【モバマス】 和久井留美「富士そばには人生がある」 (34レス)
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抽出解除 必死チェッカー(簡易版) 自ID レス栞 あぼーん

2: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)11:09 ID:+K0KOsmIO携(1/29) AAS
すみません>>1です
久しぶりにSS速報VIPでスレ立てしたら何故かRの方にスレが立っていて困惑です
VIPの方でスレ立てしたところ、「内部エラー」などと表示され、もう一度スレ立てしたら「スレの立てすぎ」となりVIPでスレ立てできませんでした
もしやと思いこっちを見たら何故かこちらにスレが立っていて困惑です

とりあえず乱立してしまい申し訳ございません。
二つのスレともHTMLスレにスマホからかき込んで申請したのですが、こちらで書き込みできるならこちらで続けて書いても大丈夫なのでしょうか
5: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:01 ID:+K0KOsmIO携(2/29) AAS
>>3 >>4
ありがとうございます。いつの間にかここも色々と問題が起きていたみたいですね……。
とりあえずHTML申請はしてしまったのですが、こちらで書き込みできるならこちらで続行してこちらで完結させようと思います。その後このスレのURLでもう一度申請を出します。

再度VIPに立ててまたRで立ってしまったらそれこそ荒らしになってしまうので……。
6: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:04 ID:+K0KOsmIO携(3/29) AAS
くどくどと申し訳ございませんでした。
それでは改めてこちらで書き込んでいきます。
7: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:06 ID:+K0KOsmIO携(4/29) AAS
 私、一体何をやっているのかしら――

 楽しい時はあっという間というけれど、そんな饗宴のような時間が過ぎて我に返ったとき、色々な感情が錯綜した結果いつもこの文言が頭に浮かぶ。

「――お疲れ様でしたぁ!」

 自身が出演しているドラマの収録や、司会者の補助を務めるサブMCとしてレギュラー出演しているバラエティ番組、そしてメインのアイドルとしての芸能活動。そういった仕事で目まぐるしく過ぎていく日々……。そう、ついさっきまでそのような仕事をしていたところだ。

 バラエティ番組の収録を終え、所属事務所に戻り、そうして諸々の業務を済ませ外に出る。
省7
8: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:10 ID:+K0KOsmIO携(5/29) AAS
「さてと……」

 今の私……。自然に紡がれたはずの言葉が、自身の心境の変化を慎ましく伝えていた。

 丈の長いPコートにマフラー、革の手袋にブーツ――いつ雪が降っても大丈夫なよう万全の準備で臨んだはずだったが、微かに吹き抜けた冷たい風が衣服の隙間を通り抜け押し寄せたとき、私は噛ませ犬のようにあっさりと白旗を上げる。

(早く帰りましょう……)

 ビル街に舞い散る雪に感傷的になるような年頃でもないだろう……。そう言い聞かせ、最寄り駅へ向かった。
 今日の仕事は全てやりきった。そして明日は何もない、いわゆるオフだ。早く帰って熱いシャワーで疲れを癒したい。
省8
9: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:14 ID:+K0KOsmIO携(6/29) AAS
「お待たせしました。次は新宿、新宿です。お出口は――」

 人混みに流される――そうだ、この時間は帰宅ラッシュの時間帯だ。
 準・満員といった様相の電車内。車内中ほどに立って、そしてつり革を握っていた私は、世界有数のターミナル駅で乗り換える乗客の群れに流される。

(智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ……)

 昔の文豪はよく言ったものだ。そう、とにかくこの世は住みにくい。

(意地を通せば窮屈だ……)
省21
10: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:19 ID:+K0KOsmIO携(7/29) AAS
「お待たせしましたー。カシラの赤と白と、レバーと赤ウインナーフライでーす」
「ありがとうございます。あ……、追加で生一つお願いします」
「かしこまりましたー」

 はあ、私は一体何をやっているのかしら――

 空腹を満たすため繰り出した新宿。
 人で溢れる歌舞伎町方面の出口を出て、アルタ前から路地に入る。
 あれもこれもと決めあぐねて、偶然目にとまった立ち飲み屋の赤ちょうちんへ夜光虫のようにひかれていった。

「お待たせしました、生ビールでーす」
「ありがとうございます」
省12
11: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:24 ID:+K0KOsmIO携(8/29) AAS
 私は一体、何をしてきたのだろう。

 こうして酔っている時でさえ、ふと我に返るとそういった言葉が脳裏に浮かぶ。

 自分を中心に世界は回らない、自分は選ばれる人間ではない。

 そう気付いたのはいつだったか。
 学生時代の部活動だったか、はたまた職場の中であったか。
 
 自分は表に立てる人間ではないのなら、せめて誰かを表舞台に立たせるような人間になろう――そう思って裏方に徹するようになった。

「お待たせしましたー。もつ煮込みとネギ二本、メンチカツでーす」
「ありがとうございます。あ、生一つお願いします」
省18
12: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:26 ID:+K0KOsmIO携(9/29) AAS
「……寒っ」

 立ち飲み屋を出ると、外は依然として雪がチラついている。積もる気配はないが、吐く息は白く、火照った体を冷気が締め付けるようだ。

「もう、どうにでもなれよ……」

 鬱陶しい、意地汚い客引き。煌びやかなホストクラブ。昭和の色を残した場末のバー、ラブホテル……。
 洗濯機のようにぐるぐると回る頭――冷静を取り戻す為に冷気の世界をさまよい歩く。

「……あ」
省5
13: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:29 ID:+K0KOsmIO携(10/29) AAS
「おう嬢ちゃん久しぶり!」

 タバコ臭い通路を抜けて、バッティングセンターに辿り着く。
 アーケードゲームの騒音にたじろいでいると、受付のおじさんから声をかけられる。

「え……」
「ホームラン、期待してるよ!」

 無数の人が出入りするこの場所で、まさか無名兵士の私を覚えているとは……。

「これ、見てみ……?」
省9
14: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:31 ID:+K0KOsmIO携(11/29) AAS
(――いいスイングしてるな)

 マシーンの起動音に合わせて、いつかの情景が脳裏で投影される。

「……くそっ!」

 諸々の記憶と、情けない自分を振り払うようにスイングするが、空振りやファールの連続で嫌気が差す。

(腰と膝を落として。スイングは腕じゃない、下半身でするんだ)
省12
15: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:35 ID:+K0KOsmIO携(12/29) AAS
「嬢ちゃんやったね!」

 僅か数打席でホームランが出るとは――自分でも驚いて、呆然としていた。
 そうして投球は規定数に達し、終わりを迎え、フロアへ戻るとおじさんに声をかけられる。

「――これ、ホームランの景品ね」

 呆然としていると、おじさんからホームランの景品を渡される……。ささやかなお菓子の詰め合わせだ。

「あと、これはおまけね」
省17
16: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:38 ID:+K0KOsmIO携(13/29) AAS
「あ……」

 缶コーヒーを飲み終え路地をさまよっていると、路地を横切る野良猫を発見する。

「猫ちゃ〜ん……!」

 ええ、充分酔っていることは自覚しているわ。
 猫好きの癖に猫アレルギー……。せめて近くでその姿を堪能したくて、私は猫の背中を追っていく。
 こうやって、私は名も知らない誰かに憧れて、そうしてそのおぼろげな背中をずっと追いかけている――

「ここは……?」
省18
17: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:41 ID:+K0KOsmIO携(14/29) AAS
「私は、一体――」

 裏方にいた私が、気付けば表に立っている。
 喜ばしいことだけど、果たして私はここにいていいのか――この時代、いわゆるアイドル戦国時代と呼ばれるこの時代。無数の人々が華々しいスポットライトの下に立つため日々研鑽している。地下アイドルにしても養成所の研究生にしてもそうだ。悲しいことに、その大半は日の目を見ることができずに夢破れる。

 一人のアイドルとして生きる私は、ひょんなことからアイドルになってしまったこの私は、努力してもなれなかった人々の想いを背負って舞台に立つ資格があるのか。

 もちろん、私自身何の努力もしてこなかったわけではない……。様々な挫折を経てここまで来た。
 何が何だか分からないままあっという間に過ぎていった数年間だったけれど、今の仕事は楽しいし満足はしている……。

 ただ、私がここにいていいのか――裏方の私が。
省9
18: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:44 ID:+K0KOsmIO携(15/29) AAS
「いらっしゃいませー」

 ふらふらと夜の迷子になっていたら、気付けば時刻はもう深夜へ向かっている。
 明日はオフとか、でも終電が――とか、どうでもいいような懸念がふわふわと浮ついた脳内でバウンドしている。それを無理やり彼方へ放り投げて、目の前の券売機に集中することに。

 富士そば……。都内をはじめ首都圏の駅前で必ずといっていいほど目にする立ち食いそばのチェーン店。23区内であればもはや見つからない方が珍しいといった様相の超有名店である。
 立ち食いそばという名前からして、客層は男性が圧倒的だ。その中でもスーツを着たサラリーマンが大半を占める。時間に追われるサラリーマンというレーサーにとって、まさしくここはピットガレージといったところか……。

(迷うわね……)

 立ち食いそばなので、券売機のラインナップもシンプルなイメージ――しかし想像よりも様々なメニューがあり困惑してしまう。これが朝の時間帯であったなら、私はたちまち後ろの客に弾き飛ばされているだろう。しかし今は金曜夜の深夜帯。私の後ろに客はいないのでじっくりと決めさせてもらう。幸い、店内にいる客もまばらだ。
省8
19: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:49 ID:+K0KOsmIO携(16/29) AAS
「そばにしますか、うどんにしますか?」
「……うどんでお願いします」

 カウンターで食券を出し、店員さんにうどんをお願いしてようやく着席。立ち食いと謳っているが、この店もカウンター席がずっと並び座ることができる。
 私がまだスーツ組だった時、富士そばは何度か利用したことがあったけれど――あの時はこんな風に迷ったりはしなかった。

「お待たせしました。コロッケうどんとカツ丼と生ビールでお待ちのお客様―」
「ありがとうございます……」

 やってしまった……。まだ酔いが残っているらしい……。
 コロッケうどんにカツ丼に生ビール――これ、完食できるかしら。
 思えば私、何かに流されてばかりだわ……。
省24
20: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:51 ID:+K0KOsmIO携(17/29) AAS
 完全なる一杯が出来上がるまで、しばしの辛抱――うどんをいただきましょう。

「……ずずっ」

 うん、ごく普通のうどんね。コシもへったくれもない「ただの麺類」だわ。
 何の障害もなく呑み込めてしまう、麺という形状をとった炭水化物……。それがこのうどん。

(さてと……)

 いや、まだ我慢よ――そうだ、ビールとカツ丼を忘れていたわ。
省16
21: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:54 ID:+K0KOsmIO携(18/29) AAS
「……ふぅ」

 ビールジョッキを置いて、しばし休憩。

(たかが立ち食いそば、されど立ち食いそば――哀愁漂うこんな場所でも、それを必要としている人がいる)

 店内に流れる有線放送の演歌……。そうだ、富士そばはこんな感じだったわね。

(あの頃は、こんな演歌なんて聞こえなかった)
省13
22: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:58 ID:+K0KOsmIO携(19/29) AAS
 今は食べることに集中しよう――切り替えて、コロッケに手をかける。

「……ッ」

 これは……。つゆを完全に吸って、くたくたを通り越しグダグダになったコロッケ。

(……これは、好きだわ)

 箸で掴んだ瞬間、砂のお城のようにホロリと崩れるコロッケ。崩れたそれを掴んで口に入れると、もはや油とつゆが主成分となった物体が口の中で溶ける。溶けてなくなる。
 そしてコロッケの中身――じゃがいもの味も残っていて。それが微かに口内を漂って消える。
省12
23: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)13:01 ID:+K0KOsmIO携(20/29) AAS
(そして、これよ……!)

 ここで、辛うじて原型を保っていたコロッケをボロボロに崩す。
 なんだかもったいないような気がするけれど、これも「楽しみ方」の一つなのだ。
 くたくたになったコロッケと、グダグダになったコロッケは堪能した。後は、全てを崩して一緒くたにしてしまう。
 これこそ、コロッケうどんの真骨頂。鍋料理でいうシメである。

 崩れてボロボロになったコロッケのかけら。それが少なくなったつゆに混ざって、シメの雑炊のような形となる。
 コロッケうどんの全ての味がこのかけら一つ一つに完全に浸透しているのだ。濃縮されているのだ。
 そんなコロッケのかけらが、残ったうどんと絡み合い、更にそこへ……。

(七味をかける……!)
省19
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