梨子「5年目の悲劇」 (315レス)
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抽出解除 必死チェッカー(簡易版) レス栞 あぼーん

224: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:47 ID:qzmsVTnmO携(1/44) AAS
梨子「待って!」

その声に“彼女”の手が止まる。

梨子「もう、あなたの計画は終わったの! あなたが仕掛けたことも、全部見抜いた! もうこれ以上は、意味がないの!」

まくしたてる。このまま、“彼女”がマッチを擦らないように時間を稼ぐ。

私は、その部屋に満ちている不自然なニオイにはとうに気づいていた。
省2
225: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:48 ID:qzmsVTnmO携(2/44) AAS
果南「ちょっと、これはどういうこと? さっきの電話は……」

騒ぎに反応し、果南がやって来る。

言いたいことは色々あるがまずは皆を呼んで来るようお願いし、私は更に“彼女”に言葉を投げかけた。

梨子「じきにみんなが来るわ。だから、そのマッチを捨ててちょうだい」

「…………」
省4
226: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:49 ID:qzmsVTnmO携(3/44) AAS
曜「梨子ちゃん!」

千歌「嘘……」

ルビィ「そんなことって……」

果南「みんな、連れて来たけど……だって、彼女は……!?」

背後から声がするが、私は振り向かない。
227: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:49 ID:qzmsVTnmO携(4/44) AAS
千歌「どういうことか、説明してくれる?」

梨子「全部、彼女が仕組んだことだったの。鞠莉さんを、ダイヤさんを、そして高森さんを殺したのも、全部彼女が。そうよね?」

その声に合わせて、誰かが室内の電気のスイッチを入れる。
228: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:50 ID:qzmsVTnmO携(5/44) AAS
梨子「────花丸ちゃん」

花丸「…………」

照らされた部屋の中央に居たのは、名指しを受けた国木田花丸本人に他ならなかった。
229: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:50 ID:qzmsVTnmO携(6/44) AAS
果南「マルが、どうして……」

曜「だって、この部屋で確かに首を……なのに、何で?」

梨子「死んだフリをしただけだったのよ」

私は、花丸の目を見据えたまま推理を続ける。

彼女はまだマッチを捨てていない上に、自身もガソリンか何かを被っている。
省2
230: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:51 ID:qzmsVTnmO携(7/44) AAS
梨子「仕掛けは至って単純。あのテーブルに穴をあけて、そこから顔を出す。その上で、身体が下から見えないように鏡を置いた」

梨子「多分、あの黒い布には切れ込みが入っていて、首を出せるようにしていたんだと思う。そうすることで、穴と首の隙間を誤魔化したのよ」

一瞬、視界を部屋の隅へとずらす。

私の推理を裏付けるかのように、置かれているミニテーブルの中央には穴があいていた。

きっと、証拠隠滅のために燃やすつもりだったのだろう。
231: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:52 ID:qzmsVTnmO携(8/44) AAS
ルビィ「でも、ベッドには首のない身体があったのに……」

梨子「あれのことね」

指で示した先。ベッドの上に、あの時の身体がまだ横たわっている。

千歌「え……じゃあ誰なの、あれは」

梨子「ダイヤさんよ」
省2
232: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:52 ID:qzmsVTnmO携(9/44) AAS
果南「あれがダイヤだっていうの!?」

梨子「そう。首を切断して、花丸ちゃんの服を着せてしまうことで、私たちはそれが彼女の身体だと錯覚してしまった」

曜「じゃあ、あの時点でもっときちんと調べていれば……」

ルビィ「花丸ちゃんが生きているってことはすぐに分かった、ってこと?」

梨子「ええ。でもそれは無理だったでしょうね。鞠莉さんも同じように首と胴体で分けられていたから……」
省3
233: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:53 ID:qzmsVTnmO携(10/44) AAS
千歌「でも、何で分かったの? 花丸ちゃんが犯人だって」

梨子「……キッカケは、あの電話だった」

曜「電話って、花丸ちゃんから掛かってきたっていう、あれ?」

梨子「そうよ」

後方からの質問に応答しつつ、花丸の動向を観察する。
省1
234: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:53 ID:qzmsVTnmO携(11/44) AAS
決心が揺らいでいる。

その瞳から、決意の色が薄れている。

心なしか、マッチを握る手からも少し力が抜けているように見えた。

もう一押し。

それを確信した私は、畳みかけるように推理の続きを話し始めた。
235: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:54 ID:qzmsVTnmO携(12/44) AAS
梨子「リアルタイムで起きている殺人。それを印象づけることで、あの死体への違和感を更に消す。それが偽装死体の最大の肝だった」

梨子「現に私も、花丸ちゃんの演技に騙された。けど、よく考えたらそれは不自然なのよ」

果南「不自然?」

梨子「死体の首を切るまでの時間よ」

花丸「…………」
236: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:55 ID:qzmsVTnmO携(13/44) AAS
梨子「よく考えてみて。電話越しに花丸ちゃんが殺されて、少し間が空いたけれど私はすぐに部屋を出た」

梨子「ここ306号室の前ではルビィちゃんが大声を出していたし、このあと窓からロープを伝って逃げなければいけない」

梨子「逃走する犯人の心理とは明らかに矛盾している、首を切るという手間の掛かる行為。手際が良すぎる犯行と相反する、被害者に電話をされてしまったという事実」

梨子「その違和感に気付いた時、もう、あの死体が偽装だったという考え以外は浮かばなかったわ」
237: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:56 ID:qzmsVTnmO携(14/44) AAS
花丸「…………」

そこまで言い終えた私の前で、花丸の手からマッチが滑り落ちた。

私はそれを素早く奪い取る。

花丸「……バレないと思ったんだけどなあ」

ルビィ「花丸ちゃん……」
省3
238: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:56 ID:qzmsVTnmO携(15/44) AAS
花丸「そうだよ、マルが鞠莉さんたちを殺した。全部マル一人でやったの」

曜「なんで、こんなことをしたのさ」

梨子「そのワケはあとにしましょう。まだ、花丸ちゃんがついた嘘を明らかにしないといけない」

花丸「……!?」

花丸の目に、動揺の色が強く浮き出た。
省1
239: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:57 ID:qzmsVTnmO携(16/44) AAS
曜「嘘も何も、花丸ちゃんはもう認めてるんだよ?」

梨子「ええ、普通ならね。ここから先は、ある意味私にしか解けないようになっているのかも知れない」

千歌「話が全然見えないんだけど……」

梨子「あの電話には、もう一つ妙な点があった」

果南「ダイヤの声が入ってたっていう、あれね」
省1
240: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:58 ID:qzmsVTnmO携(17/44) AAS
梨子「ええ、よく考えてみて。さっきも言ったけれど、花丸ちゃんはダイヤさんの死体を自分だと誤認させる方法を取ったのよ?」

曜「……あれ? じゃあ、その時はまだダイヤさんは生きてたってこと?」

梨子「いいえ、違うわ。それこそ、時間との勝負な状況下において、首を切断して、服を着せかえて……」

梨子「何より、そんな中で花丸ちゃんがSOSの電話をすること自体が不自然なの」

千歌「確かに、何やってんだろうこの人……ってなるよね」
241: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:58 ID:qzmsVTnmO携(18/44) AAS
梨子「考えられるのは二つ。一つは、どこかでダイヤさんの声を録音して、それを通話の中に混ぜること」

梨子「けど、喋るかどうか分からないセリフを待つよりも、もっと単純な方法があった」

曜「単純な方法?」

花丸「…………」

花丸の視線が、私を突き刺す。
省1
242: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)01:59 ID:qzmsVTnmO携(19/44) AAS
梨子「さっき、果南さんに確認したわ。以前、ダイヤさん、果南さん、花丸ちゃん……AZALEAの3人で、淡島ホテルの手伝いをした時のこと」

梨子「あの時、ちょっとした騒動が起きて……ダイヤさん、花丸ちゃんを部屋から引っ張り出すために、ルビィちゃんの声真似をしたそうね」

果南「うん、とっても似てた。結局、ホテルの扉には覗き穴があるせいで無意味だったんだけどね」

梨子「そして、果南さんだけは知っていた。姉が妹の声を真似られたように、妹も姉の声を真似られるんだって」
243: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/09(日)02:00 ID:qzmsVTnmO携(20/44) AAS
梨子「そうよね、ルビィちゃん」

ルビィ「…………!」

名指されたルビィは、既に顔面蒼白だった。

きっと、私が通話の違和感に言及を始めた時点で内心は穏やかでなかった筈だ。

彼女は何も答えない。口元が震えている。
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