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鳴護アリサ「アルテミスに矢を放て」 〜胎魔のオラトリオ〜 (917レス)
鳴護アリサ「アルテミスに矢を放て」 〜胎魔のオラトリオ〜 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/
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12: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 07:58:51.60 ID:A5mSZxOG0 オルソラ「皆様、お茶が入ったので御座いますよー」 神裂「ありがとうございます、オルソラ――さて、ではやってしまいますか」 アンジェレネ「……うへぇ。またこれは相当な量で」 ルチア「弱音を吐いてはいけませんよ。神は常に私達をご覧になっていますから」 アンジェレネ「い、いやいやいやっ!これってわたし達の仕事じゃあなくないですかっ?」 アンジェレネ「こんな段ボール箱一杯の手紙なんてどうしろって!」 神裂「前にも言ったと思いますが、ここは腐っても『必要悪の教会』の寮です。しかも少し魔術かその手の事情に通じた者ならば分かる程度の」 神裂「言ってみれば『ルアー』みたいなものでしょうか?わざと居場所を知らせ、敵が食いつきのを待つ役割もあります」 アンジェレネ「そ、それはっ理解出来ますしっ、感謝もしてますよぉっ!行き場のないわたし達を受け入れてくれたんですしぃ!」 アンジェレネ「でもこの手紙の仕分け作業はなんか、こう、違うって気がします!」 神裂「と、言われましても。この脅迫文やら犯行声明モドキの中に、たまーに本物の魔術テロ予告が混じっている以上、放置する訳にも行きませんし」 アンジェレネ「だ、だったら当番制にするとか?」 神裂「一人でこの量を捌いていたら、多分気を病むと思いますよ?」 アンジェレネ「むぅー……」 神裂「……後で日本直送の萩の月を差し上げますから」 アンジェレネ「まっかせて下さい!わたしこーゆーのは前々から大得意だったんですからねっ!」 ルチア「……あの、すいません。色々とウチの子がご迷惑を」 神裂「いえいえ、ある意味真っ直ぐに育っててちょっと和みます」 アンジェレネ「いいえっシスター・ルチア!わたしと神裂さんは『スイーツ同盟』として鉄の結束がですね!」 アニェーゼ「その話はやっちまいながらにしましょう。じゃねーと終わらねぇですし」 神裂「それでは各自、いつものように二人か三人で取りかかるように。何かおかしな記述や魔力の流れを感じたら、私かオルソラに言って下さいね?」 シスター一同「はーい」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/12
13: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:00:00.16 ID:A5mSZxOG0 神裂「ではオルソラ、私達も始めましょうか」 オルソラ「それで神裂さんは、あの方に恋文などは渡されたのでしょうか?」 神裂「どうしてこのタイミングでそれが出るんですかっ?!その話題は終わった筈でしょうに!?」 オルソラ「女性から男性の方へ想いを伝えるのには、やはり手書きの文が一番だと思うのですが」 神裂「そ、そうですかね?オルソラもやっぱりそう思いますか?」 オルソラ「それはそうと一度書いた手紙の内容は何だったので御座いますか?」 神裂「どうしてオルソラがそれを知っているのですか?というよりも、あれ?もしかして怒ってます?」 アニェーゼ「なーにを話してんですか、お二人とも。遊んでねぇでお仕事しましょうよ」 アニェーゼ「ってな訳で、それっぽいお手紙が。ちっと見て下さいな」 神裂「では術式に耐性のある私が――『前略、これは警告である。守られるべきであろう』」 オルソラ「まぁ、これは怖いので御座いますよー」 アニェーゼ「どう見てもいつもと変わらねぇんですがね」 神裂「最近珍しいストレートな脅迫文ですね。大抵こういう場合は無理難題をふっかけ、その上で妥協出来るラインにまで落とし込むのですが」 神裂「……ま、相手が“正気”ならば、の話ですけど。さて、要求はどのような――?」 神裂「『――そっちの寮に住んでいるガーターミニスカのシスターはエロ過ぎるんだろ!』」 神裂「『踏んで欲し――いや!せめて隠して欲しい!マジでお願いします!』……」 オルソラ「男の方にはシスター・ルチアの脚線美は目に毒なのですねっ」 アニェーゼ「ね?」 神裂「『ね?』じゃねぇですよっ!?これタダの注意の手紙じゃないですか!?」 アニェーゼ「口調が移っちまいましたけど、まぁでもこれはある意味警告じゃねぇかなと」 神裂「いやまぁ確かにルチアのあの格好はどうなんだ、と思わないでもないですけど」 シスター一同「……ちっ」 神裂「ですから!私がこの格好をしているのは信仰上の理由からです!決してハレンチな意味合いはありませんから!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/13
14: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:01:29.29 ID:A5mSZxOG0 アンジェレネ「か、神裂裂さぁん。これこれ、見て下さいよ−」 神裂「裂が一つ多くなって必殺技みたいですが……はい、承りますよ。えっと」 神裂「『世界はユダヤによって動かされている……!』……はい?」 アニェーゼ「あっちゃー、また痛々しい話が」 神裂「『その証拠に世界の政経財界には多くの――』……あぁ、すいません。これよくあるユダヤ陰謀説じゃないですか」 アンジェレネ「そ、そうなんですよっ!実はわたし達の世界もユダヤ人に仕切られているんですっ!」 アニェーゼ「な、なんだってーーーーー」(棒読み) 神裂「はい、そこ煽らないで!この子は純粋なんですから!」 アンジェレネ「ち、違うって言うんでしょうかっ!?」 神裂「そうですねー……あぁ、例えば日本の高級官僚には東大などが多いのですが、それは『陰謀』でしょうか?」 アンジェレネ「やだなぁ神裂さん、頭のいい人が役人になるのは当然、ですよね?」 神裂「同じく何処の国の政治家や官僚を見ても、その国の最高学府出身の人間が多い。それは当然ですよね?」 神裂「同様に『ユダヤ陰謀論』もタダのネタですからね?統計的に多いかも知れないってだけの話で」 アンジェレネ「う、うわーっ!ここにも一人コントロールされた人が居ますよーっ!?」 アニェーゼ「たいへんだー、どーしよー」(棒読み) 神裂「というか、その手の陰謀論は良く聞きますけど――仮に、その手紙やらネットに書いてある事が本当だったとして」 神裂「『彼らの権力が、たかがその程度の情報操作すら出来ない証拠』だって、分かりますか?」 アンジェレネ「……は、はぃ?」 オルソラ「例えば昨日のバラエティでやっていたので御座いますが」 アンジェレネ「み、見ましたっ!二時間の特番の奴ですよね!」 オルソラ「もしも彼らにそれだけの力があるのであれば、事前に差し止められたりするのではないでしょうか?」 アンジェレネ「――あ」 オルソラ「世界経済を牛耳り、メディアにも多大な権力を持っているのであれば、そんな事態にはならないので御座いますよ」 神裂「そもそも人口比だけであるならば、多くの国の指導者が十字教徒でしょう?それを証拠に私達が世界を牛耳っているとはなりませんよね?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/14
15: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:03:05.35 ID:A5mSZxOG0 シェリー「……ま、チビッ子の言ってる事も間違いじゃなくてだな。確かに事実上の寡占企業ってぇのはあるんだわな」 シェリー「ただそいつぁ大航海時代から築き上げた重商主義のなれの果て、って感じなんだけどよ」 オルソラ「おはよう御座いますのですよ、シェリーさん」 神裂「そろそろお昼なんですが……」 シェリー「悪ぃオルソラ。朝メシ貰えねぇか?」 オルソラ「それで、メールには何と書くおつもりで御座いますか?」 シェリー「何処まで巻き戻ってんだ。つーかエレーナとイワンはもう家に帰ってんだよ」 神裂「ま、まぁともかく分かって頂けましたか?別に納得しろとは言いませんけど」 神裂「特定の職種に特定の人種や信仰が多いからと言って、それだけを以て証拠とするのは暴論を通り越して差別ですからね?」 アンジェレネ「そうだろうと思っていましたよ、えぇっ!」 神裂「最近、ようやくシスター・アンジェレネが自由に生きている理由が分かりました」 アニェーゼ「はい、まぁ多分ご想像の通りだと思います」 神裂「あぁもうっ!こうもっと真面目な!深刻な手紙は無いのですか!?」 オルソラ「それではこちらをどうぞ――『ペンネーム・フルーツポンチ侍(○)』さん」 神裂「止めましょう?それ明らかに違うものが混じってますよね?」 オルソラ「『ネタ予告では出番があったのにどうして削るんですか?やっぱり九兵○殿とキャラが被るからですか?』」 神裂「――はい!と言う訳で話を戻しますが!」 オルソラ「『ずっとスタンバってます』」 神裂「……なんでしょうね。『必要悪の教会』宛の犯行声明、もしくは手紙を使った攻撃が来るかと思えば毎日毎日ネタに特化した手紙ばかり!」 神裂「基本オカルトマニアか、中二病が治らないオッサンの寝言しかないじゃないですか!?」 アニェーゼ「本気だったら余計怖いんじゃないですかねー。あぁいえむしろ“素”でやってる可能性の方が高いかと」 神裂「たまに本気でストーカーっぽい内容もありますけど、それ普通に警察の仕事ですからね……」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/15
16: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:03:55.49 ID:A5mSZxOG0 アニェーゼ「まぁ悪の道に入りそうな方をオシオキをするのも、ある意味私らの仕事っちゃ仕事だと思わなくもねぇですけど」 神裂「……いやいや、いけませんいけません。平和なのは良い事ではないですか」 神裂「安寧を貴びこそすれ、まるで危険を呼び込むような真似はなりません。私も未熟――おや?」 アニェーゼ「そういえばシスター・アンジェレネの躾役兼ツッコミのシスター・ルチアが静かなような……どうかしましたんで?」 ルチア「……えぇ、この手紙がちょっと」 神裂「何か危険な術式でも書かれてあるとか?」 ルチア「そういうのじゃないんです。魔力も微かに感じなくはないですけど、それとは少し違うって言いますか」 アニェーゼ「だったら熱烈なファンからのメッセージカードって奴ですかい?」 ルチア「いえ、それでもありません。カテゴリーからすれば、まぁ脅迫文でしょうか?」 アニェーゼ「んじゃちっと拝借をっと」 神裂「あ、私が」 アニェーゼ「いいじゃねぇですか。ドSのシスター・ルチアを引かせる手紙ってんですから、どんだけだと」 ルチア「シスター・アニェーゼ。その補足語は余計ではないでしょうか」 アニェーゼ「きっとミニスカートとガーターの良さをネチネチ説いた痛々しいポエム――」 アニェーゼ「……」 アニェーゼ「――むぅ?」 神裂「……どうしました?」 アニェーゼ「……何なんでしょうねぇ、これ。駄文っちゃ駄文なんですけど」 神裂「では私も拝見致します。そこまで言われると逆に興味がわきますし……と?」 神裂「これ――」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/16
17: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:05:25.56 ID:A5mSZxOG0 ――某音楽番組 学園都市より生中継 タモ「はい、次は初登場ARISAちゃんです」 タモ「えっと、ライブ会場のARISAちゃーん?繋がってますかー?」 鳴護『はい、こんばんはー……じゃなかった、おはようございます?』 タモ「髪切った?」 鳴護『あ、いや特には切ってないです』 タモ「シングルでミリオン達成だって?すごいんだねー」 鳴護『ありがとうございます。応援してくれた皆さんのおかげです』 タモ「髪切った?」 鳴護『切ってないです』 タモ「まだ学生さんなんだよね。どう、勉強もしてる?」 鳴護『ボチボチですかねー。選択問題は強いんですけど、筆記問題は得意じゃなくて』 タモ「髪切った?」 鳴護『切ってないです。っていうか「似合ってない」って言われてるんですか、あたし?』 アナウンサー「――はい、曲の準備が出来ました。ARISAさんどうぞー」 鳴護『あの、基本髪切った話しかしてないんですけど……』 タモ「はい、という訳でARISAさんの新曲――」 タモ「――『髪切った?』」 鳴護『切ってないです。あと曲の名前と違いますし、順番間違えてるんじゃ?』 鳴護『っていうか柴崎さんから、「ツアーの宣伝して来てね」って言われて――』 ――プツッ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/17
18: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:06:29.09 ID:A5mSZxOG0 ――XX学区 多目的ホール チャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンッ 鳴護『――世界が一つであった時代、私達は何を考えただろう?』 鳴護『世界が二つ出会った時代、私達は何を求めるのだろう?』 鳴護『神様が意地悪をして、私とあなたを引き離したけれど――問題はない』 鳴護『だってもう心を伝える方法は知っているから』 ワァァァァァァァァッ…… 鳴護『私達が子供の頃、もどかしく考えてなかった?』 鳴護『うん、それはきっと今では答えを見つけている――その手に』 鳴護『――世界が一つであった時代、私達は何を考えただろう?』 鳴護『世界が二つ出会った時代、私達は何を求めるのだろう?』 鳴護『言葉は要らない。手を伸ばせば届くよ』 鳴護『この世界にまだ言葉が無かった時代にも愛はあった』 鳴護『――そう、そのまま抱きしめるだけで……』 ジャジャァァンッ……………… ワアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!! 鳴護『――はい、って言う訳でテレビ中継は切れちゃったみたいです。電波が悪いのかな?』 鳴護『けどライブはまだまだ終わらないから、安心してねー?』 ウォォォォォォォォォォォォォッ!!! http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/18
19: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:07:29.40 ID:A5mSZxOG0 鳴護『――みんなーーっ、あたしのライブに来てくれてありがとーーーーーーーっ!』 鳴護『「お休みの日ぐらい大事な人といようぜ」、ってあたしの大先輩は言ってたけど』 鳴護『あたしも大切なファンのみんなと一緒で幸せだよーーっ!』 ファン『おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』 浜面「あっりっさ!あっりっさ!」あっりっさ!」 ファン『あっりっさっ!あっりっさっ!あっりっさ!』 鳴護『でも来年のクリスマスぐらいは好きな人と一緒にいたいかなー、なんて?』 鳴護『どう?ダメ?アイドルが恋しちゃうのはNG?』 浜面「上条もげろ!」 ファン『もっげっろ!もっげっろ!もっげっろ!』 鳴護『えっと、個人名を出すのはちょっとアレだよね。うんっ』 鳴護『みんなー、恋はいいよ?好きな人に好きだって言えるんだし』 鳴護『こんなに良い事って他にないよ。うん、ほんとにっ』 浜面「好きだーっ!結婚してくれーっ!」 鳴護『……さっきから彼女持ちさんの声がする気がするけど、メインスクリーン見て?』 浜面「おぅ?」 鳴護『MC中のアレコレがカメラで抜かれて、世界にLIVE発信されてるんだけど。いいのかな?』 浜面「やだ撮らないでっ!?」 鳴護『それじゃ、次の曲行くよーーーーっ!』 オオォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!! 鳴護『曲名は――』 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/19
20: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage] 2014/04/01(火) 08:07:46.38 ID:ksqURGeSO たなかわいばーん http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/20
21: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:09:02.01 ID:A5mSZxOG0 ――あるファミレス 滝壺 ガクガクガク 絹旗「なにやってんですか、超何やってんですか浜面。滝壺さん置いて一人でライブなんて超有り得ないでしょう」 麦野「ま、常識的に考えりゃペアチケット取る筈が一枚しか当たらなくてさ。それでコッソリ行ったとかじゃないの?」 絹旗「……むぅ。合同ライブとは言え、ARISAのコンサートは超プレミアですけど」 麦野「だからって彼女置いて行くかよ?あのクソったれ、帰ってきたら顔面無くすまでぶっ飛ばす」 滝壺「……かめらに抜かれているのに、必死に百面相してごまかそうとしている」 絹旗「これはこれで超面白そうですね。あ、超録画してツベにアップロードしましょう」 麦野「つかこれ学園都市の……どっかの学区からの生中継なんでしょ?」 絹旗「ですね。タ○さんの音楽番組中継は超途中でキレてしまいましたが」 麦野「あからさまにツアーの宣伝しようとしたから切ったんじゃないの?電波障害かもだけど」 絹旗「ま、学園都市の有線の超強度と比べるのは酷でしょう……って、滝壺さん?」 滝壺「……これ、なに……?」 麦野「どうしたのよ、凄い汗――滝壺?滝壺っ!?」 滝壺「暗い暗い海が見える……その淵には最果てが無く、ただただ赤黒い白い緑の葉っぱが敷き詰められて――」 滝壺「――海から押し寄せるのは――違う!あれは、あれは――っ!」 絹旗「超落ち着いてく――い!」 滝壺「押し寄せるんじゃ、ない!違う、違、血が、地が、智が!」 麦野「救急車を――早く――!」 滝壺「――大海原より帰り来たる。慟哭と怨嗟と、赤子の泣き声、それは――」 滝壺「――凱旋、だ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/21
22: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:10:26.92 ID:A5mSZxOG0 ――同時刻 XX学区 コンサート会場 来賓用駐車場 完全防音を謳うコンサートホールにして野外音楽堂でもあるライブ会場。 しかし鳴護アリサの歌声は人工的に調整された音の流れを無視し、僅かながら会場周辺にも漏れ聞こえていた。 時として多数のクレームで回線がパンクする程、ホールの苦情係は激務であるのだが、今日に限っては楽なものだった。 プレミアチケットとなった招待券がないのに、微かにではあるがおこぼれにありつけた。感謝こそすれ、クレームが入る気配すらなかった。 野球やサッカーの試合が行われているのであれば、適度に“市民の声”を捌く必要があったのに、随分と現金なものだと軽く思っていた。 しかし、それは暫くすると一つの疑念に思い当たる――「静か“すぎる”のではないか」と。 ホールの外を通る車の影も、出待ちかチケットを手に入れられず、未練がましくたむろしている人影も。 普段、普通にしていれば嫌でも目にする影が、当たり前のように存在する雑踏や人の生活音が、何故かポッカリと欠けていた。 今日はクリスマスイブ。冬至も過ぎたばかりだと言うに、得体の知れない恐怖が背筋を這い上がり、暑くないのに汗がぐっしょりシャツを濡らす。 気のせいだと言い聞かせても、どうにも不安で不安で溜らなくなってくる。 『――あー、コーヒーでも買って来るわ』 そう言って出て行った同僚の姿は、未だにあるべき所に帰ってきてない。 所か、休憩時間を大幅に過ぎ、これ以上ないほどに怠慢――。 いや――怠慢なのか?もしかして、得体の知れない何か、よりにもよって鳴護アリサのコンサートの日にたまたま当番になったため、巻き込まれたのではないか? 人影が誰一人と見えず、また同僚も某かのトラブルに襲われてどこかへ消えてしまったとか? そう思って、警備員か誰か、とにかく人の居る所まで出ようと思い、部屋を後に――。 「……ァ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/22
23: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:12:55.79 ID:A5mSZxOG0 バタン。 「あっ、す、すいませんっ!」 部屋のすぐ前に誰かが突っ立っていたらしい。思いのほか勢いよくドアを開けたせいで、相手を転倒させてしまったようだ。 その証拠に半分開いたドアから上半身と下半身が見える。 あぁなんだ、その制服は同じ従業員の同僚のもの。丁度帰って来ていた所に、たまたまぶつけてしまったのか。間が悪い。 「え、っと。どうし、た――」 上半身と下半身?……どうして、それが、別々にあるのだろうか? 普通は、一般的には、それは別セットで数えられるものじゃない。必ず二人で一つ――と言うか、分けては存在しない。出来ない。 けれど、ここから見えるパーツ達は明らかに別の方向を向いていて。 上半身は壁にぶつかり、下半身は床に転がり――あぁ、これはそうか。 同僚の体は、上下に引き千切られていた。 「ひっ!?」 「……ぁっ、ぁっ」 まだ生きているのだろう。壁に寄りかかったまま言葉にならない言葉を紡いでいる。 血の痕が水溜まりを徐々に作り、そこかしこに考えたくもない赤黒い何かが飛び散っていた。生理的にとても受け付けない血臭に胃液が上がってくる。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/23
24: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:15:03.58 ID:A5mSZxOG0 「く、ぷっ……!?」 ダメだ、まだ、ダメだ。吐くのは後からでも出来る。今は少しでも早くこの状況を伝えなければいけない! 警備員でもアンチスキルでも良い!通報が早ければ同僚の命も助かるかも知れない! だから、ただ、早く……! 慌てて部屋に駆け込み、内線用のアナログな電話を取り――音が、しない。 カチャカチャと適当にボタンを押しても、受話器からは何の反応も返っては来なかった。 次に私物の系帯電を取り出して、耳に当て――やはり音はしなかった。これは、どういう。 ふと、思いつく。“そういえば”と。 少し前に行われてたテレビ中継がぶつ切りになった。それは外部の何かが原因だと思っていた。 けれど、それは、違う。 “あの時から既に、ここで何かが起きていた”のではないだろうか? 大規模なテロとか、暴走した能力者だとか、反学園都市の組織とか。 だとすれば、ここにいるだけで、危険だ。これ以上踏み留まるべきではない――そうだ!自分には異常を外部に知らせに行かなければいけない! そう自分に言い聞かせながら、変わり果てた同僚の側を通――。 「――オイ、そこで何をやってんだ!?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/24
25: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:16:04.34 ID:A5mSZxOG0 第三者の声にビクリとしながら、“そういえば”と再び思う。 どうして同僚が殺されてる必要があったのか? どうして自分は殺されなかったのか? 血溜まりが“広がりつつあった”のを察するに、同僚が部屋のドアを一枚隔てた外で殺されたのは間違いない。 ならつまり、そこまで犯人は来ている。 この、目の前にいる少年の所までは。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/25
26: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:17:30.35 ID:A5mSZxOG0 上条「――聞いてんのかよ!?こっちに人が倒れてんだ!アンチスキルを呼んでくれって!」 上条(こっちの……あぁ、手遅れか。息をしてない以前に、この血溜まりじゃ) 社員「あ、う……ぁぁっ!」 上条「アンタ、おいっ!?待てよっ!」 社員「お、お前は何なんだよっ!?ソイツみたいに殺すのか、なあぁっ!?」 上条「あぁ!?」 社員「お前がやったんだろ!?お前以外に誰もっ!」 上条(錯乱してやがる……無理もないけど) 上条(バゲージでの経験がなかったら、俺も似たようなもんか) 上条「落ち着いて考えろよっ!俺がもしお前の同僚?かなんかを殺してたとして、わざわざ話をする意味がないだろ!」 上条「第一俺はお前みたいに汚れてないし!返り血を浴びずに、どうこう出来るってのか、あぁ!?」 上条(……人体切断なんて、能力か魔術で簡単に出来るとは思うけど、まぁそれ言ったらどうしようもないしな) 社員「あ、あぁ」 上条「だったらそのまま聞いてくれ!俺はこっちから近寄らない、いいかっ!?」 社員「あ、あぁ……」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/26
27: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:19:09.50 ID:A5mSZxOG0 上条「取り敢えず何があったんだよ?コイツは誰に殺されたんだ!?」 社員「わ、分からない!ソイツがコーヒー買いに行って、戻ってこないから探しに行こうと思ったんだ……」 社員「そ、そうしたら、ドアの前で!」 上条「アンチスキルに通報は?」 社員「出来なかったんだよ!有線がダメ!携帯もダメ!一体何がどうなってるんだ!?」 上条「落ち着けって!俺もよく分かってないんだから」 社員「お前は、誰なんだ……?」 上条「俺はバイトで観客誘導してたんだよ。島村さんだかって知らないか?スタッフの人で、『島村なのにユニクロ着てる』が持ちネタの」 社員「同期だ!俺と!」 上条「そうそう。んで、コンサート始まって休憩室――ロビーの脇んトコでテレビ見てたら、急に電源が落ちてな」 上条「何かホールや会場は無事なんだけど、こっち側の施設がダメになったみたいで。手分けして見回ってる最中だよ」 社員「明かりが?気づかなかった……」 上条「……何?」 社員「こっちはずっと電気は点いてるぞ……?」 上条「点いてる、って……?お前、そりゃおかしいだろ」 社員「な、何が?」 上条「――こっち“も”真っ暗じゃねぇか」 社員「……はい?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/27
28: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:20:27.54 ID:A5mSZxOG0 上条「俺がマグライト持ってくるまで、照明なんて無かったんだぞ?今だって、ホラ」 社員「……」 上条「つーかお前、電気が完全に消えて、真っ暗闇になってんのにさ」 上条「何をどうやったら、お前の相方が死んでいたって事が分かるんだ?」 社員「見え、るだろう?ほらっ!電気なんか消えてない!」 社員「壁に持たれているのは上半身で!床に転がっているのは足でっ!」 社員「お、俺は外へ出ようとしたら、ぶつかって!それで驚いて!」 上条「……そうか。それじゃもう一つだけ聞いても良いかな?」 社員「な、なんだよっ!?」 上条「今の話から察するに、アンタはこっちの人に指一本触れてないようだが――」 上条「――だったらどうして、『アンタの体は返り血で真っ赤に染まっている』んだ?」 社員「……」 上条「内線が通じないのは当然だ。だってさっきからずっと停電してるんだからな」 上条「非常灯の明かりもここには届かないのに、どうやってアンタは俺を“視て”るんだよ!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/28
29: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:22:17.45 ID:A5mSZxOG0 少年の指摘に息が詰まる。欠損していた記憶が甦る。 同僚は確か気の良いヤツで、喉が渇いたと呟いたのを聞いて自販機へ向かったんだった。 けれど自分はその行為を無碍に踏みにじり、蹂躙し、ハラワタに顔を埋め。 香しい血の臭い。恍惚とした一時を過ごしたのではなかったのか? “そういえば”と三度思う。 忘れていた大事な事。それは。 「帰らなきゃいけないんだった――海へ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/29
30: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:24:20.80 ID:A5mSZxOG0 上条「お前――クソッ!」 上条(皮膚が――鱗?急に緑色になりやがった!) 社員「ゲゴゴゴゴゴゴゴゴゴっ!」 上条「よく分からねぇが――ぶん殴れば!」 パキイィンッ! 上条「ふう、これで元に戻る――ら、ない!?」 ガッ 社員「――ッ!アーァァァァァァァっ!?」 上条「何でだよっ!?どうして元に戻らな――」 パァンッ 上条(俺の後ろから軽い音が響き、それに合わせて男がノックバックした) 少女の声「うー、わんわんっ!がおーっ!」 上条(思いっきり状況に合ってない呑気な――というか、少し萌える唸り声が背後からする) 社員「ぐ、ぐぐ――!」 少女「あっちゃー、やっぱり効かないかぁ。この程度でどうにかなるんだったら『猟犬部隊』出す必要は無かったよねぇ」 少女「筋力の異常増大と知能の低下。テロには有効かも知れないけど、兵士としては無能って所かな?」 上条(女の子?能力者?) 上条(ライトを少し傾けると、丁度その子は右手に持ってた拳銃を無造作に投げ捨て、もう一方の何かを両手で構える) 上条(――ってかアレ、棒状の蛍光灯じゃないのか?どこかからひっぺかして持ってきたんだろうけど、武器になるとは思えない) 上条(相手は銃弾も弾く能力かなんかの持ち主、ぺきぺき折れるガラスの棒じゃ意味が無いだろ!) http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/30
31: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga] 2014/04/01(火) 08:27:58.60 ID:A5mSZxOG0 社員「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 上条「危ない!」 上条(より優先順位の高い“敵”を見つけた男――だったモノ――が、四つん這いの体勢から獣のように跳躍し――) 少女「うん、うんっ!そうだよね、こんな時、『木原』ならこうするんだよね……ッ!」 少女「れーざーぶれーーーどぉっ!」 上条(そう言って彼女は持っていた蛍光灯を突き刺した。勿論レーザーでもブレードでもない、ただのガラスの棒を) 上条(男の大きく開けた口の中へ。口内から胃まで突き抜けるように) ザク!ペキペキペキペキペキペキペキペキペキペキペキッ! 上条(当然、蛍光管は容易に折れる。男の口や気道や食道や胃の中で) 上条(無数の破片に姿を変え、内部から切り刻み続けるだろう) 男「――ッ!?アァ――――――……ッ!?」 上条(激痛が効いたのか、男は何も出来ずに固まってしまう) 上条「エゲツねぇ……つーか想像するだけで痛い」 少女「おーいえー?」 上条「褒めて――は、ないけど、とにかく助かった。ありがとう」 少女「お仕事だしねぇ――って、ごめんね?ちょっと右手出して、ね?」 上条「握手?」 少女「ううん。再チャレンジ、みたいなの」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/31
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