【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン (776レス)
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736: [saga] 2021/07/11(日)02:28 ID:SXB4DH/W0(1/4) AAS
蜘蛛魔女のクラーグは、火勢を抑えた蜘蛛腹に不死たちを載せ、溶岩だまりを歩いていた。

王の封印の先には、魔女たちから直々に炎の魔術を教わった、デーモンの炎司祭が番兵として立っていたはずだったが、炎司祭の姿は無く、混沌に飲まれて機能を狂わせた石像たちも、姿を消している。
ゆえに封都への道程も、驚くほどに何事も起きない。
不死を荷のように担いで歩くという無茶も、その平静に頼った行いだった。
その静かな行進の容易さのためには、クラーグも荷馬車の真似事の屈辱を我慢できた。

戦士「うぉ…」

不死たちの一人が声を上げたが、驚いていたのは他の不死たちも同じだった。
地下の大空洞を煌々と照らす溶岩だまりは、クラーグの足元から、遠くに見える岩の塔の向こうまで続いており、その大空洞の至る所に、燃える木々と、朽ちた竜の下半身が点在している。

グリッグス「ここは…」
省24
737: [saga] 2021/07/11(日)02:33 ID:SXB4DH/W0(2/4) AAS
ソラール「かはっ!」

数秒か、数刻か、分からぬ時を気絶していたソラールは、全身に走る激痛に目を覚ました。
そして蜘蛛毛にしがみつかせていた両手を離し、無我夢中でエストを懐から取り出し、一滴残らず飲み干した。
激痛は夢のように消え、傷も癒えて、ソラールは他の不死たち同様、爆発が起きた方向に目を向ける。

そして絶句した。
他の不死たちと同じように、クラーグと同じように、眼前に広がる光景に言葉を断たれた。
爆発が起きた地点には岩の塔も、燃える木々も、文明の名残りも、竜の脚も無かった。

そこには、大空洞を縦に貫く、熔けた鉄の城がそびえていた。

クラーグ「………な…」
省11
738: [saga] 2021/07/11(日)02:39 ID:SXB4DH/W0(3/4) AAS
古き地。

世界は分かたれ、神秘に覆われ 、
ただ不死たちの残り香と、死にゆく神々の遺物と、わずかな残り火があった。

だが、闇はすでに、ずっと古くからあったのだろう。
闇は命を生み、命は火を招き入れ、差異がもたらされたのだ。

熱と冷たさと、生と死と、光と闇。
省18
739: [saga] 2021/07/11(日)02:47 ID:SXB4DH/W0(4/4) AAS
指を鳴らす。
クリスタルボウイが行ったことは、たったそれだけのはずだった。
しかし、クリスタルボウイの影は広がり、黒い霧を漂わせる。

神々は、不死たちは、そしてレディとコブラは恐怖した。

拡がる闇は孕んでいたのだ。
意思を。心を。自我を。
羨望を。愛を。
求めることを知っていたのだ。

だからこそ恐怖したのだ。求めに応じてしまう、そのたまらぬ心地良さに。

コブラ「オオオーーッ!!!」
省23
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