結標「私は結標淡希。記憶喪失です」 (841レス)
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抽出解除 必死チェッカー(簡易版) レス栞 あぼーん

688: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:16 ID:31eSI50lo(1/31) AAS
あけましておめでとうございます
元旦からSSなんて投下してなにやってんだよこいつ

投下
689: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:17 ID:31eSI50lo(2/31) AAS
S8.AM04:00

 明け方の学園都市。まだ日の光が欠片も見えない夜と変わらない空。
 第一〇学区の街中を歩く一人の少女がいた。
 時間が時間のため遅くまで夜遊びをしたあとの帰り道のように見える。
 しかし、その少女の姿はとてもそんなことをするようには見えなかった。

 長い茶髪のストレートヘアだが一束だけゴムで束ねて横に垂らしている。
 大きな眼鏡を掛けていて、着ている制服はスカートの長さが膝下までで、服装検査を受けても百人が百人合格と言うくらいきっちり着こなしていた。
 一言で言うなら地味だけど真面目そうな少女。とても夜遊びなどするようには見えない。

 そんな少女はまっすぐ目を据えたまま淡々と歩道を歩いていく。
省12
690: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:18 ID:31eSI50lo(3/31) AAS
 結標淡希はビルの屋上に立ち、ある建物を眺めていた。
 それは第一〇学区にある学園都市唯一の少年院。

結標「あそこに……みんなが……」

 結標淡希のかつての仲間たちの居場所。この少年院の遥か地下にある反逆者用の独房の中。
 『残骸(レムナント)』を強奪するという学園都市に対する謀反の罪により、無期限で監禁されている。
 それが九月中旬の出来事だから、あれから半年以上の時間が経っていた。
 つまり、彼女の仲間たちはそれだけの長い時間あの中で過ごしたことになる。

 だからこそ早く助けねば、と結標は建物の様子をうかがう。
 周りは一五メートルの壁に囲まれており、その上から覆いかぶさるようにたくさんのワイヤーのようなものが張り巡らされている。
省18
691: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:20 ID:31eSI50lo(4/31) AAS
 結標淡希は二つの情報を手に入れていた。
 一つはかつての『仲間』たちの居場所。それを知ることができたから今ここに立っている。
 そしてもう一つは、少年院のセキュリティーについての情報だ。
 本日、午前四時にAIMジャマーをメンテナンスするために、一五分間だけ一斉に停止させるというもの。
 つまり、少年院内で使用がほぼ不可能だったチカラが満足に発揮ができるということ。
 とは言っても、受刑者たちは何かしらの能力の使用を妨害する措置を施されているため、このタイミングで能力を使って脱獄などとはできないわけだが。
 だがそれは、外から侵入する結標にとっては関係ないことだ。ただの侵入するチャンスでしかない。

 少年院側も馬鹿ではない。こういう状況になったら、外から仲間を救出しようとする輩から攻撃を受けることを想定していないわけがない。
 いつもより多めの人数の警備兵が配置されており、装備も暴徒鎮圧用の銃火器はもちろん、駆動鎧を着た者も複数配置されているという堅牢な布陣となっている。
省32
692: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:22 ID:31eSI50lo(5/31) AAS
 結標が少年院へ侵入している同日同時。御坂美琴と打ち止めが宿泊している第七学区のホテル。
 時間が時間のため大半の宿泊客は眠りについている。それは少女二人も同じことだろう。
 だからホテルの廊下はほとんど人通りがなく、深夜勤務のホテルの従業員がたまに通るくらいか。

 そんなホテルの七階にある廊下。そこに異質な者たちが闊歩していた。いや、者と呼称するのは間違いか。
 それは四足歩行の犬型のロボットだった。大型犬くらいの大きさがあり、全身が銀色のメタルで包まれていて、目部分には バインダーのようなものが付いている。
 犬型ロボは全部で五体いた。それぞれが違う方向へ注意を向けながら、堂々と廊下の真ん中を進んでいく。

 御坂美琴は否定していたが、ここはいわゆる高級ホテルである。
 第三学区のランクの高いホテルに比べれば確かに下だろうが、紛れもなくここも高級と称して問題ないだろう。
 高級ホテルが高級ホテルとして言われる理由は何か。
省32
693: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:23 ID:31eSI50lo(6/31) AAS
 ドゴォン、という轟音が鳴り響き、とある高級ホテルの一室にある窓から爆風が巻き起こった。
 窓ガラスの破片や家具だったものが窓から下へと落下していく。
 ホテルの入り口前に待機していたガードマンと思われる男たちが慌てふためいている様子が見える。

 その様子をホテルから離れた歩道で眺めている中学生くらいの少女がいた。
 肩まで伸ばした茶髪。半袖のTシャツにショートパンツのルームウェアを着ていて、さっきまで部屋で寝ていたかのような格好だった。
 背中に小学生くらいの似たような容姿の少女を背負っていて、その少女は眠りについているのか瞳を閉じている。

 御坂美琴と打ち止め。
 先ほどまで爆破された部屋で眠っていたはずだった少女たちだ。

 美琴は煙を上げている部屋を遠目に呟く。
省19
694: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:25 ID:31eSI50lo(7/31) AAS
打ち止め「……あれ? どうしてミサカは外にいるの? ってミサカはミサカは辺りを見回しながら聞いてみる」

美琴「ごめんね。ちょっと不味い状況になっちゃったからホテルを出たのよ」

打ち止め「不味い状況? ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

美琴「アンタを狙う悪者たちが来やがったのよ」
省26
695: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:26 ID:31eSI50lo(8/31) AAS
上条「ここってどこなんだ?」

A子「どこって、ただの少年院よぉ?」

 三〇分ぐらい前にホテルを出発し、上条当麻とA子と名乗る黒髪少女は第一〇学区の少年院へ来ていた。
 二人は敷地内を歩いている。まるで庭の中を歩いているかのように進む少女の後ろを、少年が恐る恐る付いていくような感じに。

上条「こんなところに結標が来るのか?」
省29
696: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:28 ID:31eSI50lo(9/31) AAS
上条「――ってふざけんなっ!! 俺らは絶賛不法侵入中の二人組ってことになるじゃねえか!!」

A子「あらぁ? もしかして今さら気付いたワケぇ? そういうツッコミはここに入る前にしてくれないかしらぁ」

上条「言ってる場合か! もしこれがバレて捕まったりしてみろ! 俺らがこの中にブチ込まれることになるんだぞ!?」

A子「大丈夫よぉ。バレなきゃ犯罪じゃないっていう格言があるのをアナタは知らないのかしらぁ?」
省33
697: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:31 ID:31eSI50lo(10/31) AAS
上条「……は?」

 予想外の光景に上条は戸惑いの声が出た。
 てっきり、捕縛術みたいなのを使って少女を拘束するのだと思っていたのだからしょうがない。
 ひざまずいた男は見上げるように少女を見て、

警備兵B「オ待チシテオリマシタ。『食蜂』サマ」

 A子と名乗る少女を『食蜂』と呼称し、忠誠を誓った。
 まるで館の主人と召使いの関係のように。
 それを上条は唖然とした様子で見ていた。
 くるりと少女は回転して上条の方へと向く。
省27
698: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:32 ID:31eSI50lo(11/31) AAS
 五人組の先頭を歩いていた警備兵の声が差し込まれた。
 その声に上条はもちろん、黒髪少女も驚いた様子を見せる。

上条「なっ、どういうことだ!?」

A子「……なるほど、そういうコトねぇ」

 上条の質問をスルーして、少女は顎に手を当て何かを考えていた。
省30
699: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:36 ID:31eSI50lo(12/31) AAS
 少女が銃口を向けられていても取り乱すことのなかった理由が分かった気がした。
 要するに彼女は初めからこの展開になることがわかっていたのだ。というかそういうことなら教えろよ、と上条は横目で少女を睨んだ。
 A子と名乗る少女はそれを気にも止めず、

A子「まあでも、ちょっと厄介なことになってきてるわねぇ」

上条「厄介なこと?」

A子「ええ。私のチカラの制御下にいない人がいた。つまり、外部から別の組織が介入しているってコト」
省31
700: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:38 ID:31eSI50lo(13/31) AAS
結標「――警報? もしかして気付かれた?」

 不安を煽る警告音を背に、少年院の通路を走る結標の顔が強ばる。

結標(セキュリティーには引っかからないように動いたつもりだった。ということは気絶させたヤツが見つかって、って感じか……?)

 結標はここに来るまでに五人の警備兵と交戦していた。
 全員後頭部を殴打して気絶させたのだが、その気絶した体を特に隠すとかせずに放っておいてここまで来た。
 タイムロスを恐れて手間を省いたのが失敗だったか、と結標は舌打ちする。
省25
701: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:40 ID:31eSI50lo(14/31) AAS
結標「よかった……、本当によかった……」

 結標からすれば、彼ら彼女らと最後に会ったのは二日前とかそれくらいしか時は経ってはいない。
 しかし、なぜだか彼女の中には妙な懐かしさのようなものを感じて、目が潤んだ。

結標「ごめんね、半年も待たせちゃって。待ってて、今すぐここから助け出す」

 この鋼鉄製の扉はちょっとやそっとじゃ打ち破れない強固な物だ。
 だが、結標にはそれを容易に破壊できるチカラを持っている。
 今すぐみんなをここから出してあげなきゃ、と軍用懐中電灯を手に取る。
省25
702: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:42 ID:31eSI50lo(15/31) AAS
手塩「私たちは、『ブロック』。そいつらとは、違う組織だ」

??「手塩」

 声とともに男たちの後ろから手塩と呼ばれる筋肉質な女が現れた。
 手塩は大男の方を向いて、

手塩「いつまで、ターゲットと、与太話をしているつもりだ、佐久?」
省26
703: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:45 ID:31eSI50lo(16/31) AAS
 佐久は薄ら笑いを浮かべる。ゾクリと背筋に嫌なものが走るのを結標は感じ取った。
 何かがヤバイ。そんな気配を感じた結標は、佐久の脳天を狙いチカラを行使する。

佐久「――これからお前にチカラを自由に使える時間なんてもう訪れねえんだからな」

 ドスリ、と金属矢が刺さる音が聞こえた。
 その音源は標的の佐久からではない。それより圧倒的に近い距離からだ。

結標「ぐっ!?」
省25
704: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:47 ID:31eSI50lo(17/31) AAS
佐久「そうだ。俺たち『ブロック』へ、正確に言うなら他の暗部組織にもか。座標移動の捕獲任務が下ったのは昨日の朝だった」

佐久「だが俺たちはその前からこうなることを想定して、シナリオを作り、動いていた。いずれこうなることはわかっていたからだ」

佐久「だからお前が情報を手に入れられるように、お前に関係する一部の研究機関へ情報を横流ししたし、AIMジャマーのメンテナンスも俺たちが手を回して遅らさせた」

佐久「こうすればお前はノコノコとここに現れると容易に予測できた。あとはお前が来るのをここでゆっくり待っていればいいっつう話よ」
省22
705: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:48 ID:31eSI50lo(18/31) AAS
結標「――ッ!!」

手塩「!?」

 結標は軍用懐中電灯を振るった。それすなわちチカラの行使。
 ガキンッ、という音が鳴る。
 天井に取り付けられていた蛍光灯が一本消え、通路の壁に突き刺さって割れた音だ。
 手塩はそれを見て、特に表情を変えることなく、

手塩「まさか、戦おうというの? AIMジャマーに、チカラを妨害された状態で、私たち、ブロックと」
省14
706: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:49 ID:31eSI50lo(19/31) AAS
 第七学区にある雑居ビルの屋上。そこでは絶えず電撃が走り、チカチカと輝いていた。
 屋上の出入り口の扉に背を預けるように立っている少女がいた。
 肩まで伸ばした茶髪にチャームポイントのアホ毛を風に揺らせている、見た目一〇歳前後の少女。
 打ち止め。寝間着のパジャマのままで明け方の時間の寒空の下にいるため、身体を震わせていた。
 彼女はそれを気にする素振りは見せていない。
 なぜなら、目の前で繰り広げられている光景に目を奪われているからだ。

 お姉様である御坂美琴と、謎の敵組織の手先の犬型ロボ達との戦いを。

美琴「――こんのぉ!!」

 美琴は額からの電流を手に流し、それを雷撃の槍として一機の犬型のロボへと放出した。
省46
707: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/01(土)11:50 ID:31eSI50lo(20/31) AAS
美琴(チッ、このままやってたらジリ貧ね。朝ご飯もまだだから体力的にあんまり長期戦も出来ないし)

 波状攻撃のように突っ込んでくる犬型のロボットたちを電撃で弾きながら考える。
 手札が次々と奪われたこの状況をいかに切り抜けていくかを。
 美琴は後ろに立つ打ち止めをちらりと見てから、

美琴(――しょうがない。ちょっと危ないけど、アレを使うしかないか)

 バチバチィ、と美琴の周囲に電気が撒き散らされる。
 そして少女はある力を操り、ある物へ向けて手をかざし放出した。
省18
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