結標「私は結標淡希。記憶喪失です」 (841レス)
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822: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:47 ID:7SptLiMdo(28/43) AAS
結標「ねえ」

一方通行「あン?」

結標「聞きたいことがあるんだけど」

一方通行「何だ?」
省38
823: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:48 ID:7SptLiMdo(29/43) AAS
一方通行「オマエに言われて気付いた。約束だとか、自己満足だとか、罪滅ぼしだとか、そンなモンただの建前だった。オマエを助けたかった理由はもっとシンプルだったンだ」

 真紅の瞳が結標淡希を見つめる。決して目を逸らすことなく、ただ一心に。
 そして、一方通行は言う。

一方通行「結標淡希。俺はオマエが好きだ」

 告げた。一言一句ハッキリと。目の前の少女に伝わるように。
 
省27
824: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:48 ID:7SptLiMdo(30/43) AAS
結標「一つだけ言わせて」

 結標は顔を下げたまま話し始める。
 

結標「たしかに私は貴方のことが嫌いよ。世界で一番って言っていいくらいに、視界に一切入れたくないくらいに、身体が震えるほどの恐怖を覚えるくらい」

結標「けどね、その気持ちとせめぎ合っているもう一つの感情が、私の中にはあるの。それはさっきのとはまったくの真逆な感情」
省37
825: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:49 ID:7SptLiMdo(31/43) AAS
一方通行「…………」

 一方通行は何も言わない。
 彼もわかっているのだろう。その意味を。
 わかっていても自分では答えられないのだろう。
 だから、結標は代わりに言う。
 

結標「私ね、思うのよ。たぶん、これはどちらかが偽物だとかそういう話じゃない。どちらも本物なのよ。紛れもない私が抱いている気持ちなのよ」

結標「けど、こんな相反するものがいつまでも共存できるわけじゃない。いつかはどちらかを決めないといけないときがきっと来る」
省24
826: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:50 ID:7SptLiMdo(32/43) AAS
 超能力者(レベル5)第五位の少女、食蜂操祈は一方通行たちが入院している病院の屋上にいた。
 欄干に肘を乗せ、落下防止用の高柵越しに、対角線上の位置にある一室、結標淡希がいる病室の中を眺めている。
 視力2.0あっても部屋の中を詳細に見ることは難しい距離だったが、彼女にとっては関係ないことだった。

 食蜂は今、精神掌握(メンタルアウト)のチカラを使って結標淡希の頭の中を覗いていた。
 彼女が感じている五感や深層心理、彼女の中にある記憶などを全てリアルタイムで抜き取り、食蜂の中へとインプットされている。
 もちろん、結標淡希本人はそんなことをされているとは知りもしない。
 精神モニタリングしながら、食蜂は呟く。

食蜂「……未だに、信じられないわよねぇ」

 
省31
827: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:50 ID:7SptLiMdo(33/43) AAS
 我ながらいい加減な発言だな、と食蜂は笑う。『心』などと言う少年と大差ない。
 奇跡とは起きないから奇跡という。万が一どころか億が一の確率でも起きない事象なのだと食蜂は考えている。
 たった数百しかないサンプルでそうやって決めつけるなんて、奇跡なんてそこらに転がっていると言っているようなものだ。
 奇跡を馬鹿にしている。奇跡を軽く見ている。奇跡という言葉を安売りし過ぎている。
 しかし、自分が理解のできない現象を目の前にした食蜂は、おかしいと感じていてもそうじゃないかと思うしかなかった。

 この現象を『奇跡』と称するなら、それを引き起こしたのは一方通行という少年で間違いないだろう。
 一方通行は結標淡希の記憶が戻った場合、彼女が自分へ敵意を向けてくることはわかっていた。わかっていながら彼は進むことを止めなかった。
 彼は本気だった。真剣に結標淡希を救おうとしていた。自分の持ち得るモノを全て使い、どんな手段を用いようとも、ただただ一直線に。
 そんな彼だったから『奇跡』を勝ち取ることができたのだろう。
省20
828: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:51 ID:7SptLiMdo(34/43) AAS
一方通行「しかし、オマエ本当にイイのかよ?」

結標「なにが?」

 病室にある丸椅子へ腰掛けた一方通行が、隣に置いてある台に頬杖を突きながら結標へ聞く。
 

一方通行「俺と一緒にいるってことは、今までオマエが過ごしてきた環境を全てかなぐり捨てるっつゥことだぞ?」
省36
829: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:52 ID:7SptLiMdo(35/43) AAS
一方通行「何かおかしいこと言ったかよ?」

結標「甘いわよ一方通行。大方、私が貴方のことを好きとか言ってしまったから両想いだと勘違いしてしまったんだろうけど、私は同じくらい貴方が嫌いとも言ったわよね?」

一方通行「そォいやそォだな」

結標「つまり好き一〇〇パー嫌い一〇〇パーでプラマイゼロ。そんな状態で恋人を名乗るなんておこがましいとは思わなかったのかしら?」
省30
830: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:53 ID:7SptLiMdo(36/43) AAS
 ざわざわと病室の外の廊下から騒がしい声が聞こえてきた。
 その声の数は二人三人とかじゃなく一〇人近い数はいる。
 男の声や女の声。大人の声や子供の声。
 様々な声色の集団が徐々にこの病室へと近づいてきて、ドアの前へでそれが止まった。
 
 ガラララッ! と勢いよくドアが開かれた。

打ち止め「来たよーアワキお姉ちゃーん!! ってミサカはミサカは行きつけの飲み屋に入る常連さんみたいに入室してみたり!」

 同居人である打ち止めが勢いよく部屋に入ってきた。
 
省28
831: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:55 ID:7SptLiMdo(37/43) AAS
 一方通行たちが入院している病院の遥か上空。
 何もないはずの空中に足を付けて立っている少女がいた。
 風斬氷華。彼女の体には弾けるような音と共に白い電気のようなモノが小さく走っている。
 何らかのチカラを使い、その場に留まっているのだろう。
 
 風斬はあるモノを見ていた。
 それは苦難の状況から脱却し、日常へと戻っていった少年少女たち。
 あの場に自分も行って喜びを分かち合いたいが、自分が行くのは場違いだろうと思い、こうやって静観している。
 微笑んでいる少女の後ろから、何者かが話しかける。
省42
832: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:55 ID:7SptLiMdo(38/43) AAS
 
 一方通行と結標淡希はファミリーサイドの二号棟のエントランスにいた。
 あれから一日経ち、二人は自宅療養ということで退院となった。
 退院時間は午後の三時だったが、いろいろあって出るのが遅れ、ここに辿り着いたのが午後五時過ぎとなっていた。
 
 一方通行がカードキーをエントランスにあるパネルへかざす。
 ピーガチャン、という音と共にロックが解除される。
 家は一三階の部屋のため、二人はエレベーター前へと向かって歩いていく。
 結標がキョロキョロと周りを見回しながら言う。
省27
833: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:56 ID:7SptLiMdo(39/43) AAS
結標「……なるほどね。大方、私たちの退院パーティーでも開いてくれるのかしら?」

一方通行「そォいうこった。面倒臭せェ」

結標「あの子そういうの好きそうだものね。えっと、打ち止め、だっけ?」

一方通行「アホ面ぶら下げて玄関前で待機してンのが目に浮かぶ」
省25
834: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:57 ID:7SptLiMdo(40/43) AAS
 
一方通行「何言ってンだこのクソアマはァ!? ンなわけねェだろォが!」

結標「ひっ、い、いや、だって言った瞬間、目逸らしてたし」

一方通行「逸らしてねェよ!」

結標「そ、そんなムキになってるところからして、よっぽど恥ずかしかったのね!」

一方通行「もォ一回顔面ブン殴って記憶飛ばしてやろォか?」
省27
835: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:57 ID:7SptLiMdo(41/43) AAS
 私は結標淡希。九月一四日以降の約半年間の記憶がない、記憶喪失です。

 この半年間『私』がどう過ごし、何を思っていたのかなんて私はわからない。
 そんな未知の世界へ『私』の代わりに飛び込んでいくと私は決めた。
 不安がないわけじゃない。けど、不思議と怖さはなかった。
 それはこうだという明確な理由があるわけじゃない。
 だけど、私は思う。

 「『私』が好きになれた世界なのだから、私も好きになれるはずだ」。

 そんな至極単純なことを思って私はここに居るのだろう。きっと。
省1
836: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:58 ID:7SptLiMdo(42/43) AAS
結標「私は結標淡希。記憶喪失です」 完
837: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)19:00 ID:7SptLiMdo(43/43) AAS
というわけで終わり
もうおらんやろけどここまで読んだ人がおったらおつかれした

伏線回収のための蛇足編のはずなのに全回収どころか逆に増えてるような気がするのは気のせい
ぶん投げENDってことでこんなしょうもないSSのことなんてもう忘れろ

長々語ったけど最後に心残りが一つ
>>345>>346を逆に投下してしまったのがほんま糞ムーブ
838: 2022/01/28(金)22:24 ID:bbKW2wlIo(1) AAS
お疲れ様でした、懐かしいssがまた見れて大満足です。
また禁書ss書いてくれること祈ってます
839: 2022/03/24(木)13:20 ID:TVWxG2Hf0(1) AAS
何となく気になって見返してたけど、続きが更新されてたなんて思いもしませんでした。
また続きが読みたいです
840: 2022/03/24(木)20:35 ID:DbHM2PgY0(1) AAS
死体蹴りとは陰湿だなぁ……
841: 2022/05/06(金)18:07 ID:rYV+b3N9O携(1) AAS
SS避難所
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