[過去ログ] 【テレ朝】林美沙希part14【Jチャンあいつ今麻雀LOVE】 [無断転載禁止] [無断転載禁止]©2ch.net (1002レス)
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135: 2019/01/03(木)09:58 ID:SsnvmpJy(1) AAS
榮一は毎日の日課として後ろの山へ上つて沖を見渡した。瀬戸通ひの汽船が島々の彼方にはつきり見えて、春めいた麗らかな日光が讚岐の山々に煙つてゐることもあれば、
西風が吹き荒れて、海には漁船の影もなくつて、北國のやうな暗澹たる色を現してゐることも偶にはあつた。そんな風の強い日には、大きな家の中がさながら野原のやうで、
いくら襖や帶戸を閉め切つてゐても、何處からか風が吹き込んで、寒さを防ぐ術がなかつた。「これでは冬籠りも出來ないね。早く東京へ歸ることにしようか。」
と、榮一は故郷の樣子を見たゞけで滿足して、再び都の小さい借家へ歸らうとした。不漁つゞきで、海鼠や飯蛸などの名産もあまり口に入らないし、落着いて勉強も出來ないし、
殊に家族の中に交つてゐると、急に歳を取つたやうな氣持になるのが厭だつた。「明日の中に立たう。」と、榮一は急に決めたが、竊かにそれを喜んだのは、辰男だつた。
明日の晩から、何時までランプを點けてゐようとも、最早苦情を云ふ者はなくなるのである。彼れの英語の發音を試驗したり、
彼れの英文について無慈悲な批評を下したりしたがる素振を見せて驚かす者がなくなるのだ。……辰男はこの頃英字に親しめなくなつて、動もすると心が外へ散つて、
寂しい詰まらない氣持がし出したのを、兄の所爲と思つてゐた。「この書物は讀んでしまつたからお前にやらう、荷物は成るべく輕くしときたいから。」
と、出立の前の夜、榮一は弟のテーブルの上に英書を二册置いて行つた。辰男は表題と著者の名前とを見詰めたが、讀み方をも意味をも判じかねた。
そして、知らない文字に攻められるのが恐しさに、内部をば開けて見ないで、手馴れてゐる自分の書物で蔽うて机の片隅へ押し遣つた。
省2
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