右京「タイムパラドクスゴーストライター?」 (82レス)
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21: [saga] 2020/07/01(水)00:58 ID:A7tKNGJh0(21/33) AAS
「初めまして、少年ジャンプ編集部の宗岡といいます。本日は持ち込みだと伺いましたが…」

なんと右京が伊月を連れてきたのは犯行現場でもある集英社、その建物内のオフィスだ。
そこで編集部の人間を呼び出して伊月が描いたホワイトナイトの原稿を読んでもらおうとしていた。
ちなみに担当してくれるのは宗岡という若い編集だ。

「いいんですか右京さん?彼女ガチガチに震えていますよ。」

同席している冠城が右京に耳打ちするが伊月は肩をブルブル震わせながら緊張していた。
恐らくこのような事態を想定していなかったのだろう。
今回伊月はホワイトナイトの件で原作者の佐々木哲平に話をしに来ただけだった。
それがまさか刑事たちに付き添われて憧れの集英社の少年ジャンプ編集部にて自分の描いた原稿を読んでもらうなど普通の少女なら緊張するのも無理もなかった。
22: [saga] 2020/07/01(水)01:01 ID:A7tKNGJh0(22/33) AAS
「…え〜と…藍野さんだよね。この原稿は…どういうことかな…?」

「私が描いたホワイトナイトです。」

「うん、見ればわかるよ。けど僕が言いたいのはこの漫画はキミのオリジナル作品じゃないよね。
新人の持ち込みは本人が描いたオリジナル作品でなきゃいけない。これじゃあ単なる二次創作でどんなに出来がよくても評価に値しないんだ。」

伊月が描いたホワイトナイトには辛辣な評価が下された。
いや、正確に言えば評価に値しないとそう断言されてしまった。
そのことを聞かされた伊月は肩を震わせながら泣くことしか出来なかった。
仕方がない。既にホワイトナイトは佐々木哲平によって世間に注目された作品だ。
伊月が描いたホワイトナイトは単なる二次創作の扱いを受けるのも当然だった。
23: [saga] 2020/07/01(水)01:02 ID:A7tKNGJh0(23/33) AAS
「ひとつよろしいでしょうか。」

そんな悲観する伊月を余所に右京は宗岡にあることを尋ねた。なんとそれは…

「宗岡さんは少年ジャンプの編集を携わっているのならお尋ねしますがそんなあなたの目から見てどちらのホワイトナイトがより面白かったでしょうか。」

「いや、そう言われましても…そもそも藍野さんの描いたものは二次創作なので評価の対象には…」
省9
24: [saga] 2020/07/01(水)01:03 ID:A7tKNGJh0(24/33) AAS
「ところであなた方は藍野さんの保護者ですか?」

「ああ、失礼しました。警視庁特命係の杉下と冠城です。
実は先程この子が騒ぎを起こしましてね…その件でちょっとお伺いしたいことがありまして。」

それから右京は宗岡に先程の一部始終を話した。
先程この集英社の外で佐々木哲平が伊月に襲われて補導されたこと。
さらには伊月がホワイトナイトを描いていたことをすべて打ち明けてみせた。

「キミが佐々木くんを襲った…?それで彼に怪我は!?」
省5
25: [saga] 2020/07/01(水)01:04 ID:A7tKNGJh0(25/33) AAS
「それでは佐々木先生に被害届けを出してもらうわけにはいきませんか。」

「え?被害届…?」

「ええ、実は佐々木先生ですが被害届を出さずにその場から立ち去ったようなんですよ。
ご自身が被害者の立場なのにそこが少し不可解でしてね。」

そう、右京たちが交番に来た時には佐々木哲平は現場にはいなかった。
本来なら事情聴取のために被害者も同席してもらう必要がある。
それに万が一にも後日に怪我が発覚すれば慰謝料の請求も必要だ。
その必要があったはずなのに佐々木哲平は現場から早々に立ち去った。
省7
26: [saga] 2020/07/01(水)01:05 ID:A7tKNGJh0(26/33) AAS
「確かに多忙であるなら被害届けを出している暇はないのかもしれない。
ですが少し思うところがあるのですが被害届けを出さなかった理由は佐々木先生が実は彼女の作品を盗作したからではないのでしょうか。」

右京の発言に宗岡とそれにジャンプ編集部の面々が挙ってこちらを睨みつけた。
冠城もまさかの直球な言動に思わずやり過ぎたと感じた。さすがにこれでは喧嘩を売っているようなものだ。

「いい加減にしてください!いきなり訪ねてきて盗作とはどういう了見ですか!被害者は佐々木くんなんですよ!?」

宗岡は堪らず怒鳴るがそうなるのも当然だ。
現在ホワイトナイトは読み切りで人気一位を獲得した期待の漫画だ。
それなのに新連載を前にしてこんなケチをつけられたのでは堪ったものではない。
省6
27: [saga] 2020/07/01(水)01:07 ID:A7tKNGJh0(27/33) AAS
「そもそも藍野さんはどこに住んでいるんだ?」

「高知…ですけど…」

「高知?ここは東京だよ!高知までどうやって盗作するというんだ!」

宗岡の疑問に伊月は答えられることなどできない。
むしろ聞きたいのは自分の方だと言いたいくらいだ。
ある日、いつも購読しているジャンプを読んだら何故か自分の描いていたホワイトナイトが掲載されていた。
これまで引き篭っていた時間を使って必死に漫画を描いてきた。
それこそ資料集めから始まり膨大な設定を練ってようやく構成をまとめられたと思った矢先にこの事態だ。
一体何がどうなっているのかなんて伊月にわかるはずもなかった。
省6
28: [saga] 2020/07/01(水)01:08 ID:A7tKNGJh0(28/33) AAS
「つまりこういうことです。佐々木先生はアシが付かないように地方で窃盗を行っていた。
その際に高知にある伊月さんの自宅に忍び込んで偶然にも彼女が描いていたホワイトナイトの原稿を盗み見した。そして彼女の作品を盗作したのではないでしょうか。」

「馬鹿な…どうして先生がそんなことを…」

「失礼ながらお尋ねしますが佐々木先生はホワイトナイトを描く前は何をなさっていたのですか?」

「さあ…僕は彼がホワイトナイトを描いた時からしか知らないのでそれほど付き合いは長くなくて…」
省13
29: [saga] 2020/07/01(水)01:09 ID:A7tKNGJh0(29/33) AAS
「あの…今の話は本当なんですか…?」

そこへ宗岡と入れ替わるかのようにとある男が現れた。
年齢は宗岡よりも上で無精髭を生やした中年の男だ。

「私は菊瀬といいます。以前まで佐々木くんの担当をしていた者です。」

「以前まで?それはどういうことですか。」
省11
30: [saga] 2020/07/01(水)01:11 ID:A7tKNGJh0(30/33) AAS
「つまらない…ですね…」

ハッキリとそう言ってしまった。失礼かと思われるが事実そうだから仕方ない。
右京は勿論だが冠城やそれに同席している伊月から見てもこの漫画は余りにもつまらないものだった。

「これ…あれですよね…お宅の看板漫画の…」

さらに冠城が指摘するが作画もほぼジャンプで長寿漫画と化している某海賊漫画に影響されたらしくその劣化版になっている。
これでは作風に個性など感じられない悪く言えば落書き漫画の域を脱していないまである。
省13
31: [saga] 2020/07/01(水)01:12 ID:A7tKNGJh0(31/33) AAS
「……ひとつ質問します。この原稿を佐々木先生はホワイトナイトを描く直前に持ち込んだわけですね。
その次にホワイトナイトを持ち込んだ。その期間はどれほど掛かりましたか?」

「やけに早かったでしたよ。確かボツにしてからその翌日にホワイトナイトを持ってきましたからね。」

ありえない。その話を聞いた右京たちの考えがそれだった。
佐々木哲平はこれまで某海賊漫画の劣化版風な漫画を描いていた。
持ち込み漫画は大抵の場合、ネームといった下書きで持ち込まれる。
だからといってこれまでの作風を180°変えて次の日に持ち込むなどそんなことがあるはずがない。

「菊瀬さん。僕はどうしても佐々木先生がホワイトナイトを自分で描いたとは思えませんがあなたはどう思いますか?」
省5
32: [saga] 2020/07/01(水)01:19 ID:A7tKNGJh0(32/33) AAS
「それにしても何故そんな急遽連載が決まったのですか?普通なら会議に掛けられ慎重な判断が下されて掲載になるのではありませんか。
僕たち部外者からしてもこれは些か性急だったと思えますよ。」

「それは…恥ずかしい話ですが…うちの雑誌…中堅どころが軒並み最終回を迎えましてね…だからその穴を埋めるにもホワイトナイトが適任だったんですよ。」

どうやら佐々木哲平はタイミングにも恵まれていたらしい。

「ところで聞きたいんですけど…佐々木くんが盗作を行ったというのは本当なんでしょうか…?」
省19
33: [saga] 2020/07/01(水)01:20 ID:A7tKNGJh0(33/33) AAS
とりあえずここまで
続きは近うちにあげます。
34: 2020/07/01(水)21:02 ID:IYtSzWsl0(1) AAS
乙でした、菊瀬も救われそうで嬉しい
35: 2020/07/01(水)21:33 ID:BhLtC2Il0(1) AAS
乙、最初斜め読みしてジャンプでGペンが暴れてるって間武士でも出て来たのかと思ったが
あっちは丸ペンだったか
36: 2020/07/02(木)01:44 ID:Ck2azYKxo(1) AAS
相棒クロスとは面白いな
37: [saga] 2020/07/02(木)22:20 ID:0AxqYuWp0(1/38) AAS
集英社を出てから一時間後、冠城の愛車でシルバーのカラーが特徴なスカイラインがあるアパートの前で止まった。
コーポ谷岡、木造建ての古いアパートだ。車をアパート付近の駐車場に停めると右京、冠城、それに伊月の三人はアパートのとある部屋の前に立った。
部屋のドアにある名札には『佐々木』という苗字が記されていた。
編集部の菊瀬から教えてもらった佐々木哲平の部屋がここだった。

「ここが佐々木哲平のアパートですか。見たところ古そうな建物ですねぇ。」

「大金を持っているような様子は見受けられませんね。これだと佐々木哲平の懐事情はかなり苦しいんじゃないですか。」

これなら佐々木哲平が窃盗を行っていたとしても不思議ではない。
現段階で佐々木哲平が罪を犯したのだとすればそれは高知の伊月の自宅に忍び込み窃盗を行ったかもしれないという可能性。
確かにこれなら辻褄が合うかもしれない。だが…
38: [saga] 2020/07/02(木)22:21 ID:0AxqYuWp0(2/38) AAS
「右京さんの推理ですけど俺としてはどうにも納得がいかないんですよね。」

「はぃ?そう思う根拠は何ですか。」

「ホワイトナイトですよ。佐々木哲平が窃盗犯だとしたらアシが付かないようにわざわざ高知に出向くほどの用心深い人間なんですよね。
それなら伊月ちゃんから盗作した漫画をタイトルやキャラの名前も変えずにそのまま載せるのはおかしいと思いませんか。」

冠城が右京の推理に疑問を思うのはそこだった。
何故地方まで遠出して窃盗を行う用心深い人間が忍び込んだ先の家で盗作した漫画をタイトル名も変えずにそのまま載せているのか?
これではホワイトナイト自体が窃盗した証拠になってしまい自ら犯した窃盗が明らかになる恐れがあるはずだ。
その疑問について実は右京も同じことを考えていた。
省8
39: [saga] 2020/07/02(木)22:22 ID:0AxqYuWp0(3/38) AAS
「自宅にいるお母さんに連絡を取りました…けど…盗られたモノは何もないって…」

右京は伊月に自宅へ連絡して何か盗られた物はないか確認をしてもらった。
だが盗られた物は一切ないという。つまり佐々木哲平は窃盗の目的で伊月の家に忍び込んだという疑いはないということ。
しかし伊月のホワイトナイトを佐々木哲平が盗作したという疑惑は晴れてはいない。

「あの…部屋に入らないんですか…?」

そんな考え込む右京と冠城に伊月が思わずそんなことを聞いた。
そのことを聞かれて二人は思わず苦笑いを浮かべてしまう。
実を言うとそこが問題だった。伊月には関係のないことだが特命係は捜査権限がない。
そのため今の段階で家宅捜索を行うなど出来るはずもない。
省3
40: [saga] 2020/07/02(木)22:23 ID:0AxqYuWp0(4/38) AAS
「佐々木哲平さんについて変わったこと…?」

「ええ、なんでも構いません。少しでも気になることがあれば答えて頂けませんか。」

右京が訪ねたのはこのアパートの大家だ。
佐々木哲平の周囲で何か異変は起きていないかと尋ねた。
すると大家は考え込んだ末にあることを話した。

「そう言われても佐々木さんは一ヶ月前に部屋を空けてつい最近戻ってきたばかりだから何もわからないよ。」
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