[過去ログ] サムスピ総合エロ萌えSS 4 (538レス)
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58: 陸捨肆 2007/01/17(水)23:04 ID:dNB4ZVUu(1/10) AAS
息苦しいまでの瘴気に浸された薄暗いカムイの森に、またしても青い火花が飛び散った。
二つの影が木々の根の上を飛び回り、かち合っては光りを産み、また離れてを繰り返す。
「イイっ……ぜえェ!姉ちゃん!!フッハハハハハ!」
聞くに堪えない、気が狂っているとしか思えない羅刹丸の叫びが、レラの前を右から左に
流れる。その声だけを頼りに次の動きを予測して、レラは音も無く木々を縫い、いきなり
羅刹丸の前に躍り出た。
そのまま、がら空きの胸を狙ってチチウシを突き出す。
死角からの風切音に羅刹丸は濁った目を丸くしながらも、ぶら下げるように握っていた
屠痢兜でその攻撃を簡単に打ち払った。レラもチチウシを叩かれた勢いを殺してまで
追撃は狙うことはせず、美しい宙返りですぐに羅刹丸の範囲から退く。
省31
59: 陸捨肆 2007/01/17(水)23:04 ID:dNB4ZVUu(2/10) AAS
漆黒の軌跡が、またしてもレラの居た場所を切り裂いて回り始める。
「ちっ、何だァおいッ!どうしてそんなに焦らすんだおいッ!かかって来いコラァァ!!」
思い切り振りかぶり、羅刹丸は全身を使って上段から屠痢兜を振り下ろす。途方も無い剣圧が、
刀と指一本分の間だけ横に身をかわすレラの頬にびりびりと刺激を与えた。
切っ先が届く寸前、しかも何の捻りも無い上からの一太刀だが、その存在感と殺意は空間に
まで影響を与えるほどだ。

このやりとり、切迫する一撃を肌で味わうのは、これが何度目だろうか。

決闘が始まってどれだけ経ったか。時の流れさえ、この虚ろな空間の中では歪んで感じる。
その中で刃を交えては、つかず離れず。これを幾度も繰り返している。
一時は抑えきれない激情に走りかけたレラも、既に落ち着きを取り戻し状況も理解できていた。
省28
60: 陸捨肆 2007/01/17(水)23:05 ID:dNB4ZVUu(3/10) AAS
「嬉しいぜェ……やっとやる気になったってか。隙もなにもあったモンじゃあねえがなァ」
刃と刃を十文字に合わせたまま、羅刹丸はあごを突き出して笑った。
「あんなションベンの臭いしかしねえガキなんかよりずっといいなァ。ベッピンで、ズル
賢くて、しかもかなりの殺し甲斐ときたもんだぜ」
「さっきから何を馬鹿なことを」
左手を添え、正面でしっかりとチチウシの峰を押さえながら、レラがさも下らなそうに答えた。
「何でそんなに余裕綽々でいるのか私には分からないけど、あなた、ここで死ぬのよ?」
「死ッ?ほぉ……ヘヘ」
羅刹丸が一瞬驚きの顔をし、すぐにへらへらとニタついた。
「死ぬってか、この俺様が!ほおう、ほう……ひっ、ヒヒハハハ!」
省31
61: 陸捨肆 2007/01/17(水)23:06 ID:dNB4ZVUu(4/10) AAS
「俺様を死なすとかって冗談は、こいつを食らってまだ言えんなら聞いてやらあなあァッ!」
今度こそ、避け切れなかった。竜巻に姿を変えた煙に捉えられたレラは、乱暴にぐるぐると
かき混ぜられながら、静か過ぎる森の空へと上っていった。
「うっ……あぁぁぁ!」
もう、右脚の心配をしている場合ではない。まぶたを閉じていなければ眼をやられることに
なるだろう容赦の無い砂嵐が、レラの衣服に穴を開け、引き裂き、柔らかな肌を次々と傷つけて
ゆく。身体のいたるところが焼けるような痛みを訴え始め、レラはぎゅっと目を瞑ったまま
苦渋に顔をしかめた。
空はどっちか、地上はあちらか。方向感覚がどんどん薄れ、思考が揺らぎ始める。
「へっ、ハハハハハハハハハアァ!」
省27
62: 陸捨肆 2007/01/17(水)23:06 ID:dNB4ZVUu(5/10) AAS
――何かしら?なんだか……
身体と心の両方にすうすうした新しい心地を感じて、レラはゆっくり目を開いた。
いつの間にか竜巻は掻き消えており、砂にまみれた身体はただ空中に放り出されていた。
涼しいはずである、服はもう単なるボロでしかない。肌の露出のほうが多くなっている
のではないか。そんなことを思うレラの眼球は虚ろに動き、その視線は、自然と一点に
吸い込まれた。
赤く大きな三日月を手にした羅刹丸が自分の身体の上に踊りかかり、今まさにその三日月
を振り下ろさんとしていた。
――すごい。
レラは息を呑んだ。それは、純粋な血の色で塗り固められた天体のような刀だった。
省35
63: 陸捨肆 2007/01/17(水)23:07 ID:dNB4ZVUu(6/10) AAS
――ああ。
頭の中を二転三転するレラの思考はいつしか、ひとつの結論へと達していた。
――なるほど。そういうことなのね、私。怒りも蘇らないわけだわ。
その結論を認めていいものかなどと、レラはここに来て迷いはしなかった。

――この男、似ているんだ……私と。

自分の使命のために、殺して殺して。そうして生きてきた。そう生きるしかなかった。
――私もそう。殺し続けたわ。闘い続けてきたわ。本当に、そのために生きてきたの。
ならば、レラは魔物だろうか。断じて違う。いくら似ているとはいえ、羅刹丸と自分は
根本的に違うのだと、レラは確信している。同じ使命を背負っているからこそ、ここで
負けるわけにはいかない。あの赤い刃の餌食になどなってはならない。
省23
64: 陸捨肆 2007/01/17(水)23:08 ID:dNB4ZVUu(7/10) AAS
ど く ん っ

一瞬ではあった。ほんの一拍ではあった。
しかし、地上を、海を、この星全てを揺るがすかのような鼓動が、世界を駆け抜けた。

ど く ん っ
その鼓動は、人間の作った地下室を歪めんばかりに。
「だーからコウタもっと呑めぁうお!?」
「うわった、地震か?!」
「おおお、あれ……止まった?つか呑み過ぎ?俺ら呑み過ぎか、なあコウタよ!なあ!!」
「いや、チゲ鍋こぼれてるから結構大きかったぞ、今の地震……ってやめ!口移しは絶対だめ!」
「ほーらほら、バードキス!フレンチキス!舌入れるぞ舌!!」
省28
65: 陸捨肆 2007/01/17(水)23:08 ID:dNB4ZVUu(8/10) AAS
怒声にも歓声にも聞こえる叫びを上げた羅刹丸は脚を屈め、レラの腹部に乱暴な蹴りを放った。
チチウシが肉の手ごたえを残して羅刹丸のわき腹からずるりと抜け、逆にレラの腹に、重い
重い圧迫感と衝撃が広がる。自由落下に蹴りの勢いを加えられたレラは地面のすれすれで
体勢を立て直して着地したものの、立ち上がれずにそのままうずくまった。
「へっ、へへ……驚いたぜ!」
胴着の左わき腹に、毒々しい藤色の血液の染みを瞬く間に広がらせながら、羅刹丸がどすん
と両足で着地した。
「何を言うかと思えば、アァ?この俺様が……死にてェだの抜かしやがったなァ!」
「違うの……かしら?」
ずたぼろになった服を引きずり、レラは痛みと吐き気をこらえて立ち上がった。
省32
66: 陸捨肆 2007/01/17(水)23:09 ID:dNB4ZVUu(9/10) AAS
「その講釈……急に胸糞悪くなってきやがった。ちったあ出来るから、もっともっとしっかり
いたぶって殺そうかと思ったんだがなァ!」
「本当のことを言われると腹が立つものよ。いよいよ図星のようね」
「生意気が過ぎるンだよ……脆い人間の癖によォ! 俺様が死ぬだァ? 抜かせ!!」
羅刹丸の肉体から発せられる殺気が、ぶわりと増幅した。節くれた手の中の屠痢兜が、
かたかたと死を誘う声で泣き、高々と掲げられる。
「俺様に一太刀浴びせたその腕に免じてなァ、一瞬で消えてなくしてや……ごほッ!」
彼なりの念仏を唱えようとした羅刹丸の口から、唐突に血が吹き出した。
「ごほ!うげッ、ぐあ……がはっ、はっ」
背中を丸めて口元を押さえるが、指の間からは滝のように血が滴り落ちている。
省26
67: 陸捨肆 2007/01/17(水)23:10 ID:dNB4ZVUu(10/10) AAS
「……ふふ、いいわ」
――何がいいんだか。
思いながら、レラはマフラーを解いて羅刹丸に投げた。羅刹丸は掴んだマフラーと、レラの
顔とを交互に見た。
「さっさと傷口に巻きなさいな」
――敵に塩を送るようなことを。
思いながら、レラは羅刹丸がもろ肌を脱ぎ、さっきまで自分の口元を覆っていた布切れが
彼の身体に巻きついてゆくのを見ていた。どういうわけか、唇が熱い。
「私はね、大自然の戦士なの。ふふ、言っておくけれどね……あなた、私が今まで何回心臓を
貫かれて、何回蘇ったと思っているの?」
省24
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