右京「タイムパラドクスゴーストライター?」 (82レス)
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17: [saga] 2020/07/01(水)00:50 ID:A7tKNGJh0(17/33) AAS
「恐らくその原因こそ伊月さんが先程男性を襲っていたことと関係しているのでしょう。ひょっとしてあなたが襲っていた男性は佐々木哲平ではありませんか。」

そう問われて伊月は再びコクッと頷いた。なんということだろうか。
それから伊月はあることを語りだした。それはこれまでの自身の生い立ちについてだ。

「…私…高知の学校に通ってました。今は不登校です。理由はイジメに遭ったから…」

「それからは部屋に籠って漫画ばかり描くようになりました。それがホワイトナイトです。」
省10
18: [saga] 2020/07/01(水)00:52 ID:A7tKNGJh0(18/33) AAS
「つまりこういうことだな。キミは集英社で佐々木哲平を襲った。その理由は彼が自分と同じ漫画を描いたからということか。」

「…まあそうです…けど…襲ってなんていません!
そのGペンだって使い込み具合を見てくれたら私がどれだけ真剣に漫画を描いているのかわかってくれると思ったからで…」

伊月は襲ったわけではないと主張しているが…
それでも危険な行為だったということには変わりないのでとりあえずは厳重注意のみで済ませた。
あとは念の為に高知の自宅に連絡して伊月の御両親に迎えに来てもらうだけだが…

「一応の事情はわかりました。ですが奇妙な話ですねぇ。全くの赤の他人が同じ作品を描くものでしょうか。」
省5
19: [saga] 2020/07/01(水)00:54 ID:A7tKNGJh0(19/33) AAS
「わかりました。あなたが言っていることを信じましょう。」

「ちょっと右京さん!いいんですかそんなあっさりと信じて!」

「本人がそう言っているのだからそうなのでしょう。
未成年の女子高生がわざわざ高知から出向いてきたのですよ。それには並大抵の覚悟があったはずです。
それに彼女の原稿を読めばわかります。ジャンプのホワイトナイトはまだ掲載されたばかりの読み切り。
それをこうまで細かく描写出来るのは原作者でなければ無理ですよ。」

言われてみればまだ先週号のジャンプが出てから一週間くらいしか経っていない。
その僅かな短期間で赤の他人がこうも完璧に描き切ることが出来るだろうか?
答えはNOだ。つまり伊月は本当にホワイトナイトの原作者なのか。
省8
20: [saga] 2020/07/01(水)00:56 ID:A7tKNGJh0(20/33) AAS
「あ、それちがいますよ。本人がそう言ってましたから。」

「本人が…?それはどういう意味でしょうか。」

伊月は哲平を襲った時の出来事を語った。
その時の哲平は逃げながらも自分は伊月の部屋になど忍び込んではいないと訴えていた。
それから電子レンジがどうのこうのと何か訳のわからないことを言っていた。

「電子レンジ…?それは料理に使うあの電子レンジですか。」
省5
21: [saga] 2020/07/01(水)00:58 ID:A7tKNGJh0(21/33) AAS
「初めまして、少年ジャンプ編集部の宗岡といいます。本日は持ち込みだと伺いましたが…」

なんと右京が伊月を連れてきたのは犯行現場でもある集英社、その建物内のオフィスだ。
そこで編集部の人間を呼び出して伊月が描いたホワイトナイトの原稿を読んでもらおうとしていた。
ちなみに担当してくれるのは宗岡という若い編集だ。

「いいんですか右京さん?彼女ガチガチに震えていますよ。」

同席している冠城が右京に耳打ちするが伊月は肩をブルブル震わせながら緊張していた。
恐らくこのような事態を想定していなかったのだろう。
今回伊月はホワイトナイトの件で原作者の佐々木哲平に話をしに来ただけだった。
それがまさか刑事たちに付き添われて憧れの集英社の少年ジャンプ編集部にて自分の描いた原稿を読んでもらうなど普通の少女なら緊張するのも無理もなかった。
22: [saga] 2020/07/01(水)01:01 ID:A7tKNGJh0(22/33) AAS
「…え〜と…藍野さんだよね。この原稿は…どういうことかな…?」

「私が描いたホワイトナイトです。」

「うん、見ればわかるよ。けど僕が言いたいのはこの漫画はキミのオリジナル作品じゃないよね。
新人の持ち込みは本人が描いたオリジナル作品でなきゃいけない。これじゃあ単なる二次創作でどんなに出来がよくても評価に値しないんだ。」

伊月が描いたホワイトナイトには辛辣な評価が下された。
いや、正確に言えば評価に値しないとそう断言されてしまった。
そのことを聞かされた伊月は肩を震わせながら泣くことしか出来なかった。
仕方がない。既にホワイトナイトは佐々木哲平によって世間に注目された作品だ。
伊月が描いたホワイトナイトは単なる二次創作の扱いを受けるのも当然だった。
23: [saga] 2020/07/01(水)01:02 ID:A7tKNGJh0(23/33) AAS
「ひとつよろしいでしょうか。」

そんな悲観する伊月を余所に右京は宗岡にあることを尋ねた。なんとそれは…

「宗岡さんは少年ジャンプの編集を携わっているのならお尋ねしますがそんなあなたの目から見てどちらのホワイトナイトがより面白かったでしょうか。」

「いや、そう言われましても…そもそも藍野さんの描いたものは二次創作なので評価の対象には…」
省9
24: [saga] 2020/07/01(水)01:03 ID:A7tKNGJh0(24/33) AAS
「ところであなた方は藍野さんの保護者ですか?」

「ああ、失礼しました。警視庁特命係の杉下と冠城です。
実は先程この子が騒ぎを起こしましてね…その件でちょっとお伺いしたいことがありまして。」

それから右京は宗岡に先程の一部始終を話した。
先程この集英社の外で佐々木哲平が伊月に襲われて補導されたこと。
さらには伊月がホワイトナイトを描いていたことをすべて打ち明けてみせた。

「キミが佐々木くんを襲った…?それで彼に怪我は!?」
省5
25: [saga] 2020/07/01(水)01:04 ID:A7tKNGJh0(25/33) AAS
「それでは佐々木先生に被害届けを出してもらうわけにはいきませんか。」

「え?被害届…?」

「ええ、実は佐々木先生ですが被害届を出さずにその場から立ち去ったようなんですよ。
ご自身が被害者の立場なのにそこが少し不可解でしてね。」

そう、右京たちが交番に来た時には佐々木哲平は現場にはいなかった。
本来なら事情聴取のために被害者も同席してもらう必要がある。
それに万が一にも後日に怪我が発覚すれば慰謝料の請求も必要だ。
その必要があったはずなのに佐々木哲平は現場から早々に立ち去った。
省7
26: [saga] 2020/07/01(水)01:05 ID:A7tKNGJh0(26/33) AAS
「確かに多忙であるなら被害届けを出している暇はないのかもしれない。
ですが少し思うところがあるのですが被害届けを出さなかった理由は佐々木先生が実は彼女の作品を盗作したからではないのでしょうか。」

右京の発言に宗岡とそれにジャンプ編集部の面々が挙ってこちらを睨みつけた。
冠城もまさかの直球な言動に思わずやり過ぎたと感じた。さすがにこれでは喧嘩を売っているようなものだ。

「いい加減にしてください!いきなり訪ねてきて盗作とはどういう了見ですか!被害者は佐々木くんなんですよ!?」

宗岡は堪らず怒鳴るがそうなるのも当然だ。
現在ホワイトナイトは読み切りで人気一位を獲得した期待の漫画だ。
それなのに新連載を前にしてこんなケチをつけられたのでは堪ったものではない。
省6
27: [saga] 2020/07/01(水)01:07 ID:A7tKNGJh0(27/33) AAS
「そもそも藍野さんはどこに住んでいるんだ?」

「高知…ですけど…」

「高知?ここは東京だよ!高知までどうやって盗作するというんだ!」

宗岡の疑問に伊月は答えられることなどできない。
むしろ聞きたいのは自分の方だと言いたいくらいだ。
ある日、いつも購読しているジャンプを読んだら何故か自分の描いていたホワイトナイトが掲載されていた。
これまで引き篭っていた時間を使って必死に漫画を描いてきた。
それこそ資料集めから始まり膨大な設定を練ってようやく構成をまとめられたと思った矢先にこの事態だ。
一体何がどうなっているのかなんて伊月にわかるはずもなかった。
省6
28: [saga] 2020/07/01(水)01:08 ID:A7tKNGJh0(28/33) AAS
「つまりこういうことです。佐々木先生はアシが付かないように地方で窃盗を行っていた。
その際に高知にある伊月さんの自宅に忍び込んで偶然にも彼女が描いていたホワイトナイトの原稿を盗み見した。そして彼女の作品を盗作したのではないでしょうか。」

「馬鹿な…どうして先生がそんなことを…」

「失礼ながらお尋ねしますが佐々木先生はホワイトナイトを描く前は何をなさっていたのですか?」

「さあ…僕は彼がホワイトナイトを描いた時からしか知らないのでそれほど付き合いは長くなくて…」
省13
29: [saga] 2020/07/01(水)01:09 ID:A7tKNGJh0(29/33) AAS
「あの…今の話は本当なんですか…?」

そこへ宗岡と入れ替わるかのようにとある男が現れた。
年齢は宗岡よりも上で無精髭を生やした中年の男だ。

「私は菊瀬といいます。以前まで佐々木くんの担当をしていた者です。」

「以前まで?それはどういうことですか。」
省11
30: [saga] 2020/07/01(水)01:11 ID:A7tKNGJh0(30/33) AAS
「つまらない…ですね…」

ハッキリとそう言ってしまった。失礼かと思われるが事実そうだから仕方ない。
右京は勿論だが冠城やそれに同席している伊月から見てもこの漫画は余りにもつまらないものだった。

「これ…あれですよね…お宅の看板漫画の…」

さらに冠城が指摘するが作画もほぼジャンプで長寿漫画と化している某海賊漫画に影響されたらしくその劣化版になっている。
これでは作風に個性など感じられない悪く言えば落書き漫画の域を脱していないまである。
省13
31: [saga] 2020/07/01(水)01:12 ID:A7tKNGJh0(31/33) AAS
「……ひとつ質問します。この原稿を佐々木先生はホワイトナイトを描く直前に持ち込んだわけですね。
その次にホワイトナイトを持ち込んだ。その期間はどれほど掛かりましたか?」

「やけに早かったでしたよ。確かボツにしてからその翌日にホワイトナイトを持ってきましたからね。」

ありえない。その話を聞いた右京たちの考えがそれだった。
佐々木哲平はこれまで某海賊漫画の劣化版風な漫画を描いていた。
持ち込み漫画は大抵の場合、ネームといった下書きで持ち込まれる。
だからといってこれまでの作風を180°変えて次の日に持ち込むなどそんなことがあるはずがない。

「菊瀬さん。僕はどうしても佐々木先生がホワイトナイトを自分で描いたとは思えませんがあなたはどう思いますか?」
省5
32: [saga] 2020/07/01(水)01:19 ID:A7tKNGJh0(32/33) AAS
「それにしても何故そんな急遽連載が決まったのですか?普通なら会議に掛けられ慎重な判断が下されて掲載になるのではありませんか。
僕たち部外者からしてもこれは些か性急だったと思えますよ。」

「それは…恥ずかしい話ですが…うちの雑誌…中堅どころが軒並み最終回を迎えましてね…だからその穴を埋めるにもホワイトナイトが適任だったんですよ。」

どうやら佐々木哲平はタイミングにも恵まれていたらしい。

「ところで聞きたいんですけど…佐々木くんが盗作を行ったというのは本当なんでしょうか…?」
省19
33: [saga] 2020/07/01(水)01:20 ID:A7tKNGJh0(33/33) AAS
とりあえずここまで
続きは近うちにあげます。
34: 2020/07/01(水)21:02 ID:IYtSzWsl0(1) AAS
乙でした、菊瀬も救われそうで嬉しい
35: 2020/07/01(水)21:33 ID:BhLtC2Il0(1) AAS
乙、最初斜め読みしてジャンプでGペンが暴れてるって間武士でも出て来たのかと思ったが
あっちは丸ペンだったか
36: 2020/07/02(木)01:44 ID:Ck2azYKxo(1) AAS
相棒クロスとは面白いな
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