教えて! アルクェイド先生 (33レス)
上下前次1-新
1: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:03 ID:FpkFq5Eu0(1/32) AAS
注意事項
・リメイク前の旧作(アルクGoodEnd + シエル先輩残留)を基準に書いています
ただし話の本筋には関係ない小ネタでリメイクのネタが出てきます
・リメイク版のみプレイした人でも大丈夫な内容(コメディ)になっています
・資料を確認しながら書きましたが、新旧月姫の知識がごちゃ混ぜになっている状態です
間違い等がありましたら申し訳ありません
「シエル。あなたはなぜ学校に通っているの?」
省15
14: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:14 ID:FpkFq5Eu0(14/32) AAS
いったい誰に何を言われたのか。
うつむき加減で不敵に笑い始める。
というか二人の知り合いが教会にいたとか今初めて知った。
「今のところ埋葬機関としての仕事はありませんし、期せずしてあなたと奇妙な友好関係を築けたわたしが監視役として最適なのだから黙ってろとは言ってるんですがね。
別にあなたの肩をもつわけではありませんが、わたし以外の教会の人間が監視していたらあなたも嫌でしょう?」
「ん〜、マーリオゥなら我慢してあげなくもないけど、メレムは付きまとってきてうっとおしいし、それ以外は問答無用で潰すかな?」
……なんだろう。
今初めて存在を知ったしどういう奴なのか知らないけど、今俺はそのメレムさんをすごく不憫《ふびん》に感じている。
何だか二人からの扱いが何というか――――――雑でした。
「つまりシエルってばお仲間に嫌味を言われながら、それなりに忙しい中で時間を割きながら学校に通っているわけよね?」
省11
15: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:14 ID:FpkFq5Eu0(15/32) AAS
「学校は確かに楽しいものですが……楽しいから通っているかというと、少し違いますね」
そんな俺も知りたかったけど知るのが怖い問いかけに、先輩は穏やかな表情で答えた。
「私が学校に通っているのは……憧れ……心残り……そういったものです」
在りし日の事を――まばゆい光のように思い返しながら、そう口にする。
「あなたには共感しづらいとは思いますが、わたしたち人間は子どもの頃は、数歳年上の相手が大人びて見えて憧れるんです。
小学生の時は中学生が大人っぽくて素敵に見えて――ああ、わたしもいつかは中学生になるんだ。あんな風に素敵なお姉さんになれるかな、なりたいなあ。中学校では何をするんだろう? わたしはこんな事をしてみたいなあ……と」
省18
16: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:16 ID:FpkFq5Eu0(16/32) AAS
「――――――――――」
沈黙が流れる。
言いたい事があった。
話しかけたい事があった。
しかし――今俺が口にしてはならない。
だって先輩がこうして胸の内を明かしたのは、アルクェイドに対してだ。
そこに居合わせただけの俺が、今の先輩に語りかける権利は無い。
それができるのは、許されるのは、しなければならないのは、ただ一人のみ。
省7
17: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:16 ID:FpkFq5Eu0(17/32) AAS
辛い過去――などという生ぬるい表現では済まない事をまざまざと思い返しながら、先輩は今の自分の生き方を語ってくれた。
それもこれまで幾度となく争ってきた自分に、何の打算も無く、一人の友人として。
これに謝るのは間違っている。
先輩はそんなつもりで胸の内を明かしたわけではない。
アルクェイドを糾弾するためではなく、アルクェイドの悩みと疑問に応えるためなのだから。
もちろんアルクェイドは申し訳ないと思っただろう。
けど先輩の心境をくみ取ったあいつは、決して謝罪の言葉を口にしてはいけないと理解し――――“ありがとう”という一言に万感の思いを込めた。
「……いいですよ。先に胸の内を明かさせたのはわたしの方なんですから」
先輩はアルクェイドの感謝の言葉に、静かに――でも本当に嬉しそうなほほ笑みを浮かべる。
省6
18: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:18 ID:FpkFq5Eu0(18/32) AAS
※ ※ ※
「はじめまして、アシスタントティーチャーのアル美です!
みんな、今日はわたしのためにありがとーう!」
なんであの流れからこうなるんだ、このばか女ああああぁぁっ!!
ざわめく教室、血の気が引く酩酊《めいてい》感。
教壇から放たれるあっけらかんとした破壊光線《あいさつ》。
奴の顔には一度は危険物として没収したはずの丸眼鏡がかけられ、メガネ属性まで付加されている。
間違いない。
魔眼の力でなんやかんや有耶無耶《うやむや》にした特別講師・アル美先生まさかの再来か――――ッ!
省17
19: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:19 ID:FpkFq5Eu0(19/32) AAS
「ぐお……っ」
「遠野くん……!?」
あまりの絶望に頭を抱える勢いが止まらず、机に額を叩きつけるように突っ伏してしまう。
クラス中が喧噪に包まれているおかげで目立たなかったが、この異様な雰囲気に吞まれていなかったのが弓塚が驚いて振り返る。
それに手を軽く振って大丈夫だと応えながら、有彦が朝からサボっていることを神に感謝いややっぱしねーわ、こんな事態を引き起こしやがって。
今なら心の底から神に呪われたと、ガッデムと叫べるぞ俺は。
「わたしはあくまでアシスタント役なんだけど、英語の先生は今日はお休みだから代わりに進めちゃいま〜す♪」
ま〜すじゃねえよ。
おまえアシスタントティーチャーなんだろ。アシスタントを止めてメインになろうとすんなお願いだから。
省16
20: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:19 ID:FpkFq5Eu0(20/32) AAS
「し、質問です! アル美先生はおいくつなんでしょうか!」
「好きなブランドは何ですか!」
「誕生日はいつでしょうか!」
「彼氏は!? 彼氏募集中ですか!?」
「どんなタイプが好みですか!?」
省22
21: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:20 ID:FpkFq5Eu0(21/32) AAS
……大丈夫だよな。
俺とアルクェイドが知り合いだって気づかれていないよな?
「それで好みのタイプだけど、ふふ」
おいバカ止めろ。
止めろって言っている俺のアイコンタクトが届かないのか?
アイコンタクトが届かなくても、打つ手が無くて頭を抱えている俺のジェスチャーは見えているよな?
全人類、全世界に通じる共通言語《ボディランゲージ》だぞ。
「わたしの彼氏ったら、わたしが大切なあまり小言が多くってね。
酷い時はわたしの事をばか女って言うんだよ」
『ええええぇぇ!?』
省14
22: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:21 ID:FpkFq5Eu0(22/32) AAS
あれ? 弓塚まで地獄に落ちたような表情だ。
何で前の席に座っている弓塚の表情がわかるかというと、さっきからテンポが早いメトロノームにように教壇に立つアルクェイドと俺を交互に見ているからだ。
首をあまりに酷使しているせいか顔が真っ青だけど、大丈夫なんだろうか?
「えへへ。まだまだ語りたい事はいっぱいあるけど、これ以上は怒られちゃうからそろそろ授業を始めます」
ああ、そうか。
これ以上は俺に怒られると思ったか。
もうとっくにそのラインを越えちまってるんだよオマエ。
今なら秋葉の気持ちがわかるよ。
辛抱と困惑が頂点を過ぎると、少し愉快な気持ちになってくるってやつ。
俺の口から乾いた笑いが漏れてくるのもきっとそれなんだろう。
省5
23: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:22 ID:FpkFq5Eu0(23/32) AAS
※ ※ ※
「はい。それじゃあ87ページ二段落目からの英文を――」
誰に当てようかと教室をアルクェイドが見渡すと――
「はい!」
「先生! 俺が読みます!」
省17
24: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:22 ID:FpkFq5Eu0(24/32) AAS
早押しクイズのように今か今かと手を挙げようとしていた男子たちを制止すると、アルクェイドは座席表を手に取る。
「先生が授業をするうえでやりたかった事の一つにね、これがあるんだ。
今日は〇×日だから、出席番号〇×番!」
「オイッス!」
「ん? 鈴木誠也くんはさっき当てたか。じゃあ無しで」
「なん……だと……?」
省16
25: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:23 ID:FpkFq5Eu0(25/32) AAS
「ねえねえ、そこの貴方。名前は大野……絆琉《はんる》で合ってる?」
「アル美先生。わたしの名前は絆琉《ほたる》って読んでしまうんです」
「ご、ごめんなさい絆琉ちゃん。間違えちゃって」
「ふふ。いいんです、読めるわけがありませんから」
「?」
省14
26: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:24 ID:FpkFq5Eu0(26/32) AAS
ヤケになったアイツは唐突に俺を名指しした。
待て待て、おまえ生徒はフルネーム呼びで“くん”か“ちゃん”を付けていたよな?
なんで急に下の名前だけで呼び捨てにしてんだ!
「あっはっは。アル美先生が日本人の名前にキレた」
「良かったな遠野。わかりやすい名前で」
大丈夫か……?
よし、俺が下の名前で呼び捨てにされたのは、アル美先生がキラキラネームに憤慨したからだと受け取められている。
誰も疑ってないぞ!
ん、弓塚がカタカタと体を震わせているけど風邪かな?
「ほら、志貴。
省6
27: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:25 ID:FpkFq5Eu0(27/32) AAS
※ ※ ※
「――という事があったんですよ」
「それはそれは……ご愁傷さまでした」
「いや〜、授業が思っていた以上に楽しくってテンションがつい上がっちゃって」
昼休みの茶道室での事。
俺の説明を聞き頬を引きつらせている先輩の横で、自分が何をしでかしたか自覚が足りないアシスタントティーチャーがいる。
省19
28: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:26 ID:FpkFq5Eu0(28/32) AAS
「……まあいいとして、何でエチオピアなんだよ」
「国籍なんてどこでもいいでしょ? 最初はパキスタンにしようかと思ったけど、シエルってば国籍をインドにしてなかったから。
それで昨日志貴が食べてたドロワットを思い出してエチオピアにしたの」
ゲームでのプレイングキャラクターの所属をどこにするか、ぐらいの気軽さで答えるアルクェイド。
「アルクェイド、あのですねぇ。
魔眼や暗示を使って潜入する場合は、なるべく相手に違和感を覚えさせないのがセオリーでしょう。
エチオピアって貴女、不穏な情勢の国からの留学生というだけで目立ちますし、あそこの民族構成で貴女のような容姿はいません」
「うん、なんだかそうらしいね。
でも日本にだって両親が帰化して日本で生まれた別民族だっているでしょ」
省17
29: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:26 ID:FpkFq5Eu0(29/32) AAS
何となく……昨日のメシアンでの会話が関係あるんだと考えてたけど……そっか……カレーの方だったか。
あまりに突飛な返答に、頭が追いつかずに処理落ちしてしまっている。
ここは一つ落ち着くために深呼吸でもしよう。
「すうううううううううううぅぅ」
「ん〜?」
深く、深く、深く。
息を吐く事を忘れてしまったように息を吸い続ける。
そんな俺に吸い寄せられたのか、不思議そうに首をかしげながらアルクェイドが俺に顔を寄せる。
省20
30: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:27 ID:FpkFq5Eu0(30/32) AAS
「わたしね、志貴と一緒にいるのがすごく好きなの。
でも志貴が人生で一番多く過ごしている学校という場所を良く知らない。
そこでの志貴をもっと知りたいと思ったの」
「――――――――――」
どうしよう。
こそばゆくて恥ずかしいけど、それ以上に嬉しい。
ずるいぞコイツ。
これじゃ怒るに怒れない。
「あ、ついでにシエルもね。
ふふ、わたしに悪目立ちするなって言っておいて、けっこうな評判じゃない貴方」
省8
31: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:28 ID:FpkFq5Eu0(31/32) AAS
「前々から気になっていた学校という場所を、人がたくさんいる普段の状態でもっと見たかったのもある。
今日一日は新鮮な事ばかりで、たくさん笑って、困って、考えさせられた。
大勢の人に自分の考えを伝えるにはどうすればいいかなんて、ここに来なければ考える事は無かったと思う」
アルクェイドは楽しそうに――――幸せそうに笑う。
以前のこいつなら不要だと切り捨てていた無駄を、触れれば壊してしまうんじゃないかと不安に想いながらも、慈しむように愛しむように優しく語る。
「わたしは今、二人が普段過ごす学校という場所の一部になっているんだって感じられて――――人の営みの一部を、少しだけ理解できたように思える」
「――ああ。
理解してもらえたと感じられて、俺も嬉しいよ」
その柔らかな語りに眩しいものを感じて、自然と俺も優しく返事をした。
気づけばついさっきまで言い争っていた先輩も、目を細めてほほ笑んでいる。
省8
32: ◆SbXzuGhlwpak 2021/09/27(月)19:29 ID:FpkFq5Eu0(32/32) AAS
最後まで読んでいただきありがとうございました。
旧月姫ではアルクェイドとネロ教授が特に好きでした。
リメイク版ではアルクェイド、シエル先輩、秋葉さまが好きです。
また月姫のSSを書く機会があれば、お兄ちゃんと仲が良さそうにしている金髪の女に脳破壊される都古ちゃんを書くかもしれません。
次はデレステでちゃんみお・まゆ限定奉納SSを書く予定なんですが――
2021. 9.30 MELTY BLOOD: TYPE LUMINA
省10
33: 2021/09/28(火)00:42 ID:cD62eDrto(1) AAS
乙
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