【艦これSS】不器用を、あなたに。 (624レス)
【艦これSS】不器用を、あなたに。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/
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539: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 00:56:58.87 ID:BMm/1y0AO 続きを投下します p.s.遅れましたが令和おめでとう! http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/539
540: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 00:57:44.77 ID:BMm/1y0AO −−− 同日 22:00 古鷹と青葉の部屋 青葉「あの...古鷹さん」 古鷹「どうしたの青葉?」 就寝の準備を進めていたルームメイトの古鷹に青葉は声をかけた。 青葉「大規模作戦...。上手くいくでしょうか...」 青葉は不安気に言った。 古鷹「...心配?」 青葉「はい...」 その返答に古鷹の表情も少し曇る。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/540
541: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 00:58:37.76 ID:BMm/1y0AO あぁ、またやってしまった。 彼女にはずっと笑顔でいて欲しいのに・・・ いつもそれを壊してしまう自分が、本当に情けない。 青葉はそう自責する。 古鷹「大丈夫だよ。青葉の練度なら、きっと上手くいくよ」 古鷹「青葉はもっと自信持たなきゃ!」 古鷹は天使のような微笑みで励ましてくれた。 天使はいつだって希望の光を青葉にもたらそうとしてくれる。 だがその光は時に、闇を強調してしまうのである。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/541
542: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:00:09.84 ID:BMm/1y0AO 青葉「いえ、その...私はいいんです。気を抜くわけではないですけど、前哨部隊ですから。」 青葉「でも、古鷹さんは攻略本隊じゃないですか...。危険度がかなり違います」 古鷹「...青葉は心配し過ぎだよ」 古鷹は俯いている青葉に近寄って頭を撫でた。 古鷹「油断はするつもりないけど、私だって練度高いんだよ?」 古鷹は子供を落ち着けるような優しい口調で言う。 古鷹「今回の作戦だって、主力殲滅まで全て任されるっていう事が初めてなだけだよ」 古鷹「厳しい海域に赴く事自体は何回もやってきたんだから。心配しないで」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/542
543: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:01:44.59 ID:BMm/1y0AO 顔を上げれば、古鷹は優しく青葉を見つめていた。 真っ先に彼女の綺麗な左目の光に目を奪われた。 青葉はその輝きに吸い込まれていくのだ。 私がその輝きを受け取る事はできない。 むしろ私がそれに包まれるしかないのである。 青葉「本当は、古鷹さんの隣で戦いたかったんです」 青葉「青葉なりに、少しは強くはなりました」 青葉「それでも、ちっとも古鷹さんの横に並べる気がしないんです」 古鷹「青葉...」 古鷹の表情が再び曇り出す。 それでも彼女の左目は相変わらず輝いている。 その眩しさに涙が出てくる。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/543
544: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:02:29.45 ID:BMm/1y0AO 青葉「古鷹さんを守れるようになりたいのにっ、私は弱いままなんですっ...!」 青葉「今度こそ私が古鷹さんを、って思うのに...!私は自分にすら勝てなくてっ...!」 青葉「こうやって、いつも迷惑しかかけられなくてっ...!!」 耐えきれず泣いてしまった青葉を、古鷹は優しく抱きしめた。 古鷹「大丈夫だよ、青葉。迷惑なんかじゃないよ」 古鷹は優しく背中をさすってくれた。 古鷹「青葉は心配性すぎるだけなんだよね。普段飄々としてる反動が一気に来ちゃうだけなの」 古鷹「それにね、青葉が私をそんなに想ってくれる事はすごい嬉しいんだよ」 天使は微笑む。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/544
545: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:03:39.70 ID:BMm/1y0AO 青葉「でもっ...私は古鷹さんに甘えてばっかで...」 青葉「これじゃいつまで経ってもっ...」 古鷹「気にしないでよ、そんな事」 古鷹が青葉の言葉を遮るように口を開く。 古鷹「私はいつまでも青葉の隣にいるよ」 古鷹「だから、「いつか」でいいじゃない。ずっと待ってるからさ」 彼女は優しく、そう言い切るのだった。 青葉は本音ではそれに従いたくはなかった。 古鷹への依存を正当化したくはない。 彼女の優しさに甘え続けるなど、あってはならない。 罪を背負っているのはこの私なのだから。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/545
546: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:05:05.19 ID:BMm/1y0AO それでも、結局はそうするしかないのかもしれない。 頭の中にしつこく湧き起こるものを消す事はできないのだ。 それは影のように常に追ってくる。 考えないように意識するほど、それを考えてしまう。 私は罪からは逃れられないし、逃げてはいけないのである。 そして私は...未だにそれらを受容できないでいる。 逆に私がそれらに呑まれてしまっているのである。 青葉「今でも...古鷹さんが中破や大破したりすると息が止まりそうになります」 古鷹「...うん」 青葉「お願いです...無事に作戦を終えてください...」 青葉「私では何も力になれません...行っても逆に迷惑をかけてしまいます...」 青葉「だから祈る事しか出来ないんです」 そう訴えるように言うのだった。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/546
547: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:06:10.42 ID:BMm/1y0AO 古鷹「...青葉達が前哨戦で敵を減らしてくれれば、その分だけ私達攻略部隊も楽になる」 古鷹「だからさ、そんなに卑下しないでよ。青葉の頑張りはちゃんとみんなの役に立つんだから」 優しい言葉が耳に染み渡る。 古鷹「それに何度も言ってるじゃない。私は青葉が居るから頑張れるんだよ」 古鷹「青葉が居てくれるだけで...私は嬉しいから...」 古鷹はそう言って青葉を抱きしめた。 今日も青葉は天使の救いに包み込まれるのである。 古鷹「ほら、青葉。もう寝よう」 青葉を抱きしめたまま、古鷹が優しく言う。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/547
548: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:07:10.33 ID:BMm/1y0AO 古鷹「早速明日から大規模作戦に向けての演習が始まるでしょ?」 古鷹「ちゃんと眠って、明日に備えなきゃ」 青葉「そうですね...」 古鷹「青葉が眠るまで手繋いでであげるからね」 そう言うと古鷹は青葉の後ろに回していた手を解いて、再び微笑みながら青葉を見つめた。 古鷹の綺麗な金色の左目が、涙で濡れた青葉の顔を照らした。 この眼差しはなんて綺麗で残酷なんだろう。 青葉はそう思うのだった。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/548
549: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:08:13.82 ID:BMm/1y0AO −−− あぁ、またこれだ・・・ 暗闇の中を、僕は仲間達と進んでいた。 しばらく進んでいると、僕達は敵と交戦することになった。 もうこのシーンにはうんざりだ。 「扶桑...!魚雷が来てる!」 結果を知っている僕は、扶桑に向かって叫んだ。 ・・・それでもやっぱり魚雷は扶桑に当たってしまう。 扶桑はまた脱落だ。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/549
550: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:10:28.41 ID:BMm/1y0AO そしてこれだけでは済まない。 「満潮っ!」 「朝雲っ!山雲っ!」 あっという間に敵の熾烈な砲撃で僕以外の駆逐艦仲間は全滅する。 そして次は・・・ お願いだ、沈まないで。 そう言おうとすぐ近くの旗艦を見た。 しかしその艦は、何故か不敵な笑みをこちらに見せていたのだ。 「じゃあ、貴方が沈めば?」 その言葉に僕の思考は固まってしまう。 ・・・僕にとっては不思議な事ではないのだが、その場の僕にとってはまるで意味が分からないのである。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/550
551: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:11:32.16 ID:BMm/1y0AO 「私を不幸にさせるこんな艦隊、邪魔でしかないわ」 そう言ったその人は、主砲を最上に向けていた。 ・・・は? まさか・・・やめろっ・・・! その場の僕の願いは届かず、最上は即座に炎上する。 味方に・・・いや、たった今敵になった者によって、最上は一瞬で沈められた。 ・・・思い出した・・・こいつは・・・! 許さない・・・絶対に許さない・・・! そしてようやく僕が、そこにいる僕に同化するのである。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/551
552: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:14:28.55 ID:BMm/1y0AO こうして驚きが憎しみに変わった時、既にソイツは僕に主砲を向けていた。 「さようなら、時雨。アンタらとの関係を終わらせられるなんて...幸福だわ」 そう言って、アイツは僕を撃った。 激しい怒りに支配されながら僕は沈んでいく。 それでも僕は不思議とある種の安らぎを得ていた。 ・・・むしろこれでいいのだ。 そうとすら思っている。 ただ、絆を引き裂き仲間を捨てて喜ぶお前だけは・・・絶対に許さない。 本当の仲間たちと共に、お前を全否定してみせる・・・! こうして時雨は目の前の戦艦への憎悪を抱きながら、深淵な世界に優しく包み込まれていくのであった・・・ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/552
553: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:16:30.02 ID:BMm/1y0AO −−− 12月16日 朝 目覚まし時計の音が聞こえる。 目は開いたが意識まではまだ微睡みから離れない。 この心地よい安息とお別れするのはなかなか気が進まない。 夕立「時雨〜!村雨〜!起きるっぽ〜いっ!」 しかし結局は犬みたいにいつも元気な姉妹艦によって強制的に起こされるのである。 時雨「ふわぁ...おはよう...」 村雨「夕立は朝から元気ねー...。一番に起きたみたいだし...」 時雨と共にたった今起きたばかりの村雨もまだ眠そうである。 白露「むむっ、いっちばーんは私!」 既に起きて顔を洗っていた白露が洗面所から顔を覗かせていた。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/553
554: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:18:00.39 ID:BMm/1y0AO 時雨「はは...そんな所まで競わなくても...」 いつも通り姉妹艦は朝から賑やかだ。 ふと、今日はよく眠れたなぁと思う。 昨日の事があったから、尚更それは意外であった。 夢の内容はあまり覚えてないが、嫌な夢では無かったのだろう。 ・・・でも何か僕は夢の中で怒ってた気もするのだが。 時雨は嬉しい誤算に安堵しつつ、パジャマから制服に着替える。 村雨「そういえば今日から2人とも...あの艦隊ね...」 村雨が遠慮がちにそう言った。 夕立「...クズ戦艦と同じかぁ」 時雨「提督も酷いよね。まさかわざわざアイツ入れた西村艦隊組むなんて思わなかったよ」 村雨「しかもよりによって旗艦だなんてね」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/554
555: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:19:48.12 ID:BMm/1y0AO 昨日のブリーフィングにてついに大規模作戦の詳細の発表があった。 それによると作戦では前哨部隊と攻略部隊に分け、攻略部隊は3つの部隊で構成するとのことである。 その攻略部隊の第3隊の旗艦が山城で、メンバーが西村艦隊組(扶桑、最上、満潮、時雨)と夕立という構成なのである。 この発表が全艦娘にとてつもない緊張感を与えた事は言うまでもない。 白露「いい?時雨も夕立も、また昨日みたいに何か突っかかってこられたらお姉ちゃんに教えるんだよ?」 いつの間にか顔を洗い終えた白露が会話に参加してきた。 実は昨日のブリーフィング直後に早速、山城とそれ以外のメンバーで口論になっていたのだ。 当然そのような事は容易に想定できたし、誰も驚きはしていなかった。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/555
556: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:20:43.08 ID:BMm/1y0AO そしてその際に、山城はまたも腹立たしい言葉を執拗に使ってきたのである。 白露が指しているのはこの事であった。 夕立「大丈夫っぽい!逆に西村艦隊には不幸戦艦の味方なんて誰も居ないっぽい!」 時雨「そうだね。提督には悪いけど...アイツには絶対に容赦するもんか...!」 提督は昨日、あまりに危険なこのメンバーを発表した際に、こう付け加えるように説いた。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/556
557: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:21:59.76 ID:BMm/1y0AO − 提督「私は皆お互い仲良くしろと強制するつもりはない。だから今まで一切口出しをしてこなかった」 提督「だが今やここは、非常に危険な海域の敵を殲滅させる任務まで任されるほどの鎮守府に成長した」 提督「こうなると艦隊全体の雰囲気に関わる不仲は、もはや見過ごせないレベルであると捉えるしかない」 提督「仲良しになれとは言わない。だが艦隊の戦術の幅を広める為にも、作戦を共に遂行するに相応しい仲にはなって欲しい」 提督「それと当事者達が1番よく分かっていると思うが...この作戦でわざわざ西村艦隊を編成する理由はもう1つある。言わずとも伝わるはずだ」 提督「だからどうか、お互い不満はあるだろうが、他でもないこのメンバーで海域攻略に貢献して欲しい」 提督「それがきっと、君達全員が望む結果をもたらすと私は信じている」 − http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/557
558: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/05/03(金) 01:23:00.42 ID:BMm/1y0AO 提督の望みはもっともだし、言わんとする事も分かった。 だが、それでもアイツへの嫌悪をどこかに置いておけるわけではない。 そもそも提督が問題に感じている不仲だって、絆を大事にして結束を固めてきた私達を馬鹿にしてぶち壊したアイツのせいなのだ。 アイツが存在しなければ最初からこんな事は起こっていないのに。 今更になって、まるで喧嘩両成敗のような言いぶりをする提督に、時雨は少し不満を感じたのであった。 時雨「まぁ第3隊の編成については...思う事はあるけど...古参勢が会議で認めたって事だし受け入れるよ」 時雨「だけどアイツについてだけは...絶対に許さない...!」 時雨「アイツは仲間じゃない...!クズ戦艦の手なんか借りずに私達で攻略してやる...!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546269785/558
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