[過去ログ] シン「俺は春香のプロデューサーだ」 (74レス)
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19: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:51 ID:0kYND+eg0(17/65) AAS
「――となるとまずはレッスンを優先的にやってくしかないな……トレーナーさんとかは?」
「それが……前の戦争の影響で、安くひいきして貰ってたトレーナーさんが地球へ……」
「マジか。じゃあ今はもしかして」
「独学。資金不足でね」
「念の為考慮しておいて良かった」

 シンが溜息をつくと、真と雪歩が首を傾げる。

「レッスンの方は俺が何とかする。これから誰か来る予定は?」
「えっと、千早ちゃんがこれから」
「千早……えっと、如月千早か」
省13
20: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:52 ID:0kYND+eg0(18/65) AAS
 その言葉にお辞儀で返し、荷物を更衣室に持っていく前に、シンが口を開いた。

「後は」
「さっきコンビニで美希を見かけたので、そろそろ来るかと」

 再びタイミング良く扉が開く。今度登場した少女は、金髪のロングヘアにかかったカールが可愛らしい、大人びた少女であった。

「おはようなのー」
「美希、おはよ!」
「おはよう、お茶飲む?」
「おはようなの真くん、雪歩! お茶はさっき綾鷹買ったから大丈夫なの!」

 星井美希。765プロダクションのアイドルで、大人びた風貌をしているが、実年齢はまだ十五歳だ。
省13
21: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:53 ID:0kYND+eg0(19/65) AAS
「ねえ皆、シンの第一印象ってどんな感じ?」

 真が問いかけると、千早が答える。

「そうね……かなり若いんじゃないかしら。年齢は聞いた?」
「17歳だって……一応千早ちゃんよりは年上だけど」
「それでも一つしか違わないのね……プラントでは15歳から成人だし、珍しくはないけど」
「結構カッコイイって思うな〜。寝癖そのままなのはちょっとだけマイナスポイントだけど」
「ボクの見立てだと、結構鍛えてるよ! 細そうに見えて、必要な所にはキチンとした筋肉が出来てる!」
「何にせよ、仕事が出来るなら問題は無いわ。――私は、歌が歌えれば、それで」
「……そうだね」
省10
22: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:55 ID:0kYND+eg0(20/65) AAS
「へぇ〜。シンって、大型まで運転出来るんだ」

 八人乗りエレキカーを運転しながら住所を確認するシンに、真が関心の声を上げる。

「つっても、珍しくないだろ? 最近はオート化も進んで、運転自体は珍しくないし」
「あ、そこの角を左です」
「ああ。それより美希、今流れてるのがお前らの曲か?」
「うん、GO MY WAY!なの」
「明るくて可愛い曲じゃないか。俺社長から渡されたディスクの中、THE IDOL M@STER しか入ってなかったからさ」
「メンバーはそれぞれ、セカンドシングルまでCDを出してるんですよ」

 雪歩の教えてくれた情報に「へぇ」とシンが関心を持つと、後部座席に座る春香に声をかける。
省5
23: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:56 ID:0kYND+eg0(21/65) AAS
女の子らしく、鼓舞するような印象を持つ歌は、今の春香にはあまり似合わないと思ったシン。
――いや、この歌う春香こそが、本当の春香なんだろうと仮定したシンの耳に、真の呑気な声が聞こえてくる。 

「ボクもこの曲大好きなんだよね! 歌詞が凄い女の子らしくてさぁ!」
「あはは、ありがと……」

 少しだけ苦笑して、応じる春香。その春香に合わせて、千早がシンに声をかける。

「シン。あそこのビルです。駐車スペースは――」

 エレキカーの駐車スペースを教えると、シンが頷き、レッスンスタジオの前に一時停止させた。
省7
24: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:04 ID:0kYND+eg0(22/65) AAS
「ラクス・クラインです。皆さん、本日は頑張りましょうね」

 準備運動で体を動かしていたほぼ全員が腰を抜かした。その姿を見据えて、シンがくくっと笑みを浮かべた。

「ほら。腰抜かした」
「ラ、ラクス・クライン、議長……?」
「ほ、本物!? この前の戦争で出た、偽者さんとかじゃなくて!?」
「な、何で、こんな所に……!?」
「び、ビックリして、あ、足がガクガクしてますぅ……!」
「あふ。あ、テレビでよく見る人なの!」

 美希だけは、腰を抜かしていない。
省10
25: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:09 ID:0kYND+eg0(23/65) AAS
 美希がラクスの元に行って「テレビでよく見るけど何のお仕事してるの?」等と能天気な質問をしている横で、シンは雪歩と真に詰め寄られていた。

「し、シンッ! これは一体どういう事さ!?」
「どうもこうもない。ただボイスレッスンがあるし、ラクスが居たら百人力だろ?」
「そ、そうだけど……でもぉ……うぅ……」

 その二人を橋目に、美希を押しのけ、千早が興奮したような表情をしながらラクスへと駆けた。

「あ、あの! わたし、ラクスさんの歌声が大好きで……!」
「あらあらぁ、私も千早さんの曲聞きましたわ。青い鳥、凄く綺麗な歌声でした」
「あ、ありがとうございますっ! 是非、ラクスさんにご教授を!」

 何度も何度も、ラクスへとお辞儀をし、そして笑みを浮かべる千早。その千早の後ろで、春香が唖然とした表情をしていた。
省11
26: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:19 ID:0kYND+eg0(24/65) AAS
「千早さん、そこの音程が半音ズレてますわ」
「え……あー、あー♪」
「はい、大丈夫ですわ」

「あーあーあーあーあー」
「美希さんは、もう少しお腹から声を出す練習ですわねぇ。
 息を五十秒程かけてゆっくりと吸いこんでから、今度は先ほどと同じ時間をかけてゆっくりと吐きだしてくださいな」
「はいなの〜。す〜」

「雪歩さんは千早さんと同じく、音程調整の練習ですわ。筋自体は良いですから、後は練習さえこなせば、歌唱力は自信をお持ちになって」
「は、はいですぅ!」
省17
27: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:23 ID:0kYND+eg0(25/65) AAS
「よし、次は体動かすか。ラクスさん、参加してくか?」
「はい♪ 最近は事務仕事ばかりで、体が鈍っていましたもの」
「そりゃ評議会議長じゃな……よし、ダンスレッスンに移るぞ!」
「ダンスレッスンは、誰が監督するの?」

 真の問いに、溜息をつくシン。

「当分はダンスレッスンというより、体力作りに励む事になるが――まずは真」
「うん」
「俺もある程度ダンスを練習してみる。踊れる曲を一曲踊ってくれ」
「へ? う、うん」
省6
28: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:28 ID:0kYND+eg0(26/65) AAS
数分後、激しいダンスのワンフレーズをすぐに踊れるようになったシンを見据えて、真が声を上げた。

「す――凄いよシン! ダンスを習ったことがあるの!?」
「無いよ。言ってなかったっけか? 俺はコーディネイターだから、体力には自信があるんだ」
「そ、そんなレベルじゃないよ! だって、この曲のダンスってかなり難しいよ!?」

「正直俺も、全てのフレーズを踊れって言われたら、絶対にもっと練習が必要になるだろう。俺の体はダンスをする為に作られた体じゃないしな」

 だが、とシンが口にする。

「ダンス経験がない俺でも、今の練習でここまで出来るんだ。日頃からレッスンしてるお前らなら、もっと完璧にできるはずだ。
省3
29: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:33 ID:0kYND+eg0(27/65) AAS
「……はい、お疲れ! 皆良く頑張ったな!」
「凄い……凄い充実したダンスレッスンだったよシン! ボク感動しちゃった!」

 真だけが、シンのレッスンに耐え切り、その充実した内容に感服しているが、他の面々は全員汗をダラダラと流して倒れこんでいる。

「も、もう駄目ぇ……」
「あふ……ミキ、疲れちゃったのぉ……」
「はぁ……はぁ……」
「さすが……コーディネイターね。真と同等に踊れる逸材が、普通にプロデューサーやっているのだから」
「はぁ、はぁ……少し、違いますわ……」

 汗だくとなりながらも、その美しさを放つラクスが、スポーツドリンクを口にしながらも、シンを見て意見をする。
省6
30: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:34 ID:0kYND+eg0(28/65) AAS
 ですが、と一拍置いてから、アイドル達の表情を見比べ、そしてラクスは言う。

「千早さんの歌、真さんのダンス、そして美希さんのビジュアルを見てわかる様に、本当の天才は時にコーディネイトされた者すら超越します。
多くのナチュラルはそれを卑下にするでしょうが、私はそうは思いません。それは私の父、シーゲル・クラインも同じ想いでした」
「コーディネイターとナチュラルの交配によって、コーディネイターが自然へと回帰する方法を提言された方……ですね」

 千早が、ラクスの父、シーゲル・クラインについて思い出していた。

千早の言う通り、ラクスの父はコーディネイターでありながら、その英知の末に生まれた自身らに、疑問を抱いていた。

婚姻統制を実施しなければ、子孫の繁栄すら望めぬコーディネイターとしての有り様を鑑み、当時タカ派の頂点であったパトリック・ザラと、対立を極めた男であった。
省8
31: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:35 ID:0kYND+eg0(29/65) AAS
 ムッと表情を歪め、フンと鼻を鳴らす。

「利用できるもんは利用するさ。――迎え、来てるぜ」

 レッスンスタジオの重たい扉が開かれる。扉の向こうに居たのは、笑顔の似合う男性だった。
その美貌やスマートな体系は、コーディネイターであるだろうとは、容易に想像がつく。

「ラクス、お疲れ様」
「あらキラ。迎えに来て下さったのですか? ありがとうございます」

 キラと呼ばれた青年は、ラクスの手を取って彼女を立ち上がらせ、ハンカチで汗を拭い、シンに向き合った。
省7
32: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:36 ID:0kYND+eg0(30/65) AAS
「最高評議会議長に向けて『アンタを許していない』発言に加えて利用する発言! これは、相当近しい人じゃないと出来ないはずだよ!」
「ミキの推理によると、シンはラクスの恋人なの! そうに違いないの!」
「さ、最高評議会議長の恋人……!? で、でも婚姻統制があるから、あり得なくは――」
「落ち着けお前ら!」

 アイドル達の勘違いに、シンが叫んでまずそれを止める。それと同時に説明を開始。

「良いか、ラクスの恋人はさっき迎えに来た白服の男だ! 俺はラクスに特別な感情は抱いてないし、許さないって発言は、完全に過去の事だ」
「でも、まだ許してないんだろう?」
「……まあ、な。そう簡単な問題じゃないからな」

 真の言葉に、ウッと言葉を詰まらせながらも、頷き返す。
省4
33: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:37 ID:0kYND+eg0(31/65) AAS
エレキカーで向かう事務所への帰り道で、シンが語り始める。

「まず俺は、元ザフト軍人だ。前の戦争じゃ、開戦前にあったユニウスセブン落下事件の時から戦ってた」
「シンが、軍人……?」
「元だよ。今はこうしてプロデューサーやってるしな」
「じゃ、じゃあ……ラクスさんとは……」
「ラクスが、元々デスティニープラン反抗勢力のトップだったってのは、知ってるだろ?」
「うん。だからこそ、世論は酷いよね。乗っ取りだとか何とか」

 真が「あんなお姫様を捕まえて!」とぷりぷり怒っているが、シンはその言葉に頷いた。

「俺は事実そうだと思ってる。俺は前議長のデュランダル議長直属の部下だった時もあるし、正直良い目では見れてない」
省7
34: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:42 ID:0kYND+eg0(32/65) AAS
 赤信号で車を止め、周りの空気が少しばかり暗い気がしたが、彼女たちが蒔いた種だ。今話を止めるのは意地が悪い。

「それが許せなくて――俺は、ザフトを去って、こうしてプロデューサーとして働く事になったんだ。
街中歩いてたら、いきなり社長に『ティンと来た!』とか言われてな」
「……じゃあシンくんは、デスティニープラン賛成派なんだね」

 春香がどこか、シンの言葉に喜びを持っているような、そんな声色になっている事を察して、シンは少しばかり、声のトーンを落とす。

「……それで、戦争が無くなるんならな」
「軍人だから、当たり前かもしれないけど、やっぱり戦争を嫌うんだね」
「当たり前だ!」
「ひっ」
省6
35: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:44 ID:0kYND+eg0(33/65) AAS
「んー。ミキね、難しい事は分かんないけど……デスティニープランって、自分のサイノーを理解して、そのサイノーにあったお仕事しましょう、って奴でしょ? 美希、それは何か違うって思うなー。

 確かに頑張るのとか、一生懸命とか、美希にはよくわかんないけど、自分がやりたいって思った事を目指して頑張るのが悪いことだと思えないの」

「そ、そうだよ! だからラクスさんも戦ったんでしょ!?」
「……ああ、皆ナチュラルだから、その言葉に説得力がある。
 ラクス達も、普通にそれを供述して、話し合いで解決しようとしていたなら……俺だってここまで悩まなかったさ」

 ハンドルを、強く握る自分の事を、シンは気付いていながらも、抑えきれなかった。雪歩を怖がらせないように、だがそれでも抑えきれない怒りを、声に出し、言う。

「でもアイツらは! 戦場をかき乱して、わけわかんない事だけやって! 最後の最後、漁夫の利で全てを奪った!
省6
36: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:48 ID:0kYND+eg0(34/65) AAS
「……わたしも、シン君と同じ考え、かな」
「春香……」
「だ、だって! 皆傷つくのいやでしょ? 誰だって、人が死んじゃったり、傷ついたり……そんな世の中、嫌に決まってるよ……。

 でも、だからって、頑張ってる人を見限って良い理由にはならない……分かってる……分かってるけど……」

 春香が、真剣な面持ちで、自身の胸に手を当てて、そう言い放つ。彼女の優しさが生んだ、シンへの同調か、それとも――

「……まあ、どうせデスティニープランは、もう二度と実現されない。ラクス派の連中が、データを削除している最中らしいから」
「えぇ!? でも、テレビではまだ議論をしているって……」
「先に先手を打ったんだよ。こうすれば、世論がどう傾いても対応出来る。その為に今四方に動きまわってるんだ」

 その事実に、社内が再び騒めく。凄い事を知ってしまったという、恐怖心と興奮がせめぎ合っているのだろう。だがシンはそれを何とも思わず、ただ春香に向けて言葉をかける。
省8
37: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:54 ID:0kYND+eg0(35/65) AAS
「じゃあシンくん。お先に失礼しますっ」
「お先に失礼します」
「ああ、ゆっくり休めよ。明日は朝イチでミーティングだからな」
「あ、雪歩。これからご飯食べに行こうよ!」
「うん。あ、この間新しい焼き肉屋さんがね――」

 そう言って、ビルからどんどんアイドル達が帰っていく。
 先ほどまで騒がしかった雑居ビルが、どこか寂しく感じて、シンは一口、コーヒーをすすった。

「ふふ、どうやら皆と打ち解けたようですね、シンくん」
「はい。――あ、音無さん。この書類なんですけど……」
省12
38: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:55 ID:0kYND+eg0(36/65) AAS
 スーツの女性が、シンへ近づき、その眼鏡を押し上げた。
 シンは軍人時代の名残ですぐに立ち上がって、敬礼をしようとした寸での所でそれを押止め、深くお辞儀をした。

「俺、新しく765プロで働く事になった、シン・アスカです。よろしくお願いします、律子先輩!」
「はい、よろしくお願いします」

 スーツの似合う、女性と言うのが第一印象だった。彼女は髪を後ろでまとめた眼鏡をかけた女性だった。
彼女が、秋月律子。765プロが誇る【竜宮小町】をプロデュースする、シンの先輩に当たる人物だった。

「若そうに見えますけど、幾つなんですか?」
「十七です」
「じゅ、十七!? 私の二つ下じゃないですか!」
省12
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