[過去ログ] シン「俺は春香のプロデューサーだ」 (74レス)
1-

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
35: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:44 ID:0kYND+eg0(33/65) AAS
「んー。ミキね、難しい事は分かんないけど……デスティニープランって、自分のサイノーを理解して、そのサイノーにあったお仕事しましょう、って奴でしょ? 美希、それは何か違うって思うなー。

 確かに頑張るのとか、一生懸命とか、美希にはよくわかんないけど、自分がやりたいって思った事を目指して頑張るのが悪いことだと思えないの」

「そ、そうだよ! だからラクスさんも戦ったんでしょ!?」
「……ああ、皆ナチュラルだから、その言葉に説得力がある。
 ラクス達も、普通にそれを供述して、話し合いで解決しようとしていたなら……俺だってここまで悩まなかったさ」

 ハンドルを、強く握る自分の事を、シンは気付いていながらも、抑えきれなかった。雪歩を怖がらせないように、だがそれでも抑えきれない怒りを、声に出し、言う。

「でもアイツらは! 戦場をかき乱して、わけわかんない事だけやって! 最後の最後、漁夫の利で全てを奪った!
省6
36: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:48 ID:0kYND+eg0(34/65) AAS
「……わたしも、シン君と同じ考え、かな」
「春香……」
「だ、だって! 皆傷つくのいやでしょ? 誰だって、人が死んじゃったり、傷ついたり……そんな世の中、嫌に決まってるよ……。

 でも、だからって、頑張ってる人を見限って良い理由にはならない……分かってる……分かってるけど……」

 春香が、真剣な面持ちで、自身の胸に手を当てて、そう言い放つ。彼女の優しさが生んだ、シンへの同調か、それとも――

「……まあ、どうせデスティニープランは、もう二度と実現されない。ラクス派の連中が、データを削除している最中らしいから」
「えぇ!? でも、テレビではまだ議論をしているって……」
「先に先手を打ったんだよ。こうすれば、世論がどう傾いても対応出来る。その為に今四方に動きまわってるんだ」

 その事実に、社内が再び騒めく。凄い事を知ってしまったという、恐怖心と興奮がせめぎ合っているのだろう。だがシンはそれを何とも思わず、ただ春香に向けて言葉をかける。
省8
37: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:54 ID:0kYND+eg0(35/65) AAS
「じゃあシンくん。お先に失礼しますっ」
「お先に失礼します」
「ああ、ゆっくり休めよ。明日は朝イチでミーティングだからな」
「あ、雪歩。これからご飯食べに行こうよ!」
「うん。あ、この間新しい焼き肉屋さんがね――」

 そう言って、ビルからどんどんアイドル達が帰っていく。
 先ほどまで騒がしかった雑居ビルが、どこか寂しく感じて、シンは一口、コーヒーをすすった。

「ふふ、どうやら皆と打ち解けたようですね、シンくん」
「はい。――あ、音無さん。この書類なんですけど……」
省12
38: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:55 ID:0kYND+eg0(36/65) AAS
 スーツの女性が、シンへ近づき、その眼鏡を押し上げた。
 シンは軍人時代の名残ですぐに立ち上がって、敬礼をしようとした寸での所でそれを押止め、深くお辞儀をした。

「俺、新しく765プロで働く事になった、シン・アスカです。よろしくお願いします、律子先輩!」
「はい、よろしくお願いします」

 スーツの似合う、女性と言うのが第一印象だった。彼女は髪を後ろでまとめた眼鏡をかけた女性だった。
彼女が、秋月律子。765プロが誇る【竜宮小町】をプロデュースする、シンの先輩に当たる人物だった。

「若そうに見えますけど、幾つなんですか?」
「十七です」
「じゅ、十七!? 私の二つ下じゃないですか!」
省12
39: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:57 ID:0kYND+eg0(37/65) AAS
「双海亜美だよ! たぶん兄ちゃんの担当になる双海真美とは双子で、妹なのだ!」

 右頭頂部で髪を短く結っている少女が、自己紹介しながらニシシと笑っている。
 伊織とは違い、子供らしい言動と行動がどこか可愛らしく、シンは「よろしくな」と頭を乱暴に撫でた。

「三浦あずさよー。ふふ、年下の可愛い男の子が、まさかプロデューサーなんて。人生わからないものねぇ」

 先ほどの二人とは違い、大人の魅力を持つ女性が一人。
その若々しいショートカットと相反するようにある体つきが、男を魅了するのに十分な魅力を備えていると、シンはすぐに実感する。

「このメンバーが……」
「ええ、竜宮小町。さすがに知ってるわよね」
「ああ。SMOKY THRILL、好きだぜ」
省5
40: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:58 ID:0kYND+eg0(38/65) AAS
「それより律子さん。この書類なんだけど……」
「ああ、私がやりますから。他の予算分配、手伝ってくれる?」
「やり方を教えてくれれば」
「小鳥さんと一緒に教えるわ。――これで、毎日徹夜コースから解放されるわぁ」
「ぴよ……社長は手伝ってくれないし……」
「そう言えば今日真と美希が『社長って社長室の置き物だよね』って言ってたな」
「あながち間違ってはいないですね」
「小鳥さんまで――って、また経費で飲んでる。やっぱ置き物だわ」

 こっちの会話もどこか面白い。シンが予算分配の書類に頭を悩まされていると、そこで亜美たちが声をかける。
省6
41: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:59 ID:0kYND+eg0(39/65) AAS
「……さて、と。じゃあ事務はこれで終わりか? 案外難しかったな」

「話には聞いてたけど、ホントにコーディネイターなのね。あそこまで早いタイピング初めて見たわ」

「コレくらいやらないと、実戦中にOS書き換えられないからな」

「ぴよ?」

「なんでもないです。それより、ウチの取引先に関してなんだけど」
省6
42: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)23:01 ID:0kYND+eg0(40/65) AAS
「さて……事務所はもう誰もいないし、戸締りも確認した……帰るか」
 まだ慣れない職場での一日を振り返りながら、その渡された鍵を持って事務所を後にしようと、階段に手をかけた、その時だった。

「……はて、見慣れないお方がいらっしゃいますね……事務所に、いか様でありましょう?」
「え――」

「申し遅れました。私、こちらの765プロにてあいどるをしております、四条貴音と申します」

 階段から、一人の女性が上ってくる。
 その動きの一つ一つが、まるでラクス・クラインのように洗礼された動きで近付いてくるのを、シンはどこか唖然としながら見据えていたが、すぐに意識を戻して言葉を繋ぐ。

「俺は、君の新しいプロデューサーになった、シン・アスカだ。よろしく」
「なんと。新しいぷろでゅーさー殿でいらっしゃいましたか……それは御無礼をいたしました」
省12
43: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)23:04 ID:0kYND+eg0(41/65) AAS
「う、うめーっ! 何だこのラーメン! プラントにこんな美味いラーメン屋あるなんて初めて知った!」

「ふふ、そうでしょう。ここのお店は、私が発見したのです」

 ラーメンはシンがオーブに居た頃から好きだった食べ物だ。
 プラントではあまり好まれない食べ物で、チェーン店なども出店は少なく、名店も無いのが現状だったが――シン思わず舌鼓を鳴らした。

「これは良いな……今度から暇を見つけてくる事にしよう」

「ぷろでゅーさー殿、その時は私もご一緒させて頂いても宜しいでしょうか?」
省8
44: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)23:05 ID:0kYND+eg0(42/65) AAS
「宜しかったのですか? 支払いを受け持って頂く事になってしまい……」
「まあ、あれから三杯も食べるとは思わなかったけど、これから貴音はトップアイドルになっていくんだ。コレくらい安いもんさ」

(……軍に居た時の給料が、使われずにたんまりとあるしな)

 そう、言わなくても良い事を思い出しながら、ラーメン屋を出ると、貴音が深くお辞儀をした。

「シン……ありがとうございます」
「それより、明日から頑張ろうな。皆まとめてトップアイドルにしてやるから、覚悟しとけよ」
「はい。――シン、一つ宜しいでしょうか」
「うん、どうした?」

「先ほどけーたいに連絡が入っていたのですが――ラクス・クライン嬢をれっすんとれーなーにしたというのは、真なのでしょうか?」
省10
45: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)23:07 ID:0kYND+eg0(43/65) AAS
「おはようございます〜」
「お、春香。おはよう。今日も頑張ろうな」
「あ、おはようシンくん!」

 既に一か月の時が過ぎた。

シンも少しずつ業務に慣れ、少なからず結果を残すようになっていた。

律子の手が回らない所でイベント運営会社に掛け合ってキャンペーンガールを推薦したり、小さなイベントにアイドルを派遣したり等々。
 まだまだ小さい仕事ばかりだが、選り好みが出来ない状況で、アイドル達に仕事を与えていた。

だがやっぱり、どこか彼は不器用で、社長や律子のバックアップ無しでは、満足に仕事を取ってこれない状況が続いていた。
省10
46: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)23:08 ID:0kYND+eg0(44/65) AAS
 だがそんな後押しは必要も無かったようだ。シンの言葉を遮り、頭を下げてお願いしてくる春香の頭を、ワシワシと撫でる。

「おし、その意気だ。ナチュラルでも、その実力があるんだって所、見せてやれ!」
「は、はい!」

 春香が嬉しそうに顔を綻ばせた所で、千早が事務所のドアを開けた。

「おはようございます」
「あ、千早ちゃん! おはよう、実は――」

 春香が千早の元へ駆ける光景を、シンと律子は眺めていた。
省14
47: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)23:10 ID:0kYND+eg0(45/65) AAS
「はい、じゃあ765さんのリハ入ります! その後坂本真綾さんの番になりますんで、坂本さんは準備お願いします」
「はい!」

 坂本真綾の声が響き、シンは春香と千早の背を押した。

「じゃあ春香、千早。マイクテスト、演出プラン、可能な限りリハ中に見直しとけよ」
『はい!』
「よし、行って来い!」

 春香と千早が、ステージへ向かい、周りのスタッフと挨拶をしている光景を見据えながら、シンはどこかその雰囲気をおかしいと思っていた。
シンも何度か、挨拶周りでテレビ局の中に入った事はあったが、その独特な雰囲気――
 何というか、物作りに携わる者達特有の、気概みたいなものが何一つ感じられない。
省14
48: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)23:12 ID:0kYND+eg0(46/65) AAS
 嘘だ。シンは常に、テログループの動向には目を光らせていた。
 何があるわけでは無いが、自分が面倒を見るべきアイドル達が事件に巻き込まれないように、元軍人の嗅覚を活かしているのだ。

「【遺伝子の夜明け】っていう、何だかわけわかんないテログループ組織がね。このテレビ局と繋がりがあるって情報を掴んだの」

 その情報は、シンが掴んでいなかった情報だ。やはり何だかんだ、ザフトに居た頃の情報網を残しておけばよかったと、少しばかり後悔をする。

「で、その極秘調査と、万が一の時の為に動ける人員として、私が潜入調査してるってわけ」
「お前が? 白兵戦の成績、俺より悪かったお前が?」
「悪かったわね! これでもザフトは人員不足なのよ。あたかもラクス様が仕組んだかのように、経費削減されちゃったし」

 聞き流そうとした寸での所で、気になった所を問う。
省16
49: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)23:13 ID:0kYND+eg0(47/65) AAS
「……悪いな、ルナ。何か困った事あったら、すぐに言ってくれ」
「そうならない事を祈るわ」
「……それよりさ、坂本真綾って何だよ」
「知らないわよ……バルドフェルド隊長が勝手に命名してくれたのよ。次、私のリハだから」
「ああ」

 そこで、春香と千早がリハーサルを終わらせて、周りのスタッフにお辞儀をしている光景を見据えながら、スーツのポケットの中で、携帯端末が震えている事を察した。仕事用の携帯だ。
 だがここで出るのはマズイ。このスタジオは通話厳禁となっている。

「あの、通話室って」
「通話室は別棟にしかないんで、ここからだと外出て貰った方が早いですね。裏口、近くにありますから」
省9
50: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)23:16 ID:0kYND+eg0(48/65) AAS
『テレビ局から、出ていただけましたか?』
「そりゃ局内は通話禁止だし――何の用だ?」
『ルナマリアさんからお聞きになっていると思いますが、そちらの局は【遺伝子の夜明け】なる組織が関わっています』
「ああ、それは聞いたけど――」

『問題が発生しました。既に――あの番組は、乗っ取られています』
「え――」

 その時。シンの目の前に、一台の護送車が急停止した。

 その護送車には至る所に、砂時計のマークがプリントされている。ザフトの護送車だ。

 護送車の後部座席から、一人の男性が顔を出した。――キラ・ヤマトだ。
省6
51: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)23:19 ID:0kYND+eg0(49/65) AAS
「では本番三分前です!」

 スタッフの声が響き、春香と千早は水を飲みながら、衣装の確認をしていた。
その横から、坂本真綾が春香達に近付き、声をかけた。

「あなた達が、765プロの子?」
「え、あ、はい! わたし765プロの、天海春香です!」
「如月千早です。坂本真綾さん、ですよね?」
「ええ、今日はよろしくね。――それより、シンはどんな感じ?」

 千早と春香が顔を合わして、千早が問う。

「シンを、ご存じなのですか?」
省6
52: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)23:22 ID:0kYND+eg0(50/65) AAS
 そこで、ガシャンと照明が落ちる音がスタジオに響いて、スタッフが慌ててその場にかけ寄ると、銃声のような轟音が響き渡った。

「!」
「い、今の音、何……?」
「あの、スタッフさん――」

 千早が、近くのスタッフに声をかけようとしたその時、春香達にチラつかされる、鈍く光る黒い金属――拳銃だった。

「全員その場を動くな!」

 先ほどまで、リハーサルの指示を出していたADが、どこからか銃を持ち出して、それを周りに見せつける。
省5
53: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)23:27 ID:0kYND+eg0(51/65) AAS
 同時刻 ザフト護送車内。

『こちら、プラントテレビ局前の映像です。ごらんください、既にテロリストグループによる占拠が始まっております!』

 シンとキラが搭乗する護送車の中で、複数のモニターがニュース映像を流している。
 キャスターから伝えられる内容は、人々を委縮させるには十分すぎるほど、事件性あるものだった。

『近隣住民の避難は完了しておりますが、このまま占拠が長引けば被害の増加が見込まれます。
 ザフト軍部隊による迎撃は、まだ時間がかかるとしておりますが――』

 そこでニュースが切られ、数秒の沈黙。その後にシンが口を開いた。
省12
54: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)23:28 ID:0kYND+eg0(52/65) AAS
「落ち着いて、シン! もちろん、そうなる前に取り押さえるつもりだった。
 でも、例の予算削減、人員削減に加えて、連中の動きが早すぎたんだ」

 タブレット端末を取り出して、映像をシンに見せる。それを普段の仏教面をさらに強めたような表情で見据えるシンに向けて、キラが続ける。

「ボクやアスラン、それに加えてイザークやディアッカも、本当はすぐにでも駆けつけたいけど――」

 タブレットに移された光景。テレビ局周辺には、ザクウォーリアの一個中隊が、完全武装をした状態で配置されている。

「ウィザードこそ装備してないが、ザクウォーリアか……横流し品、だよな?」
「うん。デュランダル派の動きがあまりに早すぎた。データが消される事を知って、完全消去される前に、デスティニープランのデータを得るつもりみたいだ。
 ――武力と、それに伴う人々への恐怖で、デスティニープランを賛同させやすくすることも考慮した上で」
省12
1-
あと 20 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.012s