【ファンタジー】ドラゴンズリング7【TRPG】 (251レス)
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210: スレイブ ◆T/kjamzSgE [sage] 2018/12/23(日) 08:26:28.41 ID:e7xHsFVC 夜明けのように白んだ視界が色を取り戻すと、そこはイグニス山脈の頂だった。 山肌を覆い尽くしていた無機質な構造物は嘘のように消え失せ、見渡すばかりの砂礫と僅かな植生。 スレイブは拾い上げた小石の感触を確かめるように手の中で転がしながら、あたりを注意深く見回した。 虚無の竜の姿は、もうここにはない。 幻の如く消え去った旧世界の残像と共に、溶けるように消滅していた。 いま、ここに立つのはスレイブ達指環の勇者。 そして、なにかを見送るように立ちすくむ、ティターニア。 虚無の竜との対話を経て、彼女が何を失ったのか、推し量ることはできない。 半身にも似た、ティターニアの傍らにあったもうひとりの"仲間"。 スレイブ達が誰一人と欠けずにこの世界に帰還できたのは、『彼女』の犠牲があったからだ。 「ティターニア……」 その欠落に、その喪失に、スレイブは語るべき言葉を持たない。 きっと何を言ったところで、失われたものを埋めることなどできないだろう。 スレイブが踏み出せなかった一歩。それを臆すことなく刻んだのは、ジャンだった。 >「見ろ!ティターニアは立派にやり遂げたぜ! 虚無の竜は二度とこの世界に現れない!俺たちの……勝利だ!」 万感の想いを込めて鬨の声を上げるジャンを見て、心の奥にあった重苦しい澱が霧散していくのを感じた。 「……そうだな。まずはこの勝利を、世界を救った俺たちの凱旋を、噛み締めよう」 差し迫った世界の危機はこれで回避することができた。 しかし、何もかもが解決したわけじゃない。 帝国元老院は再び指環を手にせんと暗躍を開始するだろうし、三国間の緊張は未だ続いたままだ。 それらすべての災いを取り除くには、ヒトの寿命はあまりにも短すぎる。 だが、何も全部指環の勇者が手を尽くさねばならないというわけでもないはずだ。 虚無の竜の世界再構築に頼らなくたって、ヒトは自分たちの世界を導いていける。 人類の可能性は、たった今彼らが証明したばかりだ。 >「あれほどの技術が未来永劫、どこか遠くの次元の彼方に消えてしまうだなんて、勿体なすぎます。 ……軍用魔法の開発にはもう飽きました。次は……世界を渡る魔法の開発研究でも、してみましょうかね」 >「ティターニアさんも、どうです?フィールドワークという名の国外旅行も楽しいんでしょうけど。 たまには真面目な研究をしてみるのも、悪くないかもしれませんよ」 「次、か。俺たちには次がある。限りのない未来を、勝ち取ったんだ」 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1532443937/210
211: スレイブ ◆T/kjamzSgE [sage] 2018/12/23(日) 08:26:52.32 ID:e7xHsFVC 明日を迎えるということが、今はこんなにも尊い。 どこへ行こうか、何をしようか、そんな風に語り合うのは、きっと何よりも楽しいだろう。 「俺は、何をしようか……。 今更ダーマの王宮に立てる義理もないが、あれでも俺の祖国には違いない。 帝国の土産を山ほど持って、郷里を尋ねるというのも良いかもな」 ダーマと帝国は現在、事実上の冷戦状態にある。 しかし戦争というのは、言ってしまえば利害関係のひとつの終着点だ。 どちらか一方を殺し尽くすことでしか終わらない戦争もあれば、そうでない戦争もある。 戦う理由をひとつひとつ解消していけば、いつかは友好的な国交を築けると……今ならそう信じられる。 そしてそれは、国内におけるヒトと魔族の対立においても同様だ。 「時間はかかるかもしれないが、俺はダーマという国を、内側から変えてみせる」 奇しくも諸国遊学の体となったスレイブの旅路は、ダーマの国政にきっと良い影響を与えられるはずだ。 高度な軍事体制をもった帝国や、先進技術を保有するハイランドとのコネクション。 その二つを両輪にして、魔族頼りのダーマを変えられると、今のスレイブは疑いもなくそう感じていた。 それに、旧世界の英雄達との"約束"もある。 城壁山脈の半ばで斃れ、雪に埋もれるままになっているザイドリッツの亡骸も、ちゃんと弔ってやらねばなるまい。 長く険しい道程になるだろうが、今は彼の時代とは違う。飛空艇なら、そう時間をかけずに亡骸を探し出せるはずだ。 >「……私、もう結構へとへとなんですけど、まさかこのまま祝勝会に洒落込もうだなんて言いませんよね?」 斜面の下から駆け上ってくる連合軍の一団を眺めて、シャルムはそう呟いた。 言葉とは裏腹に、どこか楽しげな口調だ。 >「ご存知ないかもしれませんが……高位の魔法というものは、魔力は勿論ですが……頭脳が消耗するんです。 術式構築に脳を酷使しますからね。つまり……濫用すると、とても眠くなるんですよ」 「お、おい……もうあと一踏ん張りだろう、起きていてくれ。 祝勝会をするにしても、主役の一人が眠っているんじゃ片手落ちだ」 しかしシャルムは我関せずとばかりにスレイブの肩へ寄りかかる。 そして、耳元で囁いた。 >「……私がもし寝てしまったら、その時はちゃんと介抱して下さいよ」 「なっ……!」 身体を預けてきたシャルムの体重が、体温が、いやにはっきりと感じられて、スレイブは泡を食った。 ジャンがなにを忖度したのか、生暖かい目でこちらを見やる。 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1532443937/211
212: スレイブ ◆T/kjamzSgE [sage] 2018/12/23(日) 08:27:07.11 ID:e7xHsFVC >「……さすがにもう、動けないけどよ。起きたら……ティターニア、護衛について……話したい…… あと……スレイブ……おめでとう……」 「何がだ!?」 何について祝われたのか判然としないまま、シャルムは黙ってしまった。 もはや問答は無粋と、そういうことなのだろうか。 「……まあ、確かに。疲弊した身体で無理をするよりも、俺が支えたほうが安全だな。合理的だ。 ただ、引き換えと言ってはなんだが、俺の頼みも聞いてくれないか」 もたれかかるシャルムの肩を、スレイブは浅く抱く。 固定しておいたほうが倒れ込むリスクを減らせるという極めて非常に大変合理的な判断によるものだ。 「俺には政治も、技術的なことも分からない。 ダーマを変えたい想いはあるが、具体的にどうすべきか見当がつかない。 だから、シアンス。大陸で一番の魔法使いである貴女に、知恵を貸してほしい」 指環の中で静かに聖ティターニアを見送っていたウェントゥスが、急に顔を出してスレイブの脇腹を小突いた。 『ちゅうのは建前も良いとこで、ホントは自分の国に連れて行きたいだけじゃろお主』 「ち、違っ、そんなつもりは……」 『ないんか?』 「ないことも、ないが……。 いや、この期に及んで無粋な言い訳は必要ないな。 多少の私情も、我儘も、許されるだけのことを、俺たちは成し遂げたはずだ。 俺は開き直るぞシアンス。合理性など後からついてくれば良い」 再び囃し立てる指環の中身を黙らせて、スレイブは生まれて初めて、我を通した。 「俺がダーマに帰るときは……一緒に着いてきてくれるか?」 【エピローグ】 【二年半に渡る大長編、本当にお疲れ様でした!いろんな話がやれてすごく楽しかったです! そしてすみません!最後にアルダガ戦を番外編としてやるつもりでしたが、当時とはリアルの事情が変わってしまいました どんな戦いがあり、どんな結果を迎えたかについては、なにとぞご想像にお任せさせてください!】 http://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1532443937/212
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