遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」 (296レス)
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67: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2018/08/13(月)23:26 ID:mSb4wVOg0(1/12) AAS
教会とワインは、切っても切れない関係だ。それは、禁酒法制定化においても例外ではない。

ワインの紫を帯びた赤は、古来より血の色に見立てられ。神の血として、宗教的儀式において欠かせないものとなっており、教会があるところには必ずブドウ畑がある。

むしろブドウの栽培が可能かどうかが宣教先の選定において重要な位置を占めていたとも言われるほどだ。大きい声では言えないが、かつて神と相まみえた聖人たちはワインで酔っぱらって幻でも見たんじゃないかと疑いたくなるほど教会とワインは深くつながっている。

この国において、国民の多くは女神正教の敬虔な信者だ。故に、教会は強大な権力を有している。

そんな教会の、ワイン醸造の一切を禁ずることは国王をもってしても為すことができなかったのは当然と言えよう。
省7
68: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2018/08/13(月)23:26 ID:mSb4wVOg0(2/12) AAS
本来であれば、禁酒法は個人的な道徳の問題であると国も取り合わなかったであろう。しかし、酒市場の独占を狙う一派の画策があわさり自体は混迷を極めていく。

ワインは、ブドウの果汁を発酵されることで作ることができるが、その工法は同じ醸造酒であるビールに比べて酷く時間がかかり、更に穀物として各地で大量に生産される麦に比べてワインの原料となるブドウの収穫量は少ない。

故に、ビールに比べて価格も高く上流層に好まれる酒であった。畑仕事を終え、人々が口にするのは圧倒的にビールの方が多かったのだ。

工業革命による、大量生産はビールの価格低下に拍車をかけた。更には、アルコール度数の高い蒸留酒の台頭である。酒市場におけるワインの量は年々減っていき。ワイン醸造において利権を貪っていた一部教会一派は窮地に立たされる。
省8
69: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2018/08/13(月)23:27 ID:mSb4wVOg0(3/12) AAS
ワインの流通は、現在は教会のみに認められている。儀式で使う分だけ購入できるということだから、それも当然だ。

即ち、そこに魔王軍が介入する術はないと俺は見ている。あばら家を見張るうえで、教会を選んだのはただ単に立地が良かったわけではないのだ。

まあそのおかげで、遊び人がこの部屋を離れることなくワインを飲めるわけなのだが。

「だからと言って、全ての教会にワインがあるわけではないと思うんだが」
省7
70: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2018/08/13(月)23:27 ID:mSb4wVOg0(4/12) AAS
「しかし案外、簡単に譲ってくれたもんだな。いくら抜け穴があるといっても禁制品だぞ」

「教会は、そこら辺緩いからねー。それでは、勇者には悪いけどお先に一口!私の瞳に乾杯!」

水差しからグラスへとワインが注がれる音が部屋に響き渡る。

そして、ワインが喉を通っていく音。聞くことしかできないが、ワインが彼女の喉を滑り落ちていく姿が俺の中で再生される。
省11
71: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2018/08/13(月)23:28 ID:mSb4wVOg0(5/12) AAS
こんなところだろうか。

彼の偉業を、ただの食い意地からの偶然と見るか、好奇心からくる勇気ある行動ととるかは人次第だろう。

ただ世界的娯楽の発見という結果から見れば、彼こそが勇者と称されるに一片の疑いもない。

まだ何も成し得ていない、俺よりは彼は遥か高みにいる……。
省8
72: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2018/08/13(月)23:28 ID:mSb4wVOg0(6/12) AAS
この僅かな時間に起きた事象を、ひとつひとつ噛みしめるように遡っていく。

グラスの半分にも満たないワイン

彼女の鳴らした喉の数

グラスにワインを注ぐ音……
省10
73: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2018/08/13(月)23:29 ID:mSb4wVOg0(7/12) AAS
ワイングラスに手を伸ばす。手が、微かに震えている。

勇者と呼ばれ魔王に一人立ち向かった俺が恐れているだと?いや、これは武者震いだ。

自分を奮い立たせるも、手の震えは止まらず、グラスがカチンと音を鳴らした。

「おいおい、飲む前から酔っぱらっているの?」
省10
74: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2018/08/13(月)23:29 ID:mSb4wVOg0(8/12) AAS
「ビ、ビールよりきつい。ワインを飲んだ後だとビールが水に感じられるくらい、とにかく味が濃い……」

「ビールが水ねえ、お酒初心者にしてはなかなか言うじゃない」

「味だけじゃない。香りもだ。これはもうブドウの域を超えている。ブドウを煮詰めて腐らせた香り?前言撤回だ、まるで香水を煮詰めたかのような匂いだ」

「香水を煮詰めたような匂いねえ。ねえ勇者、知ってる?ワイン通って、ワインの香りを何かしらに例えようとするんだよね」
省11
75: 次回の更新でワイン編を終わります◆CItYBDS.l2 [saga] 2018/08/13(月)23:30 ID:mSb4wVOg0(9/12) AAS
「こんなのもあるわよ。猫のおしっこに、腐葉土!」

「ワインの香りの話をしているんだよな?」

「信じられない?全て、ワインの香りを指した言葉なのよ」

到底、信じられない話ではあったが。ワインの強烈な香りを、具体的に表現するにはそれくらいの語彙を扱わないといけないのかもしれないと妙に納得してしまった。
省10
76: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2018/08/13(月)23:30 ID:mSb4wVOg0(10/12) AAS
「名前じゃなくて中身を見てほしいものだわ!中身を!」

俺には、彼女が単に酒の話をしているようには聞こえなかった。それほどに、彼女の言葉から強い語気が感じられた。

彼女は、俺に名を教えてくれなかったという事実が更にその考えを後押しした。

「名前ではなく中身を見てほしい」この言葉は、彼女自身のことを言っているのではないだろうか。
省11
77: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2018/08/13(月)23:31 ID:mSb4wVOg0(11/12) AAS
「し、しかし、さっきからワインの事をぼろくそに言っているな」

少しの逡巡。

「そういうわけじゃあないけど……」

これまで、歯に衣着せぬ物言いをしてきた遊び人にしては歯切れ悪い。
省10
78: 今日はここまでです◆CItYBDS.l2 [saga] 2018/08/13(月)23:31 ID:mSb4wVOg0(12/12) AAS
「なんで?」

「そりゃあ、二人なら一瓶開けるのに丁度いいからさ」

どうやら、俺には言葉選びのセンスも備わっているらしい。

これまで一人旅立ったがために埋もれていた、俺のセンスがここにきて光輝くとは誰が予想しえただろうか。
省9
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