魔女娘「あなたは何ができるの?」サキュバス「うっふーんなこと」 (282レス)
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242: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:31 ID:C9C5IjNN0(1/41) AAS
少しして男が現れた。
男「後どれくらいで終わりそうだ」
男は挨拶もなしにいきなり切り出した。
タイミングの良さに舌を巻く。
少し前まで魔女がいたのだが、よく出くわさなかったものだ。
……と思ったが、男の方でタイミングを見計らっただけか、と思い直す。
サキュ姉「次で決める」
男「そりゃいい。やっと終わる」
省8
243: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:32 ID:C9C5IjNN0(2/41) AAS
サキュ姉「前に見た……?」
男「色々あったんだよ」
それ以上は答えようとはしなかった。
どうせ詳しく聞いてもはぐらかされるに決まっている。
私はそれ以上の追求をやめた。
そして今一番の問題へと意識を向ける。
次で最後。次に会ったらあの女と会うことはなくなる。
省5
244: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:33 ID:C9C5IjNN0(3/41) AAS
?
魔女「今日はよろしくね」
サキュ姉「……」
運命の日はすぐに来た。
場所はいつものホテル。
私は何も言わずに魔女を見た。
省17
245: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:34 ID:C9C5IjNN0(4/41) AAS
ドンドンドン。
ドアが何度か叩かれた。
ガチャガチャとドアノブが回る音がする。
鍵がかかっていたためドアが開くことはなかったせいか、執拗にドアを叩かれた。
私は思わず魔女から手を離しドアを凝視する。
すると、「ママー、いるんでしー!」
そんな声が聞こえてきた。
舌足らずな幼い少女の声だ。
その声を聞いて魔女がギクリとした顔をした。
省15
246: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:36 ID:C9C5IjNN0(5/41) AAS
魔女「娘……」
そのとき初めて魔女の瞳に迷いが映った。
果たして子供をおいて死んでしまってもいいのだろうか。そんな迷い。
私はそんな抱きしめ合う彼女達を見て、悟った。
もう彼女からのこれ以上の吸精は無理だ。
だって彼女、死ぬことに疑問を持ってしまった。
もうここで止めよう。自分もこれ以上精気を集めるのは止めよう。
誰かを殺してまで叶えたい願いなんかじゃない。
省15
247: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:36 ID:C9C5IjNN0(6/41) AAS
言うが早いか、男はすでに滴っている血で魔法陣を描く。
転移の魔法陣だ。
範囲はこの部屋にいる人物全員。
サキュ姉「どういうこと……」
男「説明してる暇はねぇ」
魔法陣に魔力が込められる。
世界が光り輝き、身体が揺れた。
省18
248: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:37 ID:C9C5IjNN0(7/41) AAS
サキュ姉「どこに行くっていうの……」
男「地下だ。世界催眠を獲得する儀式を行う」
サキュ姉「待って私はまだ精気を集め終わってない」
男「だから、その女も連れてきたんだろ」
そう言って指さしたのは魔女だった。
男「どっちみちこんなところでグズグズしてられない。すぐに追いつかれる。早く移動するぞ」
省9
249: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:39 ID:C9C5IjNN0(8/41) AAS
――地下。
私達は里の寺院の裏手にある石碑の下に隠されていた隠し通路を通って、地下に広がる大空間へと来ていた。
まさか私の住み慣れた里の地下にこんな空間があるなんて。
男「さて、ここだ……」
厳かに祀られている祭壇の中央に棺があった。黒の棺だ。
サキュ姉「その中にあるの」
省13
250: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:39 ID:C9C5IjNN0(9/41) AAS
サキュ姉「ちょっと、魔女!」
魔女「止めないで。一思いにやって」
サキュ姉「でも……」
魔女「決めたことでしょ。今更意思をブラさないで」
そういわれては私からは何も言えない……。
だから。
省16
251: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:41 ID:C9C5IjNN0(10/41) AAS
…………。
取り返しがつかないことをしたんだなぁと、他人事のように思った。
私の腕の中には魔女がいる。
もう息をしていなかった。
彼女を抱きしめても、もう何も感じない。暖かさも何もかも。だって死んでいるのだから。
そして私の中の業が囁く。
「お前がやった。お前が殺した」
省26
252: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:42 ID:C9C5IjNN0(11/41) AAS
始祖のサキュバスと思しき女が私を指差す。
男「ええ、はいそうです」
私は訳がわからぬままその場の成り行きに身を任せた。
というより何も反応する気が起きなかった。
私の中で業がお前が殺した。お前が殺した。と囃し立ててきたせいもあるし、魔女が死んでしまったという事実を受け止めるのに時間がかかっているからでもある。
始祖「では、世界催眠を手に入れるのはお前ということだな」
そう言って男の方を指さした。
省16
253: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:43 ID:C9C5IjNN0(12/41) AAS
サキュ姉「男っ――!」
許せなかった。利用するだけ利用して、自分は手を汚さない男に怒りが湧いた。
あまりの怒りに私の拳がわなわなと震えた。
その勢いのまま、殴りかかろうとして、
???「お姉ちゃん……?」
この場には似つかわしくない少女の声が聞こえてきた。
その声はここ唯一の出入り口から。
省32
254: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:44 ID:C9C5IjNN0(13/41) AAS
男は激昂したのか懐からナイフを取り出す。
だがもう遅い。
私の体からは力が抜け始めた。
それと同時に私が今まで背負ってきた業が綺麗サッパリ吸われてなくなっていく。
贄として私の体が消費され始めたのだ。
妹「お姉ちゃん――!」
サキュ姉「ごめんね。変なこと押し付けて」
省24
255: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:45 ID:C9C5IjNN0(14/41) AAS
一閃。
魔女の娘の胸にナイフが走る。
赤い線が横一線に娘の胸を刻んだ。
その痛みで気絶から覚めた娘が叫ぶ。
なんてことをしてくれたんだ!
魔女娘は関係なかっただろ。
そう思ったが、男にとってはそうではなかったようだ。
男「この娘の中にお前の魂を封印する」
省25
256: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:46 ID:C9C5IjNN0(15/41) AAS
零「見つけたぞ、災厄の魔女!」
零のサキュバス――私のお母さんだった。
男「くっそ、こんなところで……こんなところてぇ――」
零「お前の罪だ。大人しく死ね」
男「あと少しだったんだ、あと少しで……」
省21
257: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:47 ID:C9C5IjNN0(16/41) AAS
男「くそが! 本来なら私が手に入れていたはずなのに……」
零「黙りなさい! 『貴方は呼吸の仕方を忘れる』」
零のサキュバスがそういった瞬間、男の動きが止まった。内に抱えていた魔女娘を取り落とす。
その拍子に魔女娘は気絶したみたいだ。
私も急に意識が重たくなった。
男「わ、私は、なんどでも、蘇る」
省14
258: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:51 ID:C9C5IjNN0(17/41) AAS
――――――
――――
――
サキュ姉「これが十二年前に起こった出来事」
魔女娘「そう」
魔女娘「じゃあとりあえず齒ぁ食いしばれ」シュッ
省16
259: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:52 ID:C9C5IjNN0(18/41) AAS
サキュ姉「わかってる。だからあなたにお願いしたいのは、目が覚めたあと世界催眠を使える人――母と妹に事情を説明して協力を取り付けて」
魔女娘「世界催眠なら災厄と渡り合えると……?」
サキュ姉「あなたも見たでしょ。サキュバスの不完全な世界催眠で下僕を完封できていた」
魔女娘「確かに、そうか……」
サキュ姉「だからお願い、どうにか災厄を倒して。あいつがいたからみんな……」
省26
260: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:53 ID:C9C5IjNN0(19/41) AAS
ライバル魔女「大丈夫ですの!?」
魔女娘「ん? ふぁ……よく寝た」
ライバル魔女「怪我はありませんの?!」
後輩「落ち着きなよ先輩。こうして魔女娘先輩が目を覚ましたんですから」
魔女娘「ごめんライバル魔女、心配かけた。どこもどうとないよ」
省55
261: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2021/11/10(水)14:55 ID:C9C5IjNN0(20/41) AAS
――地下牢
魔女娘「いた」
サキュバス「ます、たー……?」
サキュバス「なんでここに。どうやって」
魔女娘「そういうのはいいとりあえずここから出よう」
省24
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