あなたの文章真面目に酷評します Part108 (608レス)
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543: 2020/11/16(月)06:51 ID:GKoyHz38(1/3) AAS
酷評よろ

オリーブの木の下で

いつかゲネの土地を訪問した時に、彼は私に云った「人間の精神と植物の内面に共通しているものとはなんだろうね」と。
葉先の尖った皮針形の葉と葉の間に細長い実を付けているオリーブの木をゲネと私は、ジッと眺めながら話をした。
「このオリーブの実は古代ギリシア社会の繁栄を支えた交易物資でね。オリーブの実はじつに用途が沢山あるんだ」ゲネは得意そうにオリーブの木について私にいろいろと話してくれた。
「オリーブの木はね、あの様に成熟した実を付けるまでに25年も歳月を要するけど、一度実を付ければ、毎年どっさり地面に落ちて苦もなく人間はそれを手に入することができる……それにオリーブの実は腐りにくい」
「腐りにくい?」
省8
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(2): 2020/11/16(月)06:52 ID:GKoyHz38(2/3) AAS
続き

土地にあったものがすべて流されて1年は行政が用意した仮設住宅を借りて独り生活をスタートさせたゲネだったが、水が合わずある時ひょっこりこの何もない自分の土地に戻ってきた。戻ってみたはいいが、この土地にはやはり何ひとつなかった。1年経っても大津波に物という物が全部攫われた時の風景をそのまま留めていた。
この土地の有様を観て、ゲネは「これは神によって与えられた試練だ」と悟ったように呟いた。そしてこの土地にただオリーブの木を植えた以外、家宅を建てずに暮らしていこうとゲネは決めた。
「こんな何もない土地に戻っても良いことはないですよ」とこの土地を管轄する役所の人間は言ったらしい。
 ある親切な友人は「おれのところに来いよ。仕事の斡旋くらいしてやれると思うから」と言ってくれたということだ。
しかしゲネは頑なにこの土地に執着していた。
この土地には何かがあった。産土神というわけではないが、土地と人間にも相性みたいなものはある。この土地には何もないが、殺風景な地平線が広がるこの津波の跡地を彼は愛した。
省19
545
(1): 2020/11/16(月)06:58 ID:GKoyHz38(3/3) AAS
酷評よろ

広い玄関から中へ入ると20メートルくらいの廊下があって西側が法事・行事の時に檀家を招き入れお経を上げる広い法堂(ハットウ)だった。私と弟夫婦、私の両親はそこに上がってしばらく部屋に飾られている仏像や絵画などを眺めた。
外の景色を見ると虚空のように無限を表す青空に入道雲が浮かんでいた。
弟の子供が綺麗な顔をして仰向けにすやすやと眠っていた。8ヶ月になったばかりのカレンは座布団を2枚敷いて仰向けになって、まるで全てが平穏無事であるかのように仏のような綺麗な顔をしていた。
「兄貴、今日はありがとうな」と弟が他人行儀に礼を言ってきたので、私は何の気なしに「子供は男の子だったのか?」と訊いた。
弟は「そうだ」と言って、私に順を追って説明してくれた。私はその時に初めて弟の長男が水子になった詳しい経緯を知った。
弟夫婦の初めての子供は一年半前に死産した。健康に問題があったわけではなく、臍の尾がその子の首に絡まってしまったのだという。それは不運としかいいようがない不幸な出来事だった。
省6
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