【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】 (292レス)
【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/computer/41116/1227626625/
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202: 名前が無い程度の能力 [] おまいらちゃんとお題は出すんだで ただでさえ過渡なんだからさらに燃料なくなっちまうでよ <遊戯><団扇><清涼飲料><味噌><ぬこ> <やらないか><お米><イワナ><しじみ> ここは縛りプレイ <コイン+さとり><賭け+白蓮><本+リリカ><松岡修造+妹紅> <眼鏡+しみじみ><お茶+シリアス><和歌+ネタ> http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/computer/41116/1227626625/202
207: 名前が無い程度の能力 [sage] >>202 <コイン+さとり> 裏があって表がある。 心というのは一見すると複雑怪奇なのだが、それらを解きほぐしていけばその一点に辿り着くことを、古明地さとりは知っていた。 裏があるから表がある、逆もまた然り。 意思のある者が動くのは理由があってこそなのである。それこそ、どんなに取るに無いことでも。 その裏打ちを、言動の一つ一つからそつなく探るのもまた、ひとつの処世術と言えるのだろう。 そう考えると自分はそのプロセスを踏まないで良いのだから、随分とずるいものである。我ながら、大した能力に恵まれているとも思える。 おかげで、こうして人目を忍んで暮らす羽目となっているのだが。 それこそコインの裏表でも見るように、相対する者の心など手に取るように分かってしまう。 表で笑い、裏で唾していることなど、自分の前では無意味なのだ。すべて分かってしまい、腹芸など丸裸にしてしまう。 忌み嫌われるのも、避けられるのも、当然と言えば当然か。 ならばこそ、妹が瞳を閉じてしまったのも一応の理解はできる。納得などは到底出来るものではないが。 思考に埋没していた頭を醒ませて、ティーカップを手に取る。 丸いテーブルには、小洒落た椅子がひとつ。 相席のための椅子は無い。 すっかり冷めてしまった紅茶は、甘みも香りも感じさせず、苦いだけだった。 片側だけの。 表だけ、或いは裏だけのコインがあっても良かったのに。 囁きは声にもならず、溶けていった。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/computer/41116/1227626625/207
208: 名前が無い程度の能力 [sage] >>202 <お茶+シリアス> 霊夢は真剣に悩んでいた。 保存している茶葉が痛みはじめていたのだ。 捨てるにしては少々惜しいほどの量が余っている。かと言って、痛みはじめたものを飲み続けるのも人としてどうかとも考える。 捨てるか、飲み続けるか。 道はふたつにひとつ。 ひとまず、こうして胡坐をかいて考え続けても仕方がない。掃除でもして身体を動かしながら、考えることにした。 せっせと掃いて、ひとまず終える。 だが答えは見えてこない。 結局はふたつにひとつの答えなのだから、どこかで踏ん切りをつけなければならないのだ。 一歩が肝心である、霊夢はなおも真剣に悩んでいた。 身体を動かし、喉に潤いが欲しくなったので、まずは茶葉の具合を改めて見てみる。 匂いも嗅いで、ほんの少し噛んでもみる。 やっぱり微妙な塩梅だった。 胃腸は丈夫な方なので、ここは我慢することも兼ねて淹れてみる。ほっこりと漂う香りも、微妙なものだった。 深刻な顔で霊夢は湯呑みを用意する。 やはり替えるべきだっただろうか。いや、これくらいなら大丈夫な気もする。いやしかし。 煮え切らないしかめ面で、急須から湯呑みへと茶を注ぐ。 しつこく、霊夢は真剣に悩んでいた。 わずかばかりの茶葉が急須からこぼれ、湯呑みへと移る。 「あ、茶柱」 ころりと霊夢の顔がほころんだ。 ちょっと幸せになれたので、しばらくはこの茶葉を使うことにしよう。 霊夢はあっさりと決めてしまった。 >>203 <目> 「紫のスキマって、覗きに便利よね」 「藪から棒ね、霊夢でも誰かの生活を覗きたいと思うの?」 「全然」 「でしょうね」 「まさしく、壁に耳あり障子に目あり、よね」 「妖怪の賢者ですから」 「でも耳は出せないの?」 「え?」 「ほら、壁に耳あり障子に目あり、でしょう。でも紫の場合、スキマから目が覗いていても耳は覗いていないじゃない」 「そ、それは……ほら、やっぱり耳だけなんて気持ち悪いじゃない」 「目だけでも充分気持ち悪い」 「うぐ」 「もしかして出せないとか?」 「そんなことないわよ!」 「なんで声を荒げるのよ」 「沽券にかかわるからよ! 見てなさい、んんっ……ほらっ、出た出た!」 「ふっ」 「ひゃうん」 「なるほど、紫の弱点は耳と。痛い目見たわね〜」 連投、失礼致しました。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/computer/41116/1227626625/208
215: 名前が無い程度の能力 [sage] >>202 「味噌」と「しじみ」で秋姉妹の朝ごはん 幻想郷の山にひっそりと佇む秋屋敷。そこには秋を象徴する2柱の神様が住んでいる。 晩秋の朝、台所ではコトコトと湯が沸き、新米の香ばしい匂いが立ち昇っていた。 秋屋敷の台所を与かるのは、姉の秋 静葉だ。赤いワンピースの上から若草色のエプロンを羽織って、軽やかに朝食の支度を進めていく。 「〜〜〜♪」 鼻歌も高らかに、コンロで熱したフライパンへ卵を落とす。ジュゥと小気味の良い音を立てて焼ける卵。 びっくり水を投入して蓋を閉じた所で、居間から這いずるようにもう一柱の神様が姿を現した。 「うぅ〜、お姉ちゃん頭痛い〜」 「……穣子、あんた吞み過ぎよ。意地張って鬼や八坂殿と吞み比べなんてするから」 穣子と呼ばれた神様は、静葉の妹神である。栗色のネクリジェからは姉を超える豊満な乳房が存在を主張していた。 豊穣の女神のプロポーションもしかし、二日酔いでげっそりとやつれた容貌では台無しであった。 そんな妹に対し、静葉は呆れながらもコップに冷水を汲んで渡してやる。渇いた身体を潤すように飲み干す穣子だが、調子はいまいちのようだ。 「ゴクゴク……ぷはぁ〜、だってぇ、西洋かぶれの神奈さんが舶来品の方が美味しいって宣うから……あぁ、ちゃぶ台がひんやりして気持ちいい……」 「だからって酒樽で勝負するひとがいる? まぁ、私もあの『うゐすきー』ってお酒は匂いが苦手だけど……」 そう言って静葉は肩を竦めながら食事の支度に戻った。穣子は気だるそうに今のちゃぶ台に突っ伏している。 暫くして朝食が出来上がり、静葉は改めて穣子に声を掛けた。 「どう? 朝ごはんは食べられる?」 「……ちょっと無理かも」 「そう、じゃぁこれだけでも飲みなさい」 未だちゃぶ台に突っ伏している穣子の前に、静葉は汁椀をそっと差し出した。 自家製味噌の芳醇な匂いを含んだ湯気が穣子の鼻をくすぐる。力なく顔を上げた穣子の眼前には、小さな貝と万能ネギのはいった味噌汁が置かれていた。 「……この匂い、シジミのお汁?」 「そう、この前出雲に行った時頂いたの。宍道湖で採れた高級品よ」 静葉はそう言って自身の汁椀に盛られた味噌汁を静かに啜る。真っ白な新米のご飯と新鮮な卵の目玉焼き。それにほうれん草と小女子のおひたし。 穣子も今年収穫されたばかりの新米を味わいたかったが、今は胃が受け付けてくれない。残念そうな表情で差し出された味噌汁を一口啜った。 「わぁ、美味しい……!」 「でしょ? 二日酔いにはしじみが一番よ」 濃厚なシジミの旨味と味噌の香ばしさ、そして万能ネギの瑞々しい歯応えに不機嫌そうだった穣子の表情も自然と綻ぶ。 静葉はそんな妹を温かい眼差しで見守りながら、艶やかな新米を頬張る。 こうして、秋姉妹の朝ごはんは和気あいあいと過ぎていくのであった。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/computer/41116/1227626625/215
217: 名前が無い程度の能力 [sage] >>202 「本+リリカ」 皆さんこんにちは、プリズムリバー三姉妹の末っ子リリカです。 今日は私が抱える悩みを皆さんにお話ししようと思います。 それは、ある雨の日の事でした。 私はひとり、住処である湖の廃洋館で寛いでいました。 2人の姉は所用で出掛けています。この雨音が寂しげに響く気だるい午後が一番好きです。 「あぁ〜、暇だわ〜」 そう、いくら雨の日が好きでもひとりで留守番は退屈です。 森の古道具屋さんで買った蓄音機からは、擦り切れたソナタが流れています。 私は読みかけの雑誌を放り投げ、ぼんやりと天井の木目を見つめました。 ちょうど真上の2階にはルナ姉の部屋があります。その時、私の脳裡にアイディアが浮かびました。 「そうだ、ルナ姉の部屋から本を借りてこよう」 ルナ姉は陰気臭い…もとい物静かな性格です。部屋には本棚いっぱいの本が有るのを私は知っていました。 私はさっさと2階へ駆け上がり、ルナ姉の部屋に忍び込みました。 質素な机とベット、そして壁一面を覆う大きな本棚。薄暗い部屋にぼんやりとルナ姉の匂いが鼻をくすぐります。 本棚には音楽関連の雑誌やハードカバーの難しそうな本が並んでいます。 私はそのうちの面白そうな本に手を伸ばしました。 ストンッ――― すると、本棚の裏から何かが落ちる音がしました。本棚と壁には僅かな隙間があって、そこに落ちたようです。 「んっ? 何か落ちた?」 私は恐る恐る本棚の裏を覗きこみました。すると、私の手の届くギリギリの所に薄い本が落ちていました。 「うんしょ、よいしょ……」 精一杯腕を伸ばすと指先に本の角が引っ掛かり、何とかその本を引っ張り出せました。 「一体何の本だろう………えっ?」 疑問を抱いたまま本の表紙を見た私は、そのまま凝り固まってしまいました。 だって、その本の表紙は女の人がヌードで、なんか『淫乱メルラン』とか題名があって、その女の人がメル姉に似ていて、18禁とか書いてあって、私に似た女の子が何か触手みたいなのに……… そこまで思考がぐるぐる廻っていた所で、玄関から物音がしました。続いてメル姉とルナ姉の対照的な話し声が聞こえてきます。 私は慌てて薄い本を本棚の裏に放り投げ、ルナ姉の部屋から出て行きました。 あれ以来、ルナ姉の部屋には勝手にはいってません。なんだか怖いです。 私はこれからどうルナ姉と接していけばいいでしょうか? http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/computer/41116/1227626625/217
220: 名前が無い程度の能力 [sage] >>202 「清涼飲料」 小春日和。晩秋の空は静謐に晴れ渡っている。 そんな麗らかな日の午後、紅魔館では門番の紅 美鈴が冬囲いをしていた。 紅魔館の中庭にある花壇を休耕させ、梔子や銀木犀などの庭木は雪吊を施す。 雪吊の技術は、白玉楼の庭師である魂魄 妖夢から教わったものだ。 「よいしょ……これで良し」 最後の一本を吊り終えると、美鈴はふぅっと深く息を吐いた。 作業しやすいようにポニーテールに束ねた赤いロングヘアーが秋風に靡く。 「ご苦労様、美鈴。少し休憩したら?」 縄やハサミを片付ける美鈴に声を掛けたのは、紅魔館のメイド長である十六夜 咲夜だ。 濃紺のメイド服を瀟洒に着こなし、手には缶ジュースを携えていた。 「あっ、咲夜さん。ありがとうございます」 美鈴は普段の中華服ではなく、深緑のツナギを着ている。軍手を脱いで簡単にツナギで手を拭うと、咲夜から缶ジュースを受け取った。 よく冷やされた缶ジュースは、幻想郷では珍品だ。美鈴はそのパッケージをまじまじと見詰めている。 「……何だか黒くて毒々しいデザインですね」 「香霖堂から箱買いしてきたのよ。お嬢様や妹様の好きそうな柄だったし……」 そう言って咲夜は傍らからもう一本同じパッケージの缶ジュースを取り出した。 缶の地色は黒で赤い縁取りを施した白字で『QUAN FUU』と記されている。 美鈴は恐る恐る缶のプルタグを指で開けた。プシュッと炭酸の弾ける音と共に、独特な匂いが立ち昇る。 「……ちょっと懐かしい匂いですね」 「そう? 私はあまり懐かしくはならないけど」 一口飲んだ美鈴は、故郷のユーラシア大陸を思い出したのか自然と頬を緩ませた。 一方の咲夜はあまり得意じゃないのか、イマイチと言った複雑そうな表情を浮かべている。 人の嗜好はそれぞれ、冬の足音が近しい小春日和の午後は長閑に過ぎてゆく。【了】 【参考文献】 ttp://softdrinks.org/request/req2000.htm http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/computer/41116/1227626625/220
273: 名前が無い程度の能力 [sage] >>202より、コイン+さとり+賭け+白蓮+眼鏡+しみじみ+お茶+シリアス。 一年越しだとかその間にお題が既に消化されているだとか一部お題を曲解しているとか、 いろいろ問題はありますが、一つよしなに。 「alternative」 池にいつかの巫女の姿は無かった。その代わり、真白い蓮の花が咲いていた。 僕は池のほとりに座って、金貨をポケットから取り出した。それを、宙めがけて思い切り親指ではじき上げた。 (表が出たら実行する、裏が出たらやめておく) そう自分に言い聞かせつつ、もう何回同じことを繰り返しただろう。表が出てはやり直し、裏が出てはやり直し。 (まったく、これじゃあコイン占いの意味が全然無いじゃないか) 心中自分に文句を言って、地面に落ちたコインを確かめもせずポケットに戻した。 僕達八人がこの楽園に迷い込んでから、もう二年が経とうとしている。 楽園は僕達に、立派なお屋敷と肥えた畑、そして衣食の蓄えを与えてくれた。ご丁寧に、庭の井戸はたっぷりと清水を湛えていて、辺りの森は山の幸の宝庫だった。これで何不自由ない暮らしを送れる。そう言って皆喜んでいた。 「こうして三度のご飯にありつけて、おいしい紅茶までいただける。それが一番幸せなことだよ」 口を開けばシニカルなジョークばかりのあいつが、真面目な顔をしてそう言った。 「ああ、もう危ない真似なんかしなくていいんだ。なんてありがたいんだろう」 理屈屋のあいつが、眼鏡をずらして涙をぬぐいながら、しみじみそう言った。 確かにあいつらの言う通り。これからは活計[たつき]に事欠くことはない。今までのような無茶をする必要もない。それはきっと、素晴らしいこと、感謝すべきことなんだ。でも、僕はそんな気持ちになれない。何かが足りない、満たされない。 (何が足りないんだろう、一体何が……?) 考えながら、蓮の花を見遣る。清らかな純白の花。清浄という徳目が花となって咲いたような、穢れ無い美しさだ。 (確かに美しいよ。でも、あの巫女程じゃない) 僕が魅せられたのは、そう、あの巫女の舞。まるで二色の蝶のように、白い袖で空を裂き、真紅の裳裾を鮮やかにひるがえして舞う、紅白の巫女だ。 (どうしてなんだろう。あの巫女にあって、この蓮に無いものって……?) 目の前に咲く蓮と引き比べようと、巫女の舞姿を追憶した。脳裡に結んだ幻像を凝視する。白い蓮、紅白の巫女、真紅の裳裾、その鮮やかな赤い色。遠ざかってしまったその色が、妙に懐かしい。 (……ああ、そうか) 天啓のようにひらめいた。 赤の色。刺激的で、焼けつくように甘美で、享楽と罪業にまみれた色。 それは、二年前までの僕らそのものじゃないか。僕は、そんなかつての暮らしが恋しかったんだ。 安逸に浸る仲間達にとけこめず、けれど自分が何を求めているかも分からなかった。分からないから、現状を壊せないまま、徒に逡巡ばかりを繰り返していた。だが、もう迷いはない。 これは賭け。しかもすこぶる分の悪い賭けだ。なにしろ、自ら仲間と楽園――約束された安楽とを捨て去るのだ。でも悪くない。そんな鮮烈な刺激を求めて、僕は生きているのだから。 もう一度金貨を思い切りほうり上げた。表が出たら実行、裏が出ても実行。落ちたコインをやはり確かめずにポケットに戻すと、僕は立ち上がって歩きだした。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/computer/41116/1227626625/273
274: 名前が無い程度の能力 [sage] 連投失礼。>>202より和歌+ネタ。 不比等は俺のy(ry……嘘です。本当はもう少し輝夜を前面に出そうとして失敗しました。 「pleasure」 「私と恋をしませんか?」 「およそ自分が袖にした男に対して言う科白ではありませんね。今度は一体何を企んでいるのです?」 招かれざる客が浮かべる天女の如き微笑みを、私は能う限りの渋面で出迎えた。突如私の私室に現れたのは、姿形だけ見れば完全無欠なる麗しの姫君。かつての私の求婚相手だ。ちなみに、彼女を邸に招じ入れた覚えなど、私には一切無い。まったく、我が家の警衛共は何をしているのか。 「ご挨拶ね。最近、歌に凝っているの。だから、その題材作りのためにね」 「歌、ねえ……」 聞く限りでは人畜無害なことを考えているようである。だが、この姫はかつて人間の成長が云々というよく分からない理屈で国家規模の事件を引き起こしかけている。油断はならない。 「ほら、私が『野守は見ずや……』とやったら貴方が『妹が憎くあらば……』っていう風にね」 「あれは空想によって作ったものなのだから、何も実際に恋をせずともよいでしょうに」 「気分の問題よ、気分の」 話に怪しい点は無い。歌詠みに入れ込んでいるだけなら大した害もあるまい。少々傍迷惑ではあるが。 「どうやら、本当にただ趣味として歌の題材探しをしているだけのようですね。天下国家に仇なさんという訳ではなくて」 「どうやって歌で国家転覆を謀るのよ。あ、歌の才でもって帝をたぶらかして宮中を牛耳る、とか?」 「それは良いことを聞きました。早速我が娘にも歌の素養を身に付けさせましょう」 それでは今から、とばかり立ち上がり、姫を無視して部屋を出た。彼女が何か物騒なことを目論んでいるのでなければ、私がこれ以上彼女にかかずりあう理由は無い。 「つまらない。いいわ、朴念仁を何とか振り向かせようとする片思いの女の子の歌でも詠んでいるから」 はいはい目的達成慶賀の至りと気の無い返事を振り向きもせず返して、さっさとその場を後にした。 警衛の頭の者を一通り叱って自室に戻ろうとしたところで、娘に呼び止められた。 「お父様、わたくし、歌を詠みましたのよ。聞いて下さいまし」 巷で流行ってでもいるのか、今日はよくよく歌に付き合わされる日である。しかし、さっきの話ではないが、やがて成長の暁には宮中に上がる可能性もある娘が、歌の一つも碌に詠めないようでは話にならない。 「うむ。しっかり修練しなさい。お前は――」 「それで、今宵は月がとてもきれいでしたから、それを初めに詠み込んで、それから……」 私が話しきらないうちに、娘は勢い込んで自作の歌の説明を始めた。得意気な顔をして、目を輝かせて喋っている。 娘は、楽しんでいるのだ。 ――お前はいずれ、帝の妃になるのだから。 そんな父の思惑などお構いなしに、歌を詠むことそれ自体に、胸を弾ませているのだ。 少し、娘をうらやましく思った。それから、今頃片思いの歌とやらを詠んでいるであろう、あの姫のことも。 「前栽の秋草が大層おもしろう咲いていましたので、それをですね……」 娘の講釈はまだ終わらない。 久しぶりに、私も一首詠んでみようか。題材は――そう、かつて喧嘩別れした女性が今更恋しくてならない、情けない男の心持ちでも。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/computer/41116/1227626625/274
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