【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン (776レス)
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739: [saga] 2021/07/11(日)02:47 ID:SXB4DH/W0(4/4) AAS
指を鳴らす。
クリスタルボウイが行ったことは、たったそれだけのはずだった。
しかし、クリスタルボウイの影は広がり、黒い霧を漂わせる。

神々は、不死たちは、そしてレディとコブラは恐怖した。

拡がる闇は孕んでいたのだ。
意思を。心を。自我を。
羨望を。愛を。
求めることを知っていたのだ。

だからこそ恐怖したのだ。求めに応じてしまう、そのたまらぬ心地良さに。

コブラ「オオオーーッ!!!」

ズバオオォーーッ!!!

コブラは反射的に、クリスタルボウイへ向けてサイコガンを撃ち放っていた。
本能に突き動かされ、意味の無い行いに走ったことは、一度や二度ではない。
だが心の全てを恐怖に支配されたことは、過去に一度しか無い。
しかしこの恐怖は、左手を失ったあの日の、あの瞬間のものですら無かった。

それは手に入れることの恐怖。望まれ、愛されることへの恐怖だった。

コブラ「!?」

コブラの放ったサイコエネルギーは、黒い霧から現れた、小さく暗い煙塊のそばを通り過ぎると、クリスタルボウイに命中する前に細り、消えた。
その煙塊を、クリスタルボウイの影から伸びた掌が握ると、煙塊は掌に収まり、ひとつとなる。
暗く骨張ったその掌は大きく、影から現れつつあるその者の腕は、コブラの身長よりも長かった。
クリスタルボウイの影はさらに広がり、煙塊の主がその全身を露わにする頃、もうひとつの何者かを浮かび上がらせていた。

もうひとつの者は老い、半ば崩れかけていた。

レディ「コブラ!逃げて!!みんなを連れて!!」

レディの叫びも、コブラの耳にはどこか遠くに聞こえた。

煙塊の主は、見上げるほどに巨大な骨の鎌を持ち、その得物に釣り合うほどの痩せた長身をもつ者。
彼女は遺骸の山とも言うべき身体を持つが、その有り様は野心、あるいは渇望に溢れた支配者のものであった。

老いた者は、人の身の丈よりも長い、歪み折れた剣を持ち、その武器に違わず崩れかけた鎧姿。
膨れた体の胴体には大穴が穿たれ、血と灰に歪んだマントに湧く肉色のソウルに身を縛られるその様は、奴隷のものであった。

クリスタルボウイ「コブラよ、これは簡単な話なのだ」

クリスタルボウイ「時を超えて、全ての篝火は繋がっている。だからこそ、篝火に照らされる者も繋がっている」

クリスタルボウイ「王の封印が解かれ、神にとっての貴いものが守られなくなり…」

クリスタルボウイ「篝火の繋がりが闇の神アーリマンの手に渡ればどうなるか……これで分かっただろう」

そして、立ち尽くすコブラの首を目掛け、デュナシャンドラの大鎌は振り回され、脳天には奴隷騎士ゲールの大剣が振り下ろされた。
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