【デレマス】 偶像ルネッサンス (91レス)
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4: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/21(日)23:05 ID:gNqPAssWo(4/10) AAS
 
【「Renaissaの一番の原動力は、リーダーの存在だったんです」――安部菜々】

――安部さんは去年の7月、346プロダクション内での「シンデレラガール総選挙」において、
   見事第7回のシンデレラガールに選出されたわけですが。

安部菜々(以下、安):ありがとうございます。おかげさまで。

――やはり、それにはRenaissaでの活動が影響していると思われますか?

安:そりゃぁ、もちろんあると思います。この1年、Renaissa以外の活動も多くさせていただきましたけど……
  デビューからずっと所属してて、一番活動の場をいただけたのがあのユニットでしたから。
省10
5: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/21(日)23:08 ID:gNqPAssWo(5/10) AAS
 
――在り方ですか?

安:実は……といってもお気づきでしょうけど、「ルネッサ」は「復活」を意味する「Renaissance」から来ています。
  その名の通り、私たちはそれぞれが抱える「復活」への思いを全力で活動にぶつけてきました。
  あるメンバーはアイドルとしての自分自身そのものの復活、
  あるメンバーは自分が持っていた理想、諦めかけていた理想の復活、といったようにです。

――なるほど。

安:その中でも、とくにスケールの大きい「復活」のイメージをずっと持ち続けていた子がいました……

――そうですよね。存じ上げております。
省11
6: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/21(日)23:11 ID:gNqPAssWo(6/10) AAS
 

蓮実ちゃんは、「どんなアイドルか」という話じゃないんだと思います。

アイドルって、今でこそ色んなキャラクターがあって、
生き方があって、
ファンの方々もそれぞれ全然違ってて、
すっごく多様で面白い世界になっていますよね。

でも、元をたどれば……たった一つの形から、時代を経て少しずつ、
アイドルの在り方というものは広がっていったんだと思います。
蓮実ちゃんは、そんな中私たちなんかよりもずっと……アイドルの過去と、未来と、現在、人一倍向き合って、
一番勇気の要る道を進んでいったんじゃないかなぁ。
省4
7: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/21(日)23:13 ID:gNqPAssWo(7/10) AAS
 

  “あの頃の清純派はもう死んだ?”

    “いや、まだだね。 何でって……”

      “まだ君がいる”

  “君自身が憧れ目指す古き良き清純派アイドルの、最後の一人として――”
省3
8: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/21(日)23:19 ID:gNqPAssWo(8/10) AAS
 


その昔、
アイドルとは孤高であり、
不可侵であり、
届かぬ憧れであった。

昭和50年代、それは大衆メディアが大発達を遂げた絶頂の時代であり、その波に乗るようにアイドル文化も隆盛を誇った。
「清純派」と呼ばれる当時の伝説たちは、人類の長い歴史から見ればまだまだ始まったばかりの大衆アイドルという世界の中で、
初めてスタンダードを確立した一種の完成形となった。

彼女たちは日本中がTVを通じて見守る中、大きなステージの真ん中で、真っ暗な空間の中たった一人スポットライトを浴び、
省7
9: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/21(日)23:21 ID:gNqPAssWo(9/10) AAS
 
だが、時代は変わった。
現代の人々にとって、アイドルとは百人いれば百通り存在する。
個々の知名度の差こそあれ、それがアイドルとしての全てではなくなった。
個性を重視し、オリジナリティを売りにして「狭く深く」独自の方向性で人気を得ていくようになった。
人々はそれぞれが信じる対象を崇拝し、支え、成功をともに喜び、失敗を悔やみ、進退に一喜一憂する。
それはアイドルへの人々の目が変わり、万人に人気を得ることが難しくなったから。
そしてTVからインターネットへとメディアの主流が移り変わり、「狭く深く」の戦略で生き残れる世界に変化したから。

そうして平成のアイドルはひっそりと栄えていった。
そこにはかつてほどの影響力こそないものの、みなそれに納得していた。
省8
10: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/21(日)23:22 ID:gNqPAssWo(10/10) AAS
(今日ここまで)
11: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/23(火)22:17 ID:8+PeY8Rzo(1/42) AAS
 
──────

 2017年・3月

──────
12: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/23(火)22:19 ID:8+PeY8Rzo(2/42) AAS
 
春の346プロダクション。
アイドル部門はこの日、また新たな一員を迎える。

「受付から連絡来ました。今エレベーターに乗ってると」
「わかった」

“アイドル”という長く短い歴史の中で、既に見捨てられつつある一つの生き様。
この時代にたった一人しかいないであろう逸材は、その生き様に自らの使命を見いだし、逆風吹き荒ぶこと覚悟の上、この道を選んだという。
その道を照らすのは、『復活』という一つの希望。
時代の埃を被った夢を愛する者たちにとっての一つの希望。

「もうすぐ来ますよ」
省12
13: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/23(火)22:21 ID:8+PeY8Rzo(3/42) AAS
 
「は、はじめまして」

蓮実は一礼をして、促されたまま用意されていた席に着いた。

「おう、よく来てくれたね」
「あ、プロデューサーさん……あの、この間はありがとうございました!」
「なんのなんの」

プロデューサーと呼ばれたこの男が、オーディション会場で結果を出せずうなだれる蓮実を見つけ、
その場で彼女をスカウトしたのはほんの一週間前の出来事である。
対面の席に座り、目の前で緊張の面持ちを隠せない少女と裏腹に、ずいぶん落ち着いた様子で彼女を迎え入れた。

「それにしても、プロデューサーさん自らスカウトなんて珍しいですね。普段はあまりそういうことされないのに」
省5
14: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/23(火)22:23 ID:8+PeY8Rzo(4/42) AAS
 
「あっ、申し遅れました。 私、346プロダクションの事務を担当しております千川ちひろです。よろしくお願いしますね」
「千川さん……はい、よろしくお願いします」
「私はプロデューサーさんみたいに直接蓮実ちゃんのお世話をさせていただくわけではないですけど、
 これからのアイドル活動のサポートを全力で行いますからね」

珍しいライトグリーンのスーツに身を包んだ若い女性が右手を差し出すのを見て、蓮実は安心したように握手に応じた。
同時に、『アイドル活動』という言葉を一事務員とはいえ業界に身を置く人間から直接耳にした事実に、蓮実の背筋はピンと張る。

「まあまあ、そんな堅くならずにさ。 んじゃま、早速だけど……ちょっと軽くミーティングでもしよっか」

一方でプロデューサーは終始リラックスした──というより、少々気の抜けたような──様子を崩さずにいた。こちらは蓮実にとって意外だった。
スカウトを受けた日のこの人の言葉、瞳の奥に感じた熱――もっと厳格で、力強くて、頼もしい――そんなイメージを抱いていたのだが。
省6
15: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/23(火)22:24 ID:8+PeY8Rzo(5/42) AAS
 
 *

「……趣味は古着屋巡りに、ボウリング……? マイボールまで持ってるんですね! すごい!」
「いえ、たしなむ程度ですので……」

履歴書に目を通しながらちひろが賞賛の声を上げ、蓮実はただ恥ずかしげに相づちを打っていた。

「またまた、謙遜しちゃって。ベストスコアは?」
「うーんと……確か、200を超えたことくらいは……」
「へぇ〜、すごい。そりゃ男でもなかなかいないよ…… ちひろちゃんはボウリングやったことある?」

プロデューサーの質問にも、遠慮がちに答えていく。
省8
16: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/23(火)22:26 ID:8+PeY8Rzo(6/42) AAS
 
「いや、だって、ミーティングって言いましたよね?」
「コミュニケーションは大事だろ。 堅い話ばっかりじゃ疲れるし、なあ?」

まぁ、そうですね――と一応肯定しておく。
本心ではこれからについてのまじめなお話でも、こうやって気楽に談笑して事務所の空気に慣れておくのも、蓮実にとってはどちらでも良い。

「私は、まだここで何をして良いかも全く分からないので……プロデューサーさんにお任せします」
「だって」
「信頼されてるんですから、ちょっとはしっかりして下さいよ?」
「……むー」

まるで子供のように、小さくふくれっ面をしてみせるプロデューサーが少し可笑しくて、ふふと笑みをこぼした。
省8
17: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/23(火)22:29 ID:8+PeY8Rzo(7/42) AAS
 
「そりゃもう、みんな個性的な奴らばっかりだぜ」
「……はい」
「プロデューサーさん、いったい何が言いたいんです?」

彼の問いたいことは蓮実にはなんとなく察しがついた。
今やアイドルとは個性の時代だ。業界全体だけでなく同じ事務所内であってもこれだけの競争相手がいる中で、
自分を売り出すにはどうすれば良いか考えろ、ということなのかも知れない。
――自分は、古くさくありきたりで不器用な人間だから。

「君がここに来た理由……アイドルになりたい理由、どんなアイドルになりたいか、それは初めて会ったときに聞いた」
「……はい」
省9
18: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/23(火)22:31 ID:8+PeY8Rzo(8/42) AAS
 
「私は、自分のように遠い昔の清純派を好きで、本気で憧れているような、私みたいなアイドルは他にいないと思っています。 
 今時受けは悪いとしても、それが自分の最大の強みです」
「……うん」
「だから、私に求められているのは――きっと、同じように清純派を愛する人たちへのメッセージになること。 
 かつてのアイドルのスピリットを現代に伝える、『最後の清純派』として一花咲かせることだと思います。 
 ……そして願わくば私は、清純派を次の時代へ伝えたいと、そう思っています」

少々気取った答えになってしまったかも知れない。
心配をよそに、プロデューサーはうんうんと頷き――そして、重ねて尋ねた。

「清純派アイドルになって、トップを目指そうって思ったことはない?」
省11
19: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/23(火)22:34 ID:8+PeY8Rzo(9/42) AAS
 
「……OK。それが今の長富の答えってワケだ」
「……ダメだったでしょうか」
「うんにゃ、そんなことないよ。 まだまだ腹割って話しにくいところもあるだろうしな。 ありがとう」

初めての話し合いで印象を悪くしてしまったかもという不安がほんの少し残る蓮実に対して、プロデューサーは何事も無かったかのように続けた。

「んじゃ、まずは他の新人と同様、基本的なレッスンで現時点でのスキルを測る。
 後は取引先に軽く挨拶回りして、そんで一通りの基礎トレが終わったら、
 ウチと提携してるライブハウスのうちの一つで早速ステージに立って一曲披露してもらう――まあ、今から2週間後ってとこかな」
「そ、そうなんですか?」

――たった2週間でステージデビュー?
省9
20: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/23(火)22:36 ID:8+PeY8Rzo(10/42) AAS
 
「……ちょっと、難しいお話ですね」

イメージしたとおりのステージ――そう聞くと、蓮実がかつて数え切れないほど想像してきた伝説たちのきらめく光景が瞳の奥によみがえる。
当然、今の自分はあれほどの喝采を浴びるには足りないけれど、先へ進むにはやるしかない。
どのみちその最初のステージがどういう結果に転ぼうと、「ちょっと待って」とプレイバックなどできやしない。

「でも…………分かりました。 蓮実、頑張ります!」
「よしきた」

今日初めての力強い返事に、プロデューサーもニヤリと笑ってみせた。

「んじゃ、週明けから早速始めようか」
21: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/23(火)22:37 ID:8+PeY8Rzo(11/42) AAS
 
 *

「……うん。 発声はまだまだ練習しないとだけど、音程はきっちりとれてますね」
「本当ですか? ありがとうございます♪」

初めてのレッスンがボイストレーニングだと知り、蓮実は嬉しくてたまらなかった。
大好きな歌。ダンスも自信はないしえくぼもできないけれど、こればかりはいつだって欠かさずずっと続けていた大事なものだ。
プロとしての第一歩を歌で飾れるというだけで、何だか上手くいっているような気がして、浮かれたようにレッスン室の扉を叩いた。
トレーナーの女性も親身に練習を見てくれて心強い。

30分ほど続けた後、一旦休憩を取ってしばし世間話。

「歌の練習、ずっとしてたの?」
省4
22: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/23(火)22:38 ID:8+PeY8Rzo(12/42) AAS
 
……数分後、やはりというか結局夢中になってしばらく話し込んだところでハッと我に返る。

「すみません、私語り出すと止まらなくて、つい……」
「いいのいいの。 ……そうだ、今回の課題曲とは違うけど、なにか歌ってみてくれない?」

意外な提案だったが、とくに断る理由もない。

「じゃあ、お言葉に甘えて……」

せっかく歌ってみてと言われたのだから、思い切りやらせてもらおう。
幸いこれは今までみたいなオーディションでもない。この人なら笑わずに聴いてくれるはず。
省4
23: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/23(火)22:40 ID:8+PeY8Rzo(13/42) AAS
 
 *

大サビまで歌い終わり、腕の最後の一振りを終えたところでトレーナーは少しの間唖然と口を開け、そして思い出したかのように拍手をし始めた。

「すごい……振り付けまでバッチリ」
「あ、ありがとうございます……」
「素直に驚いた。 すっごく良かった!」

蓮実はホッとした表情でよかった、と一言だけ漏らした。

「今の、ずっと昔のCMソング? どこかで聴いたことあるかも……」
「ご存じでしたか? 洗剤の……」
「だよね、詳しくは知らないけど。 でも、とにかくその歌が大好きだっていうのが伝わってきたわ。 とっても良かった」
省8
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