。
省31
35: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:20 ID:Vqcr7VCy0(35/86) AAS
 アンナ先輩の言葉に、やはり僕と二人きりの世界を望んでいたことに、ショックがなかったと言えば嘘になる。

「それが、アンナ先輩の本心ですか?」

「ええ。間違いなく」

 でもよく考えると、いやよく考えなくても、
省23
36: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:21 ID:Vqcr7VCy0(36/86) AAS
 暴走してしまって、終わってしまいそうになったけど、心が壊れそうになるほどに僕を助けようとしていたあのアンナ先輩を、嘘だとは思いたくはなかった。

「アンナ先輩。今、アンナ先輩の心の中は、華城先輩のことが心配で、華城先輩に危害を加えるかもしれない犯人たちが憎くて、だから助けに行きたくて、きっとそれだけなんです」

「奥間君」

 気配は変わらないけど、どこか自嘲的な昏さが加わった気がする。
省28
37: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:22 ID:Vqcr7VCy0(37/86) AAS
「???」

 あれ、アンナ先輩生理だって言ってたよね? ナプキンしてるし本当にそうなんだろうけど、アンナ先輩は量が少ない体質なのか、それとも愛の蜜の分泌量が凄まじすぎて血を薄めてしまっているのか、思っていたほど血で真っ赤ということはなかった。

「奥間君、は、早く」

 じれったそうに腰を蠢かす。でも僕の懸念としては、バカ二人の作ったこのこけしが大丈夫なのかという問題がある。
省33
38: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:22 ID:Vqcr7VCy0(38/86) AAS
 陶酔しきったとろんとした声で、辛うじて僕の呼びかけには答えた。反応の鈍さが僕のやらかしたことの大きさを物語っていた。

「す、すみません、大丈夫ですか!?」

「う、あ、え、ええ……あは。うぇふふふふひっ……!!」

 ちょ、完全に別世界にイッてる! どうしようコレ!
省20
39: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:23 ID:Vqcr7VCy0(39/86) AAS
 きゅいーんきゅいーんきゅいーんきゅいーん

 PMに内蔵されているアラーム音の一つが、アンナ先輩のPMから大音量で鳴り響いた。

「…………」

 幸せに蕩けきった顔から、何とか現実に戻ってきた。気怠そうにPMを操作し、アラームを解除する。
省27
40: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)10:24 ID:Vqcr7VCy0(40/86) AAS
 ぐちょぐちょになったアンナ先輩にはシャワーを浴びてもらって、僕はトイレのウォシュレットで後始末をして、マスターに器物損壊や勝手にシャワーを借りたことを詫びて、そしてバカ二人に拳骨を喰らわせた。

「なんてものを作ったんだよお前ら!」

「お、おぬしはそれで助かったんじゃろうが!」

「別にわたしは実験的に作っただけで実用するつもりはありませんでしたし」
省36
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