遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」 (296レス)
上下前次1-新
205: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/12(日)10:49 ID:a8CCrCX80(2/4) AAS
ごごごごご。大扉は、大きな音をたてながら少しずつ開いていく。すると、その音を聞きつけて倉庫の奥から男が出てきた。背が大きく、シャツの上からでもその屈強さが伺われるほど筋肉が張っている。なるほど、一見すると倉庫街で働く大男といったところだ。
「なんだぁ、おまえ?」
「……俺はただ眠りたいだけなんだ」
「じゃあ、家に帰って眠れば?」
省7
206: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/12(日)10:50 ID:a8CCrCX80(3/4) AAS
「今度、人間に化ける時はしっかり靴を履いておけ」
二人の大男は、地面に倒れ伏せ、しゅうしゅうと煙があげ魔物の姿へと変わっていく。変身魔法だ。大男たちの頭から二本の角が、尻からは尻尾が生え、つま先は蹄へと変わっていく。ミノタウロスだ。そりゃあ、蹄があるのだから靴をはく習慣はないだろうさ。
しかし、こいつらいつかの倉庫で出会った連中じゃなかろうな。いや、俺に魔物の顔は見分けられないし、仮にそうだとしても再開を喜び合う関係ではない。
倉庫の中には、信じられないほどの大きさの大樽が並んでいた。大樽からは、あちこちに俺の腕ほどの太さがある配管が伸びている。なんだこれは、ただのラムランナーの拠点とは到底思えない。ここは、何か別の目的を持った施設なのかもしれない。
倉庫の最奥には、中二回になっているところが見える。そこには、倉庫の中だというのに更に小さな建物がぽつんと立っていた。一先ず、あそこを目指してみよう。
省7
207: 今日はここまでです◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/12(日)10:50 ID:a8CCrCX80(4/4) AAS
魔物たちの第二陣がやってきて、俺を取り囲んだ。先ほどの、戦いぶりをみて警戒しているのだろう。単なる力押しでは勝てないと踏んだのだ。しばしの膠着状態は、一人の男によって崩された。
「勇者め! ついにこんなところまで来たか!」
その声は、倉庫の中二階から聞こえてきた。見ると、赤い褐色肌のオーガが立っている。その姿、誰が忘れようか炎魔将軍。
あいつは、遊び人の顔に傷をつけた糞野郎だ。「手加減は抜きだ」と、剣を鞘から抜こうとしたその時、突然背中に激痛が走った。俺の体は宙に浮き、前方へと逆九の字で吹き飛ばされる。
「だめだ、やっばり刃が通らない」
省11
208: 2019/05/12(日)13:34 ID:s2iT3OnXo(1) AAS
久々のバトルに興奮を隠せない
おつおつ
209: 2019/05/12(日)20:46 ID:Y77BCRwDO携(1) AAS
乙
盛り上がってキタ!
210: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/14(火)20:56 ID:X2S/KtAR0(1/4) AAS
炎魔将軍の持つ刃から、ユラユラと揺らめく空気が昇っている。あの刃は、相当な熱を帯びているのだろう。その鋭さは、俺の骨すら断てるかもしれんと、思わず額から冷や汗が滴り落ちる。
すると、まるで俺の恐怖を読み取ったかのように、炎魔将軍が先に動いた。地面を強く蹴り、一瞬で俺との間合いを縮めその炎の剣を横なぎに振るう。俺は、かろうじて後ろへ一歩退き剣をかわした。
背後では、それを待っていたと言わんばかりにミノタウロスが斧を上段に構え待ち構えていた。無理な後退で体制を崩した状態では、斧を避けることは適わない。俺は、勢いそのままにミノタウロスに背中から突っ込む。懐に入られては、ミノタウロスも斧を振れまいという算段だ。
案の定、ミノタウロスは斧を持て余してしまったようだ。せっかくの武器を放り投げ、その逞しい腕で俺につかみかかってきた。しかし、巨体ゆえかその動きは緩慢で俺を捕らえるには至らない。俺は、ミノタウロスの股の下を潜り抜け、その背後に回る。そして、まるで岩山を上るかのようにその背中を登り、遂にはうなじにまで到達し、その首へと手をかける。
だが、その首はあまりに太く俺の腕では到底回りようがない。俺は、ミノタウロスの首に剣をあて、鞘の両端を持ち渾身の力で後ろへと引いた。呼吸ができなくなったミノタウロスは、俺を振り落とそうと体を揺らしにかかる。だが、こちらとて全力を込めているのだそう簡単には振り落とされない。
「ぐおおおおおおおおお」
省8
211: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/14(火)20:56 ID:X2S/KtAR0(2/4) AAS
「やはり、私の剣なら貴様を切り裂けるようだな」
隣では、ミノタウロスが俯きに倒れ、ぜはぜはと息を切らしている。背中には、真新しい一文字の傷がしっかり刻まれている。本当にとんでもない連中だ。
俺は、立ち上がって剣を抜き炎魔将軍へ詰めよる。痛みと、冷たい汗が止まらないが、そんなことを気にしている場合ではない。
ふらりふらりと近づいてくる俺に、炎魔将軍は勝ち誇った顔を見せている。そうやって油断していろ。俺は、細く長く息を吐きだし肺の中から古い空気を追い出していく。ついに空となった肺は、新しい空気を求め大きく息を吸い込んでいく。十分な内気の高まりを感じ、それが頂点へとたどり着いた瞬間、俺は弾かれたバネのように剣を突く。
剣先は、まっすぐ炎魔将軍の喉へと向いていた。しかし、炎魔将軍はまるで俺の狙いがわかっていたかのように僅かな動きでそれをかわした。
省6
212: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/14(火)20:57 ID:X2S/KtAR0(3/4) AAS
「おいおい、もう諦めたのか?」
「まさかっ! 」
炎魔将軍は、俺を訝し気に眺めた後、再び剣を振るってきた。俺は、それらを皮一枚のぎりぎりでかわす。炎魔将軍が目を見張る。攻撃を捨てた、完全な受けの姿勢。普段の俺とは、対極に位置する戦い方だ。
「そんな芸当が、いつまで続くかなっ! 」
省8
213: 今日はここまでです◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/14(火)20:57 ID:X2S/KtAR0(4/4) AAS
がっきーん。
謎の金属音が倉庫に響く、まるで時間が止まったかのように沈黙が訪れた。
剣が、皮すら切り裂くことができずに俺の額でピタリと止まってしまっていたのだ。
炎魔将軍、さらにはミノタウロスすら、そのあまりの光景に空いた口がふさがらずに呆けてしまっていた。
省15
214: 2019/05/14(火)22:24 ID:ssIW+GkDO携(1) AAS
乙
なん…だと?
215: 2019/05/15(水)00:03 ID:Kfbfm6Owo(1) AAS
耐性の勇者ならではだな並みの勇者なら死んでいた
おつ
216: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/16(木)21:48 ID:ao9AIwU40(1/6) AAS
意識が戻った俺は頬に冷たさを感じた。身体を動かそうとするが身動きが取れない。それどころか、目は見えないし、声も出ない。どうやら、拘束された上に地面に放られているようだ。唯一、塞がれていない耳から二人の男の会話が聞こえてきた。
「いやあ、しかし遂に決心していただけたのですね。我々魔王軍に、先代が加わってくれれば百人力です」
「いえいえ、勘違いなさらないでください。今日は、見学に来ただけなのですから」
声の主は、おそらくマスターと炎魔将軍だろう。俺は、目が覚めていることを気づかれないように息を潜める。
「まぁまぁ、そんなことおっしゃらずに」
省6
217: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/16(木)21:49 ID:ao9AIwU40(2/6) AAS
マスターを問い詰めたつもりであるが、猿ぐつわを噛まされているため喉を鳴らすのがやっとだ。
「……」
マスターは、人声も発さずに俺の目をじっと見つめている。……どうも、マスターの様子がおかしい。マスターの目は、酷くくすんでいて生気がない。俺がバーで出会ったのは、綺麗な紅色の瞳を持ち、落ち着きこそあれど生気に満ち溢れた男であったはずだ。それだけではない。顔色も心なしか悪いように見える。それに、その背から立ち上るオーラは只ならぬ様相を呈している。
「将軍。彼と二人きりで話をさせてもらえますか?」
省8
218: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/16(木)21:49 ID:ao9AIwU40(3/6) AAS
「あの娘は……遊び人は、どうしていますか?」
まったく予想外の質問に、俺は声を詰まらせてしまう。マスターは、そんな俺の様子をじっくりと伺っている。俺が何か、隠し事や偽りごとをしないか、僅かな動きから読み取ろうとしているのだろう。
だが、そんな質問がなされるということは。
「マスターの店にも来ていないのか……?」
省5
219: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/16(木)21:50 ID:ao9AIwU40(4/6) AAS
だが、あの無類の酒好きがマスターの店にすら顔を出さないとすれば話は別だ。仮に、店で俺と鉢合わせるのすら避けたいと彼女が思ったとしよう。それでもなお我慢しきれずに、店にフラフラと飲みに来る。それが、あの遊び人という女なのだ。ましてや、半年以上も自分の意思で酒を我慢するなど天と地がひっくり返ってもありえない。そこに、第三者の介入があると推測するのはもはや必然であった。
「いえね、貴方の様子を見て、そのような気はしていたのですが、確証はありませんでしたので。こういった形になり、とんだ失礼を致しました」
「……俺の様子を見ただけで、そこまでわかるのか。流石マスターだ」
「……?あぁ、勇者様は普段から鏡をご覧にならないのですね」
「どういう意味だ?」
省7
220: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/16(木)21:50 ID:ao9AIwU40(5/6) AAS
「……と、なると今日ココに来たのは正解だったかもしれません」
なんか、話を逸らされた気がする。
「どうでしょう。私と手を組みませんか?」
「手を組む?」
省8
221: 今日はここまでです◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/16(木)21:51 ID:ao9AIwU40(6/6) AAS
ふと窓の外をみると、手持無沙汰に事務所の周りをぶらぶらとしていた炎魔将軍と目が合ってしまった。炎魔将軍は、押っ取り刀で部屋に入ってきた。
「せせせせ先代っ! 無事ですか!?」
「やぁ、これはすみません。私が、枷を解いてあげたんですよ」
「はい?」と疑問符を頭に浮かべている炎魔将軍に、俺はマスターの後ろからあかんべーを見舞ってやる。炎魔将軍は歯をむき出しに、何事かを言おうとするがマスターに遮られ「ぐぬぬ」と悔しそうな顔を見せた。ざまあみろ。
「いえね、彼にも見せてあげようと思いまして」
省9
222: 2019/05/17(金)01:09 ID:PRrXoHHDO携(1) AAS
乙
大方の予想を裏切ってまさかのドライ…な訳ねーか
223: 2019/05/17(金)15:36 ID:Qj5KZLGlO携(1) AAS
冒険が終わるかと思ってヒヤヒヤした
224: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/22(水)21:54 ID:n2QIU6Th0(1/5) AAS
炎魔将軍が先頭に立ち、そのあとにマスター、そして俺が続く。階段を降り、大樽の間を進んでいくと背の高い円筒状の構造物が見えてきた。円筒状の先は円錐となっており、倉庫の天井を突き破りそうな勢いだ。
「ビールが何でできているかは知っているな?」
炎魔将軍が前を向いたまま、唐突に声を発した。その口ぶりから察するに、マスターではなく俺に問いかけているのだろう。
「麦だ」
「まあ、その通りだ。正面向かって右手のサイロには大麦が、左手のサイロには麦芽が入っている」
省6
上下前次1-新書関写板覧索設栞歴
あと 72 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル
ぬこの手 ぬこTOP 0.012s