【艦これSS】不器用を、あなたに。 (624レス)
1-

353: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:38 ID:LY9D/QEiO携(12/38) AAS
当初は出撃海域にある諸島周辺の敵を殲滅したら帰投する予定であった。

しかし2戦終えて作戦目標完遂を確認した時、前方のそう遠くはない位置にもう1部隊いるのが見えた。

龍驤が偵察機で確認するとその部隊も軽空母1と重巡洋艦3を含むのみにとどまり、セオリー通りに制空権を取れればこちらが優勢を取れる編成だった。
そしてそれは客観的に考えても可能であると思われた。

また残弾薬に関しても余力があることもあり、瑞鶴は艦隊の同意を得たうえでその部隊の殲滅も行うことに決めた。

この際にもちろん状況報告も司令部へしており、提督も瑞鶴の判断に同意している。
省1
354: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:40 ID:LY9D/QEiO携(13/38) AAS
こうして予定外の戦闘を始めたが、ここでまず最初のトラブルが起こる。
先ほどまでと同様に制空権を取ってから段着観測射撃で圧倒した。

ここまでは良かった。

しかしその砲撃の最中にいきなり扶桑の足元に魚雷が爆発したのだ。
そして自身や他の味方にもさらにいくつかが命中した。

相手方の駆逐艦がたしかに魚雷を発射していたが、肉薄してるわけでもない距離でのそれは牽制用でしかない。
そしてその雷跡は皆読み切って避けていた。

それなのに魚雷が当たったのなら可能性は一つしか無かった。
省1
355: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:41 ID:LY9D/QEiO携(14/38) AAS
ソナーを積んだ村雨が探知できなかった理由は、相手方の精度の低い砲撃がこちらの周辺に飛び散り聴音機能を封殺していたからであった。
その隙に雷撃可能範囲にまで侵入されていたのだ。

とはいえ既に水上の敵部隊には優勢に戦闘を進めていたためこれをまもなく殲滅し、潜水艦についても村雨が壊滅させた。

瑞鶴は幸運にも軽微な損害で済んだが、魚雷の不意打ちをもろに受けた扶桑など数名がこの時点で小破状態になった。

だがこの程度の損害で済んだことはむしろ及第点でもあった。

帰投に際して瑞鶴は、今度は対潜警戒を厳として慎重に進むことにした。
356: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:43 ID:LY9D/QEiO携(15/38) AAS
そして諸島間を縫うように来た道を戻り、ついにそこを抜け開けた場所に到達した時であった。

次のトラブルに見舞われることになる。

艦隊メンバーの目には右手側遠くからかなり多数の航空機が飛んでくる様子が小さいながら映ったのだ。

瑞鶴「ヤバいっ...!」

すぐに瑞鶴と龍驤は発艦体勢に移り、戦闘機をありったけ発艦した。
357: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:44 ID:LY9D/QEiO携(16/38) AAS
これまでの戦闘が順調だったとはいえ、航空機の消耗は無視出来ない程にはあった。

更には味方も対空射撃を想定した装備は全くしていない。

全ては自分ら空母で何とかするしかなかった。

幸いにも今回の出撃での役目は制空権を得ることであったので2人とも戦闘機を中心に搭載していた。

だがその距離からでも分かる敵機の多さを考えるに、それでも制空権を確保するどころか五分五分を死守できるかというところであった。
省1
358: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:45 ID:LY9D/QEiO携(17/38) AAS
しばらくしてそう遠くない地点で両者の航空機が戦闘を開始した。

やはり読み通り五分五分が精一杯というところであったが、ここで更なる試練が到来することになる。

龍驤「...!戦闘してるとこのもっと後ろから第2陣が来とるで!」

そう伝えた龍驤も、そして味方も一瞬にして顔が真っ青になっていた。

今戦闘中の敵機群が第1陣ならば、そしてもし第2陣が爆撃部隊ならば、一気にこちらが壊滅の危機になる。
そもそも現時点でかなり厳しいのにである。
359: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:47 ID:LY9D/QEiO携(18/38) AAS
瑞鶴「提督さん!すぐに救援お願いっ!」

瑞鶴「敵本体を見てないから分からないけど...ヲ級3体分の戦力はある...いや、もしかしたら鬼か姫がいるかも...!」

まずは想定できる範囲で敵の編成を推測しそれを無線で伝えた。
そして続けて無意識的にも次のように言った。

瑞鶴「こっちも空母でやり返すしかない!すぐに加賀さんとかを呼んで!」
360: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:48 ID:LY9D/QEiO携(19/38) AAS
そこで加賀の名前が自然と出たのは、何だかんだで瑞鶴にとって加賀は1番信頼できる先輩であったからであった。

もちろん搭載数といった性能面もそうだが、何より彼女なら性能等に関係なく己の積み上げてきた技術で圧倒してくれるはずという強い確信があったのだ。

やがて提督から救援部隊出撃を伝える無線を聞き、瑞鶴たちはそれが到着するまで撤退しながら懸命に耐えた。
361: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:49 ID:LY9D/QEiO携(20/38) AAS
救援部隊は赤城と二航戦2人の正規空母3人に、古鷹、川内、五十鈴という編成だった。

非常に強力な航空戦力に加え、鎮守府トップクラスの練度を持つ重巡洋艦1隻と軽巡洋艦を2隻、うち片方は対潜能力が非常に高い艦という、頼もしい編成だった。

その時には既に、甚大な被害を被って速度が落ちた瑞鶴達を追い回すように、敵艦隊は目視できる程には縮まっていた。

そしてやはり推測は当たっており、敵にはヲ級だけでなく装甲空母鬼までが居た。

こちらの損害は艦隊全員が中破以上、扶桑と球磨は大破であった。
省1
362: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:51 ID:LY9D/QEiO携(21/38) AAS
到着した強力な救援部隊は圧巻の航空攻撃であっという間に敵を殲滅した。

こうして今度こそ無事に帰還の途につくことになり、瑞鶴は蒼龍に曳航されることになった。
その間に瑞鶴は蒼龍に詳細な戦闘経過を話した。

蒼龍はその話を聞くと瑞鶴にとある事を伝えた。

蒼龍「それなら瑞鶴は大きなミスをしたわけでもないね...帰還したら加賀さんにもちゃんと説明しといた方がいいよ」

蒼龍「今朝のこともあってか、加賀さんは瑞鶴が慢心してたんだと思ってるみたいだから」
363: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:52 ID:LY9D/QEiO携(22/38) AAS
瑞鶴「そんなことは...!たしかに少し気が緩んでたのは認めますけど...」

蒼龍「そうだよね...」

蒼龍は顔を曇らせる。

蒼龍「無線で加賀さん来て欲しいって言ったんでしょ?」

瑞鶴「まぁ一番強いから...パッと思い浮かんだだけです」
省3
364: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:53 ID:LY9D/QEiO携(23/38) AAS
蒼龍「実はみんなも加賀さんが編成に入るもんだと確信してたんだけど...本人が断ってね...」

瑞鶴「えっ...?」

予想通りの瑞鶴の反応に蒼龍は心苦しそうな顔をする。

蒼龍「その、瑞鶴のことを見捨てようとしたわけじゃないと思うの...!私達と赤城さんで助けられると思ったから任せてくれたわけだし...」

蒼龍は慌ててフォローする。
省3
365: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:54 ID:LY9D/QEiO携(24/38) AAS
蒼龍「最初の放送で一航戦の2人、金剛さんと霧島さん、川内型が呼ばれて」

蒼龍「しばらくしてから今ここに居るメンバーの残りが出撃ドックに来るよう呼ばれたの」

蒼龍「それで私達がドック着いたらそのまま出撃だったんだけど、そこで私と飛龍は加賀さんから烈風を貰ったの」

先程の戦闘で敵機を殲滅してみせた烈風は、どうやら加賀から託されたもののようだ。

蒼龍「その時に飛龍が聞いてね、「加賀さんは行かないの?」って」
省1
366: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:56 ID:LY9D/QEiO携(25/38) AAS
瑞鶴「そしたら...何て...?」

蒼龍「...私は行くつもりはない。日頃の注意に反抗してばっかなのだから私の助けなんて要らないでしょう、って言ったの...」

それを聞いた瑞鶴は大きなショックを受けた。

たしかに些細な喧嘩から加賀のことをよく思わない事はある。
むしろそれが平常運転だ。

しかしそのような対立を相手の生存に関わる一大事にまで持ち込む事は、瑞鶴としてはするつもりは無かった。
省1
367: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)02:58 ID:LY9D/QEiO携(26/38) AAS
加賀がしたこと・・・
それは窮地を知っていたうえでの救援拒否でしかない。

要するに加賀の言い分は、気に食わないから瑞鶴は見殺しにする、ということになるのではないか?

瑞鶴「そ、そんな...」

蒼龍「でもさっきも言ったけど、自分が行かなくても助かるって思ってたからそう言っただけで...」

蒼龍「...それに珍しく落ち着きなく気が立ってたし、瑞鶴が慢心してるって決めつけてイライラしてたから咄嗟にそう言っちゃったんじゃないかな?」
省3
368: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)03:01 ID:LY9D/QEiO携(27/38) AAS
瑞鶴「けど、結局は自分の手では助けたく無かったってことですよね」

瑞鶴は食い気味に、しかし元気の無い声で蒼龍に言葉を返す。

蒼龍「...加賀さんも感情表現が苦手なとこあるからさ、瑞鶴がもう少し加賀さんに寄り添ってあげてほしいんだ」

蒼龍「加賀さんは絶対瑞鶴の事大事に思ってるもん!」

蒼龍「このことを伝えたのも、帰還した後に誰かから変な形で知って余計仲が拗れたりしないようにって思ったからで...」
省1
369: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)03:01 ID:LY9D/QEiO携(28/38) AAS
蒼龍「だから帰ったらまずは、加賀さんにも喧嘩腰にならないでさっきの状況を説明してあげて?」

蒼龍「そしたら加賀さんだって瑞鶴が頑張った所褒めてくれるよ!」

そう言われても瑞鶴はやはり納得が行かなかった。
では仮に自分が本当に慢心していたのだとしたら、加賀は容赦なく見捨てるというのか?
それくらい自分は本当に好かれてなかったのか。

瑞鶴の心は悲しみや怒りが混じった複雑な感情で満たされた。

ひとまずは蒼龍の言葉にとりあえず頷くだけして、あとはただひたすら曳航されるのであった。
370: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)03:04 ID:LY9D/QEiO携(29/38) AAS
帰還すると提督や出撃メンバーと近しい者達が出迎えに来ていた。
その中に加賀の顔を見つけた瞬間、瑞鶴は逃げ出したくなった。

しかし提督や翔鶴が居る手前、そういうわけにはいかなかった。

加賀「随分とやられたわね」

真っ先に心配して声をかけた翔鶴や、結果的にかなりの危険が伴う作戦を立案してしまったことに対し詫びを入れてきた提督と違い、加賀の台詞は酷く無感情なものに思えた。

提督への状況説明を終えて他の艦隊メンバーは続々と入渠へ向かった。
省3
371: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)03:05 ID:LY9D/QEiO携(30/38) AAS
加賀「...これに懲りたら上手くいってても慢心しないことね。救援が間に合わなかったら貴方は沈んでたわ」

加賀「まだまだ未熟なのだからもっと精進しなさい」

蒼龍「ちょっと、加賀さん...」

加賀はやはり瑞鶴が慢心したと決めつけていた。
先程の提督への報告をまるで聞いていなかったかのようである。

瑞鶴「慢心...?赤城さんのことしか頭に無いからって何でもその言葉で片付けないでもらえる?」
省1
372: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/23(土)03:07 ID:LY9D/QEiO携(31/38) AAS
赤城「加賀さん、今回瑞鶴は旗艦としてちゃんと動けてたみたいじゃないですか。そこは褒めてあげましょうよ」

赤城も瑞鶴をフォローする。

加賀「ですがこの惨事の発端は、2戦目の後にやや離れた前方の敵を殲滅するのに必死で索敵が疎かになったからでしょう。それは旗艦の責任です」

瑞鶴「そんなの結果論じゃないっ!」

加賀「いいえ。今回の戦闘で貴方が索敵を流れ作業の一環としか考えてないことが分かったわ」
省1
1-
あと 252 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.012s