エンド・オブ・ジャパンのようです (311レス)
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41: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/07/28(木)00:57 ID:4OpJDR7g0(3/4) AAS
『ウァアッ………!!?』

こんな有様の下半身でも感覚があるのか、気配を察したのかは解らない。何れにせよ最後の足掻きで振り回された機銃からの射撃は、意外な正確さでちょうど“車体”に乗り上げたばかりの俺の頭目掛けて伸びてきた。

('A`;)「ぬぉおおおおっ!!?」

軍人として最低限度の訓練と同様の自己鍛錬はしてきた身ではあるが、こちとらブンデスリーガのエースストライカーやハリウッドのアクションスターのような天性の運動神経を持ち合わせている身体じゃない。
跳躍やスライディングで華麗に回避、とは当たり前だがいかず、不格好に前へ転がるような姿勢で辛うじて躱す。

靴裏を弾丸が削り額を強かに打ち付ける羽目になったが、二回転ほどして止まったところで顔を上げれば、ちょうど鼻先で青白い肌の胴体が無骨な装甲板から生えているという不可思議な光景が広がっていた。
省16
42: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/07/28(木)01:27 ID:4OpJDR7g0(4/4) AAS
艦隊決戦の要として出張ってきたのだから、タ級Eliteの艤装は当然フル装備だ。友軍相撃の危険を考えればフルバーストは無理にしても、副砲の1、2門で薙ぎ払えば俺が15人いたとしても跡形もなく吹き飛ばせただろう。

だが、奴の艤装の形状が災いした。腰から下を囲うように装着され、重量が極端に下半身に寄ったアンバランスな構造。それに精神的動揺、急激な方向転換、足元の悪さも合わされば、自然“次に起こること”は限定される。

『ウォアッ!!?』

ズルリとタ級の足が滑り、体勢が崩れ、艤装の銃口・砲口が尽く天を仰ぐ。当然、こんな状態で俺への砲撃などできやしない。

転倒こそしなかったが、事ここに至れば差はない。銃剣を腰の辺りに構え直しつつ、一気に泥濘を蹴り上げながら加速する。
省18
43: [sage saga] 2022/07/28(木)09:22 ID:0JzxcGwH0(1/2) AAS
更新おつです
44: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/07/28(木)12:21 ID:niQA8Wtx0(1) AAS
Danger Close。元はアメリカ軍等で使われる、前線友軍の至近距離───具体的な距離を示すなら600m以内に存在する目標に対しての砲撃・爆撃要請を意味した無線符号の一つだ。

至近距離どころか敵艦隊の真っ只中に斬り込んでいる状態なので本来の用途としても特に問題はない。ただ俺達東欧連合軍内においては、近隣深海棲艦に対する最大火力の投射、それに伴う目標艦隊群の完全な殲滅・掃討も内容として加えられている。

要は「トドメを刺せ、皆殺しにしろ作戦」発動を告げる合図だ。虎の子中の虎の子であるドレスデンの直属基地航空隊と空軍機も投入するため、符号の通達と敵旗艦の轟沈或いは離脱を示す紫の発煙筒の着火が両方揃わなければ発動されない。

(#=゚ω゚)《MLRS、自走砲、全車射撃準備よし!ドレスデンよりB-25全機、ミュンヘンより3個編隊のA-10が離陸。何れも戦闘域突入まであと40秒だよぅ!》

ξ;゚听)ξ《戦車隊、艦娘部隊、迫撃砲隊による全面制圧射撃も同時に敢行する!ドク、急いで!!》
省13
45: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/07/28(木)12:25 ID:t1+8sTKW0(1/2) AAS
ただA-10がドイツ軍で本格的に配備運用されだした頃には、北欧を蹂躙し尽くした【Black Bird】の活動範囲が欧州全域に広がっていた。
対深海棲艦兵器として非常に貴重な存在ではあっても、制空権を喪失しては運用自体ができない。

ドイツに凱旋した“空の魔王”は、ろくに交戦する機会もなく役立たずの穀潰しへと転落した。

『ゥオオオオォ…………』

《Admiral、イ級の轟沈を確認したわ。既に中大破していたみたいね》

『ッガァッ!?』
省15
46: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/07/28(木)12:28 ID:t1+8sTKW0(2/2) AAS
第4世代戦闘機の、音速域へ易易と到達する高性能高出力エンジンが奏でるそれとは似ても似つかない代物。豚が鼻を鳴らしている様子を想起させる、ゼネラル・エレクトリカルTF34特有の低く無骨なそれが、幾つも重なって俺たちの方に向かってくる。

《Enemy Freet, Engage》

《All unit, Weapon-Free.

Danger-Close. I repeat Danger-Close Fire mission》

〈エンゲージ!! オールユニット、スタンバイ!!〉
省14
47: [sage saga] 2022/07/28(木)20:57 ID:0JzxcGwH0(2/2) AAS
投下おつです
ドクオよくこんな戦術で生き残ってるなぁ脳筋じみてるw
48: 2022/07/31(日)20:20 ID:xZ+2pC6j0(1) AAS
更新乙です!
なかなかのゴリ押しっぷりだけど、近接肉弾戦をこれだけやり抜いて主要メンバーが健在で現役って、実践例のいる日本&海軍以外が見たらひっくり返りそうww
49: [sage saga] 2022/09/20(火)09:35 ID:ZkCZdzAC0(1) AAS
更新待ってます
ガルパン勢が心配です
彼女ら普通の女子高生だし
50: ◆vVnRDWXUNzh3 [saga] 2022/09/20(火)19:40 ID:CoVkH/xM0(1/8) AAS
.

フランス陸軍大尉、ツン=デレ。

大隊における機甲戦力指揮を一手に担うこの才女様は、“女の勘”についても非常に秀でたものを持っている。
特に奴さんが俺を探し当てる時の精度ときたらAC-130による対地砲撃もかくやのものがあり、未だかつて逃げおおせられた試しがない。

今日も、そうだ。ドイツ入りしてからまだ2ヶ月も経っておらず、この大隊の作戦行動も戦力が取り分け薄い中央戦線から西がメインとなる。チェコやポーランドと容易に連携が取れる東部に関しては、今回を含めまだ数えるほどしか派遣されていない。

だからリーザ近郊の土地勘なんざ持っているはずはないのだが、この才女様と来たら憤怒の表情を浮かべて眼の前で腰に手を当てて仁王立ちしてやがる。
省9
51: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/20(火)19:42 ID:CoVkH/xM0(2/8) AAS
まぁ実際のところ、司令部の言い分にも理はある。

ただでさえ今のドイツ軍は兵力が不足している。義勇兵の体こそっちゃいるが事実上の学徒出陣にまで手を染める有様で、それでも“ベルリン”の痛手を埋め合わせるにはまるで足りてない。
そんな中で銃剣突撃からの白兵戦なんて真似、上からは───舌を噛み切りたくなるほどクソッタレな表現だが、“人的資源”を無駄に危険に晒しているようにしか見えないのだろう。

また、実際に“戦果”が上がっていることも軍司令部からすると実のところ手放しでは喜べない。ソレが大々的に一般に漏れた際、要請に書いてあるような致命的な“勘違い”を誘発しかねないからな。

俺たちがあの戦術を実行できるのは、ベルリンという特級の地獄を生き延び、その後遺症で頭のネジが飛んだ連中がこの部隊に集中しているからに過ぎない。
生ける軍艦による針鼠のような砲弾幕の中を生身で突っ切って対象に銃剣突き立てるなんて真似、自分で言うのも何だが“正気”でできることじゃない。練度が高くても、寧ろ練度が高い兵士・部隊ほど、超火力の化け物集団に突撃なんて愚の骨頂は避ける。

安易に“練度が高い正気の部隊”が実行すればどうなるかは、パリの朝露と消えたフランス陸軍がいい例だ。
省7
52: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/20(火)19:45 ID:CoVkH/xM0(3/8) AAS
そんなミーム汚染を含んだSCPオブジェクトみたいな扱いの戦法、俺だって好き好んでやりたくはないしやっているわけでもない。

だが、この部隊においてはこれが現状最も有効な戦術であり、結果的に最も戦闘中の生存率が高い戦術でもある。ならば明確な戦術面での欠陥から待ったがかかるかより有効な戦術が編み出されない限りは、俺たちは“コレ”に頼りざるを得ない。

代替戦術があるなら寧ろ今すぐ教えて欲しいね。それを考えるために俺の睡眠時間を削らなくてよくなるなら喜んで採用するさ。

('A`)「何度も話し合った筈だ、今のところ連中の南下を押し留めるためには他に手はないって。俺たち二人だけじゃない、ミルナ大尉やイヨウ少将も交えた上でな」

ξ#゚听)ξ「……ハッ、大層殊勝な、提督閣下らしい心構えですこと!私との約束より勝利を優先するんだからね!
省15
53: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/20(火)19:48 ID:CoVkH/xM0(4/8) AAS
('A`)「……………できれば後にしてもらえると助かるな、ナカスガ軍曹」

「まぁそう言わないでよ、すぐに要件は終わるからさ」

一応はお伺いの体だったので一縷の望みに賭けて断りを入れては見たが、案の定ただの建前だったらしい。眼前の赤毛の少女────義勇“志願”戦車兵にして現東欧連合陸軍軍曹・エミ=ナカスガは、直ぐに直立不動の姿勢を崩してあっけらかんと言ってきやがる。

応じて、自分の表情も著しく苦くなっていくのが解る。

別にコイツの態度が不快ってわけじゃない。俺自身が敬語や“目上への礼”ってモンを頗る苦手とする人種であるが故に、直ぐにナカスガが同類であることは察しが着いた。
加えてヤパーヌ暮らしが長かったという弊害か所々ドイツ語に怪しさが漂っていた為、致命的に礼を失さない範囲でのタメ口やラフな素行を許可し、俺自身が隊内でもそれを共有させている。仮に気に触ったならそりゃ理不尽ってもんだ。
省13
54: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/20(火)19:49 ID:CoVkH/xM0(5/8) AAS
………これはあまり大っぴらに言える話じゃないが、ナカスガがこの部隊に配属されてから何度か、俺はコイツの強制退役をイヨウ少将を通じて司令部に打診している。

自分の意志だと本人は宣うが、他の選択肢を叩き潰された事実上の一本道を「選択」とは言わない。

況してやナカスガは乗艦していた学園艦の戦車道選手として相当な有望株の一人だったと聞く。
偽善と言われようがエゴイズムと言われようが、俺たち軍人の、大人の情けなさが招いた事態の尻拭いにもっとマシな“道”が幾らでもあった子供を付き合わせるのは我慢がならなかった。

('A`)(全部即日突っ返されたけどなクソが!)

義勇志願兵出身者はその意志を尊重し、著しく質に欠けるか何らかの取り分け重大な軍規違反が起きない限り本人の意思表示に伴う退役のみを認める……というのが、強制退役棄却の際に決まって添えられてくるコメントだ。
多分、せめて学徒兵連中だけでも銃後に戻そうとするやつが俺以外にもそれなりの数がいるんだろうな。それも、いちいち承諾してたらなんとか確保した「数合わせ」が無に帰しかねない程度には。
省12
55: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/20(火)19:52 ID:CoVkH/xM0(6/8) AAS
('A`)「……………考えては、いるさ」

「!!! じゃあ」

('A`)「ああ見えて仲間思いだからな、そりゃあ俺の戦術に我慢がならないのは解る。なんとかもっと有効な戦術を構築できればとは、ずっと思ってるよ」

「………………………………………………………」

一瞬喜色を浮かべたように見えたナカスガの表情が、みるみるうちに侮蔑と落胆、憐憫によって曇っていく。
省12
56: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/20(火)19:55 ID:CoVkH/xM0(7/8) AAS
「し、詳細である必要はないのよ。例えば、今どれぐらい戦線を押し返したかとか、どの町は無事とか、大洗女子学園が奪還されたかとか、それぐらいで……」

('A`)「提督っつっても対象階級の中では一番下の現場士官だからな。悪いが、軍上層部からその辺りが俺まで降りてくることは滅多にねぇさ」

言いながら胸ポケットのマールヴォロに手が伸びかけるが、眼前の人物の存在を思い出して辛うじて堪える。

青少年少女の健全な発育を思い自身の嗜好を我慢する、大人の鑑だね我ながら。教育省からの表彰状はまだだろうか。

('A`)「まぁ、あのぶっちぎりの艦娘大国がおいそれと押し込まれるとは思えんし、世界中が修羅場とはいえ中国やロシアの件も日本自体も周辺国も無反応とは考えづらい。
省14
57: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/20(火)19:59 ID:CoVkH/xM0(8/8) AAS
ようやくポケットからの脱出に成功したマールヴォロを一本手に取り、火を付ける。万感の思いを込めて深く深く吸い込むと、寿命を削る紫煙が肺を我が物顔で満たす。 

(;'A`)「ゲホッ!!」

がっつきすぎた報いで咳き込む。形を乱した煙がボワッと口から湧き出て、風に吹かれて散っていく。

('A`)(……………戦況、ねぇ)

本題とはズレていたしやはり伝える義務はなかったので話していないが、“他戦線の状況”自体は既に俺の元にも次々と入ってきている。
省13
58: [sage saga] 2022/09/21(水)12:32 ID:fWk1SJ5b0(1) AAS
更新おつです
ツン隊長デレデレですし
ドクオの毒男体質も女子高生に心配されるレベル
久々の穏やかな時間でしたね
59: ◆vVnRDWXUNzh3 [saga] 2022/09/23(金)23:23 ID:8rRfKGN10(1/5) AAS
.

ぐるぐるぐる。

まるで回転している巨大な独楽の中心から見ているかのように、綾波の視界は回り続けています。

艤装の加護で殺しきれない遠心力、艦娘の身体能力でも抑えきれないGの圧力が、軋むような痛みに変換されて身体中を蝕みます。すぐ隣りにいた浜風さんや他の皆さんの様子を伺う余裕はありませんが、誰一人まともに動けている気配がないのできっと同じような状況なのでしょう。

《───べ!飛べ!!飛べぇええええ!!!》
省10
60: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/23(金)23:25 ID:8rRfKGN10(2/5) AAS
ただ、そのことに感心し喜んではいられません。何せここは、戦場のど真ん中なんですから。

ともすれば朦朧となる意識を奮い起こし顔をあげると、揺れる視界の中で水飛沫が次々と上がりました。数は5つ、搭乗していた僚艦の皆さんと同じ数であることを踏まえると、どうやら全員無事に降りることができたようです。

「あぁ………」

ですが、綾波達を【ロナルド・レーガン】からここまで運んできてくれた機体───CH-47【チヌーク】はそうはいきませんでした。
後部から激しく炎を吹き出していたチヌークはそれでも辛うじて飛行を続けていましたが、綾波達がなんとか着水したのを見届けると最後の力を振り絞るようにして機体姿勢を横に向けながら一際高く上昇します。

次の瞬間、その横腹に高角砲弾が突き刺さり、30mを超える巨躯は炎を纏いながらバラバラに引き裂かれてしまいました。
省15
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