●◎短編小説・曝し場◎● (327レス)
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20: カサリズマ・メモリー 11/13 2003/05/05(月)03:01 AAS
 少女が嗚咽混じりに、何か言っているのが判ってきた。
「やって、チ、やって、ずっ。パパ、ママと……アクマが、ふっ」
「お前の両親のことかいな」
 首肯する。悪魔に殺された両親のことを言っている。
「死んじゃっ、日に、も泣いで……あん、あんたと、じめて会っ、って」
 切れ切れに言う少女の言葉を繋げると、今までの事情が判ってくる。
 初めて見かけた時に彼女が大泣きしていたのは他でもない、その日に両親が殺されたからだ。自分は遊びに出ていて、帰ってくると両親の遺書が残されていたという。
 長年生き、人並み以上に知能が発達した悪魔が両親を嬲り殺す前に書かせたものだとは、その時の彼女には知る由もなかった。
 その後、両親の死は公開されないまま、少女は養護施設に入れられた。世間では、故意であれ事故であれ、悪魔に関与した人間は白い目で見られがちなためだ。彼女は義務教育の拒否権を使い、毎日あの場所へ通って悪魔狩りの親子を見ていた、というわけだ。
「ウチも、アクマガリ、なりたいねん」
 悪魔を狩る存在は唯一、迫害とは逆の待遇を受ける。一般人を悪魔の魔手から救ってくれる守護者なのだから当然のことだ。
「ダァホ、女のガキに悪魔狩りがつとまるか」
「でも、あのアクマたおしたやん」
 指差す先には、銃弾を受けて沈黙した甲殻類がいる。少年は苦々しい表情で唸る。
「テッポウ使いなら、女の子でもなれるもん」
「あのな、オレかて何年も前から修行しとるんや。ついこないだ撃ち始めたばっかのお前じゃ、群れに囲まれたりした時イチコロじゃ」
 下らんと吐き捨てんばかりに立ち上がる。刀を拾って血振りし、納刀した。ナイフも拾って懐に戻す。
「悪魔狩りになるには、よっぽど才能があるか、ええ師匠につかなあかん。一人でなんぼ頑張っても、プロの悪魔狩りになんのはムリや。って、ムリムリのお前に言うてもムダかな」
 しゃがんでいる少女の頭をポンポンと叩き、横を通り過ぎる。
「ま、両親のくれた大事な魂や。生き急いで散らさんとき。こっちは男の修羅の道なんや」
 決まった。親父の名言を選り合わせた、取って置きの台詞だ。何やら後方から、ドアホだのイカレポンチだのイキリだのイケズだのクサイだの叫ぶ声が浴びせられたが、自己陶酔している少年の心には何の影響もなかった。
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