結標「私は結標淡希。記憶喪失です」 (841レス)
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803: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:32 ID:7SptLiMdo(9/43) AAS
禁書「とうま? 今の今まで一体どこ行ってたのかな? お昼ごはんの材料を買いに行くって言ったっきり全然戻ってこないし」
その帰り道で結標と接触してから、今の今までいろいろあったため、上条は完全にそのことを忘れていた。
だから、あの大量に買い込んだ食料は今どこにあるのかなどという記憶は、頭の片隅にも存在しない。
上条「あのー、インデックスさん?」
存在を忘れられていた挙げ句に、ご飯という彼女にとっての生きがいとも言えるイベントをすっぽかされていたインデックスはさぞお怒りだろう。
少しでも怒りを緩和させるための言い訳を考えるために頭を思考させる。
しかし、その思考は即座に中断された。
省19
804: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:33 ID:7SptLiMdo(10/43) AAS
禁書「もしかしてとうま、私がひもじい思いをしている中、とうまだけこんな高そうで美味しそうなものを食べていたのかな?」
先程の不安を抑えきれなくなったような目から一変し、疑念を浮かべるような物言いたげな目をする。
あっ、これはまずい。そう思った上条は弁解するように。
上条「いや、違う! これは御坂が持ってきたお見舞いの菓子だ! まだ一口たりとも口にしてねえ!」
上条はこの二四時間以内に食べたものを片っ端から思い出しながら、
省30
805: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:34 ID:7SptLiMdo(11/43) AAS
美琴「ほいじゃ、またねー……ん?」
病室を後にしようとした美琴の視界にあるモノが映る。
それは部屋に備え付けられている棚に置かれているいろいろな種類のフルーツが入ったバスケットだった。
見るからにお見舞いの品だ。
美琴(私たち以外にも誰かがお見舞いに来てたのね)
もちろんこれは美琴のモノでもないし、インデックスが手ぶらでここに来たのは知っているから彼女のモノでもない。
つまり、ここにいる二人以外の誰か。
省15
806: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:34 ID:7SptLiMdo(12/43) AAS
とある病院の個室。窓を半分開けた室内には、温かい春風が緩やかに流れている。
起き上がったリクライニングベッドに背を預けながら、結標淡希はカエル顔の医者に言われたことを思い出していた。
『キミは肉体再生系の能力でも持っているのかな?』
もちろん結標はそのようなチカラなど持ってはいない。なのに、なぜそのような質問を受けたのか。
それは彼女がこの二日間弱の間に負った傷の数々のせいである。
学園都市の暗部と命の取り合いとも言えるような戦いを繰り広げてきた結標は、体の至るところに傷やダメージを負っていた。
かすり傷とかそういったレベルではない。全身から血を流すような重症とも言えるようなモノ。
省37
807: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:35 ID:7SptLiMdo(13/43) AAS
結標「まさか貴女が私のお見舞いをしに来る日が来るとはね。一体どういう風の吹き回しかしら?」
黒子「勘違いしないでくださいます? 別にこれはお見舞いとかそういった類のものではありませんのよ? ただ様子を見に来ただけですの」
結標「……菓子折り持って?」
黒子が後ろに隠すように持っていた紙袋を指差して、結標は問いかける。
省36
808: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:35 ID:7SptLiMdo(14/43) AAS
結標は先回りするように質問した。
記憶喪失していたときの自分がどういう交友関係を持っていたのかなんてわからない。
だから、目の前の少女と仲良くお茶をするような関係だったとしても、何らおかしくはない話だ。
しかし、
黒子「いえ、まったく」
結標「は?」
真顔で真逆の答えが返ってきた。
思わず結標も唖然としてしまった。
省30
809: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:36 ID:7SptLiMdo(15/43) AAS
黒子「……たしかにそうですわね。貴女の言う通りですの。わたくしとしたことがどうかしていましたわ」
結標「まあでも、しおらしい白井さんは見てて面白かったわよ?」
黒子「そんなフォロー要りませんの!」
ピコン♪
省37
810: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:36 ID:7SptLiMdo(16/43) AAS
初春「え、えっと、あはは……」
と、愛想笑いのようなものをしながら初春は目線を右往左往させていた。
埒が明かないな、と思い結標が動く。
結標「その、初春さん?」
初春「は、はい!」
省35
811: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:37 ID:7SptLiMdo(17/43) AAS
結標「え、ええ、ありがとう」
結標も別にそこまで理由に興味があったわけではないので、特に触れることなくそれを受け取った。
渡しながら初春は言う。
初春「まあ、なんというか、あれです。あなたが無事でよかったというか、こうやって出会うことが出来て嬉しかったです!」
少女はにっこりと微笑みかけた。
太陽のような眩しい笑顔だった。
省36
812: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:38 ID:7SptLiMdo(18/43) AAS
ショチトルは病院のベッドの上で静かに眠りについていた。
カエル顔の医者が言うには命に別状はないらしいが、あまり良い状態とは言えないらしい。
肉体の三分の二を失い、それをまがい物の肉で埋められているのだからしょうがないことなのだろう。
海原「…………」
ベッドの横にある椅子に座っている海原が、見守るように少女を見つめる。
なぜこんなことになったのか。どうして彼女がこんな目に合わなければならないのか。
疑問は尽きないが、今考えたところで何も解決はしない。
今は、彼女がこうして生きていてくれている状況に感謝しなければ。
省21
813: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:39 ID:7SptLiMdo(19/43) AAS
海原「今の彼女にそこまでやれる力は残されてはいませんよ」
黒夜「脳みそさえ動いていればやりようはいくらでもあるよ?」
海原「自分がそんなことさせません」
黒夜「コイツを助け出すために『メンバー』の連中が動くことで、血みどろの抗争が起きちまうかもしれないよ?」
省26
814: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:40 ID:7SptLiMdo(20/43) AAS
海原光貴は偽名だ。この顔の本来の持ち主の名前をそのまま名乗っているだけ。
この少年の本当の名前はエツァリ。それはアステカの魔術師としての名前。
学園都市は科学サイドの中心。そんな中で天敵である魔術サイド側の名前を広められるのは、あまり好ましいことではない。
黒夜「……へー」
それを聞いた黒夜は、面白いことを聞いたときのようにニヤリと口の端を歪めた。
黒夜「なるほどねー、そうだったのか。だったら私もエっちゃんって呼んで――」
省21
815: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:41 ID:7SptLiMdo(21/43) AAS
第七学区にあるふれあい広場。
春休み期間ということもあり、小学生くらいの子どもたちが楽しそうに駆け回っていた。
そんな場所だが中・高生もいる。RABLM(らぶるん)という移動式のクレープ屋の屋台の順番待ちの列に並んでいた。
特にキャンペーンなどしている様子はないが、これだけの列ができるということはそれだけ有名な店なのだろう。
そんな店のクレープを買い、ベンチに腰掛けて食べている金髪碧眼の少女二人組がいた。
高校生くらいの少女フレンダと小学生くらいの少女フレメア。見ての通りの姉妹である。
フレメア「やっぱりクレープはチョコ&ショコラの組み合わせが最高! にゃあ」
フレンダ「それどっちもチョコレートじゃん」
省24
816: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:42 ID:7SptLiMdo(22/43) AAS
フレンダ(ゲッ、仕事の連絡じゃん。もうっ、今朝学園都市へ戻ってきたばっかだってのに、ゆっくり休む時間ももらえない訳?)
今朝、学園都市に反旗を翻そうとしている外部組織を殲滅するという任務を終えたばかりだった。
ふとそのときのことを思い出してしまう。
自分の失敗で浜面仕上という少年に怪我を負わせてしまったことを。
幸い命には別状はなかったが、一つ間違えれば彼は死体処理場行きとなっていただろう。
フレンダ(……大丈夫。大丈夫だから。次はちゃんとやる。ちゃんとやれるハズ!)
フレンダは心の中でそう言い聞かせる。
そんな彼女の表情に不安や焦りといった陰が見えた。
省26
817: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:42 ID:7SptLiMdo(23/43) AAS
第七学区の中のとあるビルの中の一フロア。
ここは暗部組織『スクール』が利用している隠れ家件医療施設だ。
このビルの近くには病院があり、連絡すればスクールの息がかかった医療従事者が駆けつけて、治療するという仕組みとなっている。
設備は他の病院と大差のないレベルで整っている。が、非合法なモノもたくさん置かれているため、そういう点で言えばこちらの方が上かもしれない。
その中にはもちろん入院患者用の病室だって備え付けられている。
医療用の器具やベッドが設置されており、白を貴重としたその部屋はまるで病室そのものだった。
そんな一室に入院している少女が一人いた。
獄彩海美。スクールの構成員の一人である中学生くらいの少女。
省32
818: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:44 ID:7SptLiMdo(24/43) AAS
垣根「……上条当麻って覚えてるか?」
海美「上条……」
海美が少し視線を上げながら記憶を思い起こすような素振りを見せる。
海美「たしか、雪合戦大会の準決勝で戦ったチームのリーダーだった人かしら? あのツンツン頭の。彼がどうかした?」
省29
819: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:44 ID:7SptLiMdo(25/43) AAS
海美「何かしら?」
垣根「お前、少年院のとき電話してきて最後なんか言いかけてただろ? アレなんて言ったんだ?」
ビクッ、と海美の体が少し揺れた。
海美「……ああ、あれね。知りたい?」
垣根「そりゃな。このままじゃ気になって昼寝も出来ねえレベルには」
省32
820: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:45 ID:7SptLiMdo(26/43) AAS
頬に柔らかい感触を感じた垣根が飛び上がるように立ち上がる。
海美から離れるように垣根はたじろぐ。
垣根「なっ、て、テメェ何しやがったッ!?」
海美「ふふっ、これがヒントよ?」
わずかに頬を紅潮させながら、海美は微笑んだ。
トントン、ガララ。
ノックを二回したあと、部屋のドアが開かれた。
省24
821: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:46 ID:7SptLiMdo(27/43) AAS
結標「……自由の身、か」
ベッドの上で上半身を起こしている結標が、窓の外を見ながら呟く。
先程まで土御門という少年と話をしていた。
彼は結標淡希と同じ学校に通うクラスメイトらしく、『グループ』という暗部組織に所属する構成員でもあるらしい。
らしい、というのは今の彼女には彼の記憶はないため、そのような助動詞が文章の最後に付いてしまう。
土御門からはいろいろなことを聞いた。
自分が様々な暗部組織から狙われていたということや、自分が起こした事件がどういう風に処理されたのか。
そして、これからの自分の処遇、など。
省28
822: ◆ZS3MUpa49nlt [saga] 2022/01/22(土)18:47 ID:7SptLiMdo(28/43) AAS
結標「ねえ」
一方通行「あン?」
結標「聞きたいことがあるんだけど」
一方通行「何だ?」
省38
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