魔女娘「あなたは何ができるの?」サキュバス「うっふーんなこと」 (282レス)
魔女娘「あなたは何ができるの?」サキュバス「うっふーんなこと」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/
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37: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/04/15(水) 10:05:37.41 ID:5EZ9OMUe0 魔女娘「あ、そうそう。今更だけど、友魔女はちゃんと使い魔召喚できた? 私が倒れたいざこざで流れたりしてないよね?」 友魔女「ちゃんと召喚できたよ。――ほら、この子」 黒猫「にゃーん」 魔女娘「ネコだ。可愛いね」 ライバル魔女「あら、なかなか高貴な身立ちではありませんか? まあ、うちのドラゴンちゃんの方が見目麗しいですけれど」 サキュバス「ほれ、にゃんこ、おて」 黒猫「にゃ」プイ サキュバス「やん、いけずぅ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/37
38: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/04/15(水) 10:06:21.97 ID:5EZ9OMUe0 ???「あ、先輩たち、こんにちは」 友魔女「ああ、キミか。こんにちは、後輩ちゃん」 ライバル魔女「ごきげんうるわしゅう、後輩さん。壮健なご様子で何よりですわ」 後輩「もうからかわないでくださいよ、ライバル魔女先輩。私なんて魔法が使えるだけのただの町娘ですよ。そんなに畏まって挨拶されると萎縮しちゃいます」 ライバル魔女「あらここは貴族の通う学校ですのよ。これくらい当たり前ですわ」 ???「おい、後輩。どこにいる」 後輩「あ、王子様こちらです」 王子「そこにいたのか。……なんでお前もいる」ギロッ ライバル魔女「あら、ワタクシだってこの学園の生徒ですわよ。学食を使う権利はありますわ」 公爵「おーい、後輩ちゃんに王子ぃー、ボクのことをおいていかないでくれよー」 公爵「って、あちゃーライバル魔女さんもいる」 ライバル魔女「なんですの、よってたかって。私がいるのになにか問題がありますの」 公爵「ないけどさぁ……」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/38
39: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/04/15(水) 10:07:03.66 ID:5EZ9OMUe0 王子「ふん、お前は卑しいからな。元婚約者のお前が、嫉妬から俺の最愛の人を傷つける、なんてこともあるんじゃないかと思ってな」 ライバル魔女「あら、ごあいにく様。ワタクシ貴方に粉砂糖程の未練もございませんの」 後輩「ちょ、ちょっと二人とも仲良くしよ。ね?」 ライバル魔女「あら、ワタクシ別に争いたいわけではありませんよ」 王子「どうだか。――ほら、行くぞ、後輩」 後輩「あ、ちょっと待ってください王子様」 後輩「あの、魔女娘さん? 大丈夫……そうですね」 魔女娘「んぐんぐ……っぷは! 何が? 見ての通り2匹目の仔牛をやっつけてるところなの。用があるなら手短に」 後輩「いえ、授業中倒れたと聞いたから大丈夫かな、と……まあ要らない心配だったみたいですね」 魔女娘「まあね」ガツガツ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/39
40: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/04/15(水) 10:08:05.55 ID:5EZ9OMUe0 王子「おい、お前さっきから無礼だぞ。食事をしながら、俺の後輩と話すな」 ライバル魔女「…………」 ライバル魔女「……あら、『俺の後輩さん』は確か、ただの町娘だったはず。少しくらい砕けた態度でもよろしいんじゃなくて」 王子「ふん、今はまだ、な。いずれ俺の妻となるのだ。その時には女王――つまり、国の母となるのだ。言わば後輩は『国の幼母』だ。だというのに、その態度!」 王子「そもそもだ。人と話すときに食事をするな、物を噛むな、手を止めろ! 話す相手が町娘だ王族だ以前の問題だ!」 魔女娘「……モグモグ」 王子「おいこら! 話を聞け! 人としてのマナーの問題だ!」 ライバル魔女「……」 友魔女「まあ、何も言えないよね。これに関しては王子様が正しいし」 ライバル魔女「まったく……もう少しレディとして相応しい身の振り方を覚えてほしいですわ」 サキュバス「まあまあ、そんなにカッカッしないで――」 王子「誰だ貴様は――!」 サキュバス「これはこれは、お初にお目にかかります。そこの魔女娘の使い魔となりました。サキュバスと申します。以後、お見知りおきを」 王子「使い魔風情が、この俺に――な……に、ぇ――?」 サキュバス「あら、私の顔になにかついています?」 王子「あ、いや……その……」カアアッ/// サキュバス「あら、お顔が赤くなりましたけど大丈夫ですか? お熱とか……」ソッ 王子「いい! 触るな!!」バッ 王子「俺はもう行く! 後輩も早くこい!!」 後輩「ええ……はい。――それじゃあ皆さんまた……」 公爵「ちょっと王子、急にどうしたのさ――ボクも行くから待って〜」タタタッ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/40
41: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/04/15(水) 10:10:18.90 ID:5EZ9OMUe0 友魔女「……何したの…………?」 サキュバス「面倒くさいことになりそうだったから、ちょっと軽い魅了と催眠をね」 友魔女「…………とんでもないな……」 魔女娘「……腹立つ」モグモグ 友魔女「こっちはこっちで、どうしたのさ」 魔女娘「あいつ、ライバル魔女のこと一方的に振っておいて、どの面下げてあんなこと言えるんだか」モグモグ ライバル魔女「魔女娘さん……」 ライバル魔女「いいんですわ! あんな男こっちから願い下げですの!」 ライバル魔女「でもそれはそれとして、食べながらしゃべるのはおよしなさいな。みっともありませんわ!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/41
42: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/04/15(水) 10:11:37.91 ID:5EZ9OMUe0 ライバル魔女「ふう……ドラゴンちゃんお腹一杯ですの?」 ドラゴン「ぐるるる……」コクコク ライバル魔女「そのようですわね」 友魔女「私も食べた食べた。お腹いっぱい」 魔女娘「……私は、まだ…………」 友魔女「え? 冗談だろ? 君、結局800グラムのステーキを3枚も食べてただろ」 魔女娘「でも、まだ――」グウゥ ライバル魔女「ちょっと、魔女娘さん……どうしたんですの?」 魔女娘「分かんない……分かんないけど、お腹が空くの……」 魔女娘「うっ――もう、だめ……」 魔女娘「――――」バタン ライバル魔女「魔女娘さん!?」ダキッ 友魔女「とりあえず、そこのベンチに横にさせて……」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/42
43: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/04/15(水) 10:12:33.29 ID:5EZ9OMUe0 サキュバス「……精気が足りてない……」 友魔女「なんだって?」 サキュバス「精気よ、精気。生気と言い換えてもいいけど……」 サキュバス「字面の通り、生き物を生き物足らしめるのに必要なものよ。精気が不足するということは、即ち生き物としての死を意味するわ」 サキュバス「――精気は、私達サキュバスの主食でもあるわ」 友魔女「ちょっと待て……サキュバス、お前さっき魔女娘に……その、捕食行為おこなってたよな……?」 ライバル魔女「じゃあ魔女娘さんか、その精気が不足しているのは……」 サキュバス「……確かに、寝てる間にマスターからはちょっと精気を頂いたけど……」 サキュバス「それでもパンを一斤でも食べればすぐに補填されるくらいの量――」 サキュバス「禁断症状が出るほどじゃない。だから……こんなこと、起こるはずない……」 友魔女「じゃあなんで、起こるはずないことが――」 後輩「それは、魔女娘先輩とサキュバスさんの相性が良かったからですよ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/43
44: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/04/15(水) 10:15:33.69 ID:5EZ9OMUe0 友魔女「――?! 後輩ちゃん……? どうして?」 後輩「やっぱり心配だったんで戻ってきちゃいました!」 後輩「あ、安心してください。王子達はおいてきましたんで――」 ライバル魔女「そんなことより、どういうことですの!? ――相性がよかったって」 後輩「そのままの意味ですよ」 後輩「極稀に使い魔と主人の相性が良すぎて、主人が使い魔の特性と同調することがあるんです」 後輩「――つまり、魔女娘先輩もサキュバスになってるってことですね」 友魔女「はあっ?! そんな、聞いたことがない……!」 後輩「先輩が聞いたことなくても、実際に魔女娘先輩は精気欠乏によって倒れました」 後輩「飢餓状態のサキュバスと同じ状態ですよ、これ」 後輩「きっと初めてのサキュバスとしての空腹に体が慣れてないんでしょうね」 後輩「先輩はそれに気づかずに、一心不乱にご飯を食べてましたけど、それだけじゃ精気を回復するのには足りなかったみたいですね」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/44
45: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/04/15(水) 10:16:39.49 ID:5EZ9OMUe0 サキュバス「…………」 サキュバス「なら、サキュバスとしての食事をすれば、良いってことよね」 後輩「そうですね。お腹いっぱいになって精気(えいよう)が体中に回れば、自然と目を覚ますと思います」 友魔女「食事……サキュバスとしての……」 ライバル魔女「――――」 ライバル魔女「ワタクシの部屋に運びましょう」 ライバル魔女「魔女娘さんはワタクシの生涯のライバルですもの。放っておけませんわ」 ライバル魔女「――ワタクシがなんとかします……」 後輩「ソですか。でも、魔女娘先輩は飢餓状態になるほどの空腹です。ライバル魔女先輩一人が精気を提供しても満たされるかどうか……下手したら共倒れになりますよ」 友魔女「……私も行くよ。魔女娘は私の友達だ。こんなことで亡くすわけにはいかない」 サキュバス「私も行くわ。お二人にとっては邪魔かもしれないけど、きっと初めての吸精で勝手がわからないと思うから……私が教えるわ」 後輩「それなら安心ですね」ウン http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/45
46: ◆TEm9zd/GaE [saga] 2020/04/15(水) 10:18:10.90 ID:5EZ9OMUe0 後輩「さ、決まったのなら急いだほうが良いですよ。魔女娘先輩の命のリミットは刻々と近づいて来てるんですから」 ライバル魔女「急ぎますわよ!!」 ライバル魔女「魔女娘さんはドラゴンちゃんに運ばせますわ。背中に乗せて――!」 サキュバス「お願いね、ドラゴンちゃん」 ドラゴン「キュルルル――!」 友魔女「…………」 ライバル魔女「ほら、友魔女さんも早く――!」 友魔女「――ねぇ、後輩ちゃん……」 後輩「なんですか、先輩? 早くしないと魔女娘さんが手遅れになりますよ」 友魔女「キミ、なんでそんなに詳しいんだ……?」 友魔女「使い魔との特性の同調なんて聞いたことがない……なんでキミは知ってたんだ……?」 後輩「実は私、勉強熱心なガリ勉ちゃんなんですよ。そうは見えないでしょうけど――」 ライバル魔女「友魔女さん――!!」 後輩「ほら、お友達が呼んでいますよ。早く行ったほうがいいですよ」 友魔女「……また、今度話を聞きたい」 友魔女「――ごめん。遅れた早く行こう」タタッ 後輩「…………」 後輩「――なかなかどうして……思い通りにはいかないねぇ…………」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/46
47: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/05/13(水) 05:53:20.86 ID:Gzaj7nTn0 ――ライバル魔女視点 ―――――― ―――― ―― 昔のワタクシは、魔女娘さんの事が気に食わなくて仕方がありませんでした。 その理由はとても簡単で、今にして思えば鼻で笑えるほどのくだらない理由。 ――ワタクシが入学試験で負けたから。 たまたま魔法適正が高いからというだけで貴族の仲間入りをした平民上がりの小娘が、たまたま入学試験でワタクシより上になった。 運だけの相手に負けた。 当時のワタクシはそんなことで魔女娘さんのことを目の敵にし……思い返すのも恥ずかしいですが、嫌がらせを一杯してしまいました。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/47
48: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/05/13(水) 05:54:07.28 ID:Gzaj7nTn0 それが変わったのは日々彼女に触れていくにつれ、彼女も努力していることに気づいたから。 そもそもが平民生まれだというのに、突然、貴族社会の縮図となっている学園に放り込まれて、それでも屈することなく懸命に生きていくには、とてつもない努力とどんな理不尽にも屈することのない精神力が必要となってくる。 魔女娘さんは、その二つを持っていました。 だから、彼女と接するにつれて、気に食わないという気持ちが、だんだんと認めてあげてもいいかなという気持ちに心変わりしていくのも必然というもの。 彼女が努力した結果、ワタクシよりも良い成績を出すというのなら、ワタクシはその倍の努力をして魔女娘さんの事を打ち負かせばいい。 そう。ワタクシはいつしか魔女娘さんのことをライバルと認めるようになりました。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/48
49: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/05/13(水) 05:55:07.44 ID:Gzaj7nTn0 そして、ワタクシにとっての運命のあの日。 すなわち、ワタクシが王子から婚約破棄を言い渡された日。 その日、魔女娘さんはただのライバルではなくなりました。 他の女性の事が好きになったからという理由で告げられた一方的な婚約破棄。 最初、ワタクシは怒りました。その行為は人として、王族としての通りに反している、と。 けれど、王子は悪びれるどころか、逆にワタクシを怒涛の勢いで貶してきました。頭に血が上っていてよく覚えていませんが……確か、むしろ今まで婚約者にしてやっていたことを感謝しろ、妾にだったらしてやってもいいぞと、これらに類するような事を言われたと記憶してあります。 身勝手な言い分に何も言えなくなりました。 前から、王族という身分に笠を着て、厚顔無恥な行いをするのには眉をひそめていましたが、まさかここまで愚かだったとは……。 ワタクシが唖然としているのを、婚約破棄によりショックを受けたからだと勘違いした王子は(ある意味ではショックでしたけれど……)、我が意を得たりと言わんばかりに更にワタクシのことを責め立てました。 けれど、もう何もワタクシの耳には届きません。 ――こんな男に一時とはいえ懸想していたのかと、自身の見る目のなさに愕然とし、ついでこの男はもう駄目だという諦念が心中に渦巻いたからです。 何も言い返す気になれませんでした。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/49
50: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/05/13(水) 05:56:00.76 ID:Gzaj7nTn0 周りにいる学友もワタクシ達には近づいてこようとしません。 当たり前です。相手は腐ってもこの国の王子。 誰しも下手に口出しして目をつけられるなんてことは避けたいはず。 ワタクシに味方なんていない。 魔法界の華だなんだと煽てられても、結局、こういう時に助けてくれるような人は誰もいない。 そのときのワタクシができたことは己の惨めさに身を震わせることのみ―― 魔女娘「なに、勝手なことを言ってるの?」 ワタクシと王子とを隔てるように、割って入ってきた少女が一人。 ワタクシのことを守るように背へと隠した魔女娘さんは、キッと王子を睨みつけていました。 最初、ワタクシはとても信じられませんでした。 だって魔女娘もワタクシはライバル同士。なんだったら過去に嫌がらせもしました。 それなのに、ワタクシを庇うなんて、あり得ないと……。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/50
51: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/05/13(水) 05:57:21.02 ID:Gzaj7nTn0 魔女娘「黙って聞いてたら、ライバル魔女のことを散々言いやがって!」 魔女娘「ライバル魔女がどれほど努力してるか知ってるの!?」 魔女娘「魔法特待生の私が……魔法しか能のない私が、魔法で負けそうになるほど懸命に――!!」 魔女娘「魔法だけじゃない……勉強とかマナーとか私なんかじゃ足元にも及ばないくらい頑張ってる!!」 突然現れて何やらまくし立てる魔女娘に王子はキョトンとした顔をしました。 けれど、目の前の娘が無礼を働いたというのは分かったのでしょう。 キョトンとした顔が一瞬で侮蔑に染まりました。 王子「なんだお前は――! お前に関係ないことだろ!」 王子「大体、お前の言っている努力は貴族だったら当たり前のことだ!」 魔女娘「当たり前なんかじゃない!! 貴族だからと笠に着ないで、高貴であろうと努力を重ねる。こんなにできた令嬢はいない!」 魔女娘「ライバル魔女は、お前なんかが馬鹿にしていい相手じゃない!!」 その言葉は今まで向けられたことのない……。 公爵令嬢として生まれたワタクシは、王子の許嫁として……つまり未来の王女に相応しくなるべく、幼い頃から習い事に勉強にと勤しんできました。 ……いいえ、両親から強要されてきました。本当はワタクシは、習い事も勉強も……王子の婚約者という立場だって一度だって望んだことはありません。 一番をとって当たり前。教師達からも両親からも、そう言われて育ちました。そのためにはもちろん、休みなんてありません。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/51
52: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/05/13(水) 05:58:57.52 ID:Gzaj7nTn0 そんな生活に疲れ、一度だけお父様に泣いて、休みが欲しいと訴えたことがありました。 けれどその願いが届くことはなく……。 ――その渇いた音は今でも耳の奥に残っています。 頬を張られた音。 休みが欲しいと訴えたワタクシの頬をお父様は、ブッたのです。 『甘えるな。……お前は将来王族となるのだ。完璧になれ。失望はさせてくれるな』 こんなに辛いのに、こんなに認めてほしいのに、お父様は……。 もう涙は出ませんでした。……きっとその時ワタクシは壊れてしまったのでしょう。 頑張らないと、甘えたことは言ってはいけないと、完璧で――一番でなければいけないと……でないと認めてもらえない。 だから、頑張りました。好きでもない男を好きになるように努力しました。王女に相応しいよう研鑽を重ねました。 認めてもらえるように、身をすり減らして。 なのに、ワタクシが望んだものは何一つ手に入らなくて……。 だから―― ライバル魔女「魔女娘さん……」 魔女娘さんの言葉に、ポロポロと熱いものが頬を伝いました。 あの時に止まってしまった涙が――。 ああ、魔女娘さん……ワタクシはずっとその言葉が……。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/52
53: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/05/13(水) 06:00:05.14 ID:Gzaj7nTn0 王子「お前――」 後輩「まあまあ、王子様それくらいにして――ね?」 王子「ん……あぁ、後輩がそういうなら……」 王子「おい、ライバル魔女! どう喚いてもお前との婚約は解消するからな」 まだ、王子が何かしら言っているが、もう気にならなかった。 だってワタクシには―― 魔女娘「まだ言うか――」 ライバル魔女「いいんです。魔女娘さん」 魔女娘「ライバル魔女!?」 ライバル魔女「婚約、破棄しましょうか、王子様」 王子「はっ! 初めからそう言えばいいのだ」 王子「破棄したのならお前にもう用はない。いくぞ、後輩」 魔女娘「ちょっと! まだ話は――」 ライバル魔女「――もういいのです」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/53
54: ◆TEm9zd/GaE [saga] 2020/05/13(水) 06:02:00.13 ID:Gzaj7nTn0 勝手に婚約破棄したらお父様はなんて言うでしょうか。 別の婚約者が当てられるか、下手したら勘当同然に修道院に送られるか。 どちらにしても、きっとあの時の比じゃなく怒るのでしょうね。 でも、後悔はありません。 ライバル魔女「……ねぇ、魔女娘さん」 魔女娘「なに?! 復讐なら手伝う!」 ライバル魔女「望んでませんわ、そんなこと……」 だって、ワタクシが望んだものは―― ライバル魔女「――ワタクシ達はライバルですわ!」 魔女娘「なに、突然?」 ライバル魔女「突然でもなんでも、ワタクシとアナタはライバルですわ」 ライバル魔女「ただのライバルじゃありません。一生涯のライバルですわ――!!」 なにそれ? と不思議そうな顔をした魔女娘さん。 でも、すぐに「私のライバルだったらそんなに泣かないで」なんて言って慌てて私の頬を拭ったのだ。 ―― ―――― ―――――― ワタクシの部屋のベッドの上。 そこに苦しげな表情の魔女娘さんが横たわっている。 あの時、ワタクシの涙を掬った指はピクリとも動かない。 ライバル魔女「こんなことで……」 うっすらと白んでいる頬に手を添える。 精気の抜けたその頬は、朝やけの空気の如く冷たかった。 ライバル魔女「こんなことでアナタを失わせない、絶対に――!!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/54
55: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage] 2020/05/13(水) 08:02:28.26 ID:WkNIuqRl0 ええやん http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/55
56: ◆TEm9zd/GaE [sage saga] 2020/05/15(金) 06:11:35.03 ID:GQa4DH7SO ? サキュバス「まずキスをしましょう」 若干西に傾いた日の光が、締め切られたカーテンの隙間から細く棚引く。 薄暗い室内には四人の女性が。 その内の一人は意識を失っており、顔色悪く冷や汗を垂らしてベッドに横たわっている。 魔女娘だ。彼女は先ほど使い魔であるサキュバスと同調しサキュバスの能力を得てしまった。その結果としてサキュバス特有の飢餓――精気欠乏を起こしてしまい倒れてしまったのだ。 精気欠乏から回復する手段は一つ、それはエッチすること。 その魔女娘を取り囲むように、三人の女性がいた。 彼女ら三人とも、精気欠乏によって倒れた魔女娘を助けたいという一心のもと、心配そうに魔女娘の顔を見ている。 友魔女「なんだ、キスだけでいいのか……」 三人の内の一人がホッとしたような声を上げる。 魔女娘の様態の悪化から、かなり無茶をしなくてはいけないのでは、と危惧していたからだ。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1571457888/56
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