【モバマス】 和久井留美「富士そばには人生がある」 (34レス)
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1(29): 2019/02/22(金)10:14 ID:o3T9ndbd0(1) AAS
[過去作]
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省1
15: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:35 ID:+K0KOsmIO携(12/29) AAS
「嬢ちゃんやったね!」
僅か数打席でホームランが出るとは――自分でも驚いて、呆然としていた。
そうして投球は規定数に達し、終わりを迎え、フロアへ戻るとおじさんに声をかけられる。
「――これ、ホームランの景品ね」
呆然としていると、おじさんからホームランの景品を渡される……。ささやかなお菓子の詰め合わせだ。
「あと、これはおまけね」
省17
16: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:38 ID:+K0KOsmIO携(13/29) AAS
「あ……」
缶コーヒーを飲み終え路地をさまよっていると、路地を横切る野良猫を発見する。
「猫ちゃ〜ん……!」
ええ、充分酔っていることは自覚しているわ。
猫好きの癖に猫アレルギー……。せめて近くでその姿を堪能したくて、私は猫の背中を追っていく。
こうやって、私は名も知らない誰かに憧れて、そうしてそのおぼろげな背中をずっと追いかけている――
「ここは……?」
省18
17: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:41 ID:+K0KOsmIO携(14/29) AAS
「私は、一体――」
裏方にいた私が、気付けば表に立っている。
喜ばしいことだけど、果たして私はここにいていいのか――この時代、いわゆるアイドル戦国時代と呼ばれるこの時代。無数の人々が華々しいスポットライトの下に立つため日々研鑽している。地下アイドルにしても養成所の研究生にしてもそうだ。悲しいことに、その大半は日の目を見ることができずに夢破れる。
一人のアイドルとして生きる私は、ひょんなことからアイドルになってしまったこの私は、努力してもなれなかった人々の想いを背負って舞台に立つ資格があるのか。
もちろん、私自身何の努力もしてこなかったわけではない……。様々な挫折を経てここまで来た。
何が何だか分からないままあっという間に過ぎていった数年間だったけれど、今の仕事は楽しいし満足はしている……。
ただ、私がここにいていいのか――裏方の私が。
省9
18: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:44 ID:+K0KOsmIO携(15/29) AAS
「いらっしゃいませー」
ふらふらと夜の迷子になっていたら、気付けば時刻はもう深夜へ向かっている。
明日はオフとか、でも終電が――とか、どうでもいいような懸念がふわふわと浮ついた脳内でバウンドしている。それを無理やり彼方へ放り投げて、目の前の券売機に集中することに。
富士そば……。都内をはじめ首都圏の駅前で必ずといっていいほど目にする立ち食いそばのチェーン店。23区内であればもはや見つからない方が珍しいといった様相の超有名店である。
立ち食いそばという名前からして、客層は男性が圧倒的だ。その中でもスーツを着たサラリーマンが大半を占める。時間に追われるサラリーマンというレーサーにとって、まさしくここはピットガレージといったところか……。
(迷うわね……)
立ち食いそばなので、券売機のラインナップもシンプルなイメージ――しかし想像よりも様々なメニューがあり困惑してしまう。これが朝の時間帯であったなら、私はたちまち後ろの客に弾き飛ばされているだろう。しかし今は金曜夜の深夜帯。私の後ろに客はいないのでじっくりと決めさせてもらう。幸い、店内にいる客もまばらだ。
省8
19: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:49 ID:+K0KOsmIO携(16/29) AAS
「そばにしますか、うどんにしますか?」
「……うどんでお願いします」
カウンターで食券を出し、店員さんにうどんをお願いしてようやく着席。立ち食いと謳っているが、この店もカウンター席がずっと並び座ることができる。
私がまだスーツ組だった時、富士そばは何度か利用したことがあったけれど――あの時はこんな風に迷ったりはしなかった。
「お待たせしました。コロッケうどんとカツ丼と生ビールでお待ちのお客様―」
「ありがとうございます……」
やってしまった……。まだ酔いが残っているらしい……。
コロッケうどんにカツ丼に生ビール――これ、完食できるかしら。
思えば私、何かに流されてばかりだわ……。
省24
20: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:51 ID:+K0KOsmIO携(17/29) AAS
完全なる一杯が出来上がるまで、しばしの辛抱――うどんをいただきましょう。
「……ずずっ」
うん、ごく普通のうどんね。コシもへったくれもない「ただの麺類」だわ。
何の障害もなく呑み込めてしまう、麺という形状をとった炭水化物……。それがこのうどん。
(さてと……)
いや、まだ我慢よ――そうだ、ビールとカツ丼を忘れていたわ。
省16
21: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:54 ID:+K0KOsmIO携(18/29) AAS
「……ふぅ」
ビールジョッキを置いて、しばし休憩。
(たかが立ち食いそば、されど立ち食いそば――哀愁漂うこんな場所でも、それを必要としている人がいる)
店内に流れる有線放送の演歌……。そうだ、富士そばはこんな感じだったわね。
(あの頃は、こんな演歌なんて聞こえなかった)
省13
22: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)12:58 ID:+K0KOsmIO携(19/29) AAS
今は食べることに集中しよう――切り替えて、コロッケに手をかける。
「……ッ」
これは……。つゆを完全に吸って、くたくたを通り越しグダグダになったコロッケ。
(……これは、好きだわ)
箸で掴んだ瞬間、砂のお城のようにホロリと崩れるコロッケ。崩れたそれを掴んで口に入れると、もはや油とつゆが主成分となった物体が口の中で溶ける。溶けてなくなる。
そしてコロッケの中身――じゃがいもの味も残っていて。それが微かに口内を漂って消える。
省12
23: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)13:01 ID:+K0KOsmIO携(20/29) AAS
(そして、これよ……!)
ここで、辛うじて原型を保っていたコロッケをボロボロに崩す。
なんだかもったいないような気がするけれど、これも「楽しみ方」の一つなのだ。
くたくたになったコロッケと、グダグダになったコロッケは堪能した。後は、全てを崩して一緒くたにしてしまう。
これこそ、コロッケうどんの真骨頂。鍋料理でいうシメである。
崩れてボロボロになったコロッケのかけら。それが少なくなったつゆに混ざって、シメの雑炊のような形となる。
コロッケうどんの全ての味がこのかけら一つ一つに完全に浸透しているのだ。濃縮されているのだ。
そんなコロッケのかけらが、残ったうどんと絡み合い、更にそこへ……。
(七味をかける……!)
省19
24: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)13:04 ID:+K0KOsmIO携(21/29) AAS
「……寒っ」
店を出て、今日何回目の定型句を漏らす。
(そういえば――)
あの疑問は、結局解消されないままだ。
(私は、一体……)
省15
25: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)13:07 ID:+K0KOsmIO携(22/29) AAS
状況はどうだい 僕は僕に尋ねる 旅の始まりを今も思い出せるかい
「……」
少し手持ち無沙汰な感覚がやってきて、私はスマートフォンの音楽を漁る。
イヤフォンを装着し、結局ランダムで音楽をかけた。
(こういう時に限って、好きな曲が一発目に来るのよね……)
長らく聴いていなかった、ずっと好きだったあの曲が一発目でかかる。
省18
26: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)13:11 ID:+K0KOsmIO携(23/29) AAS
色んな種類の足音耳にしたよ たくさんのそれが重なってまた離れて
「ここは――」
四谷をしばらく歩いていると、やがて赤坂離宮、迎賓館が視界の彼方に映る。
華々しい時代を象徴する豪華絢爛な建物。この国がどん底へ落ちてもなお生き残り、そして現在も堂々とした佇まいでここにある。
雅な西洋建築――ハリボテではない歴史を抱えたその姿は、栄枯盛衰の真理を見る者に感じさせる。
(そういえば、バラエティ番組でここを見学したこともあったわね)
昨今、ゴールデンタイムで流行っている教養・バラエティ番組。その収録でこの迎賓館の内部を見学したことがある。
アイドルにならなかったら、この世界に入らなかったら、絶対に経験できなかったことだろう。
省10
27: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)13:16 ID:+K0KOsmIO携(24/29) AAS
破りそこなった手作りの地図 辿った途中の現在地
動かないコンパス片手にのせて 霞んだ目凝らしてる
「……」
苦い思い出を振り切って、坂道を下る。
硬いアスファルトの上をずっと歩いて、ブーツの中の足は微かに軋むようだ。
君を失ったこの世界で 僕は何を求め続ける
迷子って気付いていたって 気付かないふりをした
「……」
省21
28: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)13:19 ID:+K0KOsmIO携(25/29) AAS
(ああ、そうだ――)
皇居の外濠……。日中はランナーが絶え間なく行き交うこの場所も、今はただぼんやりとした街灯が滔々(とうとう)と続くのみで、溜池の水面は水鏡となって摩天楼の幻想を映している。
強く手を振って あの日の背中に サヨナラを告げる現在地
動き出すコンパス さあ行こうか ロストマン
(私が辿ってきた道のり――私が残してきた足跡)
気付けば、こんなにもある……。
何もないと思っていた、この私に。
省17
29(1): 2019/02/22(金)13:24 ID:6SWcjgks0(1) AAS
ブラウザからスレたてをしようとすると
Rに立ってしまうらしいから
専ブラ使うといいらしいぞ
30: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)13:27 ID:+K0KOsmIO携(26/29) AAS
「――すみません、ちょっと職務質問いいですか?」
大手町駅の前で立ち止まっていると、背後から声をかけられる。
「……?」
「アイドルがこんな時間にふらついているのはいけませんねえ」
「P(プロデューサー)君……」
振り返ると、なぜかそこにはホームラン男――もとい、私のプロデューサーが。
「P君、なんで――」
「なんでも何も、わくわくさんがラインを鬼のように送ってきたんでしょ」
「……あ」
省28
31: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)13:31 ID:+K0KOsmIO携(27/29) AAS
「留美さん――」
あれから数日経ち、所属事務所にて。
「楓さん? どうしたの?」
同じ事務所に所属していて、同じくあのプロデューサーにプロデュースされているアイドル仲間の高垣楓さん――彼女に声をかけられる。
「聞きましたよ」
「……え?」
「留美さんも、結構お酒を飲まれるんですね」
「いや……。あの、その話はどこから……」
「プロデューサーです」
省24
32: 1 2019/02/22(金)13:34 ID:+K0KOsmIO携(28/29) AAS
なんとか最後までいけました、ありがとうございました。
33: 1 [sage saga] 2019/02/22(金)13:45 ID:+K0KOsmIO携(29/29) AAS
>>29
ありがとうございます。
ウェブを漁っていたところそのような情報を見つけたのでジェーンを入れてみたんですが、仕様がよく分からなくて、今回はここで続行するという決断に至りました……。
色々と難しいですね、管理人さんの管理が行き届いていないのでしょうか。
34: 2019/02/22(金)16:41 ID:1kJFAubxo(1) AAS
この作者のss大好き
今回はプロデューサーが真面目だ
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