[過去ログ] 愛するが故に無理やり…… Part9 (359レス)
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149: 2013/10/15(火)00:50 ID:xxc6Cgs+(2/11) AAS
見渡す限りが山である。峻峰の麓、狭い扇状地にへばりつくよつに出来たこの小さな街は、要衝ではあるものの隣国と良好な関係が続く現在、ひとまずは寂れた田舎町の様相を呈していた。
通りすがる人は村人と軍人が半分ずつくらいのもので、こちらも関係は良好、街にはいつものほほんとした空気が漂っている。
名物といえば、泡立ちの良い麦酒と、東の森に住み着いている若い魔女くらいのものである。
同僚の話に気のなさそうに相槌をうっていたアルフレッドは、魔女の話題になった途端目の色を変えた。
娯楽もないような僻地の警戒任務にあたる兵士にとって、美人の噂というのはそれだけでちょっとした刺激である。
こと、それが今時珍しい魔女の噂とあっては、自他共に女好きと称するアルフレッドが食いつかないはずはなく、香ばしい木の実を噛み砕きながら、彼は興味津々に食いついた。
「ど田舎の美人なんて期待しちゃいなかったが、魔女さんか。多少ブスでもいけるぞ、俺は」
「やめとけ、呪い殺されるのがオチだ」
「処女じゃなくなったら魔力を失うんだろ」
「それは神官とかそっち系の話じゃないのか? いろいろごっちゃになってるぞ」
省8
150: 2013/10/15(火)00:51 ID:xxc6Cgs+(3/11) AAS
アルフレッドが東の森に足を踏み入れたのは、それから二週間後の昼下がりのことだ。
齢およそ二十七を数える彼は、些か子供っぽいわくわくしたような顔付きで、それでも一応は王国軍の兵士らしく武装を整え、意気揚々と視察に乗り出したのである。
そのようないきさつだったから、彼女が彼を一目見て警戒心を抱いたのももっともなことで、彼女の魔力、というよりも女の勘が正しく働いたとしか言い様がない。
招かれざる訪問者を頭の先から爪の先まで見て、彼女――エイダは眉を顰めた。
「それで、なんだって?」
「ああ……だから」
薬を貰いに来たんだ。同僚がドブ水を飲んで胃腸をやられちまった。
なんだかぼうっとした表情で、男は訪問の理由をそう述べた。
病人がいるのなら助けないことはないが――彼女は相手をもっとよく見ようとフードを下ろし、顔にたれた黒髪のひと房を無造作に払った。
男はなにやら彼女の一挙手を注視し、数瞬呼吸を止めていた。
省10
151: 2013/10/15(火)00:55 ID:xxc6Cgs+(4/11) AAS
魔女といえどもエイダは普通の女である。とはいえ厭世人であることは疑いようがなく、幼少の頃から二十歳になる今まで、普通に育てられた女なら必ず抱くはずの自意識というものが彼女には乏しかった。
いつも湿っぽい、黒いローブを身に纏い、うつむき加減に森を歩く。生活の糧は森で得たなにがしと、ときおり薬やまじないと物々交換に人間から必要なものを得た。
一人であったが森は賑やかだったから寂しくはなかった。それでもあえて言うなら、人間の訪問者が帰った後は少しだけ心がしんと静まった。
小窓に寄りかかり、ねえ、と鳥を呼んで指先にとまらせたりしてみる。それは寂しさを紛らわせる行為だと彼女は知らなかった。
人の訪問があったときは白い頬が少しだけ赤くなることも、当然無自覚であった。
「…………」
目的の薬瓶はすぐに見つかったが、その中身は空っぽだった。エイダは律儀にそれを両手で抱え、戸口で待つ男の元へ向かう。
扉を開けると、男ははっと顔をあげた。彼女もつられたように驚いて、少しの沈黙が二人の間に訪れた。
先に気を取り直したのは男の方だった。我に返ったように、あんた、とエイダに呼びかけた。
「名前は? 俺はアルフレッドという」
省45
152: 2013/10/15(火)00:56 ID:xxc6Cgs+(5/11) AAS
「何?」
彼女は訝しんで彼を見た。最初の瞬間、彼は笑いぶくみだったが、すぐに真顔になった。
「…………いや」
アルフレッドの目線はエイダの掴まれた手に落ちた。
「離せ」
彼はすぐに手を離した。なぜか、その固い手のひらをエイダの手の甲に滑らせてから、両手を顔の横に上げ、ひらひらと振ってみせた。何もしないという意味だろう。
軽薄な男だ。断じて、エイダは忠告の意味を込めて言った。
「私に触れた男はあなたで二人目だ」
「二人目?」
「ああ。一人目はもうこの世にいない。意味がわかったら、私に危害を加えようとは思わないことだ」
省46
153: 2013/10/15(火)00:57 ID:xxc6Cgs+(6/11) AAS
アルフレッドが魔女の噂を聞いたのと同じ酒場で、やはり同じ同僚に魔女の話を振られたとき、彼はそうとわからぬくらいだけ動揺して、ごく短くエイダなる魔女を評した。
「ブスではないが、ありゃあつまらねぇ」
「本当に会いに行ったのか。つまらないとはどういうことだ?」
彼はエイダのほっそりとした後ろ姿を思い出した。意外に大きく布を押し上げていた胸と、『ブスではない』、すっきりと整った美しい顔を思い出した。
終始紅潮していた頬は、彼の帰る間際に最も赤くなったこと。彼が(そんなつもりはなかったのだが)嘲笑したとき、傷ついたように下を向いたこと。生真面目に返事はするけれど、まるでこちらに興味の無さそうな、つまらない横顔。
「……金を払い忘れた」
「アルフレッド?」
「ちくしょう、またあいつに会いにいかなきゃなんねぇのか」
顔を隠し、声もくぐもったから、周りの誰も彼の声が弾んでいたことには気付かなかった。
女に惚れたときは、その女の容姿の率直な評価を吹聴して回る彼であったが――今回ばかりは勝手が違うらしい。
省31
154: 2013/10/15(火)00:59 ID:xxc6Cgs+(7/11) AAS
運ばれてきたのはどうやら普通の紅茶らしい。木目のごつごつした机の上に、エイダはバスケットを置いた。アルフレッドは彼女の表情を盗み見、やはりとても美人であること、好みであることを確認した。
「見てもいい?」
バスケットにかかった布を摘んで、エイダが嬉しそうに言った。
ご自由に、とぞんざいに言いながら、実のところ彼女が喜んでくれてアルフレッドは嬉しい。ちょろいもんだ、と胸のうちに笑いながら、やっぱりちらちらエイダの方を見ている。
布は取り払われた。いい匂いが強くなって、エイダは明確に歓声をあげた。
「本当にくれるのか」
「俺も食うぞ、もちろん」
「うん。――あれ」
ふと、エイダが首をかしげた。バスケットの端に何やらカードが挟まっているのを、アルフレッドも見つけた。彼が止める間もなく、彼女はそれを取り、開いた。
「…………」
省43
155: 2013/10/15(火)01:01 ID:xxc6Cgs+(8/11) AAS
小一時間ほどを過ごし、帰り際、アルフレッドはエイダにまた来てもいいか、と聞いた。
僅かに言葉を選ぶ間を置いて、エイダは言った。
「私に触らないなら。構わない」
「了解了解」
「ほんとに了解したのか?」
「したした」
怪しむ目線をかわし、彼は手を振った。じゃあまた。付け加えて、来週、と。
魔女は憮然と頷いた。見送りは一瞬で、彼女はすぐに扉の向こうに消えた。
それからは一ヶ月ほどは穏やかな日々が続いた。アルフレッドは毎週何がしかの土産を持って魔女の家を訪問し、エイダは概ね無表情で、頬だけを赤くして彼を迎えた。
変わったことと言えばエイダのフードが役目を果たさなくなったことと、彼女の笑顔が増えたことぐらいのもので、どちらもアルフレッドにとっては喜ぶべき変化だった。
省21
156: 2013/10/15(火)01:03 ID:xxc6Cgs+(9/11) AAS
お守りを預かった翌週、アルフレッドは居ても立ってもいられなかった。
エイダに会いたい。笑顔が見たい。触りたい。
ごくごく不純な、いや純粋な衝動から、彼は言い訳を考えながら森の道を歩いた。
いつもの小さな小屋が見えたときである。
彼は初めてその家に先客を認めた。エイダと同じ黒いローブを来た若い男だった。
遠目に見えた時点で、なぜか彼は身を隠した。
「……やましいこたぁねぇよな」
そう思い直し、小屋に向かって歩きかけた瞬間である。
エイダより少し背の高い男が屈んだ。彼女のフードを下ろし、見上げる彼女の、赤い頬を両手で包んだ。顔を近づけ、キスをした。
なんだ、とアルフレッドは思う。
省25
157: 2013/10/15(火)01:05 ID:xxc6Cgs+(10/11) AAS
片腕を捻りあげる。簡単に関節を極めて、隣の間の寝台に放り投げた。
魔女はか細い悲鳴をあげたけれども、頓着するほどでもない。のしかかり、アルフレッドは自分の体重を一瞬だけ彼女に全部かけた。エイダが苦痛に顔を歪めたのを見て、すぐにやめた。
「俺が怖いか」
「アルフレッド、どいて――」
「わりとロクでもない生き物だ、男は。あんたとのお茶も、くだらない会話も、全部これが目的だった」
はっきりと、エイダは震えていた。何を伝えようとしてか、彼女が一生懸命に首を振る仕草を不快に思い、アルフレッドは片手で彼女の顎を掴んだ。そのまま唇に噛み付いた。無理矢理舌をねじ込み、唾液を流し込んだ。
「やら、や」
「うるせぇ」
殴る気はなかったが、拳を振り上げる。エイダはぎゅっと目を閉じた。何となく傷ついたような気持ちになって、アルフレッドはゆるゆると腕を下ろした。もはや抵抗の色も見えない魔女の、ローブの上から胸を掴んだ。
思った通り、大きい。柔らかい感触は手の平から逃げるようで、彼は乳房を揉みしだいた。
省19
158: 2013/10/15(火)01:07 ID:xxc6Cgs+(11/11) AAS
そういえば、と、下穿きをくつろがせながらアルフレッドは思う。
今日はアップルパイを持ってこなかった。どうせ最後なら、土産に持ってきてやっても良かった。
「エイダ」
名前を呼んだ。その響きはいつかのように宙には浮かばず、床に落ちた。
柔らかい胸を楽しみながら――白い肌が朱に染まり、乳首が腫れるまで遊ぶ。
腹の傷など。取るに足らない、全然。
「エイダ」
押して入るべき隘路はわずかに湿っていた。妙に狭いそれまでが拒否を示しているようで、アルフレッドには面白くない。
「だめ、私、まだ……」
何か言いかけた、エイダの言葉は途中で悲鳴になった。
省16
159: 2013/10/15(火)01:09 ID:69lcQDhI(1/2) AAS
支援
160(1): 2013/10/15(火)01:10 ID:vrqepvqh(1) AAS
おしまい
もうちょっとだけ続くと思います
161: 2013/10/15(火)01:27 ID:69lcQDhI(2/2) AAS
リアルタイムに遭遇した。支援の意味なかったな、ごめん
続きも楽しみ。今からもう一度読み返してエイダたんのかわいさ堪能してくるw
162: 2013/10/15(火)11:45 ID:iGMkTd4y(1) AAS
エイダかわいい
続き待ってます
163: 2013/10/16(水)08:09 ID:2TkGYpxw(1) AAS
GJ! エイダの可愛さにニヨニヨする
164: 2013/10/16(水)19:15 ID:DrFJr46u(1) AAS
gj
エイダとアルフレッドも可愛くて、
何度も読み直した
続きを楽しみに待つよ
165: 2013/10/17(木)04:11 ID:r2VMmEXy(1) AAS
アルフレッドこの屑め!!!!!
・・・・責任を持ってエイダ幸せにしろよ!エイダ可愛いよ!
しかし男の正体気になる
166(4): コッペリアに花束を 2013/10/23(水)20:37 ID:JkNVRIVc(1) AAS
>>148
乙乙! エイダかわいいよエイダ
続きも期待してます
で、規制が解けたんでこちらもコッペリア投下します
>>143をもう一度使ってみたら使えたんで、こっちにうpしました
外部リンク[txt]:dl1.getuploader.com
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12(2部の6)を見逃した人がいたみたいなので再うpしました
15はエロ無しなので注意。ちなみに次回で最終回です
167: 2013/10/23(水)22:11 ID:aCOflBLr(1) AAS
>>166
おおおお!続き待ってた。心からGJ!と言わせてください
お母様も、実は切ない想いをした人だったんだな
次回最終回はもったいないが待ちきれない…
168: 2013/10/24(木)14:56 ID:Q6HD5EA5(1) AAS
>>166
GJです。見逃した分もupしてくれてありがとう。二人の行く末が気になっていただけに、こんな風になるのが嬉しいですね。最終回も楽しみにしています。
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