渋谷凛「ゴースト レイト」 (28レス)
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◆TOYOUsnVr.
[saga] 2020/07/04(土)22:40
ID:4if+2Hlr0(6/25)
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6: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2020/07/04(土) 22:40:51.18 ID:4if+2Hlr0 〇 私が由比ヶ浜海岸へ到着したのは、深夜一時を過ぎた頃だった。 今日が金曜であることも相まって、なかなかタクシーが捕まらず、ようやく乗れたタクシーで行き先を告げると怪訝そうな顔をされた。 それもそうだ、とは思う。 こんな時間に、女一人で海だなんて。 見方次第ではよからぬことを考えているのでは、と思われてしまっても文句は言えない。 しかし、私は運転手さんに有無を言わせず「由比ヶ浜海岸に、お願いします」と押し通したのだった。 そうして到着した由比ヶ浜海岸は、想像していた静かな夜の浜辺とは違って、人影が多数あった。 薄ぼんやりと青白く、海が光っていた。 幻想的な光景が広がっていて、思わず息を飲む。 ああ、そうか。 これの見物客か、と得心したあとに、私は本来を目的を思い出して、首をぶんぶんと振った。 彼を探さなくては。 砂浜へと踏み出して、柔らかな感触を得ながら波打ち際を歩く。 見物客の多くは男女の組み合わせだった。 私もそうであったら、どれだけよかっただろうか。 なんて、くだらないことを考えながら歩いていると、遠くに一人でぽつんと座り込むシルエットが見えた。 直感的に私は、あれだと感じて、駆け出す。 その影のもとへと辿り着くと、期待通りの人物がそこにはいた。 「どうして」 「私、結構引きは強い方なんだ」 「…………会えて嬉しいよ」 「いろいろ、訊きたいことがありすぎて困るんだけど」 「ああ。凛は、俺が見えるんだな」 「……? どういう」 「どうも、俺は人には見えないらしいんだ」 「え」 「話しかけても反応がないし、俺が何かしらの接触を行っても相手はそれを感知することができない」 「本当なの?」 「ああ。この二週間、嫌というほど思い知った。なんならそこらにいるカップルに蹴りを入れてきて証明してもいい」 「物には、触れるんだね」 「正確には所有者がはっきりしていないものには、になるのかなぁ。触れないものには触れても触れたこと自体がなかったことになる」 「売り物とか、人の荷物とかはだめってこと?」 「らしい。あとは、毎晩出てくる場所はランダムっぽいこと、もわかってる」 「出てくる? えっと、プロデューサーが、ってこと?」 「そう。わけわかんないと思うけど、俺は夜になると出てこられるんだけど」 「うん」 「その出てくる場所は、まちまちなんだ。昨日はどこかの山奥だった」 寂しそうに言って「星が綺麗だったよ」と彼は自嘲じみた笑みを浮かべる。 「規則性は、ないの」 「ないな。行ったことない場所にも出たし、二日連続同じ場所だったこともあった」 「……そっか」 「おばけにでもなった気分だ」 「おばけ」 「そう。夜にだけ現れる、亡霊。夜の亡霊」 聞けば聞くほど意味がわからない。 だが、当事者である彼が語るのだ。嘘であるとも思えなかった。 「……あ。っていうか、お腹空いてない? 話聞いてる感じだと、二週間飲まず食わずなんじゃないの」 「それが、不思議なことに平気なんだ。このとおり、なんともない」 見れば、彼の顔はやつれてもいないどころか、最後に会ったあの夜から何一つ変わっていないようだった。 どういう仕組みなのか一切が不明だが、ひとまずは餓えや脱水症状などの心配がないことに私は安心する。 「俺はそんな感じで、自分の状況を把握するのと、この夜にだけ姿を現せる一連の出来事のルールを探るのに必死だったわけだけれど」 「うん」 「凛の方の現状もそろそろ教えて欲しい。事務所で俺はどういう扱いになってる?」 「それは……えっと……たぶん。いなかったことになってる、っていうのかな」 「忘れてる、じゃないのか」 「……うん。プロデューサーの席はなかったし、私の家にもなかったんだ」 「何が」 「……プロデューサーからもらった名刺」 「………………そうか」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1593869583/6
私が由比ヶ浜海岸へ到着したのは深夜一時を過ぎた頃だった 今日が金曜であることも相まってなかなかタクシーが捕まらずようやく乗れたタクシーで行き先を告げると怪そうな顔をされた それもそうだとは思う こんな時間に女一人で海だなんて 見方次第ではよからぬことを考えているのではと思われてしまっても文句は言えない しかし私は運転手さんに有無を言わせず由比ヶ浜海岸にお願いしますと押し通したのだった そうして到着した由比ヶ浜海岸は想像していた静かな夜の浜辺とは違って人影が多数あった 薄ぼんやりと青白く海が光っていた 幻想的な光景が広がっていて思わず息を飲む ああそうか これの見物客かと得心したあとに私は本来を目的を思い出して首をぶんぶんと振った 彼を探さなくては 砂浜へと踏み出して柔らかな感触を得ながら波打ち際を歩く 見物客の多くは男女の組み合わせだった 私もそうであったらどれだけよかっただろうか なんてくだらないことを考えながら歩いていると遠くに一人でぽつんと座り込むシルエットが見えた 直感的に私はあれだと感じて駆け出す その影のもとへと辿り着くと期待通りの人物がそこにはいた どうして 私結構引きは強い方なんだ 会えて嬉しいよ いろいろ訊きたいことがありすぎて困るんだけど ああは俺が見えるんだな ? どういう どうも俺は人には見えないらしいんだ え 話しかけても反応がないし俺が何かしらの接触を行っても相手はそれを感知することができない 本当なの? ああこの二週間嫌というほど思い知ったなんならそこらにいるカップルに蹴りを入れてきて証明してもいい 物には触れるんだね 正確には所有者がはっきりしていないものにはになるのかなぁ触れないものには触れても触れたこと自体がなかったことになる 売り物とか人の荷物とかはだめってこと? らしいあとは毎晩出てくる場所はランダムっぽいこともわかってる 出てくる? えっとプロデューサーがってこと? そうわけわかんないと思うけど俺は夜になると出てこられるんだけど うん その出てくる場所はまちまちなんだ昨日はどこかの山奥だった 寂しそうに言って星が麗だったよと彼は自じみた笑みを浮かべる 規則性はないの ないな行ったことない場所にも出たし二日連続同じ場所だったこともあった そっか おばけにでもなった気分だ おばけ そう夜にだけ現れる亡霊夜の亡霊 聞けば聞くほど意味がわからない だが当事者である彼が語るのだ嘘であるとも思えなかった あっていうかお腹空いてない? 話聞いてる感じだと二週間飲まず食わずなんじゃないの それが不思議なことに平気なんだこのとおりなんともない 見れば彼の顔はやつれてもいないどころか最後に会ったあの夜から何一つ変わっていないようだった どういう仕組みなのか一切が不明だがひとまずは餓えや脱水症状などの心配がないことに私は安心する 俺はそんな感じで自分の状況を把握するのとこの夜にだけ姿を現せる一連の出来事のルールを探るのに必死だったわけだけれど うん の方の現状もそろそろ教えて欲しい事務所で俺はどういう扱いになってる? それはえっとたぶんいなかったことになってるっていうのかな 忘れてるじゃないのか うんプロデューサーの席はなかったし私の家にもなかったんだ 何が プロデューサーからもらった名刺 そうか
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