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シン「俺は春香のプロデューサーだ」 (74レス)
シン「俺は春香のプロデューサーだ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/
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1: </b> ◇bA3jMfAQJs<b> [saga] 2014/10/23(木) 21:07:32.08 ID:0kYND+eg0 いくつか注意事項 ・以前同名のスレを立てましたが、それのリメイク版となります。 ・当時はご意見歓迎でやっていましたが、荒れに荒れてしまいましたので、 なるべく荒れないようなコメントでしたら、頂ければ幸いです。 ・地の文ガッツリで長めです。 ・モビルスーツとかの戦闘描写で、間違っているところがあってもスルーして頂ければ幸いです。 以前 春香「ガンプラマイスター?」 シン「俺は春香のプロデューサーだ」 シン「俺が美希をキラキラさせてやる」 等など書いていました。 お楽しみ頂ければ幸いです。 SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1414066042 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/1
2: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:09:12.52 ID:0kYND+eg0 視線は全て、光で覆われるようだった。 後ろにはレクイエム。そして前には――接近する戦艦が二つと、モビルスーツが一。 型番は不明だが、その名称は形式的に決まっている。 【ジャスティス】だ。 俺は、操縦桿を握りしめながら即座にフットペダルを踏み込み、ヴォワチュール・リュミエールを展開し、彼――アスランの駆るジャスティスへと舞う。 『シン……!』 彼の、迷うような声が聞こえ、一瞬だけ心が揺れ動く。だが、もう全てが遅すぎた。 引き金を引き、コンマ差でビームライフルの砲身から亜高速でビームが射出される。 それを読んでいたように射線上から引いたアスランに、もう一射。共に威嚇だ。これで倒せるとは思っていない。 『シン、もうやめろ! そんな物を守って戦うんじゃない!』 そんな言葉、もう聞き飽きた。 「守るさ……守ってみせる。そして終わらせる……その為にはアンタを討つ!!」 背部左のウエポンラックにマウントされている、高エネルギー長距離ビーム砲を展開し、引き金を引いた。 高出力のビーム砲は、アスランの駆るジャスティスの追加兵装である【ミーティア】の右腕を掠め、そのまま接近しながら――アロンダイトを引き抜いた。 アスランのジャスティスも、サイドアーマーからビームサーベルを二本引き抜き、対艦ミサイルを発射して弾幕を貼りつつ、前方のスラスターを稼働させて後退し始める。 だが、ヴォワチュール・リュミエールの展開と同時に散布されるミラージュコロイドのジャマーが干渉し、ミサイルは尽く外れていき、接近を許したジャスティスのミーティアが、切り裂かれる。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/2
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2014/10/23(木) 21:10:01.27 ID:8+GZLB5DO あれクソつまらなかったからリメイクしたところでつまらないのには変わらないので書かなくていいです 書くならニュー速あたりにしたら叩かれないんじゃない? http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/3
4: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:12:35.13 ID:0kYND+eg0 『ちぃっ!』 咄嗟にミーティアを放棄したアスランは、そのままビームサーベルを大きく振りかぶり、俺のデスティニーへと斬りかかる。 その一本をアロンダイトで、もう一本をマニピュレーターに搭載されたパルマフィオキーナで防いだ後、即座に弾いて頭部の機関砲を射出する。 VPS装甲にこんなものは無意味と思われるが、衝撃自体はパイロットにまで到達する。 どうせ無意味な武装となるのならば、少しでも有意義になればいい。 『っ――! お前は一体何を守っているつもりだ! 後ろにあるものをよく見ろ!』 レクイエムの事を差し、アスランが叫ぶ。 『あれは人でも国でもない! 従わない物を焼き尽くす兵器なんだぞ!?』 「わかってるさ、そんな事は!!」 叫ぶ。それと同時にもう一度アロンダイトを構えて突撃する。 反射神経と機体性能の高いアスランとジャスティスに、下手な射撃武器は通じない。 「でもあれは、戦争の無い世界を作る為に、必要な力だ! デスティニープランを成功させるために!!」 アロンダイトの大ぶりの一閃をかわしたジャスティスが、迎撃としてシールドに搭載されたビームブーメランを投げ放つ。 それをビームシールドで弾き飛ばし、そのままパルマフィオキーナを展開してジャスティスに接近する。 『間違っている……! そんな力で、強制された平和で……本当に人は幸せになれるのか!?』 パルマフィオキーナを、ビームシールドで防いだ後にビームサーベルを縦に一閃する。それをヒラリとかわし、そのまま一寸下がる。 「だったらどうすれば良いっていうんだ!? あんた等の言う理想って奴で、戦争を止められるのか!?」 『何――!?』 「――戦争の無い世界以上に幸せな世界なんて、ある筈がない!!」 ヴォワチュール・リュミエールを最大出力で放出する。 それと同時に動き出す機体が、凄まじいGを発生させながら、ジャスティスへと駆ける。 アスランは瞬発的にそれを感じ取り、ビームシールドを展開させた。 「だから俺はっ!!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/4
5: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:14:49.24 ID:0kYND+eg0 アロンダイトを右手に、そして左掌のパルマフィオキーナを展開しながら急激に接近したデスティニー。 そのままアロンダイトを振り下したのち、ビームシールドで防がれたことを確認すると、それを放棄。 そして機体スラスターとヴォワチュール・リュミエールの併用ですぐさま後ろへと回り込み、左掌のパルマフィオキーナを叩きつける。 すぐさま反応してビームシールドで防ぐものの、それすらを読んでいた俺が仕掛けるのは、もう片方の掌に搭載されたパルマフィオキーナだ。 叩きつけ、無重力の宇宙空間に流されていくジャスティスは、すぐさま背部のリフターを稼働させて持ち直すが、そこにアロンダイトを構えなおしたデスティニーが迫る。 「これが――デスティニーの力だ!!」 『くぅう!!』 ジャスティスのリフターが稼働し、急激に接近する両機。どうやらアスランも接近戦で決着をつけるつもりのようだ。 『シン……お前がほしかったのは、本当にそんな未来か!? 本当にそんな力だったのか!? 過去はもう、取り戻せないかもしれない。そして、今も……もう、取り返しがつかないかもしれない。 だから壊すのか!? お前が守るべき、救いを求めて得た【力】で、その未来すら!!』 両手に一本ずつビームサーベルを引き抜いたジャスティスは、そのままアロンダイトとパルマフィオキーナを受け止め、その脚部に搭載されたビームブレイドが稼動する。 左足のビームブレイドが迫るのを、緊急回避して避けた後、再びパルマフィオキーナを稼働させて突撃する。 「俺だって!!」 理性より先に、言葉が出た。 「守りたかったさ……! 俺の力で、すべてを」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/5
6: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:17:14.03 ID:0kYND+eg0 アスランの言葉が胸に突き刺さり、俺をひどく突き動かした。 激しい戦闘が行われているはずの体。だがその感覚は酷くクリアで、時が止まっているようにも感じられた。 実際は撃ち、斬り、防ぎ、避けを繰り返しているはずの攻防であるのに―― 俺とアスラン、そしてデスティニーとジャスティスだけが、別々に戦っているように思えた。 「でも、俺が撃っているのは敵じゃないって……! 撃つのは奪うことだって……! 力で解決できることなんて、本当は何もないって……! アンタが俺に言い続けてきたんじゃないか!!」 一瞬だけ動きが止まるジャスティス。その隙に、ジャスティスの左腕をもぎ取るように、アロンダイトで一閃する。 ――本当は頭部からコックピットを引き裂くつもりだったのに、だ。 「……できるようになったのは、こんな事ばかりだ……!」 『……違う』 「でも、議長やレイは……戦争のない世界を作る為に、俺の力が必要だって、言ってくれたんだ!」 『違う! 俺がお前に言いたかったのは――』 「この力で全てを終わらせて……その先に平和があるのなら俺はぁ!」 『っ! 諦めるな!』 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/6
7: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:18:57.30 ID:0kYND+eg0 怒号に、身震いさせた隙を突かれた。右脚部のビームブレイドが、デスティニーの左脚部を切り裂き、その衝撃がコックピットを襲う。 シートベルトが体に絡みつくようで、不愉快だった。 『そんな風に力を使ってしまったら――お前は永遠に、力の呪縛から逃れられなくなる!』 ジャスティスが接近し、やられる……と思った瞬間だった。 ジャスティス――いや、アスランは……俺の隙をついて、追撃をしてこなかった。 それどころか、その鋼鉄の腕を、優しく差し伸べているようにも見える。 「……どうして? どうして……あんたは、そうまでして俺を……!」 思えば最初から不思議だった。俺も彼も、互いに互いを認め合っていながらも、どこかぶつかり合っていた。 でもそれでも彼は、俺にいつも語りかけてくれた。その問いに、アスランが答えた。 『……それは、今のお前の姿が、昔の俺と似ているからだ』 「え……?」 『俺はかつて、母を殺された憎しみだけで、戦いに身を投じた。そして親友と殺し合い、友を亡くし……そして、全てを忘れて力に溺れた。 だからわかる……! 今のお前の気持ちが……! 自分の無力さを呪い、ただ闇雲に力を求めて……。 だがな、シン! その先には何もないんだ! 心は永遠に救われやしない!』 嘆きにも似た、アスランの叫び。それは俺の心を抉るように、貫いた。 『だからもうお前も、過去に囚われて戦うのはやめろ…… 明日に、未来に目を向けるんだ!』 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/7
8: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:20:47.19 ID:0kYND+eg0 俺の中で何かが、壊れていくような気がした。音を立てて、俺を今まで支えていたものが……全て。 理性を振り絞り、遠くなりそうな意識を整えながら、ようやく叫べた言葉は――酷く、脆い言葉だった。 「今さら何を! もう俺は選んだんだ、この道を! なら行くしかないじゃないか!!」 パルマフィオキーナを稼働させ、思いきりジャスティスのビームシールドに叩きつける。 「アンタが正しいって言うんなら――俺に、勝って見せろ!!」 その衝撃で、強く突き飛ばされたジャスティスは、月面基地に背部から落ちた。 背部のリフターが稼働して、衝撃を殺したんだろうか、スピーカーから、アスランの嗚咽に似た声が聞こえてくる。 ゆっくりと――彼の機体に近づく。 早まる鼓動、それに合わせて漏れる息。 「はぁ……はぁ……!」 『シン……!』 「これで……やっと終わる……」 ウェポンラックから、アロンダイトを抜き放ち、二つ折りになったそれを展開する。 「この戦争も……俺の【戦い】も……!!」 それを、ジャスティスに向けて突き出して、狙いを定める。――止めを指すなら、苦しまないようにしてあげたい。 「全てがっ!!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/8
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2014/10/23(木) 21:22:49.21 ID:GLz9bJf8o ドコモ君は毎回頑張ってんなwwwwww http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/9
10: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:23:15.36 ID:0kYND+eg0 『っ――まだだ!!』 その瞬間だった。 背部から急激に近づいてくる動体反応をセンサーがキャッチした。ジャスティスのリフターだ。 「リフターだけ……!?」 そちらに意識を向けた瞬間、ジャスティスのシールドに装備されていたアンカーが、アロンダイトを構えた右腕部を捕え、ジャスティスに機体を引き寄せた。 『まだ終わらない――!』 ジャスティスの蹴りが、デスティニーを襲う。 無重力で吹き飛ばされたデスティニーと、その巨体を一所懸命に留めようとした俺の意識がジャスティスから遠ざかったその時、ジャスティスの脚部に搭載されたビームブレイドが、デスティニーの左腕部を切り裂いた。 「くそっ! よくも――」 また、センサーが動体反応をキャッチ。再び、リフターだ。 「うぁっ!」 リフターは、その羽に搭載されたビーム刃を展開させ、デスティニーの残った右腕部を切り裂いた。 それと同時に――デスティニーの動力炉が、悲鳴を上げた。 急激にパワーダウンしていく。先ほどの衝撃で、月面に墜ちていく。 「……アスラン、あんたやっぱり……強いや」 漏れ出した言葉。 俺は、ゆっくりと月面へ落ちていく自らと、その機体を思いながら、警報を鳴らすアラームが響くコックピットの中で――そっと、目を閉じた。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/10
11: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:27:03.54 ID:0kYND+eg0 天海春香は、プラントにあるシェルターにて、膝を折って自身の診断表を手にして、項垂れていた。 その姿を見据え、彼女の親友である如月千早が、一言彼女に聞く。 「春香、大丈夫?」 「大丈夫、だよ」 彼女の言葉はどこか心此処に非ずと言った感じで、千早はオズオズと、その春香の手で握られた診断表を手に取った。 それは、ギルバート・デュランダル議長が提唱した、デスティニープランにおける、遺伝子情報の分析結果だった。 彼女――アイドルである天海春香の適性が一番高い職業は、保育士適性だった。 「う、嬉しいな。私、子供とか好きだし。アイドルをやめて、保母さんになれば、みんな、みんな幸せなんだね」 「春香、デスティニープランは、あくまで目安なのよ。少しだけ正確な職業適性検査みたいなもので――」 「だって、皆デスティニープランで適正通りになったら、不満なんて出ないじゃない。ほら、私もアイドル止めて、保母さん目指せば――」 「春香」 「……今さ、戦争やってるんだよね。デスティニープランに反抗する勢力と、ザフトとの戦い」 「ええ」 「……反抗勢力、勝っちゃわないかなぁ、って……そう、思っちゃうんだ……! わたし、嫌な子だ……!」 「そんな事ない! 春香は、春香は!」 「千早ちゃんは良いじゃない! 歌手として、アイドルとしての適性が認められてるから! 第二のラクス・クラインって……! そう、適性が出てるからそんな事……そんなことが……!」 千早は、目を伏せて、そして唇を閉じた。それ以上言う事は、彼女には出来なかったのだ。 「……ごめんね、千早ちゃん。わたし、ちょっとお手洗いに行ってくるね」 「……ええ」 シェルターのお手洗いに向けて歩き出す春香。その姿を見据える、千早。 シェルターに設置されたテレビが、今速報を伝えた。 ――ギルバート・デュランダル議長は、メサイアの崩壊に巻き込まれ、死亡が確認された。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/11
12: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:31:34.63 ID:0kYND+eg0 少年が、プラントの街中をただ歩いていた。 少年は少しだけ浮かない顔をして、その私服姿で周りの人々を見据えて、目を伏せた。 ――この世はまた、平和になった。 そう考えて、自分に何が出来るのか、何をしなければならないのか、そう考えている、その時だった。 「ん、そこで顔を伏せている君」 声が聞こえた。 少年は顔を上げて、声の方向を見ると、そこには初老の男性がいた。 スーツを着て、その少しだけ皺のある眼鏡姿を視線に捉えた少年は「何か、用ですか?」と問いかける。 「うーん……」 男性は顎に手を付けて、少年の表情を見つめる。 どこか気恥ずかしくなって、彼が少しだけ顔を逸らした瞬間、男性は彼の肩に強く、手を乗せてこういった。 「ティン、と来た! 君、うちの事務所で、プロデューサーをやらないか?」 少年は、ふと男の視界を捉えて、そして―― 何も考えなしに、頷いた。 ――これが俺の出来る事なのだと、盲信するしかないのだろう。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/12
13: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:39:59.80 ID:0kYND+eg0 「……またダメだったね、オーディション」 「うぅ。ごめんね、春香ちゃん、真ちゃん……私が、男の人が苦手なばっかりに……」 「仕方ないよ雪歩。審査員が男の人だったんじゃ」 綺麗な黒髪と、その凛々しい顔立ちが印象強い、少年のような少女が、フッと溜息をつきながら言うと、茶髪の少女が少しだけ泣きそうな表情で謝っている。 黒髪の少女は、菊池真。プラントにあるアイドルプロダクション・765プロで駆け出しのアイドルとして活動中のアイドル。 茶髪の少女は、萩原雪歩。真と同じく765プロで売り出し始めたばかりのアイドルだ。 その数歩後ろで、天海春香が顔を上げた。街中の液晶テレビに映し出された三人のアイドルを視界に捉えて、口を開く。 「――竜宮小町」 「あ、ホントだ。こんな大々的な所に映してもらえるようになったんだ……あの三人」 「凄いねぇ……」 765プロダクションが誇る、新鋭ユニット【竜宮小町】だ。 春香達と同じく765プロで同時期に売り出されたにも関わらず、プロデューサーである秋月律子の手腕で、今や一目置かれるアイドルとして、世間に知られている。 三人は、そのテレビに映された三人の映像が終わると同時に再び歩き出し、話始める。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/13
14: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:41:11.28 ID:0kYND+eg0 『次のニュースです。プラント最高評議会議長に着任した、ラクス・クライン議長の声明により、ザフト軍事費用の一部削減が決定づけられました』 「ねぇ真。この後の予定って、何があったっけ」 「何にもない。ずーっと空白。律子は竜宮小町で手いっぱいだから、ボク達に仕事は回ってこないし」 『それによりブルーコスモス一派による過激テロが増加するのではないか、という懸念に対し『現在対応中』との見解を示しました』 「……このまま、誰にも知られないまま、アイドルやめちゃうのかな、私達」 『なお、ギルバート・デュランダル元議長の提案されたデスティニープランの再検討については明言されておらず、 専門家は「クライン議長の政治は非常に不明瞭で危険である」との見方を強め、批判している模様です』 「……結局、デスティニープランが正しかったのかな」 春香がそういうと、真と雪歩も押し黙り、歩む足を早めた。 事務所に着くまで、三人は会話一つ交わさなかった。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/14
15: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:43:44.64 ID:0kYND+eg0 765プロダクションは古びたビルの三階にある、こじんまりとした事務所だった。 エレベーターは壊れて、エアコンも修理中。事務所のドアは開きが悪く、会話は駄々漏れとなる始末の事務所だった。 その事務所に帰ってくる三人。春香、雪歩、真の三人だ。 『お疲れ様です』 「あ、三人ともお帰りなさい。どうだった?」 事務服を着込んだ女性――音無小鳥。彼女は笑顔で三人を出迎え、そっと尋ねた。 「……ダメでした」 真が答え、小鳥も残念そうな表情を浮かべる。 「あらあら。あんまり気を落さないでね――あ、そろそろテレビ、つけないとね」 「何かあるんですか?」 「竜宮小町の三人が、生放送インタビューを受けるのよ。今度映画の主題歌を歌う事になったからね」 「七彩ボタン、でしたよね」 「……いいなぁ、三人とも」 「ボク達も、すぐに追いつこうよ!」 「ふふっ、そうね。それが良いわ」 テレビの電源を付けた、丁度その時だった。765プロの玄関口をノックする音が聞こえて、アイドル三人と小鳥はそちらを見据える。 アイドルやプロデューサー等であれば、ノックなどせず入ってくるはずだ。 「お客さんかしら? はーいっ、どちらさまでしょうか」 不用心にも、答えを聞く前に扉を開けると、そこにはアイドル達とそう変わらない年の風貌をした少年が、スーツ姿で立っていた。 そのスーツも下し立てのように新品同然だったが、彼がまとった雰囲気は、アイドル達より何倍も生きている大人のような雰囲気をしていた。 「あの、765プロの事務所って、ここで大丈夫、ですよね」 「はい、こちらが765プロです。失礼ですが、どちら様でいらっしゃいますか?」 「俺……いえ。私、今日からこちらで働く事になった……」 少年は、一瞬だけ深呼吸をして、言葉遣いを直し、居心地が悪そうに、ただ、言い放つ。 「シン・アスカって言います。高木社長っていらっしゃいますか?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/15
16: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:45:08.28 ID:0kYND+eg0 765プロの社長室に、シンは小鳥に連れられた。社長である高木が笑いながら、シンの肩を叩く。 「よく来たね! 我が765プロは、君を歓迎するよ!」 「もう! 新しいプロデューサーさんが来るなら前もって言っておいてくださいよ社長!」 「はは、すまないね。何せ急に決めた事だから」 さて、と一息ついた社長が、視線を事務所の談話室に移す。 「今、事務所にはあの三人だけかね?」 「ええ、春香ちゃんと真ちゃんと、雪歩ちゃんの三人です。これから美希ちゃんと千早ちゃんも来ますが」 その確認をして、今度は軽く挨拶交じりに、シンへお辞儀をする高木。 「さて、シン君。分かっていると思うが、私は社長の高木順二郎だ。何か困ったことがあれば、何でも相談してくれたまえ」 「はい」 「あ、わたしは事務員をしてる、音無小鳥と言います。社長と同じく、何かあれば何でも相談に乗りますよ」 笑みを浮かべて、名を名乗る小鳥に、シンが少しだけ笑みを浮かべる。笑えば可愛い子だと思いながら、小鳥は更に続ける。 「ちなみに。私の事は『小鳥さん』でも『小鳥ちゃん』でも『小鳥お姉さん』でも、何でも大丈夫ですよ」 「ありがとうございます、音無さん」 「あ……音無さん、ですか」 残念に思いながらも、ハッとした小鳥。 (でもチャンスぴよ。こんなイケメンが入社してくるなんて……音無小鳥2X歳、このチャンスを逃すでないぞ!) 「ふふ、ふふふふっ」 「音無君はトリップしてしまったか……まあ構わないだろう。事務所のソファで雑談をしている三人は、ウチのアイドルだ。自己紹介してきたまえ」 「あ……はい、わかりました」 顔を赤め、にやりと笑いながら不敵な声を浮かべる小鳥に少しだけ恐怖心を覚えながら、シンは社長室を出て――その三人の少女に、向き合った。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/16
17: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:46:48.06 ID:0kYND+eg0 「――という事で、今日から皆のプロデューサーになった、シン・アスカだ。よろしく頼む」 挨拶をすると、三人が同時に『よろしくお願いします!』と声を上げる。その後にシンへ声をかけた最初の少女は、菊池真だった。 「新しいプロデューサー……かなり若そうに見えますけど、幾つなんですか?」 「ああ、17歳だ。皆と同い年くらいじゃないか? ……というか、あの子何であんな離れてるんだ? 五メートル位離れてるじゃんか」 「ああ……」 真が、部屋の片隅で肩を震わす少女へ近づき、その背中を後押しする。 「雪歩! ちゃんと挨拶しなきゃダメだよ!」 「あ、その……萩原雪歩、です……その……」 オドオドしながら、シンの表情を見据える少女――萩原雪歩。 「ああ、君が。社長から聞いてるよ。男が苦手なんだってな」 「はい……」 俯き、瞳に涙を溜める少女を見据えて、シンは少しだけ笑みを浮かべて手を差し伸べた。 「ま、同年代の男で慣れていくしかねぇよな。敬語とか要らないから、よろしくな、雪歩」 「よ、よろしくお願いします、頑張りますぅ!」 頑張って、そのシンの手を握った雪歩は、数秒後には顔を真っ赤にして、再び事務所の奥へと駆けていく。その光景を苦笑しながら見届けた真が、今度はシンの手を握った。 「ボクは菊地真! 何か敬語で話すの野暮ったいし、シンでいいかな?」 「いいぞ。俺も敬語苦手だし、気にせずにしてくれ」 「じゃあ次は春香――春香?」 天海春香が、シンを見据え、ぼーっとしていた所に、真が声をかける。 「あ、うん。天海春香です。よろしくね、シン君」 「よろしく、春香」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/17
18: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:47:42.48 ID:0kYND+eg0 春香と軽く握手を交わして、春香は再びテレビへと視線を動かす。テレビには、三人の少女が踊っている光景が映り、春香はそれを見つめていた。 (……なぁ真。もらった資料だと、春香って元気いっぱいな明るい女の子ってあったんだけど) (いつもはそうなんだけど……ここ最近ずっとこうで……) (ふーん……) 今はそれ以上聞かず、シンが真に尋ねる。 「とりあえず今からのスケジュールは?」 「あそこのホワイトボードに」 指さした先にあるホワイトボードは、その名をそのまま示していた。 「……ほぼ真っ白じゃないか。あ、でも結構仕事入ってるのが三人位いるな」 「竜宮小町の三人ですね。今テレビに出てますよ」 小鳥の言葉に、シンが春香の眺めるテレビ画面に視線を寄越す。春香の視線は、その三人の少女に釘付けだ。 『では、今大人気! 竜宮小町の三人です! 今回は映画の主題歌を歌われた、と言う事ですが』 『はぁい♪ 竜宮小町の新曲【七彩ボタン】って言います!』 『かなり可愛い曲に仕上がってるよ→』 『若い二人に触れて、私も若返った気がしますねぇ〜』 「水瀬伊織、双海亜美、三浦あずさの三人ユニットだよな。確かに最近良くテレビに出るようになったし」 「三人のプロデュースしてる律子も、そっちに手いっぱいで……ボク達の方にはオーディションの斡旋が精々だよ」 「それも、あんまり効果が無くて……」 真と雪歩の言葉に、竜宮小町以外のプロデュース体制が万全で無い事を悟ると、その重圧がシンに圧し掛かる。これから彼が、竜宮小町以外のメンバーの、面倒を見なければならないのだ。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/18
19: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:51:23.76 ID:0kYND+eg0 「――となるとまずはレッスンを優先的にやってくしかないな……トレーナーさんとかは?」 「それが……前の戦争の影響で、安くひいきして貰ってたトレーナーさんが地球へ……」 「マジか。じゃあ今はもしかして」 「独学。資金不足でね」 「念の為考慮しておいて良かった」 シンが溜息をつくと、真と雪歩が首を傾げる。 「レッスンの方は俺が何とかする。これから誰か来る予定は?」 「えっと、千早ちゃんがこれから」 「千早……えっと、如月千早か」 元々貰っていたデータの中にあったアイドルの事を思い出していると、丁度いいタイミングで、事務所のドアが開いた。 「おはようございます」 青色のロングヘアと、その端麗な顔立ちが印象強い女の子だった。彼女は扉を静かに閉めて、肩にかけていたバッグを手に持った。 「あ、噂をすれば。おはよう千早!」 「おはよう、千早ちゃん」 真が挨拶すると、雪歩も千早に挨拶を交わす。 「おはよう真、萩原さん……春香」 「……うん、おはよう」 春香と千早が、少しだけぎこちない挨拶を終えると、千早の視線がシンへ向いた。 「……えっと、貴方は?」 「俺は新しく、皆のプロデュースを担当する事になった、シン・アスカだ。よろしくな」 「新しいプロデューサー……そうでしたか。初めまして、如月千早です」 「敬語とか要らないから、まあ仲良くやっていこうぜ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/19
20: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木) 21:52:54.98 ID:0kYND+eg0 その言葉にお辞儀で返し、荷物を更衣室に持っていく前に、シンが口を開いた。 「後は」 「さっきコンビニで美希を見かけたので、そろそろ来るかと」 再びタイミング良く扉が開く。今度登場した少女は、金髪のロングヘアにかかったカールが可愛らしい、大人びた少女であった。 「おはようなのー」 「美希、おはよ!」 「おはよう、お茶飲む?」 「おはようなの真くん、雪歩! お茶はさっき綾鷹買ったから大丈夫なの!」 星井美希。765プロダクションのアイドルで、大人びた風貌をしているが、実年齢はまだ十五歳だ。 プラントでは成人だが、生まれは地球なので、まだ子供であるようだ。 「千早さんに春香もおはよう!」 「おはよう」 「おはよう美希」 軽くアイドル達と挨拶を交わした美希は、次にシンへ視線を向ける。 「えっと……お兄さん、誰?」 「俺は君の新しいプロデューサーだ。これからよろしくな」 「ふーん、よろしくなの! ミキは、星井美希なの!」 真がホワイトボードを見ながら、本日の出勤者を確認する。 「今日来るメンバーは、これで全員かな」 「そうか。なら今日はレッスンにするから、準備出来たらスタジオ行こうか」 シンの言葉に、全員が頷いて、更衣室に移動を開始する。 最後に更衣室へと向かった春香の表情が、浮かない表情である事を見て、シンは少しだけ、心配になった。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414066042/20
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