だから俺達に新作ガンダムを作らせろよ7 (565レス)
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146: 2011/12/30(金)01:28 ID:vYNTjxm+(1/16) AAS
>>145
投下乙です。順調にラブ路線ですねw
ガンダムでこんな風にまったりしてる作品は、実はけっこう新しいんじゃないかとも思います。
クリスマスに合わせられなかったのは――確かに残念の一言ですw でも一足遅いクリスマス、というのも悪くないのでは?
次の投下に期待します

で。
147
(1): 2011/12/30(金)01:29 ID:vYNTjxm+(2/16) AAS
 自分の汗で肌に張り付くシャツの不快さで、目が醒めた。
「…」
 目が醒めた後も、しばらく動けなかった。死ぬほど怖かった。見知らぬ宇宙に放り出され、無数の怨念の声に追い立てられ、恐怖と狂気に苛まれながら戦
う――しかも、最後は本当に『殺された』。今まで知らなかった領域の高熱と激痛が全身を襲う前、警報が鳴ったのを聞いた。横方向から襲い掛かる光の波
を見た。あれはきっと、かなり大型の――艦砲クラスのメガ粒子砲だ。
 ――真面目に考えてもしょうがない、と思った。所詮夢だ。
省16
148: 2011/12/30(金)01:30 ID:vYNTjxm+(3/16) AAS
 それだけ言って、瞳は部屋から出て行った。「…」唇を拭おうとして、止めた。そんな事より。ベッドから起き出し、クローゼットを開ける。
「お兄ちゃん」
 今度は驚かない。「まだいたのか、お前――」
 義妹の顔が、融けていた。「え…!?」皮膚が緑色に変色しながら融け落ち、赤い肉の端から頭蓋骨が覗く。眼球が転げ落ち、ぴしゃりと床
で一度跳ね、翼の裸の足に乗った。「ひ!?」
 反射的に足を払う。「酷い」
省15
149: 2011/12/30(金)01:32 ID:vYNTjxm+(4/16) AAS
 見知らぬ男の顔が目の前にあった。両肩が痛む。
「目が開いた……! おい、大丈夫か? 私が分かるか?」
「――あ――あ、が――か――っ」
 声がまともに出なかった。酷く喉が痛い。無理に声を出そうとして吐くように咳き込む。叫んでいたのだ、と分かった。夢と同じように。
 ――夢――?
「ほら、水だ」
省15
150: 2011/12/30(金)01:33 ID:vYNTjxm+(5/16) AAS
 宇宙世紀0079。スペースコロニー・サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に対し宣戦を布告した。
 同年1月4日、スペース・コロニー、アイランド・イフッシュが安定軌道を外れ地球への自由落下を開始。これにジオン公国軍の艦隊が随行
しているのを確認し、地球連邦軍はこれをサイド3・ジオン公国の地球に対するテロ行為と断定、ティアンム中将率いる地球低軌道防衛艦隊を
コロニー落下阻止の為に差し向けた。
『神が放ったメギドの火に、必ずや連邦は灼き尽くされるであろう』
 コロニー落下作戦に先立って、公国軍総帥ギレン・ザビが全将兵に対し行った訓示の一節である。
省15
151: 2011/12/30(金)01:35 ID:vYNTjxm+(6/16) AAS
 言って、カークは翼の財布を出した。翼の方へ投げる。緩やかに回転しながら飛んできたそれを、翼は受け取って中身を確認した。――ちゃ
んと入っている。通っている学校の学生証、日付の入った電器屋のポイントカード、何となく取っておいたレシートが数枚。日本銀行券と描か
れた紙幣――自分の生きていた世界とその時間軸を証明するには充分に思えた。
「お前が目を醒ます確証が無かったからな。治安維持活動の一環として改めさせてもらった。――百歩譲ってレシートやカードは不採用として
も、ICチップの入った学生証なんぞを分裂病患者が偽造できるわきゃ無いからな。そいつは本物だと判断せざるを得ない。そしてそいつが本
物なら、お前の証言もまた真ということになる」
省17
152: 2011/12/30(金)01:37 ID:vYNTjxm+(7/16) AAS
「? 何だ?」
「艦長。あのMSの左肩を見てくれ。数字が書いてある。見えるか?」
「別に目は悪くないんでな。――25、いや、点があるな。2.5《ツー・ポイント・ファイヴ》か?」
「あんなマーキングは、俺が知ってるガンダムには無かった。――よく見たら、細かいところが少しづつ違う。盾が無いし、背中のビーム・サ
ーベル・コネクターも無い。ランドセルも少し大きいみたいだ」
「――つまり、お前が知ってるRX‐78‐2とやらの、マイナーチェンジ機か何かとでも?」
省18
153: 2011/12/30(金)01:39 ID:vYNTjxm+(8/16) AAS
 決断して、口を開いた。「俺は、この戦争の顛末と結果を知っている。コロニーは落ちる。ジオンの攻勢はその後も続き、地球へ大量のMS
が送り込まれ、地球連邦軍は向こう半年で壊滅的な打撃を受ける」
「――何言ってんだ、お前」
「今は信じなくてもいい。そのうち分かる。でも信じてくれたほうがいい。俺はコロニーを止める方法も知ってる。阻止限界点までにコロニー
に取り付いて、姿勢制御バーニアで軌道を変えればいいんだ。衝突を回避できる」
「――そんな事はお前に言われなくても分かってる。だが却下だ。どうやって侵入する気だ? コロニーの周囲はジオンの艦隊が取り囲んでい
省19
154: 2011/12/30(金)01:40 ID:vYNTjxm+(9/16) AAS
 1月5日、0452時。
「艦長。旗艦《ウヅキ》、ティアンム艦隊司令より全艦へ入電。作戦宙域への全艦集結、所定ポイントへの配置完了確認。コロニー及び敵艦隊
を捕捉すると同時に作戦を開始する。開始予定時刻は0545時。全艦第一戦闘配備にて待機せよ。以上です」
「了解だ」
 短く応え、カーク・ヤクネインは艦長席に腰を下ろした。「聞いたなお前ら! 全艦第一戦闘配備だ! いつ始まっても動けるようにしてお
け! 機関室、砲術班は各部最終チェック! まだ時間はある、不備や不足があるなら今のうちに知らせろ!」
省8
155: 2011/12/30(金)01:42 ID:vYNTjxm+(10/16) AAS
「付き合ってられるか」
 呟く。スペースノイドの自己満足の英雄的自爆テロなんぞに誰が真面目に取り合うか。ジオンの連中は密集隊形で迎え撃つ連邦艦隊を見て、
これ幸いと突撃をかけるだろう。死力を尽くした激戦になるに違いない。どこまでジオンが持ち堪えるか見物でもある。そしてジオンの艦隊に
すっかり気を取られた連邦をスルーするように、コロニーの軌道を変更するだろう。
 そこで初めて、ジオンは自分達の失策を――いや、そもそもこんな作戦が成功するはずは無かったと知ることになる。
 ――そして、0527時。「艦長!」
省9
156: 2011/12/30(金)01:43 ID:vYNTjxm+(11/16) AAS
 別に犯罪者という扱いではないので、独房には入れられなかった。
 往多翼は与えられた小部屋のベッド――ではなく、そのすぐ傍らの床に座り込んでいた。柔らかい布団の上だと、緊張感が鈍る気がした。
「……出たいな」
 呟いた。率直な気持ちだった。シニカルとかリアリストとかを気取る気は無い。コロニーが落ちる。億単位の人間が死ぬ。それが分かってて
関係無いとぐうたら昼寝が出来るほど、翼は肝の強い人間ではなかった。それに――
「(何故動かせたのか、まだ分かってない)」
省16
157: 2011/12/30(金)01:46 ID:vYNTjxm+(12/16) AAS
 もう一度開けよう。幻覚にせよ何にせよ、それではっきりする――そう思い、もう一度ドアノブに手を掛ける。
 がたん
「!?」
 突然聞こえた音に、翼はそちらを振り返る。
 サイドボードに置かれていたデジタル時計が、宙に浮いていた。浮いているのは無重力だから当たり前だ。おそらくマグネットか何かで備え
付けになっていたのだろう。それが外れたのだ。
省11
158: 2011/12/30(金)01:48 ID:vYNTjxm+(13/16) AAS
 薄く笑いながら、呟く。もちろん誰も答えない。当然だ。部屋には翼一人しかいない。いないはずだった。
 しかし、翼には答えが分かっていた。「……戻れなく、なるのか」
 宇宙やその歴史、あるいはすでに定められた運命にはある種の修正力がある――と、さして有名でもないSF小説で読んだことがある。すで
に決定した過去が何らかの事故であらぬ方向に歪められようとした場合、宇宙はその歪みの原因を、歴史に最低限以上の影響を及ぼさない手段
で排除しようとする、という話だ。今の翼の場合なら、最も歴史に及ぼす影響の小さい手段と言えば、つまり『翼以外の誰にも認識できない場
所に元の世界への扉が開き、翼がそれを自発的にくぐる』ことだろう。つまり今だ。具体的にどういう理屈で『扉』が開いたのか、そもそもこ
省8
159: 2011/12/30(金)01:49 ID:vYNTjxm+(14/16) AAS
「《エルロン》、機関爆発! 轟沈を確認!」
「《オルドース》、艦橋に直撃弾! 制御不能! 戦列を離れます!」
「《カーディナル》より入電! 我、すでに戦闘力を喪失せり! これより敵の進行ルートを妨害する! その間に体勢を立て直し、反撃され
たし!」
「《カーディナル》に返電! ふざけるなこの馬鹿野郎! 死にたくなかったらさっさと退がれ! そのまま伝えろ!」
 光が、また一つ宇宙に咲いた。「……!」
省11
160: 2011/12/30(金)01:50 ID:vYNTjxm+(15/16) AAS
 腹を決める。「二番三番、右舷三番副砲照準! 対空砲火用意!」残っている砲はそれだけだった。サラミスの船体が左に傾き、砲を敵に向
ける。二機のザクがマシンガンを構え、右上方から急降下してくる。射程内。「撃て!」全砲斉射。しかし、明らかに少ない火線は機動力に長
けるMSを落とすには不足だった。二機のザクはそれぞれが不規則な回避パターンを織り交ぜた機動を取り、《イケイル》をマシンガンの射程
に収めようと肉薄する。「敵機接近! 艦長!」「砲術班何やってる! 当てろ! どうせ逃げても無駄なんだ、死にたくなかったら当てろ!」
それしか言えなかった。ザクがみるみる近づいてくる。ついに副砲のビームが片方のザクを掠めた。ザクは片腕を失い、回転しながら軌道を外
れる。「よし!」思わず叫んだ。しかしそのザクは体勢を立て直し、片腕だけでザク・マシンガンのトリガーを引いた。銃火がサラミスの甲板
省18
161: 2011/12/30(金)01:53 ID:vYNTjxm+(16/16) AAS
 カークはコンソールに手をつき、隣の通信士に呟いた。「…回線を開け」「しゅ、周波数は――?」「どれでもいい。接触状態なら聞こえる
だろ」しばらくして通信士がどうぞ、と言った。マイクを手に取る。
「――イクタ・ツバサか」
「――艦長」
 少年の声が答えた。「そこで何やってる」
「――分からない」
省24
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